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第4章:僕はずっと一人だと思っていた
#30:再恋
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優はカフェへ入る前に、外でガラスを鏡に見立てて、髪型が崩れていないか確認し、店内へ入った。そして、奥の席で台本を読んで、待っている二人の元へ駆け寄り、声を掛けた。二人が顔を上げると、予想していた以上に可愛らしい優が照れ笑いしながら、立っていた。二人はすっかり優に心を奪われ、ずっと優を見つめていた。
「ごめん! 遅くなっちゃった! ……って、二人ともどうしたの、黙って。やっぱり、髪明る過ぎたかな?」
「…………いや、そんな事ねぇよ」
「…………そんな事無いですよ」
「そっか、だったら、大丈夫か。それより、お腹空いちゃったから、パフェ食べていい?」
優はチョコレートストロベリーパフェを頼み、初めて体験したパーマとカラーについて楽しそうに喋り出す。二人は心ここにあらずな状態で、ずっと優の事を見つめていた。間もなくして、苺がてんこ盛りに乗ったパフェがやってきた。優は目を輝かせながら、嬉しそうに食べ始めた。
「んーっ、美味しい! 幸せぇ!」
「本当に食うよなぁ。よくそれで太んねぇな」
「良いじゃないですか。美味しそうに食べてるんだから」
「そうだよ。美味しそうに食べないと、食べ物に失礼だよ」
「んだよ、その思考回路は」
美味しそうに食べる優を眺めるだけで二人は幸せだった。優はパフェを完食すると、台本を取り出し、二人とともに最終確認を行なった。最後のシーンを確認し終わった時には既に外は真っ暗になっていた。
「そろそろ帰ろうぜ」
「そうですね。すっかり暗くなりましたしね」
「うん、早く帰って、ご飯食べて、お風呂入って、しっかり寝よう!」
「また食うのかよ。懲りねぇな、お前は」
三人は談笑しながら、自転車を押して帰った。あと少しで楓雅の家が見えてくる所で、優は急に足を止めた。二人が振り向くと、優はパーカーの裾を強く握り締め、俯き、ぽたぽたと涙を流してた。そして、優は泣き笑いしながら、空を見上げた。
「あはは、嫌だなぁ。今、泣くタイミング? あー、もう嫌だなぁ」
「優、大丈夫か?」
「朝比奈、何か考え事ですか?」
「なんかさ、こんな自分の為に、色んな人が助けてくれて、応援してくれて……。今まで何もかもを拒絶していた自分って本当に馬鹿だなぁって。自分を不幸だと思ってたけど、今思えば、本当は幸せなんだなって思ってたら、涙出てきちゃった」
優は袖で何度も涙を拭き、目を真っ赤にしながらも、精一杯の笑顔で二人を見た。二人は優しい目をして、優に近付き、頭をポンポンと優しく撫でた。
「大丈夫ですよ。朝比奈はこれからもずっと幸せでいますよ」
「そうだぜ。俺達がいるんだから、心配すんな。それより、明日は観に来た人達全員をビックリさせようぜ!」
「そうだね! こんなとこで泣いてる場合じゃないよね! 明日、頑張る。本当に頑張る!」
優は自分の両頬を叩き、気合いを入れた。そして、涙でグチャグチャになった顔で再び笑って見せた。二人は優の事を何回好きになればいいのだろうかと心を焦がした。三人は明日の意気込みを言い合いながら、仲良く家へ帰った。
◆◇◆◇◆◇
翌日、珍しく早起きした優は春人に電話した。春人はすぐに電話に出たが、まだ眠そうだった。
「んだよ、朝早くから。なんかあったか?」
「おはよう。ごめんね、朝早くから。あのさ、早めに登校して、誰にも見つからないように準備したいんだけど……ダメかな?」
「あ? 誰にも見つからないようにって……。今になって、恥ずかしくなったのか?」
「いや、違うよ。この姿を舞台まで隠しておきたいの! そしたら、皆、更にビックリするかなって。サプライズ的なアレだよ」
「よく分かんないけど、分かった。準備出来たら、俺んちに来いよ。母ちゃんに車出して貰うように言っておくから」
「ありがとう! めっちゃ助かる! じゃ、また後でね」
優は電話を切ると、少し嬉しそうに鼻歌を歌いながら、準備をした。そして、マスクをし、ジップ付きパーカーを深く被り、伊達眼鏡をかけ、優なりの完璧な変装をし、春人の家へ向かった。インターホンを押そうとしたら、春人があくびをしながら、出てきた。春人は玄関先に不審者がいると思い、声を出して、驚いた。
「うわっ! って、優かよ。……お前、それ変装か?」
「バレないようにしなきゃと思って、やり過ぎ……かな?」
「一瞬、不審者かと思ったぜ。それより、母ちゃんが車出してくれるから、乗ろうぜ。あと、一ノ瀬にも連絡したか?」
「あ、まだしてないや」
「マジかよ。車ん中でいいから、さっさと電話しろよ!」
春人の母親の運転で二人は学校へ向かった。そして、優は車内で楓雅に電話をかけ、事情を説明した。優が電話を切ると、春人の母親がニコニコしながら、バックミラー越しで自分を見ていたのに気付いた。
「優ちゃん、可愛くなったわねぇ。最初、春の彼女が乗って来たかと思ったわ」
「母ちゃん、そう言うのはやめろよ!」
「あら、顔真っ赤にして。息子はいくつになっても可愛いものねぇ。……そう言えば、車を停めるのは校門前でいいのかしら?」
「あ、申し訳ないんですけど、裏門に回ってもらってもいいですか?」
春人の母親はグッドポーズをすると、嬉しそうに学校の裏門まで車を走らせた。そして、到着すると、優は深々と礼をして、誰にも見つからないように校舎へ入っていった。靴を脱ぐと、優は春人に靴を預け、靴下のまま、第三音楽室まで駆け上がった。
「ごめん! 遅くなっちゃった! ……って、二人ともどうしたの、黙って。やっぱり、髪明る過ぎたかな?」
「…………いや、そんな事ねぇよ」
「…………そんな事無いですよ」
「そっか、だったら、大丈夫か。それより、お腹空いちゃったから、パフェ食べていい?」
優はチョコレートストロベリーパフェを頼み、初めて体験したパーマとカラーについて楽しそうに喋り出す。二人は心ここにあらずな状態で、ずっと優の事を見つめていた。間もなくして、苺がてんこ盛りに乗ったパフェがやってきた。優は目を輝かせながら、嬉しそうに食べ始めた。
「んーっ、美味しい! 幸せぇ!」
「本当に食うよなぁ。よくそれで太んねぇな」
「良いじゃないですか。美味しそうに食べてるんだから」
「そうだよ。美味しそうに食べないと、食べ物に失礼だよ」
「んだよ、その思考回路は」
美味しそうに食べる優を眺めるだけで二人は幸せだった。優はパフェを完食すると、台本を取り出し、二人とともに最終確認を行なった。最後のシーンを確認し終わった時には既に外は真っ暗になっていた。
「そろそろ帰ろうぜ」
「そうですね。すっかり暗くなりましたしね」
「うん、早く帰って、ご飯食べて、お風呂入って、しっかり寝よう!」
「また食うのかよ。懲りねぇな、お前は」
三人は談笑しながら、自転車を押して帰った。あと少しで楓雅の家が見えてくる所で、優は急に足を止めた。二人が振り向くと、優はパーカーの裾を強く握り締め、俯き、ぽたぽたと涙を流してた。そして、優は泣き笑いしながら、空を見上げた。
「あはは、嫌だなぁ。今、泣くタイミング? あー、もう嫌だなぁ」
「優、大丈夫か?」
「朝比奈、何か考え事ですか?」
「なんかさ、こんな自分の為に、色んな人が助けてくれて、応援してくれて……。今まで何もかもを拒絶していた自分って本当に馬鹿だなぁって。自分を不幸だと思ってたけど、今思えば、本当は幸せなんだなって思ってたら、涙出てきちゃった」
優は袖で何度も涙を拭き、目を真っ赤にしながらも、精一杯の笑顔で二人を見た。二人は優しい目をして、優に近付き、頭をポンポンと優しく撫でた。
「大丈夫ですよ。朝比奈はこれからもずっと幸せでいますよ」
「そうだぜ。俺達がいるんだから、心配すんな。それより、明日は観に来た人達全員をビックリさせようぜ!」
「そうだね! こんなとこで泣いてる場合じゃないよね! 明日、頑張る。本当に頑張る!」
優は自分の両頬を叩き、気合いを入れた。そして、涙でグチャグチャになった顔で再び笑って見せた。二人は優の事を何回好きになればいいのだろうかと心を焦がした。三人は明日の意気込みを言い合いながら、仲良く家へ帰った。
◆◇◆◇◆◇
翌日、珍しく早起きした優は春人に電話した。春人はすぐに電話に出たが、まだ眠そうだった。
「んだよ、朝早くから。なんかあったか?」
「おはよう。ごめんね、朝早くから。あのさ、早めに登校して、誰にも見つからないように準備したいんだけど……ダメかな?」
「あ? 誰にも見つからないようにって……。今になって、恥ずかしくなったのか?」
「いや、違うよ。この姿を舞台まで隠しておきたいの! そしたら、皆、更にビックリするかなって。サプライズ的なアレだよ」
「よく分かんないけど、分かった。準備出来たら、俺んちに来いよ。母ちゃんに車出して貰うように言っておくから」
「ありがとう! めっちゃ助かる! じゃ、また後でね」
優は電話を切ると、少し嬉しそうに鼻歌を歌いながら、準備をした。そして、マスクをし、ジップ付きパーカーを深く被り、伊達眼鏡をかけ、優なりの完璧な変装をし、春人の家へ向かった。インターホンを押そうとしたら、春人があくびをしながら、出てきた。春人は玄関先に不審者がいると思い、声を出して、驚いた。
「うわっ! って、優かよ。……お前、それ変装か?」
「バレないようにしなきゃと思って、やり過ぎ……かな?」
「一瞬、不審者かと思ったぜ。それより、母ちゃんが車出してくれるから、乗ろうぜ。あと、一ノ瀬にも連絡したか?」
「あ、まだしてないや」
「マジかよ。車ん中でいいから、さっさと電話しろよ!」
春人の母親の運転で二人は学校へ向かった。そして、優は車内で楓雅に電話をかけ、事情を説明した。優が電話を切ると、春人の母親がニコニコしながら、バックミラー越しで自分を見ていたのに気付いた。
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「あ、申し訳ないんですけど、裏門に回ってもらってもいいですか?」
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