ビビりとモフモフの異世界道中

とある村人

文字の大きさ
上 下
34 / 249
ビビりとモフモフ、冒険開始

とりあえず出発

しおりを挟む
詩音の神の手マッサージにより、リラックス状態にされてしまった全身の筋肉へ渇を入れる。
立つのも大変ってどういうことさ…
獣特効テイム術にされてただけはある。

[詩音、加減を覚えようか。]
「えっと、強すぎましたか…?」
[いや、むしろ気持ちよすぎる。]
「えっ、気持ちいいなら、良かったんじゃ…」
[ここまで全身解すのは、宿とかテントの中でにしてよってことね。動きたくなくなっちゃうから。寝る前が一番嬉しいかなぁ。]
「わ、わかりました。すみません……」
[いや、謝ることでもないんだけどね。次からそうしてよ。]

寝る前にやってくれるなら、両手を挙げて喜ぶよ俺。
今の姿なら、報酬として尻尾ふりながら顔舐めるくらいするよ。本当に気持ちいいから。

……いや、やっぱ顔舐めるのはハードル高いわ。

[とりあえず、スキルとか練習しながら町目指そうか。地図プリーズ。]
「地図ですね。はい、どうぞ。」

おおぅ、タブレット型?!
てっきり、紙で来るかと…まあいいや。

なんで俺が受け取るかというと、詩音は地図が読めないからである。
下手に読もうとすると、確実に逆方向へ行く奇跡の方向音痴だ。
いっそ手を繋いで歩いた方がいいかな…。
でもなぁ…もう少し四足歩行に馴れておきたいしなぁ。

リード…詩音のはぐれ防止にリードが欲しい。
折角首輪だし。
この際ロープでもいいから、町に着いたら何か探そう。

[地図ってナビ付きなんだよね?]
「みたいです。」
[えーと、地図さんよ。ケールの町へ行きたいっす。]

どうなるかなー?

[目的地までのルートを表示します]

「喋りましたっ!?」
[…カーナビ?]
「で、ですかね……。似てますけど…」

[所要時間は、一般人の徒歩で1時間程です。]

[所要時間とか言い始めたよ…1時間かぁ。それよりは早く着きそうだね。]
「そうですか?私の足の遅さだと……」
[練習がてら、月之浮舟しようよ。]
「ぁあ!そうですね!そうしましょう!」

やれやれ。

……え、地図の端末浮いた……。着いてくるし。
四足歩行だと持てないから、ありがたいけど…

「ひいっ?!な、なんですか?!なんで浮くんですか?!」

とりあえず、詩音を宥めねば。

[詩音、たぶん俺が地図見るための機能だよ。]
「!な、なるほど。未來くんは擬人化しないと持てないから、ですか。」

かなり適当に理由こじつけたけど、落ち着いてくれたからいいや。

[んー……こっちか。現在地表記が三角形でよかった。]
「未來くん、少し走りますか?」
[後でね。最初はゆっくり行こう。月之浮舟もどんだけ飛ぶか解らないし。]
「わかりました。それでは……《月之浮舟》!」

フワフワと詩音が浮いた。
着地と同時に地面を軽く蹴り、ピョンッと跳ねる。
それなりの速度で上がり、ゆっくり降りてきた。
軽くでも、4メートル強は高さ出るっぽいな。

「ほっ!よっ!…凄いですよコレ!体が軽いです!」
[そかそかwあんま調子乗らないでね?]
「はい!じゃあ、軽く前進してみますね♪」
[うん。]
「せーのっ!」

詩音はピョーンッと前方へ飛び上がり、ゆっくりと

[あ]
「へ?…ぁあああ?!」

……ゆっくりと、木の枝の密集地帯に突っ込んだ。

[……ごめん、詩音。超絶ドジッ子のお前に、木々の生い茂る森で飛ぶとか無理だったな……。]
「ひぃいいい?!み、みみみ未來くん、助けてくださぁああい!!」

漫画の如く、枝に引っ掛かった詩音を降ろすため、また擬人化することになった。


─────────


「ご、ご迷惑をおかけします……。」
[いやいや。詩音軽いからなんも負担無いよ。]

結局、月之浮舟の本格的な練習は、開けた所に出るまでお預けとした。
現在、詩音は俺の背に乗っている。
詩音が小柄、かつ俺はそれなりにデカくてよかったよ。
これならリード要らないかな。

念のため、索敵しながら進んでいく。
嫌な気配は、ポツポツ点在しているみたいだ。

「なんか、アレみたいですね。私達くらいの子が、リアリティー溢れる人間サイズの蜘蛛を、剣一本で狩っていたゲーム。」
[蜘蛛……?]
「ほら、主人公がワンコになって、背中に小さい女の子乗せてたやつですよ。今の状態、似てません?」
[ああ、ゼ●伝のト●プリか。そういや、見せたことあったね。]

アレもリアルだったよなぁ……
三次元のモンスターは、アレ以上のクオリティなんだろう…ゴブリンとかでも怖いかもしれん。
っていうか、怖いだろうな。
何しろ自分のリアルライフ賭かってるんだし。
そこがゲームと決定的に違うよね。

……ん?詩音、ブツブツ何言って……

[ぐはっ?!]

い、痛い……っ!背中痛い!
なんだ?!濡れてるし冷たいし…水?!

「あっ!ご、ごごごごごめんなさい!魔法の練習すれば、魔力を籠める方法も解るかな~と……」
[それはいいよ、それはいい……でもさ、俺の上で水属性魔法練習すんのやめて?痛い。]

水かかっただけなのに、濡れた所がジンジンする。やっぱ火属性なんだね、俺。
俺のHPと魔防力でも痛いんだから、他の火属性モンスターはひとたまりもなさそう。
俺を消火しないで、頼むから。

「痛いんですか?!ええっと、どうすれば、そう、回復!《ヒール》!!」
[うー……ん、ジンジンするの消えた。]

ヒールは問題無く使えるのな。
でも、なんか寒い…体温が下がってるような気がする。
おなかも空いたなぁ。肉と炎くれー。

……炎?
今、とても自然に出てきたんだけど。
俺って炎食うの?マジ?
……属性吸収的な意味かな。

…そういえば、水は飲めるんだろうか……
飲み水でダメージ喰らったら洒落にならんぞ。

[…ん?]
「ど、どうしました?まだ痛いですか?」
[いや…なんか来てる。モンスターっぽい気配が一個。]
「えっ?!どどどどどこ?!どこです?!」
[上から来るぞ気を付けろー。]
「上?!」
[ごめん、冗談。右。]
「右?!」

気配的に、そんなヤバそうでもない。
初バトルになるかな?

お、出てきた。
……緑の小さい二足歩行な豚擬き?

『…………!!』
「っ……!!」
[ゴブリン、かな?……思ったよりはキモくないな。]

…意外と肌綺麗だな。ザラッザラしてんのかと思ってた。

『ギィイイイイイイイイイ?!』
「ぎゃぁああああああああ?!」
[うぉっ?!]

み、耳が!耳が死ぬっ!!
なんなの、どしたのこの子達?!
急にお互い叫んで何してんの?!
俺の鼓膜破れるから、やめてー!
しおりを挟む
感想 497

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。 戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。 で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

貴様とは婚約破棄だ!え、出来ない?(仮)

胸の轟
ファンタジー
顔だけ王子が婚約破棄しようとして失敗する話 注)シリアス

処理中です...