ビビりとモフモフの異世界道中

とある村人

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ビビりとモフモフ、冒険開始

異世界初の夜

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夕食はテントの中で取ったけど、異世界初の夜をもう少し満喫しようってことで、焚き火しながら星空観賞をすることに。

「綺麗ですね~。」
「向こうじゃ、ここまで見えなかったからなぁ。」

なんて話しつつ空を見上げながら、俺は自分の中にある魔力を感じ取る練習をしている。
理由は単純、魔石に魔力を籠めるために必須だからだ。

森の中でもだいぶ魔法を使ってた詩音は、すぐに魔力の感じ方,引き出し方をマスターしたそうな。
流石賢者と言うべきか。

俺はどうも、その辺が苦手らしい。
さっき、薪にどうやって火着けたんだよってレベルで解らない。

「んー……《フレイム》!」

掌から火の玉を出すイメージで、魔法を使ってみた。平常時より、魔力っぽいものの流れが解りやすい気がする。
できるだけ、火の玉を維持してみよう……。
むむ…ちょっとは解った…かも……。
頑張れ俺、ゲームのたm……ゲホゴホ、この世界で快適に生活するためだ。

「…………しっかしなぁ…」
「未來くん?どうかしました?」
「あ、いや。何でもない。」

本当になんでもないことなんだけど…そういえば、この炎見ても食欲湧かないんだよなぁ…とね。
森でおなか空いてきた頃に、何故炎が食べたいと思ったのやら。謎だ。

謎と言えば、詩音の出した水を被った時からずっと、体温が低下してるっぽい不調を感じてるのも、なんだかなぁ。
水はちゃんと飲めたし、難なら攻撃魔法として出された水以外は、触れても平気だった。
ならばと、暖かいスープもしっかり食べたけど…回復してくれてない。
どっかに『フレイムフェンリルの飼い方』とかいう本ないですか。

「…そんなピンポイントなの無いか。」
「え?」
「いや、俺の取説欲しいなーと。」
「取説ですか…人間じゃなくなって、色々悩み出てきました?」
「そんなとこかな。まあ、考えても仕方ないから…気長に慣れるよ。」

町に着いたら、火属性の従魔に詳しい人を捜索しよう。獣医さんとか居ないかなぁ。

…そろそろ、火の玉消そうか。星が見辛い。

「はぁー……この星空見ながら風呂入りたいわ。」
「良いですねぇ、お風呂。…土属性の魔法が使えたら、即席の湯船作るんですけど……。」

うーむ、ドラム缶が欲しい。
火と水は揃ってるわけだし。

「資料に何か無い?」
「大抵の世界では、体を浄めるのにクリアとかクリーンという魔法を使用してますね。元日本人の主人公が、温泉掘り当てたりもしてますが。」
「魔法で綺麗にするのもいいけど…風呂は入りたいな…。温泉……火山でも探す?」
「あるとは思いますが、ここから見渡す限り、普通の山でもかなり遠くですし…一日やそこらでは着きませんよきっと。」
「でっすよねー。」

クリアとかクリーン、ねぇ。
生活魔法ってやつではないんだろうな。
もしそうなら、一般常識として知識にあるはず。
光属性魔法っぽいよなぁ。詩音ならできそう。
…………待てよ、それなら…

「詩音、複合魔法とか使えない?」
「複合魔法、ですか?」
「水属性魔法で水の塊出すイメージしつつ、光属性で回復と浄化の効果着けるとかどうよ?」
「や、やってみます。まずはビン一杯程度で練習しますね。《クリア・ウォータ》」

詩音の掌に、淡く光る水の塊が出てきた。
カバンから採集ビンを出して、ゆっくり注いでいく。

「…光ってる水ができたね。」
「成功、したんでしょうか?」
「調べてみるよ。《鑑定》」


『アイテム 天使の水薬』
強い浄化と回復の力を有する聖水。
呪いや状態異常を治し、HPを回復する。
使用方法は服用の他、傷などに直接かけても良い。
体にかける場合、汚れを洗い流して病気等を防ぐ効果がある。


「なんか、めっちゃ凄い聖水的なのができてる。天使の水薬だって。」
「薬?こ、効果は?」
「解呪,回復,状態異常治療,洗浄,滋養強壮,タウリン1000ミリグラム配合。」
「そ、そんなにですか?!」
「ラスト2つはノリで言ったけど、前4つはマジ。」

コレで体拭くだけでも違いそうだ。
浴槽ゲットするまでは、そうしようかね。

「よし、んじゃコイツを暖めよう。」
「直火だと、ビンが割れたりしませんか?」
「んー…そうか。詩音、ビンの底を水でコーティングできる?」
「お任せください!」

これなら、100℃までしか上がらなくて済むからね。
コーティングに使ってる水が沸騰したら、加熱を止める。

「いい感じかな?一応、再鑑定しとくか。」
「温度で変質してるかもしれませんしね。」
「うん。魔法だから、そうそう無いとは思うけど…《鑑定》」


『アイテム 天使の水薬(温)』
適度に温かくなった天使の水薬。
元の効果に加え、体を芯から暖める効果がある。


「よっしゃ、浄化,回復効果そのままに、暖まれる効能追加!」
「お見事です!なんか、温泉みたいですね。」
「だな~。とりあえず、今日はコイツで体拭くかー。」
「はい♪」

量産して、アイテムボックスに保管しておけば、色々使えそうだな。掃除とかトイレの始末にも良さそうだ。
あと、元手タダなのに結構な金額で売れそう…詩音さえ良ければ、町で売ってみよう。

「そろそろ、部屋戻るか?」
「そうしましょう。外で体を拭くのは…ちょっと抵抗ありますし。」
「了解。…焚き火、どうするかな。獣避けに消さないどく?」
「その方がいいかもしれません。」
「じゃあ…邪悪を打ち払うらしい、照日之業火で着火し直すかな。《照日之業火》!」

魔力っぽいものが、胸の辺りに溜まって炎に変わるのを感じた。今までは、掌に出すイメージでやってたから、未知の感覚だ。
燃やす対象に、焚き火を指定して炎を吹き出す。
どうやら、照日之業火は白い炎みたいだ。

「成功かな。」
「モンスター避けに最適ですね!」

コレで、テントにモンスターが近付いて来ることも無いだろう。
……詩音には内緒だけど、日が落ちてから、ボンヤリした気配がけっこう彷徨いてるんだよね。
このボンヤリ感、きっと詩音の天敵マジの幽霊だ。

「体を拭いたら、未來くんにマッサージしますね♪」
「お、ありがとう。今日は走ったから、調度いいや。」

どうか幽霊っぽい奴が、テントすり抜けたりしませんように……詩音と俺の安眠のために。
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