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第5章:僕らは今、暗闇の中で歌い始める
#37:解読
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優が目を覚ますと、学校の保健室だった。日が随分と傾いており、窓から夕日の光が差し込んでいた。左右を見ると、心配そうにする春人と楓雅の姿があった。優が起きたのに気付くと、二人は優を抱きつき、喜んだ。
「優! やっと起きたか。マジで心配したんだぜ」
「朝比奈、大丈夫ですか? 随分とうなされていましたよ」
「う、うん。大丈夫。なんか夢見てた……」
優は二人に夢でシグニスに会って、シグニスと話した事を全部話した。優は上手く説明が出来ているか心配だったが、二人は真剣に自分の話を聞いてくれた。
「なるほど……。シグニスが朝比奈の、チェスターが僕の、ルイが小向井君の前世だったかもしれないって事でしょうか?」
「前世か……。本当にそんな事あり得るのか?」
「だよね、僕もあり得ないって思ったんだけど、シグニスが絶対にそうだって言うから……」
三人は首を傾げ、考えた。そして、優はある事に気付き、ベッドから降りようとすると、ベッドから何かが落ちる音がした。
「……ん? 何か落ちた?」
「優、本落ちたぞ」
春人がベッド下に落ちていた本を拾い、優に渡した。しかし、それは家に置いてあったはずの本だった。優はその本を取ると、ページをめくり始めた。
「なんで? 家に置いてきたはずなんだけど……。それはいいや。なんか書いてあったんだよ。えーっと、なんだったけなぁ?」
「何か書いてあるんですか?」
「……これ! ここ! このページ! ここだけ何故かラテン語っぽくて……。楓雅君、解読出来る?」
「ちょっと待ってくださいね。ああ、これなら読めますよ」
「お前、ラテン語も分かんのかよ」
優は楓雅に本を託し、解読してもらった。春人と優は固唾を呑んで、見守った。楓雅は解読をし終えると、顎に手を当て、なるほどと頷いた。
「本によると、魔法陣にルイとチェスター、そして、眠るシグニスの手をかざすと、シグニスが復活するだろうと書かれています。でも、肝心の魔法陣が何処にあるかが書かれていません」
「なんだよ、ちょっと見せてみろよ」
春人が無理矢理、楓雅から本を取ろうとしたら、本の表紙が破れた。春人は血の気が引き、優に謝った。優は鬼の形相で春人を怒ろうとしたが、破れた表紙に目がいき、急いで春人から本を奪うと、本の表紙を破った。そこには、今、話していた魔法陣が書かれていた。
「なんか表紙がおかしいとは思ってたけど、……これだよ、絶対。」
「なるほど……。そういう仕掛けだったんですか」
「はぁ、良かった。怒られるかと思ったぜ」
「……いや、めっちゃ怒ってるから」
「えぇ……」
怒られるのを免れたと思った春人は安堵の表情をしたが、優は頬を膨らまし、春人を睨んだ。楓雅はその間に、本に書かれていた呪文らしきものを書き出し、二人に見せた。
『我ら、シグニス様の為に。幾歳の時を超えようとも、我々の愛は永遠なり』
「これを唱えるって事?」
「そう言う風に書かれていますね。どうします?」
「ここまで来たら、やるしかねぇだろ」
「そう簡単に言うけどさ。……やるって言っても、ここじゃ流石に」
「もしかしたら、先生も戻ってくるかもしれませんし、比奈子さんにも一言言っておかないと、心配するでしょうし……」
「そうだね。そろそろ後夜祭が始まっちゃうし、一度、皆に声かけないとね」
三人は保健室に置手紙をし、比奈子に連絡をした。比奈子は優が倒れた後、三人の制服を預かり、被服室に保管してくれていた。三人は比奈子と合流すると、お礼を言い、制服に着替えた。比奈子に別れを告げると、次は教室へ向かった。教室へ行くと、クラスメイトと先生が首を長くして待っていた。三人の登場に、教室は歓声が上がり、三人を取り囲んだ。
「やっと帰って来たよ! 朝比奈君、大丈夫なの? なんか倒れたって聞いたからさ」
「お前ら、どこ行ってたんだよ。朝比奈はもう大丈夫なのか?」
「皆、ごめんな。優は疲れちまったみたいで……。もう大丈夫だよな?」
「う、うん。もう大丈夫。心配をおかけして、すみませんでした」
「良かった! でさ、お前らすげぇな! めっちゃヤバかった!」
「二人もカッコ良かったけどさ、朝比奈君が超可愛くなってて、ビックリしたよね!」
三人はクラスメイトから称賛の声を貰い、嬉しそうに笑った。優は皆の喜ぶ顔を見て、やって良かったと心の中で思った。
「ねぇ! 後夜祭がもう始まっちゃうんだけど、三人も出るでしょ? 朝比奈君の歌声をまた聞きたいんだけど」
「あっ……、出たいのは山々なんだけど、ちょっと用事があって……ごめんなさい」
「と言う訳で、皆、後夜祭楽しんできな! じゃあな」
春人はそう言うと、優の手を取り、教室を出た。楓雅も皆に礼をして、春人の後を追った。そして、三人はいつもの第三音楽室へ向かった。
「優! やっと起きたか。マジで心配したんだぜ」
「朝比奈、大丈夫ですか? 随分とうなされていましたよ」
「う、うん。大丈夫。なんか夢見てた……」
優は二人に夢でシグニスに会って、シグニスと話した事を全部話した。優は上手く説明が出来ているか心配だったが、二人は真剣に自分の話を聞いてくれた。
「なるほど……。シグニスが朝比奈の、チェスターが僕の、ルイが小向井君の前世だったかもしれないって事でしょうか?」
「前世か……。本当にそんな事あり得るのか?」
「だよね、僕もあり得ないって思ったんだけど、シグニスが絶対にそうだって言うから……」
三人は首を傾げ、考えた。そして、優はある事に気付き、ベッドから降りようとすると、ベッドから何かが落ちる音がした。
「……ん? 何か落ちた?」
「優、本落ちたぞ」
春人がベッド下に落ちていた本を拾い、優に渡した。しかし、それは家に置いてあったはずの本だった。優はその本を取ると、ページをめくり始めた。
「なんで? 家に置いてきたはずなんだけど……。それはいいや。なんか書いてあったんだよ。えーっと、なんだったけなぁ?」
「何か書いてあるんですか?」
「……これ! ここ! このページ! ここだけ何故かラテン語っぽくて……。楓雅君、解読出来る?」
「ちょっと待ってくださいね。ああ、これなら読めますよ」
「お前、ラテン語も分かんのかよ」
優は楓雅に本を託し、解読してもらった。春人と優は固唾を呑んで、見守った。楓雅は解読をし終えると、顎に手を当て、なるほどと頷いた。
「本によると、魔法陣にルイとチェスター、そして、眠るシグニスの手をかざすと、シグニスが復活するだろうと書かれています。でも、肝心の魔法陣が何処にあるかが書かれていません」
「なんだよ、ちょっと見せてみろよ」
春人が無理矢理、楓雅から本を取ろうとしたら、本の表紙が破れた。春人は血の気が引き、優に謝った。優は鬼の形相で春人を怒ろうとしたが、破れた表紙に目がいき、急いで春人から本を奪うと、本の表紙を破った。そこには、今、話していた魔法陣が書かれていた。
「なんか表紙がおかしいとは思ってたけど、……これだよ、絶対。」
「なるほど……。そういう仕掛けだったんですか」
「はぁ、良かった。怒られるかと思ったぜ」
「……いや、めっちゃ怒ってるから」
「えぇ……」
怒られるのを免れたと思った春人は安堵の表情をしたが、優は頬を膨らまし、春人を睨んだ。楓雅はその間に、本に書かれていた呪文らしきものを書き出し、二人に見せた。
『我ら、シグニス様の為に。幾歳の時を超えようとも、我々の愛は永遠なり』
「これを唱えるって事?」
「そう言う風に書かれていますね。どうします?」
「ここまで来たら、やるしかねぇだろ」
「そう簡単に言うけどさ。……やるって言っても、ここじゃ流石に」
「もしかしたら、先生も戻ってくるかもしれませんし、比奈子さんにも一言言っておかないと、心配するでしょうし……」
「そうだね。そろそろ後夜祭が始まっちゃうし、一度、皆に声かけないとね」
三人は保健室に置手紙をし、比奈子に連絡をした。比奈子は優が倒れた後、三人の制服を預かり、被服室に保管してくれていた。三人は比奈子と合流すると、お礼を言い、制服に着替えた。比奈子に別れを告げると、次は教室へ向かった。教室へ行くと、クラスメイトと先生が首を長くして待っていた。三人の登場に、教室は歓声が上がり、三人を取り囲んだ。
「やっと帰って来たよ! 朝比奈君、大丈夫なの? なんか倒れたって聞いたからさ」
「お前ら、どこ行ってたんだよ。朝比奈はもう大丈夫なのか?」
「皆、ごめんな。優は疲れちまったみたいで……。もう大丈夫だよな?」
「う、うん。もう大丈夫。心配をおかけして、すみませんでした」
「良かった! でさ、お前らすげぇな! めっちゃヤバかった!」
「二人もカッコ良かったけどさ、朝比奈君が超可愛くなってて、ビックリしたよね!」
三人はクラスメイトから称賛の声を貰い、嬉しそうに笑った。優は皆の喜ぶ顔を見て、やって良かったと心の中で思った。
「ねぇ! 後夜祭がもう始まっちゃうんだけど、三人も出るでしょ? 朝比奈君の歌声をまた聞きたいんだけど」
「あっ……、出たいのは山々なんだけど、ちょっと用事があって……ごめんなさい」
「と言う訳で、皆、後夜祭楽しんできな! じゃあな」
春人はそう言うと、優の手を取り、教室を出た。楓雅も皆に礼をして、春人の後を追った。そして、三人はいつもの第三音楽室へ向かった。
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