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第7章:苺の特訓(苺視点)
7-6:ストラスの屋敷
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苺が帰ろうとした時、双頭の犬は苺のバッグ紐を咥えた。苺は引っ張られ、双頭の犬の方を振り返った。双頭の犬は首を横に振り、苺を引き留めた。
「どうかしましたか? もう帰らないとお互いの主に怒られますよ?」
苺が宥めるも、双頭の犬は聞く耳を持たず、苺に背中に乗るようにジェスチャーをした。苺が戸惑っていると、双頭の犬は苺を鼻先で突き、無理矢理、背中の上に乗せた。
「もしかして、扉の前まで連れて行ってくれるんですか?」
苺は双頭の犬の背中に掴まった。双頭の犬は立ち上がると、走り出した。しかし、向かう先は旧魔王城とは反対方向で、苺は双頭の犬に止まるように何度も言ったが、止まる気配はなかった。
苺は不安になりながらも、双頭の犬の背中から落ちないように、必死にしがみついた。
風はどんどん冷たくなり、濡れたままの服のせいで、体が冷えていく。苺がくしゃみをすると、双頭の犬は吠え、走る速度を早めた。
「ワウッワウッ!」
林道を抜けると、大きな屋敷が見えてきた。屋敷の鉄門をくぐり抜け、玄関前に着くと、双頭の犬は立ち止まり、吠えた。何度か吠えていると、中から見覚えのある人物が出てきた。
「なんだ、オルトロス。そんなに吠えて――って、何故、お前がいるんだ!」
「ストラス様っ! えっ、ここって……」
「ここは私の屋敷だ。そんな事よりずぶ濡れじゃないか。体も震わせて、今、温かい飲み物を入れる。オルトロスと共に、中へ入れ」
ストラスがそう言うと、苺の身長の倍以上もあったオルトロスは、苺の胸くらいの高さまで縮んだ。苺がそれに驚いていると、ストラスは苺に早く中へ入るように急かした。
ストラスは苺を中へ案内すると、暖炉がある客間に通してくれた。ストラスが暖炉に手をかざすと、暖炉の薪に火が点り、バチバチと燃えた。苺はストラスに暖炉の前へ案内され、暖を取った。オルトロスも苺を温めるように傍で丸まった。
「今、着替えと飲み物を淹れてくる。いや、風呂に入った方が良いか?」
「いや、でも、ご迷惑になりますし、体が温まったら、帰りますので、お気になさらず」
「お前は夜の魔界がどういうものか知らないだろう? 人間が彷徨くような場所ではない。後で女将に手紙を送ろう。今日は泊まっていくんだ。いいな?」
「で、でも――っ!」
苺が断ろうとしたものの、ストラスは聞く耳を持たず、奥の部屋へ消えていった。
苺はため息をつき、申し訳無さそうな顔をし、暖炉の火を見つめた。
苺は寝息を立てているオルトロスを起こさないように、ゆっくりと立ち上がった。そして、足音を立てないように部屋の扉の方へ向かい、ゆっくりとドアノブを回し、扉を開けた。
その時、開けた扉が急にバタンと大きな音を立て、閉まった。苺は驚き、ゆっくりと後ろを振り返った。そこには、眉間に皺を寄せたストラスが扉を押さえて、立っていた。
「何をしている」
「いや、あの……、やはりご迷惑になると思いまして。ご好意はとても嬉しいのですが――」
「駄目だ。夜道が危険なのは子供でも理解出来るはずだが? お前は子供以下なのか? それとも、単に頭が悪いのか?」
「な、何もそこまで仰らなくてもいいじゃないですか。……クシュンッ!」
「先に風呂へ入れ。オルトロス、コイツを風呂まで案内しろ」
「ワンッ!」
「で、でも――」
「口答えするな。さっさと行け!」
ストラスは目を鋭くさせ、苺を睨むように怒り口調で言った。そして、風呂場がある方向を指差した。苺は頭を下げ、オルトロスと一緒に風呂場へ向かった。
「どうかしましたか? もう帰らないとお互いの主に怒られますよ?」
苺が宥めるも、双頭の犬は聞く耳を持たず、苺に背中に乗るようにジェスチャーをした。苺が戸惑っていると、双頭の犬は苺を鼻先で突き、無理矢理、背中の上に乗せた。
「もしかして、扉の前まで連れて行ってくれるんですか?」
苺は双頭の犬の背中に掴まった。双頭の犬は立ち上がると、走り出した。しかし、向かう先は旧魔王城とは反対方向で、苺は双頭の犬に止まるように何度も言ったが、止まる気配はなかった。
苺は不安になりながらも、双頭の犬の背中から落ちないように、必死にしがみついた。
風はどんどん冷たくなり、濡れたままの服のせいで、体が冷えていく。苺がくしゃみをすると、双頭の犬は吠え、走る速度を早めた。
「ワウッワウッ!」
林道を抜けると、大きな屋敷が見えてきた。屋敷の鉄門をくぐり抜け、玄関前に着くと、双頭の犬は立ち止まり、吠えた。何度か吠えていると、中から見覚えのある人物が出てきた。
「なんだ、オルトロス。そんなに吠えて――って、何故、お前がいるんだ!」
「ストラス様っ! えっ、ここって……」
「ここは私の屋敷だ。そんな事よりずぶ濡れじゃないか。体も震わせて、今、温かい飲み物を入れる。オルトロスと共に、中へ入れ」
ストラスがそう言うと、苺の身長の倍以上もあったオルトロスは、苺の胸くらいの高さまで縮んだ。苺がそれに驚いていると、ストラスは苺に早く中へ入るように急かした。
ストラスは苺を中へ案内すると、暖炉がある客間に通してくれた。ストラスが暖炉に手をかざすと、暖炉の薪に火が点り、バチバチと燃えた。苺はストラスに暖炉の前へ案内され、暖を取った。オルトロスも苺を温めるように傍で丸まった。
「今、着替えと飲み物を淹れてくる。いや、風呂に入った方が良いか?」
「いや、でも、ご迷惑になりますし、体が温まったら、帰りますので、お気になさらず」
「お前は夜の魔界がどういうものか知らないだろう? 人間が彷徨くような場所ではない。後で女将に手紙を送ろう。今日は泊まっていくんだ。いいな?」
「で、でも――っ!」
苺が断ろうとしたものの、ストラスは聞く耳を持たず、奥の部屋へ消えていった。
苺はため息をつき、申し訳無さそうな顔をし、暖炉の火を見つめた。
苺は寝息を立てているオルトロスを起こさないように、ゆっくりと立ち上がった。そして、足音を立てないように部屋の扉の方へ向かい、ゆっくりとドアノブを回し、扉を開けた。
その時、開けた扉が急にバタンと大きな音を立て、閉まった。苺は驚き、ゆっくりと後ろを振り返った。そこには、眉間に皺を寄せたストラスが扉を押さえて、立っていた。
「何をしている」
「いや、あの……、やはりご迷惑になると思いまして。ご好意はとても嬉しいのですが――」
「駄目だ。夜道が危険なのは子供でも理解出来るはずだが? お前は子供以下なのか? それとも、単に頭が悪いのか?」
「な、何もそこまで仰らなくてもいいじゃないですか。……クシュンッ!」
「先に風呂へ入れ。オルトロス、コイツを風呂まで案内しろ」
「ワンッ!」
「で、でも――」
「口答えするな。さっさと行け!」
ストラスは目を鋭くさせ、苺を睨むように怒り口調で言った。そして、風呂場がある方向を指差した。苺は頭を下げ、オルトロスと一緒に風呂場へ向かった。
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