# ふた恋~脱陰キャしたら、クール系優等生とわんこ系幼馴染から更に溺愛されました~

沼田桃弥

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第9章:君のもの、僕のもの、俺のもの

#58:登場

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 あっという間に、地獄の二ヶ月が終わり、デビュー当日になった。三人は事務所へ寄った後、今回のイベント会場へミニバンで向かう事となった。移動中の車から商業ビルに設置してある大型ビジョンを見ると、自分達のデビューイベントのコマーシャルやプロモーションビデオが流れていた。それを指差して見ている女の子達が手を取り合い飛び上がりながら、目を輝かせ、見惚れていたのが見えた。


「いよいよだね……。緊張する」
「俺も緊張する。お前は?」
「僕だって緊張しますよ。……それで、朝比奈はここまで来て、どう思ってるんですか?」
「どうって言われても……。正直、まさか僕みたいなのがアイドルになるって思ってなかったし、しかも、春人と楓雅君がこうやって一緒にやってくれるなんて夢にも思ってなかった。色々あったけど、……本当にありがとう」


 優が二人に微笑むと、二人も優に微笑み返した。そして、車は会場となる商業ビルに到着した。ビルの前にはファンらしき人達がいて、自分達の名前が入ったお手製のうちわを持って、待ち構えていた。


「三人とも会場着きましたよ。今日はお客さん多いみたいだから、頑張ってね!」


 ミニバンのドアをマネージャーが開けると、ドッと押し寄せる様な黄色い声が聞こえた。三人は緊張しながらも、声援を送ってくれている人達に笑顔で手を振り、会場へ入った。会場は最上階にあるイベントフロアで規模はやや小さいものの、満員になる予定だと三人は聞かされた。三人は丁寧にスタッフへ挨拶し、リハーサルを行った。
 三人はそれぞれの衣装に着替え、楽屋でフリの最終確認をした。その間に、観客が会場に入場してきた。ざわざわしている声が楽屋まで届き、優は落ち着かず、顔が強張っていた。それに気付いた二人は優の手を握った。


「朝比奈、笑顔ですよ、笑顔」
「優、安心しろ。俺達がいるし、なんとかなる!」
「三人ともそろそろ本番です!」
「はい、分かりました!」
「う、うん。そうだよね……。あのさ、折角だし、この前、決めた円陣やろうよ」
「そうですね」

 三人は円になる様に手を繋ぎ、目を閉じて、数回深呼吸した。そして、ネックレスに手を当て、もう一方の手で手を重ねて、目で合図を送り、三人で一緒に掛け声を言った。


「――幾歳の時を超えようとも、我々の愛は永遠なり」


 三人は手を天高く振り上げると、マイクを持って、ステージへ上がった。三人が登場すると、歓声が上がり、お手製のうちわを振ったり、サイリウムを持って、応援してくれる人達で会場は満員だった。三人はステージ中央に立つと、ファンに深々とお辞儀をした。そして、先陣を切って、春人が開始の挨拶をする。


「それでは、デビューイベントを始めたいと思います! 俺達のデビューライブと生配信に来て下さった方々、ありがとうございます!」
「僕達はまだグループ名を知らされていません。……優は知ってますか?」
「ううん、知らない。……と、ここで何やらお手紙が来ているみたいです。読んでみたいと思います」


 優はスタッフから手紙を受け取ると、封を開けて、中身を見た。手紙の差出人は宇佐美社長からだった。


『今日は三人ともデビューおめでとう。初めて立つステージで緊張してると思います。今日はこれまでの成果を思う存分に発揮して、観てくれているファンの皆を楽しませてください。早速ですが、グループ名を発表しましょう』


 優が手紙を読み終えると、突然、会場の照明が消え、後ろの大型ビジョンにカウントダウンが表示された。三人は戸惑いながら、カウントダウンを始めた。そして、カウントダウンが終わると、会場のファン達が声を揃えて、グループ名を叫んだ。


Rubatoルバート、デビューおめでとう!』


「えっ?」
「……はっ?」


 会場の照明がつき、三人が会場を見渡すと、最後列のファン達がグループ名の書いたプレートを掲げていた。三人は戸惑い、言葉を失った。
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