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ビビりとモフモフ、冒険開始

王都にて

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朝ご飯を食べ終えて、一度部屋へ戻った。
ここから、王都に直飛びするらしい。

「入町検査とかすっとばして、怒られないかな…。」
『大丈夫なのです?』
「案ずるな、私に連れてこられたと言えば、納得される。」
「本当はダメなんですね…?」
『ダメなのー?』
「勿論。だがまあ、今更私にとやかく言う者も居ないのでね。」

なるほど、皆諦めたんだな。

───────

ディアさんに引っ付いて、パチパチッと瞬きすればアラ不思議。
景色は連泊中の宿の部屋から、シックで落ち着いた感じのリビングに早変わり。

「おお…どなたん家?」
『わ~♪』
「ガルヴァの家だ。」
『広いのです♪』
「か、勝手にお邪魔して、良いんですか?」
「大丈夫だ、来ることは言ってある。」

本当に?なら良いんだけど。

「お義父とうさん、いらっしゃい。」
「おお、ツバキ。ガルヴァはどうした?」
「ガルくんは、お茶の用意をしてるわ。ミライくんに、シオンくん,コウメちゃん,ヒナタくんもいらっしゃい。ツバキよ、よろしくね。」
「お邪魔しまーす。」
「お、お邪魔して、います…!詩音です!」
『よろしくです♪』
『よろしく~♪』

この人は、ガルヴァさんの奥さんかな。
……ツバキさん?随分と和風なお名前なことで。

「襲撃は、夜に成ってからにしよう。それまで、ゆっくりしていなさい。私は知り合いに会ってくる。」
「え。」
「は、はい。行ってらっしゃい。」

ディアさん、もう行っちゃうの?
ゆっくりしてなさいって…準備とか、しなくて良いんだろうか。
ってか、俺らのことガルヴァさんに丸投げ?

「あらら…ガルくん、お義父さんの分も淹れてるのに…相変わらず自由なお方。あ、皆座って座って!」
「はーい。」
「し、失礼します。」
『はいなのです♪』
『わーい♪』

うぉぉ…ソファーふっかふか!!
何入ってんの?!

「よう。…んだよ、親父はもう行ったのか?」
「ガルヴァさん、やっほ~。」
『おはようです♪』
「お邪魔しています。」
『おはよー!』
「おう、ゆっくりしてけ。」

めっちゃいい香りの、ハーブティーを出してくれた。
なんか落ち着く。

ピロン♪

『ハーブティー(リラックスブレンド)』のレシピを記憶しました。

「ガルヴァさんのお茶うま~♪」
「ふぅ…今日のも最高の出来ね~…♪」
「とっても美味しいです♪」
「たりめーだ、コレで商売してんだからよ。」

口では何でも無さそうに言うけど、地味にドヤってんな。
でもコレは淹れれたら、ドヤ顔したくもなるね!

『あちち…熱いですが、美味しいのです!オレンジフラワーです?』
「おう、入ってるぜ。本当に植物解んだな…バカには釘刺しとくか……。」
「デイヴィーさんに?何て?」
「あ、ミライくんもソレバカで通じちゃうのね……。」
「放っとくと、コウメの頭に植物図鑑作る勢いで、覚えさせようとするのが目に見えてんだよ。」 

あ、それはご勘弁願いたいね。
小梅の頭がパンクしちゃうし、負担もかかる。

『おいしいはっぱー♪』
『あー!ひなくん、めっです!』
「うぉお?!コラ陽向っ!ポットの茶葉食べないの!」

あぁ…ポットに顔突っ込んで、もっしゃもっしゃと…
顔回りの毛が、お茶の色に染まってるよ…洗うしかないなコレ。

「あららwハーブ美味しかった?」
「す、すみません!もう、めっですよ!さっき朝ご飯食べたでしょう!」
『あぅ、ごめんなさーい…』
「はっw羊にゃ、そっちのが良かったか。次から専用に用意してやるよ。」

まあ、こんなに美味しいお茶になるなら、ハーブ自体も美味しいんだろうけど…
だからって、ポットから直で食うのは…ね?

───────

※ディアドルフ様は何してるかというと

「ノエル、久しいな。」
「おおっ?!…ディアドルフ殿!来るなら、事前に連絡をといつも…!全く、間者かと思ったぞ。」

いつもの如く、ノエルの執務室へ直接飛ぶ。
ノエルとは、ノーウェリアス・グリンス…グリンス王国の現国王のことだ。

「悪いが、今回は急ぎでね。このシュプリームで、少々拳を振るう事態に成るやも知れぬのだ。」
「なんと!それは大変だ…詳しく聞かせてくれ。場合によっては、避難勧告を出さねば。」

喧嘩をするかもしれないと宣言しただけで、最早災害扱いだが…この対応は間違っていない。
込める力によっては、振るった拳で大地が割れるのだから。

「して、そなたの鉄槌を受けるのは、如何なる者だ?貴族か?」
「それはお楽しみだ。先に解ってしまっては、つまらないだろう?」
「対策が立てれんから、そのサプライズ精神はやめてくれ……。」
「なに、この国の損失には成らんよ。」

何しろ、商才も無ければ人望も無い、ただの悪徳商人だからな。
だが、それを告げては、ノエルの百面相が見られなくなる。
フフフ、誰がボロ雑巾になるのか、精々深読みしながら思案してくれたまえ。
私としては、その方が愉しいのでな。

「ハァ…解った。私からの望みは、被害を最小限にすること…それだけだ。」
「屋敷1つなら許容範囲か?」
「城の地下に出来てしまったダンジョンごと、城を吹き飛ばされたことを思えば、マシと言えるな。」

ああ、そんな事もあったか…ノエルがまだ幼児の頃だな。

「まだ根に持っているのかね?怪我人は無く、城も調度品も再建したのだから、そろそろ許してくれたまえよ。」
「許すも何も、そなたに救われたのだぞ?根に持つと言うより、今でも感謝を忘れておらぬだけだ。…まあ、ちと怖い思いはしたが……。」

あの時の事を思い出したのか、どこか遠い目でそう言った。

「そういえば、貴君は確か飛んできた瓦礫に驚いて転び、怪我はしなかったものの、転んだ事に更に驚いて号泣していたな。」
「仕方ないであろう、齢3つの頃なのだから。…今夜、大掃除の後は暇か?」
「私好みの酒があるなら、暇になる。」
「ならば暇だな。久方ぶりに、そなたの冒険話が聞きたい気分だ。できれば、勇者と共に旅をしていた頃のものがいい。」
「…あの頃の事は、あまり思い出したく無いのだがね。」
「だから面白いのだ。そなたが苦労する話など、そうそう無いからな。」

やれやれ…冒険話を語った者に、あの馬鹿勇者の話が好評なのは、何故だろうか……。

「…良かろう。準備があるから、もう行く。また夜にな。」
「うむ。そなたに言うことでは無いやも知れんが、気を付けてな。」
「ああ。……そうだ、ノエル。」
「なんだ?」

今回やらかすのは、私だけでは無い可能性が高いからな……。
ミライ達は、こんな事で目立ちたくないだろうし、子供が力を持っているとなれば、利用しようと近付く者が出るだろう。

「今宵吹き飛ぶ屋敷で起きた事は、全て私の仕業・・・・・・だ。良いな。」
「…解った。」

うむ、正確に理解してくれたようだ。
では…一先ず教会の様子でも見ておくか。

───────
※王様視点

「ふぅ…同行者が居て、世間の目から護りたいと。……恐らく、子供だな。」

そうに違いない。
そして、彼の拳を叩き込まれる者は、子供に酷い行いをした者だろう。
となると、今の状態で考えられるのは……

「……教会には、近々警告文を出すところだったのだが…早く片がつくならその方が良い、か。」

とうとう孤児院の子供に手を出したらしい、人が変わってしまったという噂の司教だろうな。

さて…色々と準備しなければ。
念のため、別人の案件だった場合も想定して…
私だけでは間に合わんな。
……仕方ない、宰相も巻き込もう…。
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