無償の愛

ななおか。

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異世界なんかより、無償の愛をください

悲嘆と出会い

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俺と水無月愛は幼馴染みで、昔から家族ぐるみで仲が良かった。

俺たちが惹かれあうのも時間の問題と言ってもいいほど、俺たちはずっと一緒にいた。

幼い頃から愛はリーダーシップがとれていて、人気者で、面白くてモテてた。

気分屋なところだって、可愛かった。

俺には、そんなにいいところなんてなかったし、大して目立ってもいなかった。

でも、俺は幸せだった。

愛と一緒にいるだけで楽しかった、嬉しかった。

沢山の愛の言葉は、手紙となり、俺の心のなかに残り、楽しませてくれていたはずだった、先程まで。

どれだけ嬉しかった思い出も、俺には苦にしかならない。

心が半分以上抉られて、いまだに削られてるみたいな、そんな感覚に苛まれる。

「愛してるって、そう言ってくれたじゃないか…。…嘘つき」

逃げるみたいにそう言ってみても、逆に辛いだけ。

涙は止まらなかった。

愛が出ていってから、妙に部屋の中が寒い。

さっきまで暑くて、クーラーを入れていたくらいなのに。

クーラーを消した。

愛の声が頭の中で反響して気持ちが悪い。




ふと、家のチャイムが鳴った。

もしかしたら愛かもしれない!と、少しだけ心を弾ませて扉を開けた。

…宅配便の人だった。

「お届け物でーす!」

明るい声が心の傷に滲みる。 

そうだった、ピザを頼んでいたんだった。

愛と、一緒に食べようと思って…。

そう考えたら、何だか虚しくなった。

涙が止まらなくなって、玄関先でみっともなく声を上げて泣いた。

ピザ屋の人は困っていたけど、そんなことは全く気にすることなく、幼子のように泣いた。

ピザ屋の人は、少しだけ眉毛を下げて、お代いいですから、これ食べて落ち着いてください。と、すべてを察してくれたようだった。

「俺、シュンって言います。」

ピザを一人で食べるのも落ち着かないので、ピザ屋の人を家に上げた。

二人で食べているとき、突然、ピザ屋の人が自己紹介をし始めた。

「貴方は?」

ふと、これは個人情報の流失ではないかと思った。

この人は、不審者ではないか?

そう考えると、頭が回らなくなって、そのまま固まってしまった。

それを察したのか、シュンさんはたははと笑った。

「あー、俺、不審者とかじゃないんで、大丈夫ですよ?自分の住所ここで言ってもいいですよ?」

信じきれなかったが、もはや俺には失うものもないので、どうでもいいか、と考え直した。

「俺は、棗谷。棗谷平生」
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