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オマケ集
ひのたん
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※ひのたんの紹介です←
我こそは、日輪家の守り神『ひのたん』である。
我を生み出した創造主は、日輪の名に相応しい明るく活発な少年である。
なんでも、元々は三つ首の犬を造ろうとしていたそうな。
だが天より賜りし独創性がソレを赦さず、足が増え耳が減るなどの紆余曲折あって、我になったのだ。
そんな我の姿がコレだ。
どうだ、凄かろう。
何が凄いかというと、最早原型が何かも解らぬ上、平らな面がほぼ無いにも関わらず、自立はするという事だ。
我が創造主のような者を、人は天才と呼ぶのであろう。
因みに、生まれた当初は模様など無く、紅い体と紫の瞳だけであった。
残念ながら、『びじゅつのせんせい』という者は、我の良さを理解できなかったらしいが…
創造主の家族や、創造主を慕う者達は、よく理解しておる。
さて、創造主によって芸術的に造られた我であるが、最初はただの意思無き土塊であった。
自我を持ったのは、妹君より名を賜った時だ。
その名こそ『ひのたん』である。
『ひの』は日輪という、家を示す言葉から取られたもの。
『たん』には妹君の『可愛い名前がいい』という意図が含まれている。
とても素晴らしい名だ。
我に自我と意思を与えてくれただけはある。
そして、我を『とこのま』という神聖なる場に奉ったのは、創造主の爺様にあたる者だとか。
毎日我に家内安全を祈り、清き水を捧げてくれる良き家人である。
我に様々な模様を描いてくれたのは、この爺様だ。
また、我の隣に『緋之丹』という文字を書いた紙を奉納したのも、そうである。
恐らく、コレは我の為の書。
何と書いてくれたのだろうか…人の字を読めぬのが口惜しい限りだ。
そうして、我が守り神となって数年後。
我は布でできた分体を、2つも手に入れた。
創造主の友人に、布から熊や猫を生み、人を飾り立てる着物を作り出す職人が居たのだ。
その者は我が分体を、創造主と妹君に贈った。
2人は己が最もよく使用する物入れに、分体をくくりつけてよろこんでおった。
だが、それから更に2度程季節が回った頃…
妹君を守る分体の首が、『くらすのだんし』なる狼藉者に千切られてしまった。
御母堂によれば、その『くらすのだんし』は妹君の気を引きたいがため、斯様な暴挙に出たという。
子供の悪戯と言うには、事が大きすぎた。
分体とはいえ、少なからず妹君を守る力は有しておったのだ。
ソレが首を千切られ、力を無くせばどうなるか。
『くらすのだんし』という者は、死神の使いではないかと我は睨んでおる。
知ってか知らずか、創造主は涙を流す妹君に、自らを守る分体を手渡した。
代わりに首の千切られた分体を受け取り、友人に治してもらうと言って、妹君を宥めたのだ。
そうして、翌朝いつものように出掛けた創造主を、千切られた分体では、守れなかったのである。
アレから月日は流れ、妹君も年頃の娘に成長しておる。
現在、我の分体は知らぬ間に3つに増えていた。
1つは、創造主の守りを担当していた分体。
今は妹君の荷物入れにくくられ、懸命に守っておる。
1つは、1度首を千切られた分体。
コレは『ぶつだん』という、『とこのま』とはまた違う趣の神聖なる場に置かれている。
首は御母堂が治してくれたため、また力を取り戻した。
そしてもう1つ。
ソレはこの世界には居ない。
遥か遠き世界にて過ごす、創造主の荷物入れにくくられた分体。
だが、残念なことに、今はその荷物入れを持ち歩いてはくれていないようだ。
折角分体が近くに在るというのに、これでは創造主の無事を家人へ伝えられぬ。
さて困った困った……。
「いやー、ゲームと漫画に気取られて、忘れてたわ。」
「ひのたん、ありました?」
「あったあった。ウェストポーチに付け替えとく。」
「…はて、何処かで見たような……」
「え、ひのたん実在すんの?」
「いや、似たモンスターを見た気がしてな。恐らくソレとは別物だ。」
『ソレが、さいきょーのモンスターです?』
『ちっちゃいね~。』
「モンスターってより、御守りみたいな感じかなぁw折角詩音が作ってくれたもんだしw」
「取れたりしないように、状態維持の付与しておきますね。」
おお、異界の分体が、創造主の腰袋にくくられたらしい。
コレで創造主の無事を伝えられるというもの。
今宵早速伝えるとしよう。
───────
「おはよー!ママ、なんか超変な夢見た!」
「おはよう、ミリーちゃん。変な夢って…もしかして、未來が大きい猫ちゃんと寝てる夢?」
「やっぱ、あのデカわんこ兄ちゃんだよね?!良かった、あの世で春が来たか~。相手がにゃんこって辺りが兄ちゃんっぽいわ。」
「詩音くんも居たわよね?」
「そうそう、あと可愛い羊と…床で寝てるイケメン!」
「あの人綺麗だったわね~…。」
「ん、誰の話だ?」
「パパおはよー。変な夢見た?」
「おはよう、美鈴。見た見た。息子の恋人っぽい娘が猫という事態を、すんなり受け入れてしまった自分に、少し反省してるところだよ。」
「貴方、床のイケメン気付いた?」
「床?…未來と詩音くんしか見てなかったからなぁ。」
妹君を守る分体を通して、家人の様子を伺う。
我が伝えた創造主の姿について、盛り上がっているようだ。
善きかな善きかな。
「緋之丹や。」
おや、爺様。
「今日もつつがなく過ごせるよう、見守っておくれ。…未來にも宜しくのぉ。」
あいわかった。
今日も懸命に守るとしようか。
我こそは、日輪家の守り神『ひのたん』である。
我を生み出した創造主は、日輪の名に相応しい明るく活発な少年である。
なんでも、元々は三つ首の犬を造ろうとしていたそうな。
だが天より賜りし独創性がソレを赦さず、足が増え耳が減るなどの紆余曲折あって、我になったのだ。
そんな我の姿がコレだ。
どうだ、凄かろう。
何が凄いかというと、最早原型が何かも解らぬ上、平らな面がほぼ無いにも関わらず、自立はするという事だ。
我が創造主のような者を、人は天才と呼ぶのであろう。
因みに、生まれた当初は模様など無く、紅い体と紫の瞳だけであった。
残念ながら、『びじゅつのせんせい』という者は、我の良さを理解できなかったらしいが…
創造主の家族や、創造主を慕う者達は、よく理解しておる。
さて、創造主によって芸術的に造られた我であるが、最初はただの意思無き土塊であった。
自我を持ったのは、妹君より名を賜った時だ。
その名こそ『ひのたん』である。
『ひの』は日輪という、家を示す言葉から取られたもの。
『たん』には妹君の『可愛い名前がいい』という意図が含まれている。
とても素晴らしい名だ。
我に自我と意思を与えてくれただけはある。
そして、我を『とこのま』という神聖なる場に奉ったのは、創造主の爺様にあたる者だとか。
毎日我に家内安全を祈り、清き水を捧げてくれる良き家人である。
我に様々な模様を描いてくれたのは、この爺様だ。
また、我の隣に『緋之丹』という文字を書いた紙を奉納したのも、そうである。
恐らく、コレは我の為の書。
何と書いてくれたのだろうか…人の字を読めぬのが口惜しい限りだ。
そうして、我が守り神となって数年後。
我は布でできた分体を、2つも手に入れた。
創造主の友人に、布から熊や猫を生み、人を飾り立てる着物を作り出す職人が居たのだ。
その者は我が分体を、創造主と妹君に贈った。
2人は己が最もよく使用する物入れに、分体をくくりつけてよろこんでおった。
だが、それから更に2度程季節が回った頃…
妹君を守る分体の首が、『くらすのだんし』なる狼藉者に千切られてしまった。
御母堂によれば、その『くらすのだんし』は妹君の気を引きたいがため、斯様な暴挙に出たという。
子供の悪戯と言うには、事が大きすぎた。
分体とはいえ、少なからず妹君を守る力は有しておったのだ。
ソレが首を千切られ、力を無くせばどうなるか。
『くらすのだんし』という者は、死神の使いではないかと我は睨んでおる。
知ってか知らずか、創造主は涙を流す妹君に、自らを守る分体を手渡した。
代わりに首の千切られた分体を受け取り、友人に治してもらうと言って、妹君を宥めたのだ。
そうして、翌朝いつものように出掛けた創造主を、千切られた分体では、守れなかったのである。
アレから月日は流れ、妹君も年頃の娘に成長しておる。
現在、我の分体は知らぬ間に3つに増えていた。
1つは、創造主の守りを担当していた分体。
今は妹君の荷物入れにくくられ、懸命に守っておる。
1つは、1度首を千切られた分体。
コレは『ぶつだん』という、『とこのま』とはまた違う趣の神聖なる場に置かれている。
首は御母堂が治してくれたため、また力を取り戻した。
そしてもう1つ。
ソレはこの世界には居ない。
遥か遠き世界にて過ごす、創造主の荷物入れにくくられた分体。
だが、残念なことに、今はその荷物入れを持ち歩いてはくれていないようだ。
折角分体が近くに在るというのに、これでは創造主の無事を家人へ伝えられぬ。
さて困った困った……。
「いやー、ゲームと漫画に気取られて、忘れてたわ。」
「ひのたん、ありました?」
「あったあった。ウェストポーチに付け替えとく。」
「…はて、何処かで見たような……」
「え、ひのたん実在すんの?」
「いや、似たモンスターを見た気がしてな。恐らくソレとは別物だ。」
『ソレが、さいきょーのモンスターです?』
『ちっちゃいね~。』
「モンスターってより、御守りみたいな感じかなぁw折角詩音が作ってくれたもんだしw」
「取れたりしないように、状態維持の付与しておきますね。」
おお、異界の分体が、創造主の腰袋にくくられたらしい。
コレで創造主の無事を伝えられるというもの。
今宵早速伝えるとしよう。
───────
「おはよー!ママ、なんか超変な夢見た!」
「おはよう、ミリーちゃん。変な夢って…もしかして、未來が大きい猫ちゃんと寝てる夢?」
「やっぱ、あのデカわんこ兄ちゃんだよね?!良かった、あの世で春が来たか~。相手がにゃんこって辺りが兄ちゃんっぽいわ。」
「詩音くんも居たわよね?」
「そうそう、あと可愛い羊と…床で寝てるイケメン!」
「あの人綺麗だったわね~…。」
「ん、誰の話だ?」
「パパおはよー。変な夢見た?」
「おはよう、美鈴。見た見た。息子の恋人っぽい娘が猫という事態を、すんなり受け入れてしまった自分に、少し反省してるところだよ。」
「貴方、床のイケメン気付いた?」
「床?…未來と詩音くんしか見てなかったからなぁ。」
妹君を守る分体を通して、家人の様子を伺う。
我が伝えた創造主の姿について、盛り上がっているようだ。
善きかな善きかな。
「緋之丹や。」
おや、爺様。
「今日もつつがなく過ごせるよう、見守っておくれ。…未來にも宜しくのぉ。」
あいわかった。
今日も懸命に守るとしようか。
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