49 / 77
第6章:苺の悩み(苺視点)
6-11:玩具
しおりを挟む
「あ、あんなになられてるのに、ストラス様はなんで平気なのでしょうか? 他のお客様なら『すぐ奉仕しろ』と仰るのに。苺に気を遣ってらっしゃるのか、……いや、ただ偶然の事象であって、苺でそうなったのではなく、こういう場合は苺以外の者が奉仕した方が適切なのかもしれない」
苺は静まり返った脱衣所でブツブツと独り言を言いながら、用意していた浴衣を着た。そして、髪の毛を乾かし、部屋へ向かった。
部屋へ入ると、ストラスが机の前に座り、何かを読んでいた。机の上にはストラスが買った指南書とガラス細工の工房で受け取った木箱が置かれていた。
ストラスは苺が部屋へ入ってきたのに気付くと、苺を手招きし、自分の隣へ座らせ、千代見草の文様が施された封筒と便箋を手渡した。
「これは苺の筆跡か? しかし、このようなものを書く時間は無かったと思うが?」
「拝見しますね。……この筆跡は月下お兄様です。でも、苺達が離れに着いた時には無かったような。わざわざ届けに来られたのでしょうか? それなら、一声掛けて下さって頂ければ」
苺はそんな大した要件ではないのだろうと軽く流し読みをしていると、『玩具』の文字が目に飛び込んできて、改めて初めから読み直した。
読むにつれて、内容の卑猥さに苺は段々と頬を赤くし、便箋を持ったまま、顔を隠した。そして、便箋を少しズラし、ストラスをちらりと見た。
「あ、あの! ストラス様は……こ、これをどこまで読まれましたか?」
「どこまで? 勿論、最後まで読んだぞ。とても字が綺麗で読みやすかった。確かに言われてみると、月下が書いたのだなと分かる気がする」
「いえ、そういうことではなくて……。でも、ストラス様は最後まで読まれたのですね」
「あぁ、そうだ。なんだ? 読んではまずかったか?」
苺は首を大きく横に振った。そして、便箋を机に置くと、躊躇いながらも木箱に手を伸ばした。
苺は木箱の蓋をゆっくりと開け、中身をそっと覗いた。苺は例のあれと分かると、急いで蓋を閉め、元あった場所にそそくさと戻した。苦渋に満ちた表情をする苺を心配しながらも、ストラスは木箱を手に取り、蓋を開けた。
「なんだ、ただのガラス細工じゃないか。苺がそのような表情をするから、恐ろしいものが入っているのかと思ったぞ。美しいではないか。さすが職人芸だな」
「――っ! 駄目です! は、早くしまってください!」
「何故、そんなに怒る? 粋な計らいだとは思わないか?」
「おっ、思いません! そのようなオモチャをわざわざガラス細工の店主に造らせるなんて! 流石の苺でも怒ります!」
「ん? ちょっと待て」
苺はすぐ片付けるようにストラスを説得したが、ストラスは苺の言葉を聞き、急に眉間に皺を寄せ、苺を宥めた。
「苺、これは『玩具』だろう? 何故、『オモチャ』なのだ? 手紙には『気持ち良くなる玩具』と書いてあっただろう? 『オモチャ』という物は本来、子供達が遊ぶ物だろう? これのどこが『オモチャ』なのだ?」
ストラスは例のあれを握り締めながら、至って真面目な顔で淡々と応えた。苺は動きを止め、目をパチクリさせた。そして、少しの沈黙の後、苺は顔を引き攣らせながら、待つようにジェスチャーをした。
「――へ? で、ですから、それは『オモチャ』であって……。えっ、……あれ? ちょっ、ちょっとお待ち下さい! えーっと、失礼ながら、お聞きしてもよろしいですか?」
「あぁ、構わん」
「ストラス様はその握り締めている物を何だと思われてますか?」
「だから、『玩具』だろう?」
「いえいえ、そうではなくて! もっと具体的に!」
苺はすごい剣幕でストラスを見つめた。ストラスは何故そのような表情をするのかが分からず、首を傾げていた。
苺は静まり返った脱衣所でブツブツと独り言を言いながら、用意していた浴衣を着た。そして、髪の毛を乾かし、部屋へ向かった。
部屋へ入ると、ストラスが机の前に座り、何かを読んでいた。机の上にはストラスが買った指南書とガラス細工の工房で受け取った木箱が置かれていた。
ストラスは苺が部屋へ入ってきたのに気付くと、苺を手招きし、自分の隣へ座らせ、千代見草の文様が施された封筒と便箋を手渡した。
「これは苺の筆跡か? しかし、このようなものを書く時間は無かったと思うが?」
「拝見しますね。……この筆跡は月下お兄様です。でも、苺達が離れに着いた時には無かったような。わざわざ届けに来られたのでしょうか? それなら、一声掛けて下さって頂ければ」
苺はそんな大した要件ではないのだろうと軽く流し読みをしていると、『玩具』の文字が目に飛び込んできて、改めて初めから読み直した。
読むにつれて、内容の卑猥さに苺は段々と頬を赤くし、便箋を持ったまま、顔を隠した。そして、便箋を少しズラし、ストラスをちらりと見た。
「あ、あの! ストラス様は……こ、これをどこまで読まれましたか?」
「どこまで? 勿論、最後まで読んだぞ。とても字が綺麗で読みやすかった。確かに言われてみると、月下が書いたのだなと分かる気がする」
「いえ、そういうことではなくて……。でも、ストラス様は最後まで読まれたのですね」
「あぁ、そうだ。なんだ? 読んではまずかったか?」
苺は首を大きく横に振った。そして、便箋を机に置くと、躊躇いながらも木箱に手を伸ばした。
苺は木箱の蓋をゆっくりと開け、中身をそっと覗いた。苺は例のあれと分かると、急いで蓋を閉め、元あった場所にそそくさと戻した。苦渋に満ちた表情をする苺を心配しながらも、ストラスは木箱を手に取り、蓋を開けた。
「なんだ、ただのガラス細工じゃないか。苺がそのような表情をするから、恐ろしいものが入っているのかと思ったぞ。美しいではないか。さすが職人芸だな」
「――っ! 駄目です! は、早くしまってください!」
「何故、そんなに怒る? 粋な計らいだとは思わないか?」
「おっ、思いません! そのようなオモチャをわざわざガラス細工の店主に造らせるなんて! 流石の苺でも怒ります!」
「ん? ちょっと待て」
苺はすぐ片付けるようにストラスを説得したが、ストラスは苺の言葉を聞き、急に眉間に皺を寄せ、苺を宥めた。
「苺、これは『玩具』だろう? 何故、『オモチャ』なのだ? 手紙には『気持ち良くなる玩具』と書いてあっただろう? 『オモチャ』という物は本来、子供達が遊ぶ物だろう? これのどこが『オモチャ』なのだ?」
ストラスは例のあれを握り締めながら、至って真面目な顔で淡々と応えた。苺は動きを止め、目をパチクリさせた。そして、少しの沈黙の後、苺は顔を引き攣らせながら、待つようにジェスチャーをした。
「――へ? で、ですから、それは『オモチャ』であって……。えっ、……あれ? ちょっ、ちょっとお待ち下さい! えーっと、失礼ながら、お聞きしてもよろしいですか?」
「あぁ、構わん」
「ストラス様はその握り締めている物を何だと思われてますか?」
「だから、『玩具』だろう?」
「いえいえ、そうではなくて! もっと具体的に!」
苺はすごい剣幕でストラスを見つめた。ストラスは何故そのような表情をするのかが分からず、首を傾げていた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる