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第5章:僕らは今、暗闇の中で歌い始める
#33:二幕
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しかし、それは叶いませんでした。突如、魔王が復活し、世界全体を不穏な雲で覆い、光を届かなくさせました。勇者と言う存在が無いの時代。唯一、フレデリック騎士団なら魔王を倒す事が出来るのではないか? と皆の期待がありました。そう、ルイはフレデリック騎士団の一員。魔王討伐に行かねばならない時がやってきました。
「嫌よ! なんでルイが行かなければならないの! 他にも兵士は沢山いるじゃない!」
「シグニス様、落ち着いてください。俺はフレデリックの名に懸けて、必ずや魔王を倒して、戻ってきます」
「でも……」
「帰って来たら、また一緒にあの場所へ行きましょう」
「ええ、必ず……」
ルイはシグニスへ別れを告げると、魔王討伐へ向かいました。ルイの居ない日々に、シグニスは自分の部屋に閉じ籠り、以前のように歌う事は無くなりました。シグニスはただルイの無事を祈るだけでした。そんなある日、シグニスは国王と王妃に玉座の間まで来るように言われました。
「もしかして、騎士団が帰って来たのかしら? でも、それにしては、静かだし、おかしいわね」
「シグニス、貴女にとって素晴らしいお話があるの」
「はい、お母様。どういったお話でしょうか?」
「アイスバーグ帝国のチェスター王子が貴女を妻として迎え入れて下さるそうよ」
「でも、アイスバーグとは敵対関係だったはず……。それに、何故、私なのですか?」
「アイスバーグとは今までずっと敵対していたけれど、貴女が結婚すれば、友好的関係を築いてくれるとおっしゃってるの。我が国は近年、食糧難に陥っていたから、これで民も幸せになるのだから、断る理由なんて無いでしょう?」
「しかし! 私は……嫌です!」
「貴女はこの国がどうなってもいいって言ってるの!」
「そんな事は思っていません! …………お母様、承知いたしました」
シグニスが知らない所で、隣国の王子との縁談が勝手に進んでいました。シグニスは両親を初めて恨みました。気持ちの整理がつかないまま、数日が経ち、あっという間に、アイスバーグ帝国の第二王子と会う日がやってきました。しかし、何故、こんな自分を妻として迎え入れたいのか疑問に思いながら、シグニスは待ち合わせの部屋で紅茶を飲みながら、王子の到着を待ちました。
「……何故、私なのかしら? 全く分からないわ」
「シグニス様。本日はお招きいただき、ありがとうございます。私、アイスバーグ帝国第二王子のチェスターと申します」
白い軍服を身に纏い、礼儀正しく爽やかな笑顔でチェスターはシグニスに挨拶をした。挨拶を交わし、お互いの事を話し、しばらくして、シグニスはチェスターに庭園で散歩をしないか提案した。
「チェスター様、お庭を少し散歩しませんか?」
「ええ、構いませんよ。では、お手を」
シグニスはチェスターが何の躊躇いもなく、手を差し伸べてきた事に驚いた。私の事をきちんと分かっているのか心配になった。手を取ろうにも、気持ち悪いと思われるのではないかと躊躇っていると、王子から手を握って来た。シグニスは唖然としたまま、チェスターと一緒に庭園へ向かった。
「チェスター様。あの……、私の噂はご存知でしょうか?」
「噂? あぁ、呪われた瞳の事ですか? ええ、知っていますよ」
「で、では! 何故、私の手を握ってられるのですか? 怖くはありませんの?」
「ふふっ、怖くなんてないですよ。だって、僕と話してる時、そのレース越しに何度も目が合っていたじゃないですか」
「いえ、そうですけど……」
「こんなにも心が美しい方は初めてですよ。僕は貴女にお会い出来て光栄です。でも…………」
「でも?」
「あ、気にしないで下さい。それにしても、ここの庭園はとても美しい。まるで貴女みたいだ」
チェスターが笑うと、シグニスも口に手を当て、小さく笑った。縁談が終わると、チェスターは馬車で本国へ帰っていった。
「嫌よ! なんでルイが行かなければならないの! 他にも兵士は沢山いるじゃない!」
「シグニス様、落ち着いてください。俺はフレデリックの名に懸けて、必ずや魔王を倒して、戻ってきます」
「でも……」
「帰って来たら、また一緒にあの場所へ行きましょう」
「ええ、必ず……」
ルイはシグニスへ別れを告げると、魔王討伐へ向かいました。ルイの居ない日々に、シグニスは自分の部屋に閉じ籠り、以前のように歌う事は無くなりました。シグニスはただルイの無事を祈るだけでした。そんなある日、シグニスは国王と王妃に玉座の間まで来るように言われました。
「もしかして、騎士団が帰って来たのかしら? でも、それにしては、静かだし、おかしいわね」
「シグニス、貴女にとって素晴らしいお話があるの」
「はい、お母様。どういったお話でしょうか?」
「アイスバーグ帝国のチェスター王子が貴女を妻として迎え入れて下さるそうよ」
「でも、アイスバーグとは敵対関係だったはず……。それに、何故、私なのですか?」
「アイスバーグとは今までずっと敵対していたけれど、貴女が結婚すれば、友好的関係を築いてくれるとおっしゃってるの。我が国は近年、食糧難に陥っていたから、これで民も幸せになるのだから、断る理由なんて無いでしょう?」
「しかし! 私は……嫌です!」
「貴女はこの国がどうなってもいいって言ってるの!」
「そんな事は思っていません! …………お母様、承知いたしました」
シグニスが知らない所で、隣国の王子との縁談が勝手に進んでいました。シグニスは両親を初めて恨みました。気持ちの整理がつかないまま、数日が経ち、あっという間に、アイスバーグ帝国の第二王子と会う日がやってきました。しかし、何故、こんな自分を妻として迎え入れたいのか疑問に思いながら、シグニスは待ち合わせの部屋で紅茶を飲みながら、王子の到着を待ちました。
「……何故、私なのかしら? 全く分からないわ」
「シグニス様。本日はお招きいただき、ありがとうございます。私、アイスバーグ帝国第二王子のチェスターと申します」
白い軍服を身に纏い、礼儀正しく爽やかな笑顔でチェスターはシグニスに挨拶をした。挨拶を交わし、お互いの事を話し、しばらくして、シグニスはチェスターに庭園で散歩をしないか提案した。
「チェスター様、お庭を少し散歩しませんか?」
「ええ、構いませんよ。では、お手を」
シグニスはチェスターが何の躊躇いもなく、手を差し伸べてきた事に驚いた。私の事をきちんと分かっているのか心配になった。手を取ろうにも、気持ち悪いと思われるのではないかと躊躇っていると、王子から手を握って来た。シグニスは唖然としたまま、チェスターと一緒に庭園へ向かった。
「チェスター様。あの……、私の噂はご存知でしょうか?」
「噂? あぁ、呪われた瞳の事ですか? ええ、知っていますよ」
「で、では! 何故、私の手を握ってられるのですか? 怖くはありませんの?」
「ふふっ、怖くなんてないですよ。だって、僕と話してる時、そのレース越しに何度も目が合っていたじゃないですか」
「いえ、そうですけど……」
「こんなにも心が美しい方は初めてですよ。僕は貴女にお会い出来て光栄です。でも…………」
「でも?」
「あ、気にしないで下さい。それにしても、ここの庭園はとても美しい。まるで貴女みたいだ」
チェスターが笑うと、シグニスも口に手を当て、小さく笑った。縁談が終わると、チェスターは馬車で本国へ帰っていった。
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