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英雄は死なない
しおりを挟む長いトンネルの奥から徐々に近付く複数の足音が聞こえていた。
「いいから、行け」
「……でも」
「俺はもう助からない。お前たちだけでも逃げろ」
「…………」
この足では今度こそだめそうだ。
隊員たちは何度も俺を振り返りながら走り去って行った。弾が切れるまで機関銃を撃ち続けていたが、足の出血のせいでいつの間にか意識を失っていた。
「他の奴らはどこに行った?」
「…………」
気が付くと、体を仰向けに倒され、胸を踏まれ、額に銃口が突き付けられていた。男は周りに倒れている自分と同じ戦闘服を着た男たちを見回した。
「お前がやったのか?」
「…………」
なんとか頷くと、男は鼻で笑い、泥で汚れた顔で俺を見下ろした。
「お前が噂の軍神だろ? 必ず生きて帰ることで有名だとか。お前を捕らえれば勲章が貰えることになってるんだ」
「…………」
「ありがとよ」
男は礼を言うと、銃床を俺に振り下ろした。
「…………」
目を開けると、体が何かで固定されていた。
鋭い頭痛を感じ目を動かして確認すると、窓のない薄暗い地下牢のような場所だった。そこに唯一置かれたベッドに寝かされているのだ。
右足だけが二十センチほど高く吊るされていた。
怪我をしていた足だ。……治療がされている。
「目が覚めましたね?」
声がした方を向くと、ガチャガチャと音を鳴らしながらドアが開き、白衣を着た男が一人で入ってきた。男はベッドに寝かされている俺を見つめた。
「やけに静かじゃないですか。うちが捕虜に優しい国だと言われているから安心しているんですね?」
「……なんのことだ?」
「たしかにその噂は本当ですが、軍人は別です」
「…………」
「この国がなぜあなたの国よりも豊かに暮らしているか分かりますか? それは我が国の英雄たちが、あなたの国みたいな貧しい国から国民を命を賭けて守っているからです」
「…………」
男が話しながら白衣のポケットから注射器を出し、ベッドの脇に固定された俺の腕に刺した。
「あなたは軍神と呼ばれ、その悪魔的な強さでこの国の英雄たちを何人も殺しました。ただの軍人なら制限は有っても自由はあります。しかしあなたは別です」
打たれた薬のせいで意識が遠のいていくのが分かった。
「……待ってくれ、俺は」
軍神なんかじゃない。ただ運が良かっただけだ。そう言いたいのに、白衣の男の声が遠ざかっていく。
「安心してください。足はちゃんと治してあげますし、ちゃんと賃金も払います」
「…………」
意識を失う前に複数の笑い声が聞こえた。
「職業は変えられませんがね」
部屋の隅でシャワー浴び、体を洗っている最中に、また客がやって来た。
濡れた体を拭き、裸のまま男の服を脱がしていく。ここには民間の男が来ることはない。どの男もよく鍛え上げられた体に戦闘でしか負うことのない傷を持っていた。
男の前にしゃがみ、ベルトをはずした。
「やけに急ぐな。まさかノルマがあるのか?」
「…………」
「かわいそうに。軍人の捕虜はできる仕事が少すぎるからな」
「…………」
男は自分で下着を下ろすと、俺の口に自分の性器をねじ込んだ。
「あんなに戦果を上げ、軍神とまで呼ばれた英雄が、まさか敵国の捕虜になり軍人専用の性奴隷になっているとはな」
男は俺の頭を両手で掴み、腰を揺らした。
「……ん……ん……ん……んっ……」
男の性器に喉を突かれ、何度もえずいたが、男はやめてくれなかった。
「……んあっ、……ん……、んっ……、んっ……、……っ!」
「お前のせいで失った部下は二度と戻ってこない。お前はここで反省して体で償うんだ」
「……んぁっ……、ごほっ、ごほっ……!」
やっと口から性器が抜かれ、咳き込んでいたが、男に見下され、仕方なく男に背を向けて四つん這いになった。
「案外天職なんじゃないか? ここでは怪我をすることも命を落とすこともないからな。安心できるだろ?」
「そんなこと、……あっ……!」
何度しても尻に男性器を突っ込まれる行為は慣れなかった。……こんな屈辱を受けるくらいなら殺された方がましだ。
「……あっ、……あっ、……あっ、……!」
「もう少し演技ができないと本当に一生ここから出られないぞ」
「……うるさいっ、早く終われっ……」
「それはお前次第だな」
この容赦のない男が俺を捕らえた男だと気が付いたのは、散々俺を犯したあとに男が出て行ったあとだった。
「……ぁあっ……いぃっ、……もっと、もっと……!」
「ひひっ、こいつ男に犯されて喜んでやがる」
片腕のない男と眼帯をした男に交互に犯されながらも喜んでいるふりをしなければならなかった。
ここに来て一年。
元軍人という肩書が珍しいのか、客足が絶えることはなかった。
「……あぁっ、……いぃっ、イクっ、イクっ……!」
「ひひっ、あの軍神が俺のでイクってよ」
「……ぁああぁあぁっ……!」
「軍神ってのはこんなにうるさかったのか。それともこっちも欲しいのかぁ?」
仰向けになっている俺の顔に座るように口を性器で喉奥まで塞がれたが、えずくことなくそれを受け入れた。
「……んぁっ……んっ……んっ……んっ……!」
男たちに両側から犯された。
ここでは何をされようが逃げることはできない。常に監視され逃げようとすれば強烈な体罰が待っていた。
しかしそれよりも恐ろしいのは慣れることはない思っていた行為に体が慣れつつあることだった。この体はすでに戦地で戦うためではなく、男を喜ばせるためのものになっていた。
二人の男をイかせ、ようやく解放されても体は疲れ切っていた。
「ひひっ、俺たちのこと覚えておけよ。また金貯めてお前のこと犯しに来てやるからな」
「…………」
男たちが帰りドアが閉まると、すぐにまたドアが開いた。仕方なく体を起こし、涙を拭きながら客の前にしゃがんだ。
まだ今日のノルマを達成していない。日に日に酷くなるノルマは、達成できなければ寝ることも食事をすることも許されなかった。
「どうした? 酷い客だったか?」
「…………」
顔を上げると、俺をあの洞窟で捕まえた男だった。
「一年でだいぶ従順になったようだな? ようやくここでの暮らし方がわかったようだ」
「…………」
「まだ部下が助けに来てくれるなんて考えてないよな? お前がここでしていることを知ったら部下たちはお前をまだ英雄として見られると思うか?」
……それだけはだめだ。こんなことを知られるくらいなら死んだ方がましだ。
男は俺の頭を両手で掴み、俺を見下ろした。
「ここから出たいか?」
男の問いに自然と頷いていた。
「……たすけてくれ、ここから出してくれ」
出るためなら何でもする。出られないならいっそ殺してほしい。
男に髪を掴まれ顔を上げると、笑顔の男と目が合った。
「お前のおかげで出世できたしな。そろそろ許してやるか」
一年ぶりに服を着て、地下牢から出られた。しかしすぐに目隠しをされ車に乗せられた。目的地に着いたのか男は俺を車から降ろし、車で走り去って行った。
「…………」
自分で目隠しをはずすと、そこは見慣れた場所だった。
「ここは……」
賑わっている市場が自分の生まれた国のものだと気が付くのには時間がかかった。
「……軍曹?」
後ろから声をかけられ振り返ると、捕虜になる前に最後に会った同じ隊の曹長だった。
「良かった。やっぱり生きてたんですね。ずっと探してたんです。てっきり捕虜になっていると思ってました」
「……戦争は?」
曹長が朗らかに俺に笑いかけた。
「知らないんですか? あれからすぐに休戦して協定が結ばれたんですよ。物資の交換もできるようになったんです」
そう言って曹長が両手に持っている荷物を俺に見せた。
「交換?」
まさかそこまで国交が回復しているとは思わなかった。
「今日は軍が買った物を受け取りに来たんです。俺たちに渡せるのは中古品だけらしいんですけどね。軍曹はどうしてここに? 今までどこにいたんですか?」
「……俺は」
俺が言い訳を考える前に、曹長が俺の胸の辺りに目を止め、笑顔を消した。いつの間にか首から下げられていたそれを手にとって見てみると、値段が書かれていた。
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