上 下
8 / 9

七、イザナミ

しおりを挟む
 悠はしばらく口が利けなかった。途中からはあとからあとから勝手に溢れ出てくるみずからの記憶の波にもてあそばれるようで、日照雨の話を聞くどころではなかった。手が震え、何から考えたらよいのかも分からない。呪いの記憶――見れば、確かに記憶通りに薄赤く、金の斑が光る細長い姿をしているではないか。

 なぜ、こんな大きなことを忘れていられたのだろう? なぜ、真珠のことを――。

 「おまえたち・・の呪いは、おまえが考えたとおり、情の塊であろうということになった。……恐らく、イザナミが関わっているだろう、と」

 日照雨は悠に構わず話を続けた。

 「早鷹はもう一度イザナミを呼び、情について聞き、おまえたちから抜いてもらおうとしたが、それは叶わなかった。イザナミは〈すべてのもの〉からも抜け出し、閉じこもってしまって――代わりに、わたしがこうして魂送りをすることになった。おまえは目を覚まさないまま疾風の迎えで常世国を去り、情の器になれるよう、千尋という人の子の名が与えられた。それに幸星があることでおまえは人に近くなり、力の使い方も忘れてしまっていたというわけだ。真珠は──」

 日照雨はそこでほんのわずかに言葉を切った。

 「──おまえと同じように、真珠もあれから、ずっと呪いを抱いたままでいた。別の里にいるある神が訪ねてきたとき、あの子に新しく名を与えた」
 「……蓮」
 「そうだ。そのひとは、常世を出ていたときのことを覚えていてね。最後に生きていた国では、黒い泥から咲き出でても白く清らかだといって、蓮の花がたいそう好まれていたそうだ。呪いが去り、神に戻れる日まで無事に、いつかそのことを糧にできるようにと、あの子は蓮と呼ばれるようになった」

 悠は何も言うことができなかった。なぜもっと、みずからの心を信じられなかったのだろう。なぜ、蓮に対する気持ちを疑ってしまったのだろう? わたしは、こんなにも──。

 だが、悠にはもっと気がかりなことがあった。

 「なぜ真珠も呪いを持っていたのですか? 」

 声が震えるのが分かった……悠の記憶には、真珠が呪いを受けるところはなかった。真珠にとっては、魂が勝手に浄化を起こすくらいに苦しみをもたらすはずの呪いだ。

 そんなものを、なぜ真珠が?

 日照雨は黙って悠を見つめ返した。だから、悠が口を開かないわけにはいかなかった。

 「まさか、真珠が……わたしの呪いを自分に……」
 「早鷹が止める間もなかったそうだよ。半分だ。あの子は間に合った――おまえの呪いを半分引き受けたとき、あの子の髪は真っ黒になった。光を照り返さないくらいに」

 日照雨は眉を下げた。悠を慰めているようにも、真珠を思いやっているようにも見えた。

 「もし真珠がふたつに分けていなければ、いくらおまえでも収めておけなかったかもしれないね。二度と神には戻れなかっただろう」

 悠が黙っているので、日照雨は続けた。

 「呪いはひとつに戻ろうとした。おまえと真珠を近くに寝かせておいたら、おまえたちの力を使ってずいぶん暴れたよ。おまえたちも危ないし、イザナミはふさぎ込んでしまったし、おまえのことは人として生かすために豊葦原へ戻さねばならなかった。わたしたちは、ふさわしいときにおまえが森に戻ってくるよう定めた。そのときが来たら、呪いをひとつに戻し、祓うことができるように。おまえたちふたりが、また出会えるようにと。そのときまでは、待たなければなかなかった」
 「定めた? 」
 「ああ、言霊の力を使ってそう決めた。何も、案じてはいなかった――おまえと真珠が同じ呪いを抱いているかぎり、何が起きてもおまえたちの絆が切れることはないから。ただ、それがいつで、どのように果たされるかということは、わたしたちですらすべてを知ることはない――さだめを動かすのは、目に見えぬものではなくわたしたちだからだ。そして、おまえは常世国へ戻ってきた」

 悠は顔を伏せた。わたしたちふたりがまた出会えるようにという言霊があったならば、わたしが真珠を傷つけたことに何の意味があるというんだ。

 「おまえと真珠が今どんな関わりの中にいるにせよ」

 日照雨がすべてを見通しているという口ぶりで言った。

 「おまえが真珠を傷つけるのではないし、真珠がおまえを傷つけるのでもない。源から分かれ出たわたしたちは、鏡を見るように互いに向き合っている……真珠と目を見交わしてみるがいい」
 「真珠も、〈すべてのもの〉にいるのですね」
 「真珠と呼べるかは分からないがな。真珠は還りきってしまったから、早くこちらから呼ばねば新しく生まれてしまうかもしれんぞ」

 情の蛇が、そわそわと動いた。日照雨は蛇を眺めた。

 「ふうん。おまえは、まだ還れないのだね。おまえは主が解放してくれない限り、凝り固まっているしかないのか」
 「ともに行こう」

 悠は蛇を招いた。蛇は嬉しそうに悠にすり寄ったが、もう悠に依りつこうとはしなかった。日照雨はおもしろそうにそれを見守った。

 「イザナミは手強いぞ。今になってたやすく受け取るか分からん」
 「しかし、イザナミさまもお分かりのはずです――どのような情でも、恐れることはないのだと」

 悠は〈悠〉を保つのをやめ、みずから〈すべてのもの〉に還った。自分をほどいてしまっても、〈悠〉がいなくなることはない。

 還っては、また新たに生まれるときを待つものたちを創る、無数の力の流れ。その中から〈真珠〉だったものを探す。

 真珠、と呼ぶと、その名の響きが〈すべてのもの〉の中に新たな力を起こし、〈真珠〉が創られようとしているのが分かった。悠は〈腕〉を広げて抱擁した――悠は再び〈すべてのもの〉の中に現れ、真珠がその腕の中にいた。赤い蛇も、すぐそばに現れた。もといたところ――〈すべてのもの〉の中に場所の区別があるとしたらだが――からは離れてしまっていて、日照雨の姿はなかった。

 はじめに、形が。次に、顔が。爪ができ、頬に赤味が差す。最後に、長い髪に艶が流れ、目の覚めるようなさみどり色が現れた。真珠は目を開いて悠を見上げた。
 
 「……真珠。そなた、真珠だね」

 真珠は頷いた。現れたばかりのその姿はまだ頼りなく、ほのかで、淡いようだった。真珠が〈すべてのもの〉に戻ってしまうよりも早く、悠はみずからの力を真珠に分け与えた──わずかに温められたひと筋の息吹が、神の霊力を唇から唇へ伝えた。

 「よかった」

 真珠が呟いた。ふたりともが、〈すべてのもの〉の中にいるからだろうか。これほど言葉少なにいたことはなかったし、これほど多くのものを互いに伝え合えたこともまたなかった。

 悠は真珠に赤い蛇を見せた。真珠は不思議そうに、自分の胸の辺りをさすった。

 「そう、もうここにいないんだね」
 「真珠も、誰かの記憶を見た? 」

 悠が尋ねると、真珠はふと切なげな顔をした。

 「見たよ……イザナミさまの。火傷をして〈すべてのもの〉に還ったとき、イザナミさまはすぐにイザナギさまのところへ戻ろうとしていたの――だけど、それはできなくて……」
 「わたしは、恐らくイザナギさまの……悲しいことばかりではなかったが、わたしが見ていた記憶は、泣くところで終わるんだ……」

 赤い蛇は、辛そうに縮こまった。悠は右手に蛇を乗せ、左手で真珠の手を取った。

 「行こう。イザナミさまにお会いしに……この蛇は、イザナミさまにお返ししなければ。どこにいらっしゃるかは分からないが、ここからであれば望んだ場所へ導かれるだろう」

 ふたりは〈すべてのもの〉を出た――何か優しい力が背を押してくれたような感覚があった。

 悠はとても大きな柔らかなものから自分たちが少しずつ小さく切り離され、ひとつの形を作るのを感じた。地面のようなものに足を触れ、みずからに重みがあるのを感じる。

 寒くはなかったが、薄青く、冷たい色の木立ちが両脇に並び、仄暗い靄が立ちこめている。常世国の中でも、よく知っているはずの場所だ――六花樹が影となってそびえ、泉の水面に銀の綾が煌めいている。しかし、森には何の気配もなく、物音ひとつしない。

 「ここ……」

 真珠が辺りを見回した。土に触れ、手に掬い上げてこぼすと、土は細かな氷が混ざっているかのように、冷たくきらきらと輝いた。

 「わたしが創った森じゃない――似ているけど、違う……」
 「イザナミさまが、新しく創られたのかもしれないな。真珠の森とは別の……わたしたちの里とは、違う場所なんだ」

 蛇が下ろしてくれとせがむので、悠はそのとおりにした。蛇はのろのろと地面を這った。

 「ははよ」

 悠と真珠が見守っていると、蛇は六花樹へひたむきに向かっていくようだった。もしや? ふたりはあとを追っていき、蛇の後ろから六花樹の洞を覗きこんだ。悠は一度、本当の六花樹の洞から誰かの気配を感じたことを思い出した。あのときは、誰の姿もなかったが……。

 洞には、女神がひとりうつむいていた。かつての魂送りのときに現れたような、姿のない気配ではない。髪のひとすじひとすじの艶までが、はっきり見て取れた。

 「イザナミさま」

 真珠がそっと声をかけた。イザナミはためらいがちに、ゆっくりと顔を上げてふたりを見た。美しい顔だった。

 イザナミは赤い蛇に気がつき、わずかに目元をこわばらせたが、身を引いたりはしなかった。代わりに、また目を伏せてしまった。

 「あなたがたは、輝若彦と真珠姫ですね」

 細い声だった。悠たちに話しているのに、どこまでも内に向かって閉じているようなその声音は寂しかった。

 「あなたがたが何のためにここへ来たのかは、分かっていますよ。あのとき、この蛇を森で見たときから、いずれこうなると思っていました。……このままではいられないことも、分かっています。あなたがたが創った森も、わたしのせいでこんなに冷ややかになってしまいました」
 「イザナミさま。この蛇は、いったい……」

 悠は問いかけた。イザナミは悠を、次に真珠をじっと見つめ、ようやく問いに答えた。

 「これはもともと、わたくしが夫に織った帯なのです」

 イザナミはひと呼吸の間を置いた。

 「あの方が常世国へ戻ったわたくしを訪ね、去り、〈豊葦原〉ができたあと、川の清水で禊ぎをなさったとき、身に着けていらしたものを投げ捨てるたびに神が生まれました。帯からも、また神が生まれました。そのとき、ともに生まれたのがこの子です。――けれども、この子は神ではない。あなたがたの考えたとおり、帯にこもったわたくしの情と記憶の塊です」

 ひとたび口を開くと、イザナミはもはやためらわなかった。よもやこんな子が生まれようとはと、イザナミは悔やむように言った。

 「この子には、〈われ〉がないのです。生まれたそのときから、この子は自分では誰とも知らぬ〈誰か〉を一心に求めてきた――イザナギさまがわたくしを求め、わたくしがイザナギさまを求めたように。ですが、豊葦原にも常世国にも、この子にはいるところがなかった。どこへ行き、何のために誰を求めているのかも分からないまま、この子はさまよったのだと思います。どこであれ、主なく、情だけが生まれることなどありませんから」

 あなたとは似ているけれども真逆ですねと、イザナミが悠に言った。

 「あなたは、〈すべてのもの〉のかけらとして生まれてきた。あなたの父と母の子であり、いにしえの、ひとり神のようでもある。何もかもを持ち、また何も持たず、どこにでもあることができた。どちらのものでもあり、どちらのものでもないという一点でこの子はあなたに惹かれ、あなたに縋ろうとしたのです。そして、開かれた世でこの子を見出すことができたのは、あなただけだった」

 悠は尋ねた。

 「イザナミさまは、この蛇をどうお思いですか」
 「わたくしの情であるからには、わたくしが産んだものに違いはない。イザナギさまにお渡ししたものではあったけれど……イザナギさまの目には、この子が見えなかったようです。だって、帯を投げてしまわれたくらいですものね。そしてわたくしは、この子が恐ろしかった」

 イザナミの声が翳ると、ため息のようなゆるい風が悠と真珠に吹いた。蛇が気遣わしげに頭を持ち上げた。

 「初めてこの子という存在があることを知ったのは、あなたと真珠の前にこの子が現れたあのとき……本当なら、わたくしがこの子を鎮め、引き受けるべきだったのです。そうしなければ、この子はさまよっているしかないのですから。しかし、わたくしを裏切り、逃げ出したあの方を追ったときのことを、今さら思い出したくなどなかった。あの方を恨み、憎しみ、嘆いたわたくしの情は……この子は、本当におぞましかった。みずからのもっとも見たくないところを突きつけられているような心地がしたのです。……豊葦原では、みずからの情に捉われた神のことを神崩れというでしょう。神崩れのはじまりこそは、わたくしたち――恐れに捉われ、生と死などというものを創ってしまったわたくしたちを、豊葦原に閉じ込められた子どもたちが罵ったのです」

 悠と真珠はイザナミの告白を黙って聞いていた。

 常世国へ戻り、〈すべてのもの〉に還って、もはや豊葦原で抱いたような恐れなど何もないと思っていたのに。イザナミの目の前に、かつての記憶を持つ蛇が現れた――イザナミは、ただ森に引きこもったのではない。辛い記憶を拒み、みずから心を縛ってしまったイザナミは、〈すべてのもの〉に留まっているのにふさわしくなかったのだ。
身を引くようにしてイザナミは去り、みずからを凍てついた森の中へ封じることになった――。

 「おぞましいも美しいもなく、わたくしはわたくしの情を受け入れればよかったのです。この子が含まれてこそのわたくしの心なのだと、思い出せばよかった。そして、みずからが苦しまずにすむ想いだけを、胸にいだけばよかった。けれどわたくしはこの子を拒絶し、この子を助けようとしたあなたがたから目を背けたのです」

 イザナミはうっすらとしたほほえみを浮かべた。

 「――わたくしたちは、かつてはあなたがたのようでした。互いを慈しみ、ともに美しい世界を創っていたのです」

 それが、なぜ憎しみによって分かたれることになってしまったのか。誰も望んでいない。誰にも咎はないのに――。

 「イザナミさま。……その帯が持っていたのは、あなたの情だけではありません」

 悠の言葉に、イザナミはほほえみを消した。なんですって、と呟いた唇は震えていた。悠は真珠と顔を見合わせ、続けた。

 「わたしたちは、異なるひとの情を抱いていました。イザナミさまの情は、真珠が。わたしは、イザナギさまの情を……」

 イザナミはしばらく途方に暮れたように蛇を眺めていたが、やがて悠に目を戻した。

 「あの方が、わたくしを見てどう思ったか、分かりましたか。あの方がわたくしから逃げ出したとき、わたくしに別れを告げたとき、あの方がどう思っていらしたのか……」

 悠が頷くと、イザナミは蛇に伸ばしかけていた手を止めてしまった。

 イザナミさま、と悠は臆せず声をかけた。

 「どうか、ごらんになってください。イザナギさまがただ恐れに捉われたのだと、たやすく別れを告げられたのだと、お思いにならないでください……」

 悠と真珠は、ともにぬかづいた。イザナミはしばらくふたりを見つめていた。

 「よく分かりました。ふたりとも顔をお上げなさい」

 イザナミは靄に覆われた白い森を眺めた。

 「ここは、わたくしの心。この森に光が射したことは一度もない。――この子を連れてきてくれて、ありがとう。わたくしは、この子を受け入れます」

 イザナミが差し出した白い手に、蛇はおずおずとすり寄った。イザナミは蛇を胸の中に収め、しばらく目を閉じていたが、はっと目を見開いた。霞がかかったようだったその目から、涙があふれた。

 「あの方は、わたくしをおぞましいとおっしゃったのです……わたくしは、腐ってなどいないのに。あの方の目には、そう見えるようになってしまった。こちらから呼びかけても、何もおっしゃらなかった。……それなのに、本当は……」

 あの方も、傷ついていたのですね。イザナミは呟き、みずからを抱きしめた。

 「そうです……わたくしは、あの方といくつも、本当に美しいものを創ったのです。そんなことも、忘れてしまっていた……」

 森の風景が端から鱗のようにはがれ、煌めきながら飛び去っていく――〈すべてのもの〉に還っていく。悠と真珠は、落ちているとも、上っているとも分からない中へふたりで投げ出された。

 「イザナミさまは――? 」

 真珠が言った。動いているとも止まっているとも分からないただなかへ突然戻り、ともすると大きな力に押し流されそうになる。

 「あの洞を出られたんだ」

 悠は真珠が離れていかないように引き寄せた。〈すべてのもの〉を感じる。ふたりは途方もなく自由だった。飛ぶように、泳ぐように、滑るように、自由だった。快活だった。安らかだった。

 そのとき、イザナミの姿がすぐかたわらに現れた。寒々とした森に塞ぎこんでいたとは思えないほどの、大きな、気高い姿。

 イザナミは胸から赤く細長いものを取り出した。それはもう、形の定まらない蛇に似たものではない――美しい龍だ。火の粉を飾りつけたような背の鱗が輝く。

 「我が子よ。おまえにわたしの心を託します。あの方のもとへ行き、伝えておくれ」

 生まれたばかりの龍は嬉しそうに高くひと声鳴き、悠と真珠の周りを飛んでから、〈すべてのもの〉を出ていった。

 「あの子には、豊葦原へ行ってもらいました」

 イザナミは晴れやかに言った。

 「わたくしも、〈すべてのもの〉へ戻ります。あなたがたも、もうお戻りなさい」
 ……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

オッドアイ

本城 智咲
恋愛
両目で色が違うオッドアイが 世界中にいる その中でも異能を持つオッドアイ 能力者がいた。彼らは 周りの人達から最悪の災いの素と 称され、軽蔑、差別されている オッドアイ能力者にとってこの生きづらい世界をどう生きるか。 主人公達による決断が今始まる。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...