16 / 77
第3章:アルディアへの扉(メフィスト視点)
3-7:苺がここにいる理由
しおりを挟む
メフィストは湯船に入ると、自分の股の間に苺を座らせ、後ろから抱き締めた。
「あ、あの……、メフィスト様。あ、あれ……、あれがなんと言っていいのか……。その、当たっております」
苺が自分の体を少し前に移動させようとしたが、メフィストは離すまいと、苺の体に回していた腕を腹回りに下げ、苺の背中にわざと自身の熱くなったモノを擦り付けるかのように密着させた。そして、苺の耳元に吐息交じりでいつもより一段階低い声をさせ、甘く囁いた。
「ヘッ、当たってんじゃなくて、……わざと当ててんだよ。俺の、すっげぇガッチガチだろ? ん?」
「んんっ、耳元で囁くのは反則です……。苺には刺激が強すぎます」
「何、その反応。すっげぇ可愛い。こんな可愛い子がチラシ配りさせられるって、店主も見る目が無いな。苺ちゃんは可愛いし、丁寧だし、おしとやかだし、人気ありそうだけどな」
メフィストは苺の首筋に顔を埋め、濡れた髪の毛を何度も優しく撫でた。そうしていると、苺は急に黙り込み、すすり泣くように泣き始めた。メフィストは少し驚いたが、苺に優しく声をかけてあげた。
「どうした? 俺が話聞こうか?」
「よろしいんですか?」
メフィストは涙を腕で拭う苺と向かい合う。自分の顔を切なそうな表情をして、涙目で見つめてくる苺に、メフィストはドキッとした。メフィストは優しく微笑みかけた。
「女将は……、苺の育ての親なんです。メフィスト様は異世界をご存知ですか?」
「えっ、あんなに厳しく当たってたのって苺ちゃんの育ての親だったんだ。で、異世界? まぁ、異世界は知ってる程度かな」
「こことは違う文化と歴史が流れる世界で、戦や反乱が絶えない時代を生きていました。その時に、あの創造者様に拾って頂き、命を取り留めました。確か、苺が十六歳の頃だったと思います。ここは奴隷として売り買いされていた者もいるので、皆が生きていくためにはより多くのお客様を招いて、ご奉仕しなければならないのです。しかし、表立って商売をすると、印象が悪いので、あのように市場へ出向き、狙いを決めて、チラシを配っているんです。ですので、売り上げが悪いと、私達の住む場所が無くなってしまうのです」
「なるほどねぇ。俺は本当にたまたまだったんだ」
「はい、なんかすみません。お客様にこういう話をするのはよろしくないのに、聞いて下さってありがとうございます。苺は十八歳を過ぎて、遅めのデビューでしたので、至らない点も多くて、固定客がつかないから、女将も怒っているんだと思います」
メフィストは肩を落とす苺の頭を優しく撫でた。そして、もう一度、ギュッと抱き締めた。
「苺ちゃんなら大丈夫だよ。実際に、俺は苺ちゃんの事を好きになりそうだったし」
「メフィスト様にそう言ってくださると、苺は心強いです」
苺の表情は子供のような無邪気で儚くて、メフィストは苺に釘付けになった。
十分に温め合ったところで、二人は湯船から出て、脱衣所へ向かった。苺がバスタオルを手に持ち、メフィストの体を拭こうとした。このままでは苺の体が冷えてしまうと思ったメフィストは苺からタオルを取り、苺の体を拭き出した。
「あ、あの、苺は自分で拭きますから」
「いいの。俺が拭きたくなっちゃったの。俺の体は自分で拭くから」
「で、でも! それじゃ、おもてなしが――」
「十分おもてなしされてるし、俺の体を拭くの大変だろ? その代わり、この服? 布? の着方が分かんねぇから、教えてくれ」
メフィストは苺の体を拭き終わると、自分の体を拭き始めた。その間に、苺には自分の浴衣を着るように伝え、拭き終わるのを待って貰った。そして、メフィストは苺から浴衣について説明を受け、着付けをして貰った。
「あ、あの……、メフィスト様。あ、あれ……、あれがなんと言っていいのか……。その、当たっております」
苺が自分の体を少し前に移動させようとしたが、メフィストは離すまいと、苺の体に回していた腕を腹回りに下げ、苺の背中にわざと自身の熱くなったモノを擦り付けるかのように密着させた。そして、苺の耳元に吐息交じりでいつもより一段階低い声をさせ、甘く囁いた。
「ヘッ、当たってんじゃなくて、……わざと当ててんだよ。俺の、すっげぇガッチガチだろ? ん?」
「んんっ、耳元で囁くのは反則です……。苺には刺激が強すぎます」
「何、その反応。すっげぇ可愛い。こんな可愛い子がチラシ配りさせられるって、店主も見る目が無いな。苺ちゃんは可愛いし、丁寧だし、おしとやかだし、人気ありそうだけどな」
メフィストは苺の首筋に顔を埋め、濡れた髪の毛を何度も優しく撫でた。そうしていると、苺は急に黙り込み、すすり泣くように泣き始めた。メフィストは少し驚いたが、苺に優しく声をかけてあげた。
「どうした? 俺が話聞こうか?」
「よろしいんですか?」
メフィストは涙を腕で拭う苺と向かい合う。自分の顔を切なそうな表情をして、涙目で見つめてくる苺に、メフィストはドキッとした。メフィストは優しく微笑みかけた。
「女将は……、苺の育ての親なんです。メフィスト様は異世界をご存知ですか?」
「えっ、あんなに厳しく当たってたのって苺ちゃんの育ての親だったんだ。で、異世界? まぁ、異世界は知ってる程度かな」
「こことは違う文化と歴史が流れる世界で、戦や反乱が絶えない時代を生きていました。その時に、あの創造者様に拾って頂き、命を取り留めました。確か、苺が十六歳の頃だったと思います。ここは奴隷として売り買いされていた者もいるので、皆が生きていくためにはより多くのお客様を招いて、ご奉仕しなければならないのです。しかし、表立って商売をすると、印象が悪いので、あのように市場へ出向き、狙いを決めて、チラシを配っているんです。ですので、売り上げが悪いと、私達の住む場所が無くなってしまうのです」
「なるほどねぇ。俺は本当にたまたまだったんだ」
「はい、なんかすみません。お客様にこういう話をするのはよろしくないのに、聞いて下さってありがとうございます。苺は十八歳を過ぎて、遅めのデビューでしたので、至らない点も多くて、固定客がつかないから、女将も怒っているんだと思います」
メフィストは肩を落とす苺の頭を優しく撫でた。そして、もう一度、ギュッと抱き締めた。
「苺ちゃんなら大丈夫だよ。実際に、俺は苺ちゃんの事を好きになりそうだったし」
「メフィスト様にそう言ってくださると、苺は心強いです」
苺の表情は子供のような無邪気で儚くて、メフィストは苺に釘付けになった。
十分に温め合ったところで、二人は湯船から出て、脱衣所へ向かった。苺がバスタオルを手に持ち、メフィストの体を拭こうとした。このままでは苺の体が冷えてしまうと思ったメフィストは苺からタオルを取り、苺の体を拭き出した。
「あ、あの、苺は自分で拭きますから」
「いいの。俺が拭きたくなっちゃったの。俺の体は自分で拭くから」
「で、でも! それじゃ、おもてなしが――」
「十分おもてなしされてるし、俺の体を拭くの大変だろ? その代わり、この服? 布? の着方が分かんねぇから、教えてくれ」
メフィストは苺の体を拭き終わると、自分の体を拭き始めた。その間に、苺には自分の浴衣を着るように伝え、拭き終わるのを待って貰った。そして、メフィストは苺から浴衣について説明を受け、着付けをして貰った。
1
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる