僕の好きな人

たいら

文字の大きさ
上 下
6 / 8

6

しおりを挟む
 結局ピザとラーメンを食べ終わっても、帰ることはできなかった。
 ソファに座って手を繋ぎ、見つめ合いながらキスをしている。こんなシチュエーションが俺の人生にやってくるとは思わなかった。
「仕事あるのにごめんね。でもやっぱり今日は帰らないで」
「…………」
 高比良さんに見つめられて謝られて困った顔でキスをされたら言うことを聞くしかない。
 唇をあわせ、お互いに舌をイチャイチャと絡ませていた。
 ……俺の漫画みたいだ。
 でもこれからどうするんだろう。これってキスだけで止められるのか? 
 そう考えているうちに高比良さんの手がシャツの中に入ってきた。
「……あ……」
 高比良さんの手に脇腹を撫でられ、くすぐったくて笑っていると、服を脱がされ、あっという間に上半身を裸にされてしまった。
「…………」
 高比良さんに抱きしめられた。
「かわいい」
 かわいいなんて言われたことないし、高比良さんが裸の俺を抱きしめてるし、パニックだった。
 ……このまま、するのか?
 ついに? 高比良さんと?
 まだ心の準備ができてないのに。
「……ど、どうして、三年前に言ってくれなかったんですか?」
 そう言うと、高比良さんが体を離した。
「…………」
 今日の高比良さんは目が潤んでいて色気が尋常じゃない。あまりに綺麗で吸い込まれてしまいそうだった。
「久我山君に嫌われるのが怖かったんだ」
 だからって結婚までするなんて。
「……じゃ、じゃあ、なんで今ごろ言ったんですか?」
「もう後悔したくなかったから。嫌われたと思ってたよ。また会えるとは思わなかった」
「…………」
 そう言ってキスをされたら、何もかも許してしまいそうだった。ズルい。
 魔法使いになりかけている俺の手が高比良さんの背中にそっと手を回すと、ソファに押し倒された。
「……あっ……」
 体重をかけられてキスをされ、逃げ場を失った。
 高比良さんの唇が首から胸に伝い下りていき、乳首に触れると体が跳ねてしまった。
「……んぁっ! ……」
 ……恥ずかしい。初めてなのがバレてしまう。
 高比良さんの濡れた舌先が、乳首を転がすように舐めている。 
 ……高比良さんが俺にそんなことを。
 我慢しようにも体がぴくぴくと震えてしまっていた。
 ……どうしよう。
 毎日のように乳首を描いてきたのに、自分の乳首がこんなに敏感だと初めて知ってしまった。
「……んっ……んっ……んっ………」
 高比良さんの手が俺のベルトにかかった。
 ……もうだめだ。
 俺はもう魔法使いにも天使にもなれそうにない。覚悟を決めて人間として生きていくんだ。







 高比良さんが体の上に乗って、腰を揺らしている。
 俺と自分の性器を握りながら。
「……あっ……あっ……」
 こんなの直視できるわけない。
 高比良さんが腰を揺らすたびに髪が揺れ、お互いの硬くなった性器が高比良さんの手の中でこすれ合っている。俺の方はすでに暴発寸前だった。
 高比良さんがこんなにも艶めかしく体を使う人だとは思わなかった。
「…………」
 腰を振りながら俺を見下ろしている高比良さんがさらに激しく腰を揺らし、俺たちの性器を強く握った。
「……あっ……あっ……あっ…………!!」
 もうだめだ。高比良さんが俺を導いている。
 このままいくしかない。
 初めて誰かと絶頂へ昇ることができるんだ。
 そのときが来た瞬間、胸が仰け反った。
「……あっあっあっあっ……ぁぁあぁぁっ……!」
 自分の中から高比良さんの手に溢れるほどの精液を出していた。
 腰が勝手に揺れて最後まで出し切ると、高比良さんがキスをしてくれた。
 余韻に浸りながらキスをしていると、高比良さんの濡れた手がまた俺の体に触れた。一緒に放った精液で濡れた胸にまた高比良さんの指が触れ、軽く乳首が潰されるだけでまた火が付いてしまった。
「……あっ……あっ…………」
 高比良さんの性器と自分の性器を一緒に握ると、高比良さんの腰が揺れた。
「……んっ……んっ…………」
 俺の手の中で二人の性器が擦れあい、高比良さんの指が俺の乳首をいじりながら、二人でキスをしていた。手の中の高比良さんの動きはやっぱりいやらしかった。
 まるで俺の中に入っているみたいだ。
 ……もしかして俺がこっち側なのか。意外だけどまぁ、いいか、高比良さんとなら。
「久我山くん、好きだよ」
「…………」
 二度目はキスをしながら二人で俺の手の中で果てた。それはあまりにも幸せな時間だった。二十八年間生きてて良かった。高比良さんを好きになって良かった。
「……久我山くん」
 目を開けると高比良さんが心配そうに俺を見下ろしていた。前髪が顔にかかる高比良さんは最高にかっこよくて、目に焼き付けておきたい光景だった。
「ごめんね」
「え?」
「今日のことは忘れて」
 高比良さんはそう言うと、自分の服を抱えていなくなってしまった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

胸キュンシチュの相手はおれじゃないだろ?

一ノ瀬麻紀
BL
今まで好きな人どころか、女の子にも興味をしめさなかった幼馴染の東雲律 (しののめりつ)から、恋愛相談を受けた月島湊 (つきしま みなと)と弟の月島湧 (つきしまゆう) 湊が提案したのは「少女漫画みたいな胸キュンシチュで、あの子のハートをGETしちゃおう作戦!」 なのに、なぜか律は湊の前にばかり現れる。 そして湊のまわりに起こるのは、湊の提案した「胸キュンシチュエーション」 え?ちょっとまって?実践する相手、間違ってないか? 戸惑う湊に打ち明けられた真実とは……。 DKの青春BL✨️ 2万弱の短編です。よろしくお願いします。 ノベマさん、エブリスタさんにも投稿しています。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

とある冒険者達の話

灯倉日鈴(合歓鈴)
BL
平凡な魔法使いのハーシュと、美形天才剣士のサンフォードは幼馴染。 ある日、ハーシュは冒険者パーティから追放されることになって……。 ほのぼの執着な短いお話です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

処理中です...