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第7章:僕達は制服を脱ぎ捨てた
#46:旅行
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三人は卒業旅行の為に、学業とレッスンの両立を頑張った。レッスンを担当してくれている先生からも張り切ってるねと言われた。卒業式の予行練習もあったが、優の頭の中には卒業旅行、春人と楓雅の頭の中には優のこんな姿やこんな姿ばかり浮かんでおり、顔が終始緩んでいた。
そんな事を考えていたら、あっという間に卒業式になってしまった。優は優秀な成績を修め、学園祭での人気もあり、卒業生代表に選ばれた。優は最初断っていたが、春人と楓雅が背中を押してくれて、渋々承諾した。そして、今、壇上の前に立つ。壇上から見える景色は新入生代表を挨拶した入学式の時よりも、なんだか温かく穏やかな気持ちになった。
「寒さも和らぎ始め、花々の芽吹きが新たな季節の到来を告げる頃となりました――」
「昔よりだいぶ凛々しくなったというか、堂々としてるな」
「そうですね。朝比奈も日々成長しているんですよ」
「――卒業生代表、朝比奈優」
会場は温かい拍手に包まれた。卒業式は滞りなく終わり、三人は記念樹として植えられている桜の木の下でクラスメイトは勿論、後輩達からサインを求められたり、写真を一緒に撮ったりした。大人数で囲まれても、怖がらず、笑顔で要望に応えている優を見て、二人は安心した。そして、最後に三人で一緒に写真を何枚も撮った。
三人は校門前で学校に深々と頭を下げると、三年間を振り返りながら、和気藹々と帰った。
「うおーっ! 卒業旅行だ! やっと解放! 楽しみ!」
「そうですね。あっという間でしたね、本当に」
「俺も早く卒業旅行に行きてぇ!」
「まったく二人は……」
三人は明日の待ち合わせ場所を確認し、荷物を纏めたりするのに、足早に帰った。
◆◇◆◇◆◇
翌日、朝日が昇ると同時に、優は起きた。そして、支度をし、荷物の最終チェックをした。優は大丈夫だと思い、玄関を飛び出そうとしたが、ピタッと止まった。そして、自室へ戻り、あの本を本棚から取り出した。
(必要ないかもしれないけど、……とりあえず持っていこ)
春人が玄関先で呼んでいたため、優は急いで本を鞄にしまい込み、春人の母親が運転する車で駅まで向かった。駅に到着すると、既に楓雅が駅のモニュメント像の場所で待っていた。二人は慌てて楓雅に駆け寄った。
「ごめん! お待たせ!」
「大丈夫ですよ。では、行きますか」
「「おーっ!」」
三人は電車と飛行機を乗り継ぎ、沖縄へやって来た。市街地へ行くかと思ったら、そこから更に一ノ瀬家の車で近くのヨットハーバーまでやって来た。
「なんでこんなとこまで一ノ瀬家の車があるんだよ」
「まぁ、それは良いじゃないですか。それより、これからこれに乗りますよ」
「……えっ、これって」
楓雅が指差す方を見ると、大きなクルーザーが停泊していた。唖然とする二人を楓雅は手招きし、荷物を乗せ、クルーザーに乗った。そして、綺麗な海と空を堪能していると、海にポツンと浮かぶ孤島があった。よく分からないまま、二人は孤島の小さな船着き場に降り立った。
「金持ちがやる事はスケールが違うぜ」
「あと、ちょっと急いでコテージも改装してもらいました」
「……楓雅君は一体何者なの?」
「はいはい、荷物運んでください。食材もあるので、手分けして運びましょう」
三人は手分けして、コテージへ荷物を運んだ。そして、クルーザーを見送ると、三人はソファに座り、一息ついた。
「疲れたぁ。ここに来るだけでこんなにも疲れるなんて……」
「久々に飛行機乗ったな。海外が懐かしい。それにしても、クルーザーの兄ちゃんも帰ったし、これからどうすんだ?」
「ガスは無いんですけど、電気が通ってるので、問題無いと思います。スマホは残念ながら、通信設備が無いので、迎えのクルーザーが来るまでは無理です」
「げっ、電話出来ねぇのかよ」
「それより、今日は比較的暖かいので、海にでも入りますか? もしかしたら、ちょっと冷たいかもしれませんが」
春人は待ってましたとばかりに、飛び起き、スーツケースを開け、短パンに着替えて、海へ向かっていった。楓雅も着替え、春人の後を追った。優は二人がはしゃぐ様子を見ながら、ソファでゴロゴロした。ソファで寛いでいると、春人が大声で呼んできて、楓雅と一緒に手招きしてきた。優は仕方なく、水着に着替えると、上からジップ付きパーカーを羽織り、二人のとこへ向かった。
「あれ? お前、この前買った短パンどうしたんだよ?」
「確かに……。パーカーで隠れる位に短かったでしたっけ?」
「いや、その……」
優は頬を赤くして、パーカーのジッパーを下げた。遊んでいる二人は優に釘付けだった。優がまさか紺色のショートタイプの男子用スクール水着を穿いてくるとは思っていなかった。
「一応、買ったやつも持って来たんだけど、泳ぐんだったら、こっちの方が良いかなって……なんて」
(……コイツ、完全に誘ってきてるだろ)
(朝比奈は自覚あって穿いてきたのか、それとも、天然なのか……判断しかねないですね)
優はパーカーをビーチチェアに置くと、小走りで二人の所へ行った。二人は澄ました顔をして、優と三人でビーチバレーをしたり、ウォーターガンで遊んだりした。
そんな事を考えていたら、あっという間に卒業式になってしまった。優は優秀な成績を修め、学園祭での人気もあり、卒業生代表に選ばれた。優は最初断っていたが、春人と楓雅が背中を押してくれて、渋々承諾した。そして、今、壇上の前に立つ。壇上から見える景色は新入生代表を挨拶した入学式の時よりも、なんだか温かく穏やかな気持ちになった。
「寒さも和らぎ始め、花々の芽吹きが新たな季節の到来を告げる頃となりました――」
「昔よりだいぶ凛々しくなったというか、堂々としてるな」
「そうですね。朝比奈も日々成長しているんですよ」
「――卒業生代表、朝比奈優」
会場は温かい拍手に包まれた。卒業式は滞りなく終わり、三人は記念樹として植えられている桜の木の下でクラスメイトは勿論、後輩達からサインを求められたり、写真を一緒に撮ったりした。大人数で囲まれても、怖がらず、笑顔で要望に応えている優を見て、二人は安心した。そして、最後に三人で一緒に写真を何枚も撮った。
三人は校門前で学校に深々と頭を下げると、三年間を振り返りながら、和気藹々と帰った。
「うおーっ! 卒業旅行だ! やっと解放! 楽しみ!」
「そうですね。あっという間でしたね、本当に」
「俺も早く卒業旅行に行きてぇ!」
「まったく二人は……」
三人は明日の待ち合わせ場所を確認し、荷物を纏めたりするのに、足早に帰った。
◆◇◆◇◆◇
翌日、朝日が昇ると同時に、優は起きた。そして、支度をし、荷物の最終チェックをした。優は大丈夫だと思い、玄関を飛び出そうとしたが、ピタッと止まった。そして、自室へ戻り、あの本を本棚から取り出した。
(必要ないかもしれないけど、……とりあえず持っていこ)
春人が玄関先で呼んでいたため、優は急いで本を鞄にしまい込み、春人の母親が運転する車で駅まで向かった。駅に到着すると、既に楓雅が駅のモニュメント像の場所で待っていた。二人は慌てて楓雅に駆け寄った。
「ごめん! お待たせ!」
「大丈夫ですよ。では、行きますか」
「「おーっ!」」
三人は電車と飛行機を乗り継ぎ、沖縄へやって来た。市街地へ行くかと思ったら、そこから更に一ノ瀬家の車で近くのヨットハーバーまでやって来た。
「なんでこんなとこまで一ノ瀬家の車があるんだよ」
「まぁ、それは良いじゃないですか。それより、これからこれに乗りますよ」
「……えっ、これって」
楓雅が指差す方を見ると、大きなクルーザーが停泊していた。唖然とする二人を楓雅は手招きし、荷物を乗せ、クルーザーに乗った。そして、綺麗な海と空を堪能していると、海にポツンと浮かぶ孤島があった。よく分からないまま、二人は孤島の小さな船着き場に降り立った。
「金持ちがやる事はスケールが違うぜ」
「あと、ちょっと急いでコテージも改装してもらいました」
「……楓雅君は一体何者なの?」
「はいはい、荷物運んでください。食材もあるので、手分けして運びましょう」
三人は手分けして、コテージへ荷物を運んだ。そして、クルーザーを見送ると、三人はソファに座り、一息ついた。
「疲れたぁ。ここに来るだけでこんなにも疲れるなんて……」
「久々に飛行機乗ったな。海外が懐かしい。それにしても、クルーザーの兄ちゃんも帰ったし、これからどうすんだ?」
「ガスは無いんですけど、電気が通ってるので、問題無いと思います。スマホは残念ながら、通信設備が無いので、迎えのクルーザーが来るまでは無理です」
「げっ、電話出来ねぇのかよ」
「それより、今日は比較的暖かいので、海にでも入りますか? もしかしたら、ちょっと冷たいかもしれませんが」
春人は待ってましたとばかりに、飛び起き、スーツケースを開け、短パンに着替えて、海へ向かっていった。楓雅も着替え、春人の後を追った。優は二人がはしゃぐ様子を見ながら、ソファでゴロゴロした。ソファで寛いでいると、春人が大声で呼んできて、楓雅と一緒に手招きしてきた。優は仕方なく、水着に着替えると、上からジップ付きパーカーを羽織り、二人のとこへ向かった。
「あれ? お前、この前買った短パンどうしたんだよ?」
「確かに……。パーカーで隠れる位に短かったでしたっけ?」
「いや、その……」
優は頬を赤くして、パーカーのジッパーを下げた。遊んでいる二人は優に釘付けだった。優がまさか紺色のショートタイプの男子用スクール水着を穿いてくるとは思っていなかった。
「一応、買ったやつも持って来たんだけど、泳ぐんだったら、こっちの方が良いかなって……なんて」
(……コイツ、完全に誘ってきてるだろ)
(朝比奈は自覚あって穿いてきたのか、それとも、天然なのか……判断しかねないですね)
優はパーカーをビーチチェアに置くと、小走りで二人の所へ行った。二人は澄ました顔をして、優と三人でビーチバレーをしたり、ウォーターガンで遊んだりした。
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