上 下
13 / 249
オマケ集

7月7日の星空

しおりを挟む
【筆者コメント】
間に合わなくて、申し訳ございません。(忘れてた)

───────
───────

夏雲の月、7日。
前世的には七夕の日である。
俺らの出身地では、8月なんだけど…この世界なら、何も気にせず7月で良いと思うんだ。

「しっかし、笹ってコレなんだね。筍取れるから、竹かと思ってた。」
「笹もタケ科ですからね。私達の故郷は寒冷地なので、基本的に竹ではなく笹らしいです。」
「へぇ~。」

デイヴィーさんから小さい笹を購入して、綿毛と詩音が持ってた端切れで飾りを作った。
短冊は羊皮紙を四角く切って、糸を通したものだ。
折角だから、村の皆にも趣旨を説明して、書いてもらったよ。

『総長さん、お願い書けたのです♪』
『手形押したよ~♪』
『ボクも、おしたー!』
「お、良いじゃん!」
「上手に出来ましたね♪」

よしよし……とりあえず、若葉の手と陽向の前肢を洗って、インクの足跡が付いた床を掃除しないとな。

「詩音、笹飾っといてくれ。」
「はい♪」
「小梅、ちょっと陽向と若葉の足下に、砂敷いといて。」
『お任せなのです♪』
「陽向、若葉、その砂から降りるなよー。」
『『はーい!』』

雑巾絞らねば…一先ず、井戸から水持って来よ。

───────

「……この短時間に、何があったのかな?」
『ごめんなさいです……』
『あのね、すなピョンピョンしてたらね、ドーンしてバーンってなった!』
『ヒナタくん、ボクの真似して跳んだら、転んじゃった。』
「そっかぁー……気を付けないとな。陽向、怪我してないか?」
『してない!』

誤魔化さずに教えてくれて、ありがとう。
ってか、チビッ子動物達だけ残して、外出た俺が悪いわ。うん。

「……どーすっかなコレ。」

どこから手をつける?

1 『倒れてる机 』
コレは若葉に任せられる。

2 『ひっくり返ったインク壺と汚れた余りの羊皮紙』
小梅なら、二次被害出さずに片付けられるな。

3 『インクまみれの陽向 』
コレは2体には無理だし、本人(羊)にもどうしようも無い。
よし、決定。

「若葉、尻尾で机起こしといて。」
『了解っ!』
「小梅はインクと紙お願い。」
『解ったのです!』
「陽向は、お風呂入ろっか。」
『はぁーい。』

おっふ、スポンジみたいにガッツリ吸ってんな!
お風呂は露天だから、外行かないと…

「結局、ディアドルフさんに託して来ましたぁ~……何があったんですか?!」

お、ナイスタイミングだ詩音。

「砂の足場を跳ぶ遊びしてたら、陽向が机にローリングアタックしちゃったらしい。」
『『『ごめんなさい』です』』
「あらら…今度から、周りをちゃんと見ましょうね。皆、怪我とかしてませんか?」
『ケガ、してない!』
『大丈夫なのです。』
『ボクも大丈夫だよ。』
「良かった…気を付けてくださいね。」
「詩音、陽向風呂に入れるから、水くれるか?あと、小梅と若葉を頼む。」
「はい。お水は、多めに渡しておきますね。」
「ありがと。床は俺がどうにかするから、くれぐれもインク踏むなよ?」
「は、はい!」

さて…羊の毛皮は、もみ洗いで良いのかな?
なんか、ムートン洗うのには、シャンプーとリンス使うと良いって、母さんが言ってたような……。

───────

30分くらいかけて洗ったら、どうにか元のクリーム色に成った。
水を嫌がらない子だから、助かるよ。
バイト先のスタッフにゃんこ達は、大変だったな……。
床は、俺が陽向の毛と格闘してる内に、ディアさんとロゥミアさんが綺麗にしてくれてたよ。
申し訳ねぇ。

現在は、皆で夕飯の仕込み中。
前世じゃ、七夕には星型に抜いた野菜たっぷりな、素麺作ってた。
こっちに素麺は無さそうなんで、うどん的な感じで作ることに。
前世で、婆ちゃんと作ってた麺に必要なのは、中力粉と水と塩。
この世界は、薄力粉と強力粉しか無いっぽいんで、等量ずつ混ぜた。

野菜を抜く型は、小梅が鉄で作ってくれた物に、詩音が浄化と状態維持の魔法を付与してくれた。
ニンジン、キュウリ、ダイコンを、大中小3種類の大きさの星にしていく。
余る部分は、明日のサラダに使うよ。

皆には、纏めたうどんの生地を、踏んで貰っている。
ビニール袋とか無いんで、麻布に詩音が創作した『くっつかない魔法』を付与して、ソレで生地を包んだ。

『ふみふみ、たのし~♪』
『よいしょ、よいしょ!』
「お、陽向も若葉も、上手だぞ~♪」
『しおちゃん、転ばないでくださいです。』
「だ、大丈夫ですよ、たぶん……わっ?!」
「っと、代わるか?野菜の型を抜く係。」
「…お願いします……。」

先に切り終えて、包丁閉まった後で良かった。

───────

30分くらい寝かせた生地は、平らな場所に打ち粉して延べ棒で延ばす。
薄くし過ぎると、きしめんが出来上がるんで注意が必要だ。
三つ折りにして切り揃えたら、もっかい打ち粉かけて解しとく。
……素麺の細さに成らない。まんま、うどんだなコレ。
いいや、うどん旨いし。

後は、たっぷりのお湯で茹でればオッケー!
汁は水と醤油に、お酒と味醂とコケコッコの出汁を、沸騰しない程度に暖めればいい。
冷たくしてもいいけど、夏に冷えた物ばかり食べると、バテやすいらしいからね。

『総長さん♪』
「ん、お腹すいた?もうちょい待ってな~。」
『まだ、大丈夫なのです。お手伝い、あるですか?』
「んー、大丈夫だよ。お湯使ってて危ないし。」

ちょっと離れててね。
火傷しちゃったら、大変だから。

『しおちゃんに、七夕のお話聞いたです。』
「真面目な2人結婚させたら、終始イチャラブしちゃって仕事にならなくて、容赦なく引き離したら今度は泣き暮らされ、しゃーねーなってことで年1で逢うのだけ許してやるよってヤツ?」
『ソレです。』
「ヒッデー話だよなぁ。」

いくらなんでも、新婚夫婦引き離して、1年働いたご褒美が一夜限りの逢瀬とか、ブラック企業にも程がある。
天帝は、物理的な手段に出る前に、ちゃんと2人に警告とかしたんだろうか。
根が真面目なら、聞いてくれそうなもんだけど。

『師匠さんは、「織姫様が手綱を取れば、上手くいったと思います」、と言ってるです。』
「手綱て。」
『新婚の夫にお仕事させる・・・には、自分をご褒美にすると、効果的らしいですよ。』
「…ちょっと身に覚えが……」

レシピ書いたとき、似たような事があった気がする……。
婚約前だったけど。

『ディーさんは、「川を渡るのに橋など要らん」って、毎晩逢いに行く気満々なこと言ってたです。』
「あの人まず、ロゥミアさんと引き離されそうになったら、天帝フルボッコにするだろ。んで、自分が天帝になっちまいそう……」

まあ、そうならないためにも、ロゥミアさんが手綱取ってくれるわけで……
うん、七夕伝説が成り立たねぇな。

『総長さんなら、どうするです?』
商品を人質に、天帝へ直訴かなぁ。週休完全2日制を要求する。ダメなら鵲脅して小梅拐って、天の川降って逃避行だな。」
『逃げちゃうです?』

だって、そんなブラック企業に勤めたくねぇし、嫁さんも勤めさせたくねぇもん。

「小梅は、どーすんの?」
『1年だけ我慢して、逢えた時に総長さんのお洋服へ潜り込むです。そのまま、同じ岸に渡るのです。機織りの機械も、砂で運んで持って行くです。』
「天才か!俺も牛連れて行けば、どっちの岸でも仕事できるな!」

要は、仕事すればいいんだもんな!
やることやれば、天帝も文句無いだろ!

「お、麺も良い感じに成ったな♪」
『美味しそうなのです♪』
「小梅、自分のと陽向と若葉の、運んでくれるか?」
『お任せなのです♪』

動物達のは、少し深さのあるお皿に、汁少なめで。
お星様、沢山乗せてあげよう。

「そういや小梅、短冊にお願い何て書いた?」
『秘密なのです♪』

…後でコッソリ、見ちゃおうかなw
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

裏アカ男子

やまいし
ファンタジー
ここは男女の貞操観念が逆転、そして人類すべてが美形になった世界。 転生した主人公にとってこの世界の女性は誰でも美少女、そして女性は元の世界の男性のように性欲が強いと気付く。 そこで彼は都合の良い(体の)関係を求めて裏アカを使用することにした。 ―—これはそんな彼祐樹が好き勝手に生きる物語。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...