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第7章:僕達は制服を脱ぎ捨てた

#47:充実

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 優は遊び疲れると、ビーチチェアに座って、二人が泳いでいる姿を眺めた。楓雅が早めに沖から戻って来て、優の隣にあるビーチチェアに腰掛けた。


「小向井君は本当に活発ですよね」
「うん。春人は昔から変わらないよ。『俺は泳ぐんだ』って凄い言ってたし」
「確かに小向井君が一番楽しそうな気がします」
「本当に……」


 二人で談笑していると、春人が海から上がって来た。髪をかき上げ、鍛え上げられた体を流れる水滴達が太陽の光によって、キラキラと輝いていた。優はいつもとは違う春人を見て、少し頬を赤くした。


「優、タオル取ってくれ。おい、聞いてんのか?」
「――あぁ、ごめん。はい、タオル」


 優は春人に声をかけられ、我に返ると、隣にあったバスタオルを春人に投げた。春人はタオルをキャッチすると、体を拭いて、ビーチチェアに座った。


「学校のプールより泳ぎ甲斐があるな!」
「そりゃ、学校のプールより何倍も広いし、誰もいないから、泳ぎ甲斐はあるでしょ」
「ここから見てても、小向井君は楽しそうに泳いでいるなって話してたんですよ」
「なぁなぁ、それよりあっちのジャングルみたいなとこ行こうぜ!」


 春人は目を輝かせ、生い茂る木々があるの方を指差し、二人に散策しないかと提案する。二人はため息をつくと、上着を羽織り、島にある小さなジャングルへ向かった。島自体がそんなに大きくないが、ジャングルに入った途端、また別の景色がそこにあった。遠くから鳥の声が聞こえ、木々の間から日が射し込んでいた。優は今まで見た事無い景色に感動した。春人が先陣を切って、ジャングルの奥へ奥へと進むが、特にこれと言ったものは無かった。


「なんだよ、何もねぇのか」
「何があると思ったの?」
「いや、こういうとこにはお宝があるってよく言われてんじゃん」
「本当に小向井君は筋肉バカですね……」
「うん、本当に筋肉バカだと思う」
「なんだよ! 二人して。筋肉をバカにするな!」


 ジャングルを散策し終わった頃には、日が傾き始め、三人は小さなジャングルを抜け出し、コテージへ帰った。


「それにしても、腹減った。今日は何作るんだ?」
「今日はカレーにしましょうか。僕と小向井君で作るので、朝比奈はソファで寛いでてください。それとも、先にシャワーに入ってきますか?」
「流石に僕も手伝うよ! だから、交代でシャワー入ったり、ご飯作ったりしよ」
「では、そうしましょうか。朝比奈、先にシャワー浴びてきて下さい」


 楓雅は優を浴室へ案内すると、シャワーの使い方やタオルの場所を教えた。そして、楓雅は説明し終わると、キッチンにいる春人の元へ戻った。春人は冷蔵庫から食材を取り出し、手際よくカレー作りを始めていた。


「優、シャワー入ったか?」
「ええ、入りましたよ」
「じゃ、もう話しても大丈夫だな。お前、どうすんだよ」
「どうするとは?」
「いやいや、何とぼけてんだよ。告白の返事だよ」
「そうですね。ご飯食べた後にでも外へ行って、星でも見に行きましょう」
「……は? お前、俺の話聞いてたか?」


 春人は食材を切り分けながら、楓雅と秘密の話をした。楓雅は終始春人の見守り役に徹して、結局、炊飯ボタンを押す事と味見と皿出し以外は春人が全部やった。カレーが出来上がると、皿に取り分け、リビングへ持っていった。丁度その頃には優もシャワーから出てきて、タオルで髪を乾かしながら、リビングへやってきた。


「おい、出来たぞー。食うぞー」
「え、もう出来たの! 結局、何もしてない。ごめん」
「いいよ、そんなの気にしてねぇよ。春人特製カレーだぞ」
「わっ! 久々に食べる! めっちゃ楽しみ!」
「先に食べてて下さい。僕は猫舌なので」
「カレーは熱いうちに食うのが旨いのに。相変わらずよく分かんねぇ奴だな」
「とりあえず早く食べよ! いただきまーす!」


 楓雅は二人に先に食べるように伝え、キッチンへ戻った。春人と優は手を合わせ、熱いうちにカレーを食べた。春人は優が美味しそうに食べる姿を見て、嬉しかった。二人が三分の二程度食べ終わった頃、楓雅がキッチンから何やら持って、出てきた。優は楓雅が持っているものを見て、パッと顔が明るくなった。


「――うわっ! フルーツの盛り合わせ!」
「あのな……。お前、フルーツのカットとかが出来んなら、ジャガイモぐらい切れよ」
「ああいうのは苦手なので。それより、食べましょう」
「いただきまーす!」


 楓雅は二人を驚かせるために、パイナップルを器にしたフルーツの盛り合わせをリビングへ持って来たのだった。様々な果実が盛られており、まるでパイナップルの方舟みたいだった。
 優は急いでカレーを口の中に掻き込んだ。そして、目を輝かせ、どのフルーツから食べるか迷った。優は狙いを定めたフルーツを取ろうとすると、春人がひょいとつまみ、口の中へ放り込んだ。優は頬を膨らませ、春人をポカポカと叩いた。
 その後も、三人は他愛もない話をしながら、交代でシャワーを浴び、すぐに寝れる様に服を着替えた。そうこうしているうちに、外はすっかり暗くなり、楓雅の提案で三人で星空を見に、外へ出た。そこには、満天の星空が広がっており、地元で見る星空とは比較にならないものであり、三人は息を呑んだ。


「すっげぇな!」
「凄い綺麗。ずっと見ていられる」
「僕達が住んでいる場所より綺麗に見えますね」


 三人は時間が経つのも忘れる位、ビーチチェアに座り、満天の星空を眺めた。時折聞こえるさざ波の音に耳を傾け、目をゆっくり閉じて、素敵な時間を過ごした。
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