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第9章:君のもの、僕のもの、俺のもの
#59:#ふた恋(最終話)
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「おい、おい……。もしかして、サプライズか?」
「そうみたいですね。……と、また手紙がスタッフさんから」
楓雅はスタッフから手紙を預かると、封を開けて、手紙の内容を読んだ。
『ビックリしましたか? 私からのサプライズです。上手くいきましたかね? 三人には基本を忠実にしつつも、三人それぞれの自由さを出していってもらいたいという思いを込めて、音楽で使われる速度記号のひとつであるTempo rubatoから名付けました。これから色んな音を奏でていって下さい』
三人は社長の思いとファン達のサプライズで感極まり、泣きそうになった。ファン達はサプライズが成功した事にファン同士でハイタッチしたりと喜んでいた。
「もう! ……泣いちゃうじゃん!」
「って、もう泣いてんじゃん。優はめっちゃ泣き虫なんすよ」
「それにしても、素敵なグループ名をつけて下さって、ありがとうございます。そして、会場のファンの方々もサプライズありがとうございます」
優は案の定、嬉し泣きした。春人は笑いながら、スタッフからタオルを受け取ると、優に渡した。優は涙を拭きながら、ファンに何度も礼をした。優は泣き終わると、タオルをスタッフへ返し、深呼吸して、ステージ中央に戻った。三人はお互いの顔を見て、頷いた。そして、楓雅がスタッフに合図を送ると、観客側の照明が消え、三人にスポットライトが当たった。
「それでは、Rubatoのデビュー曲を聴いて頂きたいと思います。曲紹介を優からお願いします」
「はい。この曲のタイトルは、三人の香り、刺激、ありとあらゆる感覚を意味しています。少しでも多くの方々に三人の味を色んな角度から味わって欲しいという意味も込められています。それでは、聴いて下さい。……Rubatoで『flavor』」
ポップなイントロから始まり、三人は笑顔でデビュー曲を披露した。デビュー曲は心が温まるような、誰もが口ずさみたくなるテンポで元気になれるような曲だった。会場は春人の赤、楓雅の青、優の白のそれぞれのイメージカラーのサイリウムで彩られた。それを見ているだけで心に響くものがあり、三人はファンの声に応えるように、一生懸命歌った。
曲が終わると、会場は歓声が起こり、拍手喝采だった。三人はやり切った表情をし、手を繋ぎ、深々と礼をした。その後はファンとの交流をし、ファン達が帰る時には握手をしたりとファンサービスをした。最後に、ブログにスタッフに撮ってもらった写真を数枚載せ、ファンへのメッセージを書き、無事にデビューイベントは終わった。
三人は疲れたのか、帰りの車内では車に揺られながら、お互いに凭れ、幸せそうに寝ていた。マンションに着くと、マネージャーに起こされ、眠たい目を擦りながら、お礼の挨拶をし、自宅へ帰った。
「はぁ、今日は疲れたぁ! あっという間だったな。腹減ったぁ」
「初めは緊張しましたけど、サプライズだったり、ファンの皆さんからの温かい応援に励まされましたね」
「やっと終わった……。緊張したぁ。泣いちゃったけど、大丈夫かなぁ?」
三人はソファに凭れると、深い溜め息をつき、その溜め息の大きさに声を出して、笑った。優はネックレスに手を当てると、少し咳払いをし、二人に告げた。
「シグニス達のお陰でデビューする事が出来たけど、春人に楓雅君……、二人のお陰でもある。本当にありがとう。これからも沢山迷惑をかけちゃうかもしれないけど、よろしくお願いします」
「あぁ、よろしくな!」
「ええ、これからもよろしくお願いします」
二人が優に微笑みかけると、優は頬を赤くしながら、二人に軽くキスをした。二人は目を丸くして、驚いた。
「…………好き、だよ。春人も楓雅君もずっと好き」
優は勇気を振り絞って、初めて素直に面と向かって、二人に愛を伝えた。二人は額に手を当て、再び大きな溜め息をついた。二人が嬉しがるだろうと思った優は二人の態度に困惑した。
「えっ? なんか……いけなかったかな?」
「あぁ。……イケないよ、マジで」
「えぇ、本当にイケませんね」
二人はそう言うと、優に抱きつき、優の頬にキスをした。そして、嫌な予感がすると思ったのも束の間、案の定、優は春人にお姫様抱っこをされ、楓雅と一緒に部屋へ入り、三人で秘密の打ち上げ会を夜遅くまで行なった。
デビュー曲は売り上げ好調でデイリーランキングで一位となり、生配信も最終的に五万人を達成した。これからも二人の力を借りながら、優は頑張ろうと一歩先を見た。
そして、二人に恋して、恋されて、優はまだ見た事のない世界へ羽ばたこうとしていた。
「そうみたいですね。……と、また手紙がスタッフさんから」
楓雅はスタッフから手紙を預かると、封を開けて、手紙の内容を読んだ。
『ビックリしましたか? 私からのサプライズです。上手くいきましたかね? 三人には基本を忠実にしつつも、三人それぞれの自由さを出していってもらいたいという思いを込めて、音楽で使われる速度記号のひとつであるTempo rubatoから名付けました。これから色んな音を奏でていって下さい』
三人は社長の思いとファン達のサプライズで感極まり、泣きそうになった。ファン達はサプライズが成功した事にファン同士でハイタッチしたりと喜んでいた。
「もう! ……泣いちゃうじゃん!」
「って、もう泣いてんじゃん。優はめっちゃ泣き虫なんすよ」
「それにしても、素敵なグループ名をつけて下さって、ありがとうございます。そして、会場のファンの方々もサプライズありがとうございます」
優は案の定、嬉し泣きした。春人は笑いながら、スタッフからタオルを受け取ると、優に渡した。優は涙を拭きながら、ファンに何度も礼をした。優は泣き終わると、タオルをスタッフへ返し、深呼吸して、ステージ中央に戻った。三人はお互いの顔を見て、頷いた。そして、楓雅がスタッフに合図を送ると、観客側の照明が消え、三人にスポットライトが当たった。
「それでは、Rubatoのデビュー曲を聴いて頂きたいと思います。曲紹介を優からお願いします」
「はい。この曲のタイトルは、三人の香り、刺激、ありとあらゆる感覚を意味しています。少しでも多くの方々に三人の味を色んな角度から味わって欲しいという意味も込められています。それでは、聴いて下さい。……Rubatoで『flavor』」
ポップなイントロから始まり、三人は笑顔でデビュー曲を披露した。デビュー曲は心が温まるような、誰もが口ずさみたくなるテンポで元気になれるような曲だった。会場は春人の赤、楓雅の青、優の白のそれぞれのイメージカラーのサイリウムで彩られた。それを見ているだけで心に響くものがあり、三人はファンの声に応えるように、一生懸命歌った。
曲が終わると、会場は歓声が起こり、拍手喝采だった。三人はやり切った表情をし、手を繋ぎ、深々と礼をした。その後はファンとの交流をし、ファン達が帰る時には握手をしたりとファンサービスをした。最後に、ブログにスタッフに撮ってもらった写真を数枚載せ、ファンへのメッセージを書き、無事にデビューイベントは終わった。
三人は疲れたのか、帰りの車内では車に揺られながら、お互いに凭れ、幸せそうに寝ていた。マンションに着くと、マネージャーに起こされ、眠たい目を擦りながら、お礼の挨拶をし、自宅へ帰った。
「はぁ、今日は疲れたぁ! あっという間だったな。腹減ったぁ」
「初めは緊張しましたけど、サプライズだったり、ファンの皆さんからの温かい応援に励まされましたね」
「やっと終わった……。緊張したぁ。泣いちゃったけど、大丈夫かなぁ?」
三人はソファに凭れると、深い溜め息をつき、その溜め息の大きさに声を出して、笑った。優はネックレスに手を当てると、少し咳払いをし、二人に告げた。
「シグニス達のお陰でデビューする事が出来たけど、春人に楓雅君……、二人のお陰でもある。本当にありがとう。これからも沢山迷惑をかけちゃうかもしれないけど、よろしくお願いします」
「あぁ、よろしくな!」
「ええ、これからもよろしくお願いします」
二人が優に微笑みかけると、優は頬を赤くしながら、二人に軽くキスをした。二人は目を丸くして、驚いた。
「…………好き、だよ。春人も楓雅君もずっと好き」
優は勇気を振り絞って、初めて素直に面と向かって、二人に愛を伝えた。二人は額に手を当て、再び大きな溜め息をついた。二人が嬉しがるだろうと思った優は二人の態度に困惑した。
「えっ? なんか……いけなかったかな?」
「あぁ。……イケないよ、マジで」
「えぇ、本当にイケませんね」
二人はそう言うと、優に抱きつき、優の頬にキスをした。そして、嫌な予感がすると思ったのも束の間、案の定、優は春人にお姫様抱っこをされ、楓雅と一緒に部屋へ入り、三人で秘密の打ち上げ会を夜遅くまで行なった。
デビュー曲は売り上げ好調でデイリーランキングで一位となり、生配信も最終的に五万人を達成した。これからも二人の力を借りながら、優は頑張ろうと一歩先を見た。
そして、二人に恋して、恋されて、優はまだ見た事のない世界へ羽ばたこうとしていた。
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