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第5章:乗り気ではないが(ストラス視点)
5-1:解は証明できず
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ストラスは貴重な本を手放したくない気持ちとメフィストの身勝手な行動に対する苛立ち、人前でまた勃たなかった時の不安と羞恥心などの感情が頭の中を駆け回り、ギリッと歯を噛み、拳を握り、テーブルを強く殴った。
そして、ストラスは気力が消え失せたように、椅子へ腰掛け、背もたれに凭れた。オルトロスは心配そうな顔をし、ストラスのそばに恐る恐る近寄った。
「はぁ、どうしたらいいんだ。……オルトロス、お前はどう思う? 私はまた馬鹿にされてしまうのだろうか?」
オルトロスは耳を垂らして元気がない様子で、細々と鳴き、じっと見つめてきた。ストラスはオルトロスの頭を撫で、不安にさせてしまった事を謝った。
「こうしてはいられん」
ストラスは思い立ったように、書庫へ行き、医学書やそれに関する書物をあーでもないこーでもないとブツブツと言いながら、ひたすら読み漁った。頭の中は常にそのことばかりで、夢の中ではあの日のことが蘇り、人生の中で一番寝つきの悪い日々が続いた。
結局、調べても解決策が見つからず、メフィストとの約束の日がやってきた。
「ストラス、ご機嫌いかがかなぁ? 迎えに来たぞぉ。って、なんだ、この荒れようは」
いつの間にか眠っていたようだ。一番聞きたくない奴の声で目を覚ます。自分が座っていたテーブル周りには、書物が山積みになっており、テーブルの上にも見開きの本が何冊もあった。自分でも気づかずに開きっぱなし、出しっぱなしにしたのだろう。
「……んんっ? あぁ、メフィスト……か」
ストラスは寝ぼけ眼をこすりながら、メフィストの声に反応する。窓ガラスに映る自分は髪がボサボサで、目の下にはクマらしきものが出来ており、疲れた表情をしていた。
「お前、大丈夫か? マンドレイク採集に行った後のような顔をしてるぞ」
「そんなに酷いか? まぁ、お前が言うなら、そうなのかもな。それよりも、今日はあそこへ行く日だよな? 今、支度をし――」
ストラスはもっさりとした動きで椅子から立ち上がった。そして、風呂場へ行こうとしたが、足元に積んであった本の山に足が引っかかり、大きな音を立てて、すっ転んだ。
「はぁ、本当に大丈夫なのかよ。……ん? もしかして、俺があんな事を言ったから、今日まで治し方を調べてたのか?」
テーブルにある何十枚ものメモを見て、メフィストはゾッとしていた。そして、なかなか立ち上がらない自分に肩を貸してくれた。
「こんなんじゃ行けねぇな」
「いや、何が何でも行ってやる。あの貰った本を返す訳にはいかん」
「物への執着がヤバいのは知ってたけど……。ま、あそこには風呂もあるし、別にそういうのを絶対にやらないといけない訳じゃないからさ。慣れたら、そういうのをやりに行けばいいさ」
「じゃぁ、このまま連れて行け。お前がな」
そして、ストラスは気力が消え失せたように、椅子へ腰掛け、背もたれに凭れた。オルトロスは心配そうな顔をし、ストラスのそばに恐る恐る近寄った。
「はぁ、どうしたらいいんだ。……オルトロス、お前はどう思う? 私はまた馬鹿にされてしまうのだろうか?」
オルトロスは耳を垂らして元気がない様子で、細々と鳴き、じっと見つめてきた。ストラスはオルトロスの頭を撫で、不安にさせてしまった事を謝った。
「こうしてはいられん」
ストラスは思い立ったように、書庫へ行き、医学書やそれに関する書物をあーでもないこーでもないとブツブツと言いながら、ひたすら読み漁った。頭の中は常にそのことばかりで、夢の中ではあの日のことが蘇り、人生の中で一番寝つきの悪い日々が続いた。
結局、調べても解決策が見つからず、メフィストとの約束の日がやってきた。
「ストラス、ご機嫌いかがかなぁ? 迎えに来たぞぉ。って、なんだ、この荒れようは」
いつの間にか眠っていたようだ。一番聞きたくない奴の声で目を覚ます。自分が座っていたテーブル周りには、書物が山積みになっており、テーブルの上にも見開きの本が何冊もあった。自分でも気づかずに開きっぱなし、出しっぱなしにしたのだろう。
「……んんっ? あぁ、メフィスト……か」
ストラスは寝ぼけ眼をこすりながら、メフィストの声に反応する。窓ガラスに映る自分は髪がボサボサで、目の下にはクマらしきものが出来ており、疲れた表情をしていた。
「お前、大丈夫か? マンドレイク採集に行った後のような顔をしてるぞ」
「そんなに酷いか? まぁ、お前が言うなら、そうなのかもな。それよりも、今日はあそこへ行く日だよな? 今、支度をし――」
ストラスはもっさりとした動きで椅子から立ち上がった。そして、風呂場へ行こうとしたが、足元に積んであった本の山に足が引っかかり、大きな音を立てて、すっ転んだ。
「はぁ、本当に大丈夫なのかよ。……ん? もしかして、俺があんな事を言ったから、今日まで治し方を調べてたのか?」
テーブルにある何十枚ものメモを見て、メフィストはゾッとしていた。そして、なかなか立ち上がらない自分に肩を貸してくれた。
「こんなんじゃ行けねぇな」
「いや、何が何でも行ってやる。あの貰った本を返す訳にはいかん」
「物への執着がヤバいのは知ってたけど……。ま、あそこには風呂もあるし、別にそういうのを絶対にやらないといけない訳じゃないからさ。慣れたら、そういうのをやりに行けばいいさ」
「じゃぁ、このまま連れて行け。お前がな」
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