無償の愛

ななおか。

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異世界なんかより、無償の愛をください

伝わらないもどかしさ

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思ったことを正直に伝えると、彼は急激に顔を赤く染めた。

いや、顔だけじゃない、耳の先まで真っ赤だ。

「なっ!な、なななななな何を言ってるんですかっ!?」

明らかに動揺している。

何だかかわいらしい。

俺はそんなラルゴくんを眺めつつ、色とりどりに盛り付けられたサラダに手をつけ始めた。

「そっかー…やっぱり一目惚れなのかな?」

そう訊くと、ラルゴくんは少し考え込んだ。

「そうですね…あんなに美しいひとは見たことありませんし、とてもお優しいですし…って!僕は白騎士様のこと、そういう風に好きじゃありません!」

ラルゴくん、自爆してるよ。

そう言いたかったけどやめておいた。

彼は照れ隠しのように何回も弁明しているが、もはや言い訳にしか聞こえないし、最初に暴露しちゃってるし…。

…ラルゴくんは嘘がつけないんだな。

そこまでに、隠せないほどにアルフォンスさんを愛している。

俺はなんだか居たたまれなくて目を伏せた。

「ほっ、ほら!このお魚獲れたてなんですよ!食べてみてください!っあ、これ!すごく美味しいです!」

誤魔化そうと必死なラルゴくんが無理やり口に詰め込もうとしている1匹の魚は、よく見ると、まだピチピチと動いている。

「ギャーッ!!」

俺は大きく悲鳴をあげると、すぐさまベッドに逃げ込んだ。

俺が現在いる部屋の4/14ぶんの1程度がベッドで占領されているが、ベッドのすぐそばにちゃぶ台みたいな机?で食事をしていたのですぐにベッドに逃げ込むことかできたのだ。

よく考えるとこの部屋はとてつもなく大きい。

このベッドは俺が3回くらい寝返りしても、全然大きさに余裕があるくらい大きいのに、部屋にはまだ、これがあと3つくらい入ってしまいそうなのだ。

そういえば、ここに来てから1日目には、混乱しすぎて考えてもみなかったが、風呂に入っていないし、そもそも風呂はこの世界ワンダーランドに存在するのだろうか。

軽く現実逃避していると、皿の上でピチピチと跳ねる、何匹もの小さな魚と目が合った。

死んだような目に身がすくむ思いがする。

俺は小さい頃から魚が苦手だ。

食べるぶんには問題ないのだが、生きているものを見ると吐き気がしてしまう。

ラルゴくんの方に目を向けると、話題がそれたと安心している一方で、俺に心配しているようだった。

「俺が小さい頃から生きてる魚が苦手でさ。心配させてごめん。」

笑って見せると、ラルゴくんは跳ねていた小さな魚何匹かを、一気に口の中に入れた。

そして俺の方に綺麗に熟れたトマトを差し出した。

「これだったら、大丈夫ですかね?」

彼のささやかな優しさに、俺は笑って頷いた。



にぎやかな夕食を食べ終わると、ラルゴくんが片付けてこの部屋を去ろうとしたので、俺は引き留めた。

「ここって、お風呂ないの?」

と訊くと、ラルゴくんは首をかしげた。

「オ、フロ?」

考え込んでしまったラルゴくんに、俺は詳しく説明を試みた。


1回目。

「浴槽の中に、お湯が___「ヨクソウって何ですか?」…えーっと…___。」

2回目。

「お湯を蛇口から出して___「ジャグチ?」…蛇口っていうのは___。」

3回目。

「お湯を貯めるためには、一般家庭だとチェーンがついた栓をして___「ちぇーん?」…チェーンは金属でできてて___。」

…4回目。

「よくホテルとかにもついてて___「ほてる?」っホテルっているのは宿屋のことで___。」




俺は諦めたくなった。

だって話が全く通じないから。

紙をもらって絵を描いたら、それは何?と言われた。

…もうなんか疲れてきた。

俺はがっくりと肩を落とし、ふかふかベッドの中に潜り込んだ。
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