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第二章 当主編
第八話 長篠の合戦。そして……。
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同年、十一月二日、早朝、三河の長篠に織田、徳川連合軍二万五千人が陣地を作らせていると犬彦が浜松城に知らせて来た。
また、美濃、岩村城を織田信長の嫡男、信忠が一万五千人で包囲しているらしい。
既に、浜松城には、武田勝頼様率いる二万人の軍勢が待機しており、先に長篠にて、織田信長、徳川信康を討ち取るべく軍評定を行っていた。
勝頼様の軍勢とは別に、浜松城の山本軍四千人、二俣城の真田昌幸率いる千人も参陣する事となった。
軍評定では、武田四天王の山県昌景、馬場信春が織田、徳川連合軍とまともに戦うのは危ういと撤退を進言していた。
だが、勝頼様は、敵より兵力が多い事を理由に全面対決を決めており、山県と馬場の進言は取り消され、全軍で浜松城から出陣した。
こうして、早朝の霧の中、織田、徳川連合と武田は合戦を開始した。
山県と馬場は、勝頼様が後見人である限り武田に先は無いと知り、討ち死に覚悟で織田、徳川連合に向かって突撃した。
結果、無数の火縄銃の弾を身体中に撃たれ討ち死にし、それでも、自らの失敗を認めない勝頼様は、真田昌幸の兄、信綱、昌輝に出陣を命じた。
無論、真田昌幸は、兄達を必死に止めたが、
「この信綱! 武田の人柱にならん! 昌幸……。真田の郷を頼むぞ! 昌輝! 共に参るぞ!」
「兄者! 真田の恐ろしさを織田、徳川の者共に見せてくれようぞ! 昌幸! 地獄で待っておるぞ! 達者に致せ!」
真田昌幸は、兄達の死の覚悟を止められず、また、武田を影から追い込んだ友、山本勘蔵に不信を抱いた時であった。
やがて、再び、織田、徳川連合の無数の火縄銃の発砲音が鳴り響き、兄達も、銃弾を受け死んでいった。
その頃、織田信長は、火縄銃に撃たれ、死に行く武田の猛者を肴に、獰猛な笑みを浮かべ、勝利を確信していた。
ふと、空を見上げると鷹の群れが此方に向かっていた。
「ん? 鷹の群れだと! 鷹は群れで飛ぶ鳥では無い……。まさか……。者共! 此方に来る鷹を殺せ!」
だが、織田、徳川の鉄砲隊は、只の的になっている武田の猛者達を討ち取る事に集中していた。
「早ようせぬか!」
信長は、身近な小姓を蹴り付け、鉄砲隊に命令を伝えた時である。
約五十羽の鷹が、信長の本陣を襲った。
信長ばかりではなく、周辺の鉄砲隊は大混乱に陥ったが、流石は織田の鉄砲隊である。
鷹達を次々と撃ち落とし、殺していった。
だが、この織田の混乱を見逃さない軍勢がいた。
山本勘蔵率いる四千人の軍勢の内、今回特別に作った二つの特異な軍勢。
一つは、馬に騎乗しながら、雨でも雪でも放てる火打式銃を持つ騎馬鉄砲隊六百人。
今一つは、人ですら無い、戦鷹同様、人外の武具として投入をされた戦犬隊である。
戦犬隊は、体に無数の刃を付け、戦う訓練を受けた犬や狼で成り立っており、織田、徳川の火縄銃の音を聞くと横に飛び、可能な限り、火縄銃の弾丸に命中せず、敵に噛みついたり、無数の刃を利用し、体当たりする。
特に三百頭の戦犬隊の攻撃に織田、徳川連合軍の鉄砲隊は、真っ先に狙われ、ある者は噛み殺され、また、ある者は刃が身体に刺さり死んでいった。
更に織田、徳川連合軍が混乱している所を山本勘蔵や騎乗鉄砲隊が、火打式銃で狙い撃ちにする。
こうして、恐怖に駆られた軍勢は弱く、次々に、織田、徳川の猛者達は討たれ、勝てぬと判断した織田信長は、
「是非も無し」
と、いい放つと、単騎で馬を走らせ逃走した。
大将の織田信長が退却したのを知った織田の軍勢も損害を出しながら総撤退し、残された徳川は武田に皆殺しに遭い、徳川信康を始め、多くの徳川の武将が死んだ。
山本勘蔵は、勝頼様に、笑顔で、
「この長篠での合戦は勝利致しました。武田の犠牲は多いでしょうが、この機会を見逃す手はござらん。岡崎城まで攻め入り、三河を武田の領地に加えましょうぞ!」
勝頼様は呆気に取られたが、
「勘蔵の申す事……。天晴れじゃ! 動ける軍勢を集め、三河、岡崎城に侵攻する!」
こうして、生き残った武田軍一万六千人が怒涛の進撃を開始し、数日後、岡崎城を包囲した。
勝頼様は、戦評定を開き、山本勘蔵は、
「岡崎城にいるのは、ごく少数にござろう。降伏を促して参ります」
と、たった一人で岡崎城に参り、留守を努めていた石川数正は、
「亡き二人の殿の御子を助命して頂けるならば降伏致そう……」
と、申して、徳川の血族は出家し、滅亡した。
岡崎城を無傷で手に入れた山本勘蔵は、論功行賞にて、東遠江と西三河を与えられ四十万石に加曽され、真田昌幸は、二俣城を勝頼様に返上し、信州の真田の領地を相続した。
また、武田の三河侵攻により、美濃、岩村城から、織田の軍勢は危機を感じ撤退した。
こうして、山本勘蔵は城主でありながら、中堅の戦国大名並みの領地を得て、日の本、津々浦々に名声を轟かせた。
また、美濃、岩村城を織田信長の嫡男、信忠が一万五千人で包囲しているらしい。
既に、浜松城には、武田勝頼様率いる二万人の軍勢が待機しており、先に長篠にて、織田信長、徳川信康を討ち取るべく軍評定を行っていた。
勝頼様の軍勢とは別に、浜松城の山本軍四千人、二俣城の真田昌幸率いる千人も参陣する事となった。
軍評定では、武田四天王の山県昌景、馬場信春が織田、徳川連合軍とまともに戦うのは危ういと撤退を進言していた。
だが、勝頼様は、敵より兵力が多い事を理由に全面対決を決めており、山県と馬場の進言は取り消され、全軍で浜松城から出陣した。
こうして、早朝の霧の中、織田、徳川連合と武田は合戦を開始した。
山県と馬場は、勝頼様が後見人である限り武田に先は無いと知り、討ち死に覚悟で織田、徳川連合に向かって突撃した。
結果、無数の火縄銃の弾を身体中に撃たれ討ち死にし、それでも、自らの失敗を認めない勝頼様は、真田昌幸の兄、信綱、昌輝に出陣を命じた。
無論、真田昌幸は、兄達を必死に止めたが、
「この信綱! 武田の人柱にならん! 昌幸……。真田の郷を頼むぞ! 昌輝! 共に参るぞ!」
「兄者! 真田の恐ろしさを織田、徳川の者共に見せてくれようぞ! 昌幸! 地獄で待っておるぞ! 達者に致せ!」
真田昌幸は、兄達の死の覚悟を止められず、また、武田を影から追い込んだ友、山本勘蔵に不信を抱いた時であった。
やがて、再び、織田、徳川連合の無数の火縄銃の発砲音が鳴り響き、兄達も、銃弾を受け死んでいった。
その頃、織田信長は、火縄銃に撃たれ、死に行く武田の猛者を肴に、獰猛な笑みを浮かべ、勝利を確信していた。
ふと、空を見上げると鷹の群れが此方に向かっていた。
「ん? 鷹の群れだと! 鷹は群れで飛ぶ鳥では無い……。まさか……。者共! 此方に来る鷹を殺せ!」
だが、織田、徳川の鉄砲隊は、只の的になっている武田の猛者達を討ち取る事に集中していた。
「早ようせぬか!」
信長は、身近な小姓を蹴り付け、鉄砲隊に命令を伝えた時である。
約五十羽の鷹が、信長の本陣を襲った。
信長ばかりではなく、周辺の鉄砲隊は大混乱に陥ったが、流石は織田の鉄砲隊である。
鷹達を次々と撃ち落とし、殺していった。
だが、この織田の混乱を見逃さない軍勢がいた。
山本勘蔵率いる四千人の軍勢の内、今回特別に作った二つの特異な軍勢。
一つは、馬に騎乗しながら、雨でも雪でも放てる火打式銃を持つ騎馬鉄砲隊六百人。
今一つは、人ですら無い、戦鷹同様、人外の武具として投入をされた戦犬隊である。
戦犬隊は、体に無数の刃を付け、戦う訓練を受けた犬や狼で成り立っており、織田、徳川の火縄銃の音を聞くと横に飛び、可能な限り、火縄銃の弾丸に命中せず、敵に噛みついたり、無数の刃を利用し、体当たりする。
特に三百頭の戦犬隊の攻撃に織田、徳川連合軍の鉄砲隊は、真っ先に狙われ、ある者は噛み殺され、また、ある者は刃が身体に刺さり死んでいった。
更に織田、徳川連合軍が混乱している所を山本勘蔵や騎乗鉄砲隊が、火打式銃で狙い撃ちにする。
こうして、恐怖に駆られた軍勢は弱く、次々に、織田、徳川の猛者達は討たれ、勝てぬと判断した織田信長は、
「是非も無し」
と、いい放つと、単騎で馬を走らせ逃走した。
大将の織田信長が退却したのを知った織田の軍勢も損害を出しながら総撤退し、残された徳川は武田に皆殺しに遭い、徳川信康を始め、多くの徳川の武将が死んだ。
山本勘蔵は、勝頼様に、笑顔で、
「この長篠での合戦は勝利致しました。武田の犠牲は多いでしょうが、この機会を見逃す手はござらん。岡崎城まで攻め入り、三河を武田の領地に加えましょうぞ!」
勝頼様は呆気に取られたが、
「勘蔵の申す事……。天晴れじゃ! 動ける軍勢を集め、三河、岡崎城に侵攻する!」
こうして、生き残った武田軍一万六千人が怒涛の進撃を開始し、数日後、岡崎城を包囲した。
勝頼様は、戦評定を開き、山本勘蔵は、
「岡崎城にいるのは、ごく少数にござろう。降伏を促して参ります」
と、たった一人で岡崎城に参り、留守を努めていた石川数正は、
「亡き二人の殿の御子を助命して頂けるならば降伏致そう……」
と、申して、徳川の血族は出家し、滅亡した。
岡崎城を無傷で手に入れた山本勘蔵は、論功行賞にて、東遠江と西三河を与えられ四十万石に加曽され、真田昌幸は、二俣城を勝頼様に返上し、信州の真田の領地を相続した。
また、武田の三河侵攻により、美濃、岩村城から、織田の軍勢は危機を感じ撤退した。
こうして、山本勘蔵は城主でありながら、中堅の戦国大名並みの領地を得て、日の本、津々浦々に名声を轟かせた。
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