13 / 77
第3章:アルディアへの扉(メフィスト視点)
3-4:陰間茶屋
しおりを挟む
メフィストは市場の通りを外れ、入り組んだ薄暗い路地へと子供とともに入った。子供はメフィストがちゃんと後ろにいるかをチラチラと見た。そして、二人は路地の突き当たりにやってきた。
「すみません。遠くて……。でも、もう着きますから」
「もう着くって? ここ行き止まりだぜ?」
子供が壁に触れると、壁はすっと消え、行き止まりだった先に砂利道が現れた。
「こちらです」
「あ、あぁ……。隠し通路か」
メフィストは子供の後を追った。メフィストが入ると、壁は元通りになった。そして、振り返ると、今までの町並みとは違い、提灯がぶら下がり、裕福そうな者たちが遊び相手を店先で選んでいた。ストラスの古い書物で見たことがある。ここが遊郭ということが。
「なんだ、ここは? さっきと全然景色が違う」
メフィストは立ち止まり、初めて見る光景に目移りした。子供がメフィストの腕を引っ張り、そんな光景をゆっくり見させてくれず、とある屋敷へ入った。
入り口には年配の女性が座っており、全身ずぶ濡れのメフィストを見て、酷く驚いていた。子供が女性に事情を話すと、女性は子供に目くじらを立てて、怒鳴りつけていた。
「あんた、チラシもろくに配れない癖に、外客をずぶ濡れにさせて! 本当に使えない子だね!」
「も、申し訳ございません……」
女性はずっと怒鳴りっぱなしで、子供は半べそをかいていた。メフィストはいたたまれない気持ちになり、やんわり二人の話に割って入った。
「あ、あの……。着替えとかありますか? あと、疲れたんで、少し休憩したいです」
「ゴホンッ。お見苦しいところを見せてしまって、ごめんなさいね。ほら、苺! あんたが連れてきたんだから、きちんとおもてなししなさい! ――あぁ、ごめんなさいね。今回はお代は要らないわ」
「いえ、本当に休憩したいと思ってたんで、金は払います」
メフィストは金袋から金貨を適当に掴み、女性に手渡した。女性は金貨を数えると、メフィストの顔を見て、オロオロし始めた。
「あ、あの、こんなにも……」
「いいよ。休憩代がいくらか分からないし」
「あ、ありがとうございます。……苺! お客様に最高のおもてなしをしな! 分かったかい!」
「はい、……頑張ります。どうぞ、こちらです」
メフィストは廊下が水浸しになるか心配だったが、女性から問題ないと言われ、軽く頭を下げると、苺と呼ばれていた子供についていった。
敷地は広く、先程の母屋からいくつか廊下が伸び、小さな離れがいくつかあった。苺に案内され、メフィストは一つの離れに入った。苺はメフィストを露天風呂に案内し、タオルと浴衣を準備した。
「へぇ、風呂が外にあんだ。珍しいな」
「新しいお召し物をご用意いたしましたので、ごゆっくりお寛ぎください」
「ちょっと待った。苺ちゃんも一緒に入ろうぜ」
苺が立ち去ろうとした瞬間、メフィストは苺の腕を取り、ニコリと笑った。苺が戸惑っている間に、メフィストは服をすべて脱ぎ、全裸になった。苺はメフィストの裸を見て、顔を真っ赤にし、俯いた。
「あ、あの……。その……」
「俺、分かっちゃったんだよねぇ」
「へぇ?」
「ここって……そういう場所なんでしょ?」
苺は言葉を詰まらせ、目を泳がせながら、首を縦に小さくコクリとさせた。
「すみません。遠くて……。でも、もう着きますから」
「もう着くって? ここ行き止まりだぜ?」
子供が壁に触れると、壁はすっと消え、行き止まりだった先に砂利道が現れた。
「こちらです」
「あ、あぁ……。隠し通路か」
メフィストは子供の後を追った。メフィストが入ると、壁は元通りになった。そして、振り返ると、今までの町並みとは違い、提灯がぶら下がり、裕福そうな者たちが遊び相手を店先で選んでいた。ストラスの古い書物で見たことがある。ここが遊郭ということが。
「なんだ、ここは? さっきと全然景色が違う」
メフィストは立ち止まり、初めて見る光景に目移りした。子供がメフィストの腕を引っ張り、そんな光景をゆっくり見させてくれず、とある屋敷へ入った。
入り口には年配の女性が座っており、全身ずぶ濡れのメフィストを見て、酷く驚いていた。子供が女性に事情を話すと、女性は子供に目くじらを立てて、怒鳴りつけていた。
「あんた、チラシもろくに配れない癖に、外客をずぶ濡れにさせて! 本当に使えない子だね!」
「も、申し訳ございません……」
女性はずっと怒鳴りっぱなしで、子供は半べそをかいていた。メフィストはいたたまれない気持ちになり、やんわり二人の話に割って入った。
「あ、あの……。着替えとかありますか? あと、疲れたんで、少し休憩したいです」
「ゴホンッ。お見苦しいところを見せてしまって、ごめんなさいね。ほら、苺! あんたが連れてきたんだから、きちんとおもてなししなさい! ――あぁ、ごめんなさいね。今回はお代は要らないわ」
「いえ、本当に休憩したいと思ってたんで、金は払います」
メフィストは金袋から金貨を適当に掴み、女性に手渡した。女性は金貨を数えると、メフィストの顔を見て、オロオロし始めた。
「あ、あの、こんなにも……」
「いいよ。休憩代がいくらか分からないし」
「あ、ありがとうございます。……苺! お客様に最高のおもてなしをしな! 分かったかい!」
「はい、……頑張ります。どうぞ、こちらです」
メフィストは廊下が水浸しになるか心配だったが、女性から問題ないと言われ、軽く頭を下げると、苺と呼ばれていた子供についていった。
敷地は広く、先程の母屋からいくつか廊下が伸び、小さな離れがいくつかあった。苺に案内され、メフィストは一つの離れに入った。苺はメフィストを露天風呂に案内し、タオルと浴衣を準備した。
「へぇ、風呂が外にあんだ。珍しいな」
「新しいお召し物をご用意いたしましたので、ごゆっくりお寛ぎください」
「ちょっと待った。苺ちゃんも一緒に入ろうぜ」
苺が立ち去ろうとした瞬間、メフィストは苺の腕を取り、ニコリと笑った。苺が戸惑っている間に、メフィストは服をすべて脱ぎ、全裸になった。苺はメフィストの裸を見て、顔を真っ赤にし、俯いた。
「あ、あの……。その……」
「俺、分かっちゃったんだよねぇ」
「へぇ?」
「ここって……そういう場所なんでしょ?」
苺は言葉を詰まらせ、目を泳がせながら、首を縦に小さくコクリとさせた。
1
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる