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第二章 当主編
第十話 服部半蔵来襲
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元亀四年、(1575年)の吹雪で白く覆われた真昼の正月の浜松城を、ある異形な者が見ていた。
その者は、鬼の様な顔で、全身が鋼の様な強靭さであり、吹雪で解らぬ様に白い装束を全身に纏っている。
だが、それより、人が見たら驚愕する様な血の様に紅き、赤い眼をしている。
この浜松城下町で見ていたのを山本勘蔵や疋田文五郎と上野間者、(猿彦、犬彦、雉彦)に、我が見ていたのを悟られたらしい……。
我の方へ、山本勘蔵達が軍馬に乗って向かって来た。
我は、興味を持ち、そ奴らの前に現れ、反応を見る事にした。
「そこの白き間者! 何者の手の者ぞ!」
山本勘蔵が問い掛けると、
我を捕らえようと上野間者が向かって来たが、深い雪を馬で走らせたので、
異形な者は宙を飛び、三段蹴りの内、一蹴りで犬彦を殺さぬ様に馬上から、蹴り落とした。
「見事! そこの忍び。この山本勘蔵の家臣にならぬか?」
我に気づいた。主君を殺した山本勘蔵に興味を持ち名乗る事にした。
「我は、服部半蔵。伊賀服部一族安泰の為、貴殿の首を取る!」
「滅ぼした徳川の手の者か?」
「左様にとっても良い!」
気づくと、山本勘蔵の両手に白い縄が巻き付いて、広げた状態であった。
実は服部半蔵は、他にも白装束の間者、それも手練れの者を二人忍ばせていた。
「死ね!」
手裏剣を山本勘蔵の喉に向かって投げ、確実に仕留め様としたが、雉彦に蹴り飛ばされた。
「楓! 何故、我の邪魔をする。山本の……。山本の犬に成り下がったか! それでも我の後を継ぎ、服部半蔵を名乗るのを……。服部を裏切り、敵となるのか!」
「私は楓ではない! 上野間者の一人、雉彦! 滅びた徳川から織田の犬に成り下がった服部半蔵……。否……。父上……。いざ参る!」
吹雪の中……。積もった雪を掻き分け、また、飛び込みながら、雉彦と服部半蔵の戦いが始まった。
手裏剣の応酬、太刀の斬りあい、全てにおいて互角、しかし……。
「ぐああ――」
雉彦が毒塗りの含み針を服部半蔵の右眼に吹き掛け刺さり、死闘に決着が着いたかに見えた。
しかし……。
何と自らの右眼を指で抉り取り、血を滴せながら、
「おのれ! 楓! この屈辱忘れぬぞ! 散!」
白い煙幕を撒き散らし、服部半蔵と配下の手練れ二人は姿を消した。
こうして、刺客、服部半蔵を楓の働きで退けた。
山本勘蔵は、雉彦から経緯を聞いた。
雉彦の母は、北条の間者衆、風魔のくノ一で、服部半蔵に捕まり、凌辱されて生まれたのが、楓、今は雉彦と名乗り、男装の間者になっている。
また、親子でありながら、服部半蔵は雉彦に閨を強要し、上野の長野家の間者になり、身内の風魔や伊賀服部、武田の歩き巫女等と戦い、長野家滅亡後は、山本勘蔵に仕えている。
雉彦は服部半蔵の為に不幸なった女であった。
山本勘蔵は、雉彦(楓)を抱きしめ、
「今より、上野間者の任は解く。これからは、一人の女として幸せに生きよ!」
「勘蔵様……。成らば、願いの儀がございます。私を……楓を側室として愛して頂けないでしょうか?」
「そなたの涙が止まるなら良かろう」
眼を見ると赤く、涙を流している。憎き服部半蔵の血を引くのは間違い無い。
これからは、山本勘蔵と楓は、伊賀服部衆を敵にする事になった。
その者は、鬼の様な顔で、全身が鋼の様な強靭さであり、吹雪で解らぬ様に白い装束を全身に纏っている。
だが、それより、人が見たら驚愕する様な血の様に紅き、赤い眼をしている。
この浜松城下町で見ていたのを山本勘蔵や疋田文五郎と上野間者、(猿彦、犬彦、雉彦)に、我が見ていたのを悟られたらしい……。
我の方へ、山本勘蔵達が軍馬に乗って向かって来た。
我は、興味を持ち、そ奴らの前に現れ、反応を見る事にした。
「そこの白き間者! 何者の手の者ぞ!」
山本勘蔵が問い掛けると、
我を捕らえようと上野間者が向かって来たが、深い雪を馬で走らせたので、
異形な者は宙を飛び、三段蹴りの内、一蹴りで犬彦を殺さぬ様に馬上から、蹴り落とした。
「見事! そこの忍び。この山本勘蔵の家臣にならぬか?」
我に気づいた。主君を殺した山本勘蔵に興味を持ち名乗る事にした。
「我は、服部半蔵。伊賀服部一族安泰の為、貴殿の首を取る!」
「滅ぼした徳川の手の者か?」
「左様にとっても良い!」
気づくと、山本勘蔵の両手に白い縄が巻き付いて、広げた状態であった。
実は服部半蔵は、他にも白装束の間者、それも手練れの者を二人忍ばせていた。
「死ね!」
手裏剣を山本勘蔵の喉に向かって投げ、確実に仕留め様としたが、雉彦に蹴り飛ばされた。
「楓! 何故、我の邪魔をする。山本の……。山本の犬に成り下がったか! それでも我の後を継ぎ、服部半蔵を名乗るのを……。服部を裏切り、敵となるのか!」
「私は楓ではない! 上野間者の一人、雉彦! 滅びた徳川から織田の犬に成り下がった服部半蔵……。否……。父上……。いざ参る!」
吹雪の中……。積もった雪を掻き分け、また、飛び込みながら、雉彦と服部半蔵の戦いが始まった。
手裏剣の応酬、太刀の斬りあい、全てにおいて互角、しかし……。
「ぐああ――」
雉彦が毒塗りの含み針を服部半蔵の右眼に吹き掛け刺さり、死闘に決着が着いたかに見えた。
しかし……。
何と自らの右眼を指で抉り取り、血を滴せながら、
「おのれ! 楓! この屈辱忘れぬぞ! 散!」
白い煙幕を撒き散らし、服部半蔵と配下の手練れ二人は姿を消した。
こうして、刺客、服部半蔵を楓の働きで退けた。
山本勘蔵は、雉彦から経緯を聞いた。
雉彦の母は、北条の間者衆、風魔のくノ一で、服部半蔵に捕まり、凌辱されて生まれたのが、楓、今は雉彦と名乗り、男装の間者になっている。
また、親子でありながら、服部半蔵は雉彦に閨を強要し、上野の長野家の間者になり、身内の風魔や伊賀服部、武田の歩き巫女等と戦い、長野家滅亡後は、山本勘蔵に仕えている。
雉彦は服部半蔵の為に不幸なった女であった。
山本勘蔵は、雉彦(楓)を抱きしめ、
「今より、上野間者の任は解く。これからは、一人の女として幸せに生きよ!」
「勘蔵様……。成らば、願いの儀がございます。私を……楓を側室として愛して頂けないでしょうか?」
「そなたの涙が止まるなら良かろう」
眼を見ると赤く、涙を流している。憎き服部半蔵の血を引くのは間違い無い。
これからは、山本勘蔵と楓は、伊賀服部衆を敵にする事になった。
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