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第8章:(苺視点)
8-2:茶屋から追い出される
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「す、すみません! い、今、片付けます」
「片付けなくても良い。苺もよく聞け。この際だから、女将に聞くが、苺はもう陰間を卒業する時期だろう? 何故、そんなに茶屋に縛りつける?」
「ア、アタシは別にあの子を縛りつけている訳ではありません」
「では、何故、雑用ばかりさせる? 苺への扱いが雑過ぎないか?」
「そ、それはあの子が望んでいる訳であって……」
「いくらストラス様でも言い過ぎです」
女将はばつの悪い顔をしていた。苺は心苦しくなり、ストラスに話を切り上げるように言ったが、苺はストラスに鋭い目を向けられ、ドキッとした。
ただならぬ空気が流れる中、騒ぎを聞きつけたのか、奥から月下が出てきた。
「おや、皆様揃って……。こんな場所で言い争いをしていたら、お客様が入れませんよ。他の子達も怯えていますよ」
「月下……。お前だろ。通行証に術をかけたのは」
ストラスは月下を睨みつけた。月下は顔色一つ変えず、口を手で隠し、小さく笑った。
「あははっ。さぁ、私には何のことか存じ上げません。それよりも、苺を早く追い出して差し上げたら? この子は用済みなのは分かってらっしゃるでしょ?」
「げ、月下お兄様! 苺をそんな風に思われていたんですか?!」
「ええっ、そうですよ。客も取れやしない脛齧りには茶屋にいる意味はありません。雑用は私がやればいい事。雑用係は二人も必要ありません。そうでしょ? 女将」
月下が女将を冷たい目で見ると、女将は黙ったまま俯いてしまった。
「じょ、冗談ですよ、ね? ……女将も、何か言ってくださいよ。あまりにも酷過ぎる。今までどんなに嫌な雑用もこなしてきたのに!」
「苺、これには訳があって!」
苺は涙を溢れさせ、階段を駆け上がっていった。ストラスは眉間に皺を寄せ、月下に歩み寄り、胸倉を掴んだ。
「月下。……分かっているんだろうな」
「おやおや、四天王たるお方がこの程度で乱れては先が思いやられますね」
「貴様っ!」
ストラスは歯をぎりぎりと食い縛り、月下から手を離した。そうこうしているうちに、荷物をまとめた苺が階段を駆け下りてきた。
「い、今までお世話になりました。苺はここを出ることにします。ありがとうございました」
「苺、待って!」
「ごめんなさい、女将。最後まで役立たずな苺を雇ってくださり、ありがとうございました。月下お兄様も……面倒を見てくださって、ありがとうございました。ストラス様、行きましょう」
「あぁ……」
女将は泣き崩れて、顔を上げることはなかった。月下は女将に寄り添い、背中を撫でていた。ストラスは番台に金貨が入った袋を雑に置くと、苺の手を引いて、茶屋を後にした。
ストラスは苺と二人きりになりたく、場所を探した。そして、セーレの店なら都合が良いと思い、セーレの店へ行った。
「お客さん、まだ開店前で――って、ストラス! それに、苺はなんでそんな目を腫らして」
「開店前にすまん。個室を借りれるか?」
「あぁ、良いけどよ。また藪から棒だな。おい、お前。お茶を出してやれ。個室はこっちだ。ついて来い」
セーレは多くは聞かず、二人を和室の個室に通した。セーレは二人にお茶を出すと、無言で退室した。少しの沈黙の後、苺が重い口を開いた。
「すみません……」
「いや、私こそ申し訳ない。苺を金で買い取るなど……汚い真似をしてしまって」
「いえ、ストラス様が謝る事ではありません。でも、正しかったとは言えません」
「そうだよな。すまなかった……」
「あの、お伝えしていなかったのですが、ここに住んでいる者は特例を除き、下界への移住が禁じられているんです」
「そ、そうなのか。そんな事も知らずに、私はなんてことを……」
ストラスは自ら行ったことに対して、深く反省した。二人が俯き、黙ったまま時間が過ぎた。
「片付けなくても良い。苺もよく聞け。この際だから、女将に聞くが、苺はもう陰間を卒業する時期だろう? 何故、そんなに茶屋に縛りつける?」
「ア、アタシは別にあの子を縛りつけている訳ではありません」
「では、何故、雑用ばかりさせる? 苺への扱いが雑過ぎないか?」
「そ、それはあの子が望んでいる訳であって……」
「いくらストラス様でも言い過ぎです」
女将はばつの悪い顔をしていた。苺は心苦しくなり、ストラスに話を切り上げるように言ったが、苺はストラスに鋭い目を向けられ、ドキッとした。
ただならぬ空気が流れる中、騒ぎを聞きつけたのか、奥から月下が出てきた。
「おや、皆様揃って……。こんな場所で言い争いをしていたら、お客様が入れませんよ。他の子達も怯えていますよ」
「月下……。お前だろ。通行証に術をかけたのは」
ストラスは月下を睨みつけた。月下は顔色一つ変えず、口を手で隠し、小さく笑った。
「あははっ。さぁ、私には何のことか存じ上げません。それよりも、苺を早く追い出して差し上げたら? この子は用済みなのは分かってらっしゃるでしょ?」
「げ、月下お兄様! 苺をそんな風に思われていたんですか?!」
「ええっ、そうですよ。客も取れやしない脛齧りには茶屋にいる意味はありません。雑用は私がやればいい事。雑用係は二人も必要ありません。そうでしょ? 女将」
月下が女将を冷たい目で見ると、女将は黙ったまま俯いてしまった。
「じょ、冗談ですよ、ね? ……女将も、何か言ってくださいよ。あまりにも酷過ぎる。今までどんなに嫌な雑用もこなしてきたのに!」
「苺、これには訳があって!」
苺は涙を溢れさせ、階段を駆け上がっていった。ストラスは眉間に皺を寄せ、月下に歩み寄り、胸倉を掴んだ。
「月下。……分かっているんだろうな」
「おやおや、四天王たるお方がこの程度で乱れては先が思いやられますね」
「貴様っ!」
ストラスは歯をぎりぎりと食い縛り、月下から手を離した。そうこうしているうちに、荷物をまとめた苺が階段を駆け下りてきた。
「い、今までお世話になりました。苺はここを出ることにします。ありがとうございました」
「苺、待って!」
「ごめんなさい、女将。最後まで役立たずな苺を雇ってくださり、ありがとうございました。月下お兄様も……面倒を見てくださって、ありがとうございました。ストラス様、行きましょう」
「あぁ……」
女将は泣き崩れて、顔を上げることはなかった。月下は女将に寄り添い、背中を撫でていた。ストラスは番台に金貨が入った袋を雑に置くと、苺の手を引いて、茶屋を後にした。
ストラスは苺と二人きりになりたく、場所を探した。そして、セーレの店なら都合が良いと思い、セーレの店へ行った。
「お客さん、まだ開店前で――って、ストラス! それに、苺はなんでそんな目を腫らして」
「開店前にすまん。個室を借りれるか?」
「あぁ、良いけどよ。また藪から棒だな。おい、お前。お茶を出してやれ。個室はこっちだ。ついて来い」
セーレは多くは聞かず、二人を和室の個室に通した。セーレは二人にお茶を出すと、無言で退室した。少しの沈黙の後、苺が重い口を開いた。
「すみません……」
「いや、私こそ申し訳ない。苺を金で買い取るなど……汚い真似をしてしまって」
「いえ、ストラス様が謝る事ではありません。でも、正しかったとは言えません」
「そうだよな。すまなかった……」
「あの、お伝えしていなかったのですが、ここに住んでいる者は特例を除き、下界への移住が禁じられているんです」
「そ、そうなのか。そんな事も知らずに、私はなんてことを……」
ストラスは自ら行ったことに対して、深く反省した。二人が俯き、黙ったまま時間が過ぎた。
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