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第9章:君のもの、僕のもの、俺のもの
#53:約束
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三人はお腹いっぱいになると、リビングでのんびり過ごした。特に何もせず、大好きな二人と一緒に過ごせる事に優は嬉しくなり、自然と笑みがこぼれる。
「何、一人で笑ってんだよ」
「だって、大好きな二人とこうやって過ごせる事は凄い幸せだなって……」
「朝比奈……」
楓雅は優の頬に何度もキスをした。優が楓雅とイチャついていると、春人は不機嫌そうな顔をし、優に近付いた。春人がキスをしようとすると、優は春人の顔を手で押し退けて、抵抗した。
「なんで俺とはキスしてくんねぇんだよ!」
「だって、春人のキス痛いんだもん! 下手くそ!」
「おまえなぁ!」
春人は優の脇腹をくすぐり出した。優は声を出して、笑った。そして、優の隙を狙って、お姫様抱っこした。優は春人の腕の中で手足をバタバタさせ、抵抗したが、春人は馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「下ろせ! 嫌だ!」
「馬鹿にした奴は海に沈めてやる!」
「えっ! ちょ、ちょっと待って! 楓雅君、助けて!」
春人は楓雅に捕まれそうになったが、華麗にかわし、コテージを出て、全速力で海へ向かった。楓雅は呆れながら、二人の後を追った。
「本当にちょっと!」
「俺とのキスがそんなに嫌か!」
「嫌だよ! 痛いし、舌をすっごい吸ってくるし!」
「……本当に……嫌なのか?」
「えっ……」
春人は一瞬しょんぼりとした顔をした。優は言い過ぎたと思い、謝ろうとした。しかし、春人は優を地面に下ろすと、肩を落として、コテージへ帰ろうとした。優は咄嗟に春人の腕を掴み、春人の背中に頭をコツンと当てた。そして、頬を赤くし、小さい声で春人を呼んだ。
「……べ、別に嫌じゃないけど、……優しくして、と言うか」
「でも、嫌なんだろ。だったら、お前とはもうキスしない」
「違くて……。そう言う事じゃなくて……。優しくキスしてって言ってんじゃん。……言わせんな」
「じゃあ、練習していいか? キスの」
優は耳まで赤くし、無言で頷いた。そして、春人は優の方に振り返り、俯く優の顔を顎に手を当て、持ち上げた。
「嫌だったら、言えよ」
「……分かった。は、恥ずかしいから、早くして……」
春人は優を優しく抱き締め、ゆっくりと優の唇に近付き、軽くキスした。春人の腕の中で優は体を震わせ、鼓動を早くした。頬を赤く染め、お互いを見つめ合う二人の間に楓雅が割って入ってきた。
「何、二人でイチャついているんですか? 心配して追いかけてきた僕の身にもなって下さい」
「べ、別にイチャついてねぇし! 練習だよ!」
「何が練習ですか。キスはこうやってするんですよ」
「え、楓雅君、ちょっ……んんっ!」
次は、楓雅が優にキスをした。楓雅のキスは春人とは違うキス慣れしているなキスだった。優は楓雅の肩に手を添えたが、あまりの快感に体をビクつかせ、その場に座り込んだ。楓雅は春人に勝ち誇ったような顔をしてみせた。
「このぐらいしてあげないと、朝比奈は満足しませんよ?」
「あーっ! お前はいつも邪魔してくるな!」
「貴方のキスが下手くそ過ぎるんですよ」
「はぁ? キスだけで勝ったと思うなよ!」
二人が喧嘩している間に、優は自身の熱を帯びた体を冷やすため、ゆっくりと海へ入った。それでも、口の中の感覚や頬の熱さが直らないため、一度、頭まで海に浸かった。顔を上げても、まだ言い合いをしている二人を見て、優はおかしくて笑った。
◆◇◆◇◆◇
三人は海水浴を楽しみ、夜は星空の下でバーベキューする事にした。春人は海外に住んでいた頃に、ボーイスカウトの経験があり、コンロを設置したり、火おこしをそつなくこなした。そして、楓雅と優は春人が準備している間に、食材を切ったり、テーブルを準備したりした。準備を始めた時には夕暮れだったのに、いつの間にか辺りは真っ暗になっていた。
「よし、肉食うぞー!」
「やったぁ! お肉、お肉!」
「朝比奈は本当に食べる事が楽しみなんですね」
三人は星空を見ながら、最高のバーベキューを楽しんだ。楓雅と優がコテージに帰り、皿を洗ったりしていると、春人は物置小屋から焚き火台などを見つけ出し、ビーチチェアの近くで焚き火の準備をした。楓雅と優が家事をし終えて、窓から外を見ると、暗い中にオレンジ色に灯る火が見えた。その横で、春人が二人に手招きしており、二人は春人の元へ行った。
「春人、凄いね! こんな事出来るとは思ってなかった! カッコいい!」
「べ、別にカッコ良くねぇよ。こんなん出来て、当たり前だし?」
自慢げに言う春人に優は苦笑いした。そして、折りたたみ椅子に座り、三人で火を囲んだ。昨日も同じ星空なのに、焚き火があるせいか、また違う味わいがあった。春人と楓雅は飲み物を取りにコテージへ戻った。優が焚き火を珍しそうに眺めていると、二人が少し笑いながら、戻って来た。そんな二人を見ていると、春人が手で優の目を隠した。
「何、急に?」
「こら、お前動くな。じっとしてろ」
「はいはい、分かりました」
優は春人に言われた通りに、大人しく目を閉じ、じっとした。ガザガザと包装紙を開ける音がし、何かと思ったら、胸元に少しひんやりする感覚があった。
「何、一人で笑ってんだよ」
「だって、大好きな二人とこうやって過ごせる事は凄い幸せだなって……」
「朝比奈……」
楓雅は優の頬に何度もキスをした。優が楓雅とイチャついていると、春人は不機嫌そうな顔をし、優に近付いた。春人がキスをしようとすると、優は春人の顔を手で押し退けて、抵抗した。
「なんで俺とはキスしてくんねぇんだよ!」
「だって、春人のキス痛いんだもん! 下手くそ!」
「おまえなぁ!」
春人は優の脇腹をくすぐり出した。優は声を出して、笑った。そして、優の隙を狙って、お姫様抱っこした。優は春人の腕の中で手足をバタバタさせ、抵抗したが、春人は馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「下ろせ! 嫌だ!」
「馬鹿にした奴は海に沈めてやる!」
「えっ! ちょ、ちょっと待って! 楓雅君、助けて!」
春人は楓雅に捕まれそうになったが、華麗にかわし、コテージを出て、全速力で海へ向かった。楓雅は呆れながら、二人の後を追った。
「本当にちょっと!」
「俺とのキスがそんなに嫌か!」
「嫌だよ! 痛いし、舌をすっごい吸ってくるし!」
「……本当に……嫌なのか?」
「えっ……」
春人は一瞬しょんぼりとした顔をした。優は言い過ぎたと思い、謝ろうとした。しかし、春人は優を地面に下ろすと、肩を落として、コテージへ帰ろうとした。優は咄嗟に春人の腕を掴み、春人の背中に頭をコツンと当てた。そして、頬を赤くし、小さい声で春人を呼んだ。
「……べ、別に嫌じゃないけど、……優しくして、と言うか」
「でも、嫌なんだろ。だったら、お前とはもうキスしない」
「違くて……。そう言う事じゃなくて……。優しくキスしてって言ってんじゃん。……言わせんな」
「じゃあ、練習していいか? キスの」
優は耳まで赤くし、無言で頷いた。そして、春人は優の方に振り返り、俯く優の顔を顎に手を当て、持ち上げた。
「嫌だったら、言えよ」
「……分かった。は、恥ずかしいから、早くして……」
春人は優を優しく抱き締め、ゆっくりと優の唇に近付き、軽くキスした。春人の腕の中で優は体を震わせ、鼓動を早くした。頬を赤く染め、お互いを見つめ合う二人の間に楓雅が割って入ってきた。
「何、二人でイチャついているんですか? 心配して追いかけてきた僕の身にもなって下さい」
「べ、別にイチャついてねぇし! 練習だよ!」
「何が練習ですか。キスはこうやってするんですよ」
「え、楓雅君、ちょっ……んんっ!」
次は、楓雅が優にキスをした。楓雅のキスは春人とは違うキス慣れしているなキスだった。優は楓雅の肩に手を添えたが、あまりの快感に体をビクつかせ、その場に座り込んだ。楓雅は春人に勝ち誇ったような顔をしてみせた。
「このぐらいしてあげないと、朝比奈は満足しませんよ?」
「あーっ! お前はいつも邪魔してくるな!」
「貴方のキスが下手くそ過ぎるんですよ」
「はぁ? キスだけで勝ったと思うなよ!」
二人が喧嘩している間に、優は自身の熱を帯びた体を冷やすため、ゆっくりと海へ入った。それでも、口の中の感覚や頬の熱さが直らないため、一度、頭まで海に浸かった。顔を上げても、まだ言い合いをしている二人を見て、優はおかしくて笑った。
◆◇◆◇◆◇
三人は海水浴を楽しみ、夜は星空の下でバーベキューする事にした。春人は海外に住んでいた頃に、ボーイスカウトの経験があり、コンロを設置したり、火おこしをそつなくこなした。そして、楓雅と優は春人が準備している間に、食材を切ったり、テーブルを準備したりした。準備を始めた時には夕暮れだったのに、いつの間にか辺りは真っ暗になっていた。
「よし、肉食うぞー!」
「やったぁ! お肉、お肉!」
「朝比奈は本当に食べる事が楽しみなんですね」
三人は星空を見ながら、最高のバーベキューを楽しんだ。楓雅と優がコテージに帰り、皿を洗ったりしていると、春人は物置小屋から焚き火台などを見つけ出し、ビーチチェアの近くで焚き火の準備をした。楓雅と優が家事をし終えて、窓から外を見ると、暗い中にオレンジ色に灯る火が見えた。その横で、春人が二人に手招きしており、二人は春人の元へ行った。
「春人、凄いね! こんな事出来るとは思ってなかった! カッコいい!」
「べ、別にカッコ良くねぇよ。こんなん出来て、当たり前だし?」
自慢げに言う春人に優は苦笑いした。そして、折りたたみ椅子に座り、三人で火を囲んだ。昨日も同じ星空なのに、焚き火があるせいか、また違う味わいがあった。春人と楓雅は飲み物を取りにコテージへ戻った。優が焚き火を珍しそうに眺めていると、二人が少し笑いながら、戻って来た。そんな二人を見ていると、春人が手で優の目を隠した。
「何、急に?」
「こら、お前動くな。じっとしてろ」
「はいはい、分かりました」
優は春人に言われた通りに、大人しく目を閉じ、じっとした。ガザガザと包装紙を開ける音がし、何かと思ったら、胸元に少しひんやりする感覚があった。
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