上 下
108 / 249
ビビりとモフモフ、冒険開始

男に二言はありません

しおりを挟む

「てなわけで、小梅と婚約しますた。」
「え……ぇええええええっ?!」
『こんやく!おめでと!』
「やったじゃない、コウメちゃん♪」
『ありがとうなのです♪』
「…何があった……。」

詩音と陽向とレナさんとラルフが、俺の様子を見に来てくれたんで、とりあえず報告。
こういうのは、早いこと言った方がいいよね?
うん、その方がいいハズだ。

「未來くん、大人に成ってから考えるって、言ってませんでした?」
「いやちょっと…小梅が可愛いあまりに、責任取らないといけないことをしちゃったもんで…」
「責任っ?!ま、まさか生後2ヶ月の小梅ちゃんを押し倒して……!?」
「そこまでしてねーからっ!!」

んなことする程、野蛮じゃねぇよ!

「あら、じゃあ何したの?」
「怪我でもさせたか?」
「させるわけないだろ。」
『総長さん、そんなことしないです。』

陽向はそうでもないけど、3人が興味津々だな……
原因まで、話すべき…?

「……チューした。」
「「「はい?」」」
『ちゅー?』
「寝惚けた小梅が、可愛くて可愛くて…思わずほっぺに。」
「ほっぺにチュー…?チューって…」
「…接吻でわかりますか?」
「は?待て、それで責任問題になるのか…?相手が貴族令嬢や、王族なら大問題だろうが……」
「いやさ、俺もそう思ったよ?でも俺らの感覚って『人間』と『狼』の感覚なわけでさ。」

人間ならほっぺチューくらい、何てことない。
前世では親子とか友達でもするような、愛情表現の一種だ。
ぶっちゃけ、ふざけて詩音としたこともある。
狼的にも、グルーミングの延長くらいのノリだった。
でもさ、小梅は『にゃんこ』なんだよ!

「猫的には、完全アウトなセクハラかもじゃん?!」
「大体しか意味が解らんが、猫でもそこまでの大事に成るとは思えないぞ…。」
「そうですよ、猫ちゃんもお互いの顔舐めたりするじゃないですか。」
『それは、チューとは言わないです。』
「顔舐めるのは、チューじゃないらしい。」
「複雑ねぇ。」

俺がしたのは、舐めるとかじゃなく、ただ口付けただけだもんなぁ。
にゃんこには、馴染み無いかも。

「ってか、皆なんか俺が騙されてるっぽい反応してっけど、別に婚約すんの嫌じゃないからね?何れはちゃんとしようと思ってたし。」
『フフ~♪相思相愛なのです♪』
「それは、普段の未來くん見てれば解りますけど…。」
「ソレと騙されるのは別物だろう……。お前の様子を見ていると、心配になるんだ。」
「ミライくん、コウメちゃんに限らず、気付かない間に騙されたり、利用されてそうだもんねぇ……。」

む、失礼な…そりゃ自分が単純な自覚はあるけどさっ!

『おねーちゃん、おにーちゃん だましてるの?』
『大人の駆け引きは、色々あるですよ、ひなくん。師匠さんにアドバイス貰ったのです。』
「小梅、今の言葉について色々聞いていい?主に『大人の駆け引き』と『師匠』のことなんだけどさ。」
『師匠さんは、もう少しで来るのです。さっき、アップルパイ、焼いてたです♪』

あ、この世界アップルパイあるんだぁ。
カフェのメニューに無かったし、パイ生地作ったこと無いんだよな…冷凍パイシート使ってた。
是非とも覚えたい。

って、そうじゃねぇ!

「失礼します。…あら、起きてたんですね、ミライ♪」
「あ、ロゥミアさん!」
「体調はどうだ?」
「ん、起き上がれるくらいにはなったよ。」
「ミライ~、満身創痍のお兄ちゃんを癒してぇ~。」
「俺よりピンピンしてるっぽいから、却下。兄ちゃん、すぐ尻尾触るし。」
「えーw」

アップルパイの甘い香りと共に、大人3人がやってきた。
パイを運んでるのは、ディアさんか。

この3人の誰かが師匠なのか…?
デイヴィーさん、料理できなさそうだけど…一番やらなさそうなディアさんができるからなぁ。
ロゥミアさんは、言うまでもなく料理上手。

…本命ロゥミアさん、対抗ディアさん、大穴デイヴィーさんか、保険その他村の人かな。

「わぁ~♪アップルパイ、美味しそうですね!」
「艶々してて、美味しそう!ロゥミアさん、料理人の経験でもあるんですか?」
「いえいえ、私はただ人伝に聞いたり、本で読んだレシピを再現しているだけですよ。」

はい、ロゥミアさん決定。
小梅に何を教えたの?
まあ、何にせよとりあえず報告するか。

「ミライも食べれそうですか?」
「うん!あ、3人に報告。俺、ちょいとやらかしたんで、責任取って小梅と婚約する。以上。」
「ほう。」
「え…婚約?早くない?何したのミライ。」
「ほっぺにチュー…いや、接吻。」
「微笑ましっ!wwwそっかwそっかwwwやっちゃったねwww」
「……それで、責任を取れと言われたのかね?」
「うん。だから責任取る。」
「まあ♪良かったですね、コウメちゃん♪」

ちょっと、デイヴィーさん。
何を笑ってんの、俺達真剣なんだけど?

「…ロゥミア、コウメに何ぞ入れ知恵でもしたか。」
「あら、疑問文にするのをお忘れですよ、ディアドルフ様。」
「問うているのではないからな。確信を持って、最終確認をしているだけだ。」
「フフッ、入れ知恵だなんて酷い言い方ですね。私はただ、『夫から言質を取るコツ』を、お2人にお聞かせしただけですよ?」
「それは興味深い。是非、私にも聞かせてくれたまえ。」
「秘密です♪」

…ディアさん、ロゥミアさんには、意外と振り回されてんの?
言質を取るコツって……
女性の怖さの片鱗を見た気がする。

「魅了の悪用法まで、教えては居るまいな?」
「それは確認しときたいねー。ミライが父さんみたいに、良いように使われたら可哀想だよ。」
「さて、どうでしょう♪」

ディアさん、良いように使われてんの?!
つか、魅了効くんだ?!

「アタシも、アレくらい逞しくないとダメかしら。」
「頼む、レナはそのままで居てくれ……。」
「…どこの家庭も、母は強しなのでしょうかね?」
「いや、だいぶ珍しいと思うぞ。」
「…小梅は、そんなことしないよね?」
『時と場合に寄るのです。』
「正直だなぁ。」
『おにーちゃん、がんばれー』
「うん、何の応援か知らんけど、ありがと。」

結婚はまだだけど、夫婦生活が今から不安だよ…
主に、完全に尻に敷かれそうな所が。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

貧乏男爵家の四男に転生したが、奴隷として売られてしまった

竹桜
ファンタジー
 林業に従事していた主人公は倒木に押し潰されて死んでしまった。  死んだ筈の主人公は異世界に転生したのだ。  貧乏男爵四男に。  転生したのは良いが、奴隷商に売れてしまう。  そんな主人公は何気ない斧を持ち、異世界を生き抜く。

処理中です...