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第2章:新世界の創造(魔王視点)
2-1:聖女の願いを叶えるために
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「推測するに、この新天地が浮上し続けているのはお前の魔力や生命力が原動力なのだな。だから、ティルウィングによって『人間として生きる』ことを剝奪されたのだな。今まで随分と辛い人生を送って来たのはよく知っている。それでも懸命に生きるお前に、我は知らないうちに心奪われたのだろうな。お前と契りを交わした以上、我はお前が理想とする世界を創造してみせる」
魔王ダルタロスはレフィーナの額に軽く口づけをし、身に纏った漆黒のマントを地面の上に敷くと、その上にレフィーナを寝かせ、マントで包んだ。
「仕方ない。部下たちを呼ぶか」
ダルタロスは指を鳴らし、次元の歪みを生じさせた。そこから四天王の二人が姿を現し、ダルタロスの前に跪いた。
「魔王様、いかがなさいましたでしょうか?」
「セーレ。お前には、この地に他種族が共存出来るために必要な資源などの調達をして欲しい。ストラスは交渉などをしてもらう」
「はい、畏まりました」
セーレは命令通りに、直ちに資源調達のため、その場から去っていった。しかし、ストラスは立ち上がると、こちらをじっと見つめていた。
「ストラス、どうした?」
「魔王様、無礼を承知ですが、魔王様はもうお亡くなったことになっています。ですので、貴方はもう私たちの魔王様ではございません」
「あぁ、そうだな。……下界にいるあいつらはどうしている?」
「はい、お察しの通り、魔王様の配下におられました四天王の一人が魔王を名乗ろうとしており、魔界で混乱が生じています」
「まぁ、メフィストは呑気にその様子を見ているのだろう」
「恐らくは……。それよりも、転生勇者は随分と問題児と村でも耳にしました。他種族共存において、下界でもそれなりの均衡を保たなければなりませんから、ご命令頂いた『交渉』と並行して――」
「お前の好きなようにやれ。我が言わずとも、分かっておるだろう。それと、隠密行動をする位なら、何故、あの危機的状況に現れなかったのか……」
「それは『運命』ですので、わざわざ私がそれをねじ曲げるのはおかしな話かと……。では、ご命令頂いた『交渉』などはこちらで処理させて頂きます」
ストラスは胸に手を当て、ダルタロスに一礼すると、浮上している土地の端から飛び降り、その場から去っていった。
その様子を見て、魔王はこめかみに手を当て、深いため息をついた。
「相変わらずな態度だな。ストラスを宰相にして良かったものの、少しばかり仕事を与え過ぎただろうか……」
*
数日間かけて、セーレが下界と新天地との往復を繰り返し、下界からあらゆる資源を調達した。ひと仕事終えるセーレがダルタロスの元へやってきて、言葉を詰まらせながら、尋ねてきた。
「魔王様。失礼ながら、お聞きしたい事があるのですが……」
「なんだ、言ってみろ」
「その……、何故、聖女がこのような所にいるのですか?」
「お前には説明しないといけないな」
ダルタロスは事の成り行きをセーレに話した。セーレは酷く驚き、開いた口が塞がらなかった。セーレは受け入れがたい事実に、自分の中で魔王の話をうまい具合に咀嚼し、飲み込んだ。
「そんなことがあったのですね。なんて悲惨な……」
そうこうしていると、麻製の大きな網を両手に持ち、下界から滑空してきたストラスが戻って来た。網はストラスの背丈の倍以上あり、二人が目を凝らして見ると、その網の中でドワーフ族と獣人族が怯えて、体を震わせていた。
二人は額に手を当て、ため息をついた。そんな二人を見るも、ストラスは表情一つ変えず、ダルタロスの前にドワーフ族と獣人族を差し出してきた。
「魔王様、必要な人材をお連れしました」
「すまんが、きちんと『交渉』はしたんだろうな? 皆、怯えておるぞ」
「はい、させて頂きました。『魔王様がお呼びだ。ついてこい。さもなくば、命はないぞ』とお伝えし、人数的に抱えきれなかったため、このような網を作らせ、ここまで運んできました」
「嫌な予感はやはり的中するものだな。……仕方ない、我から釈明をせねばならんな」
「では、よろしくお願い致します。私は他の種族も確保済みですので、回収に行ってまいります」
そう言い残すと、ストラスは再び下界へ戻っていった。
ダルタロスはため息をつき、ドワーフ族や獣人族に事の顛末を話した。最初は驚いていたが、勇者の話をしだすと、顔色が変わり、体を震わせていた。
ダルタロスは、ここは安全であると説明し、他種族共存のために力が貸して欲しいと話す。それが聖女の願いだと付け加えると、皆俄然とやる気を出していた。
魔王ダルタロスはレフィーナの額に軽く口づけをし、身に纏った漆黒のマントを地面の上に敷くと、その上にレフィーナを寝かせ、マントで包んだ。
「仕方ない。部下たちを呼ぶか」
ダルタロスは指を鳴らし、次元の歪みを生じさせた。そこから四天王の二人が姿を現し、ダルタロスの前に跪いた。
「魔王様、いかがなさいましたでしょうか?」
「セーレ。お前には、この地に他種族が共存出来るために必要な資源などの調達をして欲しい。ストラスは交渉などをしてもらう」
「はい、畏まりました」
セーレは命令通りに、直ちに資源調達のため、その場から去っていった。しかし、ストラスは立ち上がると、こちらをじっと見つめていた。
「ストラス、どうした?」
「魔王様、無礼を承知ですが、魔王様はもうお亡くなったことになっています。ですので、貴方はもう私たちの魔王様ではございません」
「あぁ、そうだな。……下界にいるあいつらはどうしている?」
「はい、お察しの通り、魔王様の配下におられました四天王の一人が魔王を名乗ろうとしており、魔界で混乱が生じています」
「まぁ、メフィストは呑気にその様子を見ているのだろう」
「恐らくは……。それよりも、転生勇者は随分と問題児と村でも耳にしました。他種族共存において、下界でもそれなりの均衡を保たなければなりませんから、ご命令頂いた『交渉』と並行して――」
「お前の好きなようにやれ。我が言わずとも、分かっておるだろう。それと、隠密行動をする位なら、何故、あの危機的状況に現れなかったのか……」
「それは『運命』ですので、わざわざ私がそれをねじ曲げるのはおかしな話かと……。では、ご命令頂いた『交渉』などはこちらで処理させて頂きます」
ストラスは胸に手を当て、ダルタロスに一礼すると、浮上している土地の端から飛び降り、その場から去っていった。
その様子を見て、魔王はこめかみに手を当て、深いため息をついた。
「相変わらずな態度だな。ストラスを宰相にして良かったものの、少しばかり仕事を与え過ぎただろうか……」
*
数日間かけて、セーレが下界と新天地との往復を繰り返し、下界からあらゆる資源を調達した。ひと仕事終えるセーレがダルタロスの元へやってきて、言葉を詰まらせながら、尋ねてきた。
「魔王様。失礼ながら、お聞きしたい事があるのですが……」
「なんだ、言ってみろ」
「その……、何故、聖女がこのような所にいるのですか?」
「お前には説明しないといけないな」
ダルタロスは事の成り行きをセーレに話した。セーレは酷く驚き、開いた口が塞がらなかった。セーレは受け入れがたい事実に、自分の中で魔王の話をうまい具合に咀嚼し、飲み込んだ。
「そんなことがあったのですね。なんて悲惨な……」
そうこうしていると、麻製の大きな網を両手に持ち、下界から滑空してきたストラスが戻って来た。網はストラスの背丈の倍以上あり、二人が目を凝らして見ると、その網の中でドワーフ族と獣人族が怯えて、体を震わせていた。
二人は額に手を当て、ため息をついた。そんな二人を見るも、ストラスは表情一つ変えず、ダルタロスの前にドワーフ族と獣人族を差し出してきた。
「魔王様、必要な人材をお連れしました」
「すまんが、きちんと『交渉』はしたんだろうな? 皆、怯えておるぞ」
「はい、させて頂きました。『魔王様がお呼びだ。ついてこい。さもなくば、命はないぞ』とお伝えし、人数的に抱えきれなかったため、このような網を作らせ、ここまで運んできました」
「嫌な予感はやはり的中するものだな。……仕方ない、我から釈明をせねばならんな」
「では、よろしくお願い致します。私は他の種族も確保済みですので、回収に行ってまいります」
そう言い残すと、ストラスは再び下界へ戻っていった。
ダルタロスはため息をつき、ドワーフ族や獣人族に事の顛末を話した。最初は驚いていたが、勇者の話をしだすと、顔色が変わり、体を震わせていた。
ダルタロスは、ここは安全であると説明し、他種族共存のために力が貸して欲しいと話す。それが聖女の願いだと付け加えると、皆俄然とやる気を出していた。
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