ビビりとモフモフの異世界道中

とある村人

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オマケ集

五日目の昼・リア獣追跡隊

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※需要がありそうなので、詩音達にモフモフ2体のデートをストーキングしてもらいました(笑)



寄り添いながら、のんびりと大通りを歩く、大きめのモフモフが2体。
フカフカな狼の尻尾は、緩やかに揺れています。
猫の長くしなやかな尻尾は、そんな狼の尻尾に優しく巻き付いています。

「フフフフフフフ……♪」
「シオンちゃん、その魔導具凄いわねぇ~。」
「家宝ですからね。後で、ディアドルフさんに、良い場面を念写してもらいましょう♪」
「ええ♪」

現在、私はスマホ片手に、親友の前世含めての初デートを尾行中です。
未來くんなら、ダンボールを欲しがるところですが…残念ながら存在しないので、隠密と認識阻害で隠れています。
元ネタはメタル●アらしいですが、私はスマ●ラしか知りません。

スマホは、あまり人に見せてはいけない物ですが…レナさんと、ラルフさんに、ディアドルフさんなら良いでしょう。
こんな可愛い光景、撮らないという選択肢はありませんからね!

「……ミライにバレたら、全員殴られるな。」
「とか言いつつ、付き合ってくれる辺り、アンタも気になるんでしょ?」
「ヒナタがシオンと離れたがらないから、仕方なく着いて来てるんだ。」

あまりノリ気ではないラルフさんには、陽向くんを預けることで、半ば強引に着いてきていただきました。
いざという未來くんにバレた時、居ると居ないでは、逃走成功率が大幅に変わりますのでね。
あ、勿論人身御供にはしませんよ?
皆で、どうにか2体共眠らせるために、頑張るつもりです。
……その場合厄介なのは、未來くんより小梅ちゃんだったりしますが。

『総長さん、どこ行きたいですか?』
『んー、屋台が見たいかなぁ。美味しそうなのあったら、レシピ覚えたい。』
『屋台、いいですね!』
『あと、小梅のオススメの場所あったら、行きたいなぁ~。』
『了解なのです。先に屋台行って、それから案内するです♪』
『やった、楽しみ♪』

あ、未來くん…小梅ちゃんの首を、甘噛みしてますね。
たぶん無意識でしょう。
決定的瞬間をカメラに収めましたよ…フフフ♪

「こちら詩音。目標は、屋台へ向かうようです。」
「こちらレナ。お金とか、どうやって渡す気かしら?これは見届けるしかないわね~♪」
「…ヒナタ、本当はこんなことダメだからな……。人の恋路は、そっとして置くのが一番だ。」
『こーじ?』

お金ですか…確かに、渡すのどうするんでしょうか?
たぶん、デート中は擬人化しませんよね。
口でいくしか無いでしょうが……。

『いい匂いするです♪』
『小梅は、何食べたい?』
『うーん…あ!あのお肉、パンに挟んでるのです!美味しそうです!』
『サンドイッチか。よし、買おう!半分こする?1個ずつ?』
『半分こ、したいです♪』

「どうやら、サンドイッチを購入する模様ですね。」
「さんどいっちって?」
「何だそれは。」
「あ、パンに色んな具材を挟んだ料理の、総称です。」

この世界に、サンドイッチ伯爵は存在しないようですね。
ラノベでは、存在していた設定のものも、あったりしますが…。

『小梅、硬貨数えることできる?』
『できるです!』
『んじゃ、俺が言った通りに、硬貨出してね。』
『お任せなのです♪』

「小梅ちゃんが、ウェストポーチから、硬貨を出す作戦でいくみたいですよ。」
「え、コウメちゃん、お金の数え方解るの?」
「かなり賢いな…。」
『コウメおねーちゃん、かしこいの!』

春眠暁を覚えずの訳も、大体できてましたし…
小梅ちゃん、もしかすると、既に未來くんより賢い可能性が…。

[おじさん、1個くださーい。]
「お、例の獣人くんか?まいどあり!1個で250Gだ。」
『小梅、銀貨1個出して。』
『えっと…コレですね!』

小梅ちゃんは、ウェストポーチのチャックを口で開け、銀貨を咥えて取り出しました。
それを砂に乗せて、おじさんへ渡しています。

「わ、本当にコウメちゃんが、お金渡してる!」
『おねーちゃん、すごーい!』
「賢い上に、可愛い映像いただきました!」
「器用だな。」

「おお、賢いなぁ。砂も便利なもんだな。ほれ、お釣りの750Gだ。」

お釣りを砂に乗せてもらった小梅ちゃんは、前肢で1枚ずつ数え始めました。
ああ、可愛いです……!

『小梅、お金の金額は解るの?』
『解るです!銅貨が…7個なのです。1個で100Gですので、700Gです。あと、鉄貨が5個ですから…1個10Gで、50Gですね。700Gと50Gで、ピッタリです♪』
『スゲwお前本当に賢いなぁ~♪』

未來くんが少し伸び上がり、右前肢で小梅ちゃんの頭を撫でました。
更に、毛並みを整えるように、舐めてあげてます。
また無意識でしょうね。
何なんですか、私を萌え死にさせる気ですか?

『ふふ~♪お釣り、カバンに戻すです♪』
『ありがとー。』
「お釣り数えてたのかい?解るのかねぇw」
[数えるどころか、金額計算してたっすよ。]
「はっはっはっwそーかそーかw偉いなぁ猫ちゃんw」

おじさん、信じてませんね?
本当に計算してますよ、小梅ちゃん。
オークのサンドイッチは、おじさんが鉋屑かんなくずのようなもので包み、ポーチに入れてくれました。

「やはり、まだ紙は高いのでしょうね。鉋屑で包むとは、その発想はありませんでした。」
『かんなくずって、なぁに?』
「とっても薄い、木屑のことですよ。私達の故郷では、鉋という木材を薄く削る道具があるんです。」
「へぇ、そんな道具あるんだ。私達は、アレを木紙もくしって呼んでるわよ。」
「この辺りでは、風属性魔法で木を乾燥させて切り揃えている。加工が比較的容易で安価だから、羊皮紙と違って、ああいう使い方もできるんだ。」
「成る程、勉強になります。」

木紙なら、私も作れるかもしれませんね。
おにぎりやサンドイッチを、小分けにするのに便利そうです。

『他に気になるのある?』
『えーと…』
「ねえ、見て!にゃんことわんこが買い物してる!」
「マジだw犬の方、噂の獣人くんじゃね?」
「あの~、ちょっと撫でてもいいですか?」
[はい?俺?]
「猫ちゃんと、両方!」
『むぅ、お姉さんは、総長さん撫でたらダメです!』
[あー、ゴメン。彼女的に、俺が女性に撫でられるのは無しらしい。]
「え、何それヤキモチ?!猫ちゃん可愛い~♪」
『ふにゃにゃ……あ、男の人なら、総長さん撫でていいですよ。』
[お兄さんは、いいらしいっす。]
「お、やりぃ♪」
「あー!おっきいネコだ~!」
「あら本当。撫でさせてもらう?」
「うん!」

あらら、人が集まって来ましたね…。
カメラに収め続けるのも、一苦労です。

「ドローンが欲しいですね……スマホにフロートを…いえ、やめておきましょう。」
「そうね、見付かったら騒ぎになるわ。」
「おじさん、1つくれ。コイツのためにキャベツ多目で。」
「おう、ラルフ坊っちゃん!まいどあり!」
『キャベツ♪キャベツー♪』
「何してるの、ラルフ?」
「ヒナタが、食べたそうだった。」

…そういえば、お腹空いてきましたね。
後で何か買いましょう。

『総長さん、アレは何ですか?美味しそうです!』
『…コカトリスのチーズ焼き……だと?!レシピ取得せねば!主にチーズの!』

「次は、コカトリスのチーズ焼きを、買うみたいです。」
「チーズ入荷したんだ!アレ美味しいのよね~♪」
「ヒナタは、チーズ食べるのか?」
『ちーず?おいしいの?』
「…何言ってるかは解らんが、チーズを知らないってことは、何となく解った。」

チーズですか…未來くんの料理の幅が広がりますね♪
グラタンとか、チーズオムレツとか作ってくれたら、嬉しいです。

「串から外してもらってますね。」
「器咥えて歩いてる!可愛い~♪」
「あっちは、教会だな。」
『どこいくのー?』

教会の方は、人が少し少ないですね。
物陰に隠れましょう。

「いい感じに、植え込みがありましたね。」
「ここならバッチリ見えるわね♪」
「…どこまで追う気だ?」
「「気が済むまで♪」です♪」
「…………。」
『おっきいおうちー。』
「アレは教会ですよ、陽向くん。」
『きょーかい!おぼえたー!』

未來くんは、教会の前を箒で掃いている、シスターらしき方とお話しているようです。
たぶん、この辺りで食べていいか、お尋ねしているのでしょう。

「木陰に移りましたね。」
「あそこ、お昼寝にも良さそうね。」
『このはっぱ、たべていい?』
「こ、こらヒナタ!植え込みを食べるんじゃない!」
『ダメ?』
「あらら、お腹空いてるのかしら?シオンちゃん、何かある?」
「陽向くん、フワリの葉ですよ~。」
『わぁーい♪』

さっきのキャベツでは、足りなかったみたいですね。
私達も、何か食べたい所ですが……

『いただきま~す♪』
『いただきますです♪』

小梅ちゃんは、サンドイッチを端から食べ始めました。
未來くんは、まずチーズのみを食べています。
チーズのレシピを取得するためでしょうね。

「…美味しそうですね。チーズ焼き、食べたくなってきました。」
「ラルフ、興味無いなら買ってきてよ。ヒナタくんは、私が抱っこするから。」
「お前らな……。」
「…差し入れ。」
「あら、ありがt…………?!」
『こんにちはー!』
「?!な、何者…?!」
「ど、どどどどどどなたですかっ?!」

く、黒い髪に…白目の部分が黒くて瞳の紅い、見知らぬお兄さんが……!
音も気配も無く…後ろに…!!
も、もしやゆゆゆゆ幽…霊……?!

「ジークレスト。ヴァールフラン家四男。……要らないか?コカトリスのチーズ焼き…旨そうだから、お前らのも買ったんだが。」
「「「……いただきます。」」」

……ヴァールフラン家の方でしたか…。
それなら、この神出鬼没ぶりも頷けます。

「…脅かした詫びだ。やる。」
『なぁに?』
「はい?…コレは……ミライくんがコウメちゃんに、甘噛みしてる場面の念写じゃないの!こんなに近くで…?!」
「え、このアングル…下から撮ってますよね?」
「……撮った方法は秘密だ。標的が動くぞ。」
「!!子供が…?あ、孤児院の方へ行くみたいですね。」
「俺はミライの子守り中なんだ…。また後でな、シオン…。」

………え、影に吸い込まれるように……

「……ラルフさん、陽向くんください。」
「…ほら。」
『しおにーちゃん?どしたの?』
「あの人は幽霊じゃない幽霊じゃない幽霊じゃない…………」
「し、シオンちゃんしっかり!生きてるから!あの人、生きてるからね!」

───────

わ、私としたことが!
モフモフの追跡中に、5分も時間を無駄にしてしまうなんて!

「うぅ…この作業を、最初から見たかったです…!」
「大丈夫よ、シオンちゃん!一番可愛い場面は逃してないわ!」

孤児院の庭にて、小梅ちゃんが滑り台と砂場、ソリを作ったようです。
今は未來くんが実際に遊んで、最後の調整をしていますね。
滑り台は伏せの状態で頭から滑り、砂場を豪快に掘り返し、小梅ちゃんが乗ったソリを引きながら歩き回ります。
可愛すぎです。どれで遊んでも可愛いなんて、モフモフは狡い正義ですね。
滑り台に登る度、四足で階段を上がる後ろ姿を見られるのがまた……!
揺れる尻尾が最高ですっ!

因みに、私達の現在地は、教会の2階の廊下です。
ラルフさんが、シスターと神父様から、許可をもぎ取ってくださいました。

「ラルフが一緒で良かったわ~♪」
「すみません、こんな所で威光を振りかざしていただいて……。」
「いや、威光と言うか…たまに自分の稼ぎを寄進をしているというだけで……。」
『たかーい♪』

『んー、階段もうちょい、1段を低くしない?ちっちゃい子多いし。』
『解ったです。んむむ…コレくらいでどうですか?』
『よっ…うん、いい感じ!完成~♪』

未來くんに促されて、子供達がワッと駆け出しました。
モフモフも可愛いですが、子供も可愛いですね♪

───────

その後、暫く子供達と遊んでいらした未來くん達ですが…途中で未來くんが建物の影に入ってしまいました。
それからすぐ、何やら騒がしく成り、小梅ちゃんも建物の影へ。
2体共、カメラの撮影範囲から出てしまったので、今日はコレくらいにしておきましょう。

「今日は大収穫ですね!」
「ねえ、その魔導具って、今日撮ったの以外も入ってるのよね?見せてもらっていい?」
「勿論です♪ラルフさんも、ご一緒にどうぞ♪」
「……そうだな。ここまで来たら…見る。」
『なになに?ボクもみるー♪』

こうして、私のモフモフコレクション観賞会を開催することになりました。
私達は、未來くん達が教会へ入ってきたことさえ、気付けませんでした。
集中し過ぎですね。反省です。

「コレはベッドで寝てる所です。此方は小梅ちゃんを背中に乗せて、軽く走ってる所ですね。」
「可愛い~!いいなぁ、私もその魔導具欲しい。」
「…モフりたくなってきた。ヒナタ、軽く揉んでもいいか?」
『いいよ~。』
「…頷いたな?よし。」

懺悔室から出てきた未來くんが、教会の中に興味を持って、2階へと上がってくるまで、観賞会は続くのでした。
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