上 下
49 / 62
第7章:僕達は制服を脱ぎ捨てた

#46:旅行

しおりを挟む
 三人は卒業旅行の為に、学業とレッスンの両立を頑張った。レッスンを担当してくれている先生からも張り切ってるねと言われた。卒業式の予行練習もあったが、優の頭の中には卒業旅行、春人と楓雅の頭の中には優のこんな姿やこんな姿ばかり浮かんでおり、顔が終始緩んでいた。
 そんな事を考えていたら、あっという間に卒業式になってしまった。優は優秀な成績を修め、学園祭での人気もあり、卒業生代表に選ばれた。優は最初断っていたが、春人と楓雅が背中を押してくれて、渋々承諾した。そして、今、壇上の前に立つ。壇上から見える景色は新入生代表を挨拶した入学式の時よりも、なんだか温かく穏やかな気持ちになった。


「寒さも和らぎ始め、花々の芽吹きが新たな季節の到来を告げる頃となりました――」


「昔よりだいぶ凛々しくなったというか、堂々としてるな」
「そうですね。朝比奈も日々成長しているんですよ」


「――卒業生代表、朝比奈優」


 会場は温かい拍手に包まれた。卒業式は滞りなく終わり、三人は記念樹として植えられている桜の木の下でクラスメイトは勿論、後輩達からサインを求められたり、写真を一緒に撮ったりした。大人数で囲まれても、怖がらず、笑顔で要望に応えている優を見て、二人は安心した。そして、最後に三人で一緒に写真を何枚も撮った。
 三人は校門前で学校に深々と頭を下げると、三年間を振り返りながら、和気藹々と帰った。


「うおーっ! 卒業旅行だ! やっと解放! 楽しみ!」
「そうですね。あっという間でしたね、本当に」
「俺も早く卒業旅行に行きてぇ!」
「まったく二人は……」


 三人は明日の待ち合わせ場所を確認し、荷物を纏めたりするのに、足早に帰った。


 ◆◇◆◇◆◇


 翌日、朝日が昇ると同時に、優は起きた。そして、支度をし、荷物の最終チェックをした。優は大丈夫だと思い、玄関を飛び出そうとしたが、ピタッと止まった。そして、自室へ戻り、あの本を本棚から取り出した。


(必要ないかもしれないけど、……とりあえず持っていこ)


 春人が玄関先で呼んでいたため、優は急いで本を鞄にしまい込み、春人の母親が運転する車で駅まで向かった。駅に到着すると、既に楓雅が駅のモニュメント像の場所で待っていた。二人は慌てて楓雅に駆け寄った。


「ごめん! お待たせ!」
「大丈夫ですよ。では、行きますか」
「「おーっ!」」


 三人は電車と飛行機を乗り継ぎ、沖縄へやって来た。市街地へ行くかと思ったら、そこから更に一ノ瀬家の車で近くのヨットハーバーまでやって来た。


「なんでこんなとこまで一ノ瀬家の車があるんだよ」
「まぁ、それは良いじゃないですか。それより、これからこれに乗りますよ」
「……えっ、これって」


 楓雅が指差す方を見ると、大きなクルーザーが停泊していた。唖然とする二人を楓雅は手招きし、荷物を乗せ、クルーザーに乗った。そして、綺麗な海と空を堪能していると、海にポツンと浮かぶ孤島があった。よく分からないまま、二人は孤島の小さな船着き場に降り立った。


「金持ちがやる事はスケールが違うぜ」
「あと、ちょっと急いでコテージも改装してもらいました」
「……楓雅君は一体何者なの?」
「はいはい、荷物運んでください。食材もあるので、手分けして運びましょう」


 三人は手分けして、コテージへ荷物を運んだ。そして、クルーザーを見送ると、三人はソファに座り、一息ついた。


「疲れたぁ。ここに来るだけでこんなにも疲れるなんて……」
「久々に飛行機乗ったな。海外が懐かしい。それにしても、クルーザーの兄ちゃんも帰ったし、これからどうすんだ?」
「ガスは無いんですけど、電気が通ってるので、問題無いと思います。スマホは残念ながら、通信設備が無いので、迎えのクルーザーが来るまでは無理です」
「げっ、電話出来ねぇのかよ」
「それより、今日は比較的暖かいので、海にでも入りますか? もしかしたら、ちょっと冷たいかもしれませんが」


 春人は待ってましたとばかりに、飛び起き、スーツケースを開け、短パンに着替えて、海へ向かっていった。楓雅も着替え、春人の後を追った。優は二人がはしゃぐ様子を見ながら、ソファでゴロゴロした。ソファで寛いでいると、春人が大声で呼んできて、楓雅と一緒に手招きしてきた。優は仕方なく、水着に着替えると、上からジップ付きパーカーを羽織り、二人のとこへ向かった。


「あれ? お前、この前買った短パンどうしたんだよ?」
「確かに……。パーカーで隠れる位に短かったでしたっけ?」
「いや、その……」


 優は頬を赤くして、パーカーのジッパーを下げた。遊んでいる二人は優に釘付けだった。優がまさか紺色のショートタイプの男子用スクール水着を穿いてくるとは思っていなかった。


「一応、買ったやつも持って来たんだけど、泳ぐんだったら、こっちの方が良いかなって……なんて」
(……コイツ、完全に誘ってきてるだろ)
(朝比奈は自覚あって穿いてきたのか、それとも、天然なのか……判断しかねないですね)


 優はパーカーをビーチチェアに置くと、小走りで二人の所へ行った。二人は澄ました顔をして、優と三人でビーチバレーをしたり、ウォーターガンで遊んだりした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したらホモに溺愛された件について

もか
BL
小6の夏頃の夜中に帰宅してると通り魔に刺され呆気ない人生を終えた。 なぜか神様が現れ俺が生きやすい所に転生してくれる事になった。 愛情を恐れるが逃げられないぐらい追い詰められ逃げられないようにガードされてく話です。 貴方は管理するヤンデレと愛情を怖がる病み気味少年に興味ありませんか? R18にしたいです。 #何でも主人公不幸だった系にしたい病なのでご注意…

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

平凡な365日

葉津緒
BL
平凡脇役(中身非凡)の王道回顧録 1年間、王道連中を遠くから眺め続けた脇役(通行人A)の回想。 全寮制学園/脇役/平凡/中身非凡・毒舌 start→2010

【完結】悪役に転生した俺、推しに愛を伝えたら(体を)溺愛されるようになりました。

桜野夢花
BL
主人公の青山朶(あおやまえだ)は就活に失敗しニート生活を送っていた。そんな中唯一の娯楽は3ヵ月前に購入したBL異世界ゲームをすること。何回プレイしても物語序盤に推しキャラ・レイが敵の悪役キャラソウルに殺される。なので、レイが生きている場面を何度も何度も腐るようにプレイしていた。突然の事故で死に至った俺は大好きなレイがいる異世界にソウルとして転生してしまう。ソウルになり決意したことは、レイが幸せになってほしいということだったが、物語が進むにつれ、優しい、天使みたいなレイが人の性器を足で弄ぶ高慢無垢な国王だということを知る。次第に、ソウルがレイを殺すように何者かに仕向けられていたことを知り、許せない朶はとある行動を起こしていく。 ※表紙絵はミカスケ様よりお借りしました。

双子攻略が難解すぎてもうやりたくない

はー
BL
※監禁、調教、ストーカーなどの表現があります。 22歳で死んでしまった俺はどうやら乙女ゲームの世界にストーカーとして転生したらしい。 脱ストーカーして少し遠くから傍観していたはずなのにこの双子は何で絡んでくるんだ!! ストーカーされてた双子×ストーカー辞めたストーカー(転生者)の話 ⭐︎登場人物⭐︎ 元ストーカーくん(転生者)佐藤翔  主人公 一宮桜  攻略対象1 東雲春馬  攻略対象2 早乙女夏樹  攻略対象3 如月雪成(双子兄)  攻略対象4 如月雪 (双子弟)  元ストーカーくんの兄   佐藤明

クールな年下男子は、俺の生徒で理想のお嫁さん!?

有村千代
BL
クールなハイスペ高校生×意地っ張り(隠れゲイ)講師! 子育てに恋に――あったかくてこそばゆい胸キュンBL!! <あらすじ> 里親として姪を預かることになり、初めての子育てに日々奮闘する坂上諒太。 そんな諒太が、料理教室で思わず見惚れてしまった相手とは――、 「すっげえ。嫁さんにほしいくらいだ…」 「はあ、嫌っすけど」 ガタイのいいクール男子!? しかも諒太が講師を務めている高校の教え子だった! ハイスペ嫁こと橘大地との出会いから、姪の美緒も交えて、心あたたまる日々を送る諒太。 ところが、ゲイセクシャルであることを隠していた諒太に、密かな想いが芽生えはじめて…!? 【クールなハイスペ高校生×意地っ張りな隠れゲイ講師(生徒×先生/年下攻め)】 ※『★』マークがついている章は性的な描写が含まれています ※ストックがある限りはなるべく毎日更新。以降はモチベにより不定期更新予定 ※作者Twitter【https://twitter.com/tiyo_arimura_】 ※マシュマロ【https://bit.ly/3QSv9o7】 ※イラスト置き場【https://poipiku.com/401008/】 ※掲載箇所【エブリスタ/アルファポリス/ムーンライトノベルズ/BLove/fujossy/pixiv/pictBLand】

[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる

山葉らわん
BL
【縦読み推奨】 ■ 第一章(第1話〜第9話)  アラディーム国の第七王子であるノモクは、騎士団長ローエの招きを受けて保養地オシヤクを訪れた。ノモクは滞在先であるローエの館で、男奴隷エシフと出会う。  滞在初日の夜、エシフが「夜のデザート」と称し、女奴隷とともにノモクの部屋を訪れる。しかし純潔を重んじるノモクは、「初体験の手ほどき」を断り、エシフたちを部屋から追い返してしまう。 ■ 第二章(第1話〜第10話)  ノモクが「夜のデザート」を断ったことで、エシフは司祭ゼーゲンの立合いのもと、ローエから拷問を受けることになってしまう。  拷問のあと、ノモクは司祭ゼーゲンにエシフを自分の部屋に運ぶように依頼した。それは、持参した薬草でエシフを治療してあげるためだった。しかしノモクは、その意図を悟られないように、エシフの前で「拷問の仕方を覚えたい」と嘘をついてしまう。 ■ 第三章(第1話〜第11話)  ノモクは乳母の教えに従い、薬草をエシフの傷口に塗り、口吻をしていたが、途中でエシフが目を覚ましてしまう。奴隷ごっこがしたいのなら、とエシフはノモクに口交を強要する。 ■ 第四章(第1話〜第9話)  ノモクは、修道僧エークから地下の拷問部屋へと誘われる。そこではギーフとナコシュのふたりが、女奴隷たちを相手に淫らな戯れに興じていた。エークは、驚くノモクに拷問の手引き書を渡し、エシフをうまく拷問に掛ければ勇敢な騎士として認めてもらえるだろうと助言する。 ◾️第五章(第1話〜第10話)  「わたしは奴隷です。あなたを悦ばせるためなら……」  こう云ってエシフは、ノモクと交わる。 ◾️第六章(第1話〜第10話)  ノモクはエシフから新しい名「イェロード」を与えられ、またエシフの本当の名が「シュード」であることを知らされる。  さらにイェロード(=ノモク)は、滞在先であるローエの館の秘密を目の当たりにすることになる。 ◾️第七章(第1話〜第12話)  現在、まとめ中。 ◾️第八章(第1話〜第10話)  現在、まとめ中。 ◾️第九章(第一話〜)  現在、執筆中。 【地雷について】  「第一章第4話」と「第四章第3話」に男女の絡みシーンが出てきます(後者には「小スカ」もあり)。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。  「第二章第10話」に拷問シーンが出てきます。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。

処理中です...