召喚聖女♂の異世界攻略ノート~クーデレ護衛騎士と人狼わんこの手懐け方~

沼田桃弥

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最終章:僕達の未来はきっと光り輝くものになる

14-1:エミュお母さんのお説教タイム

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「うぅっ……、もう朝か」


 窓から日差しが刺し、小鳥達の囀りが聞こえ、雫は目覚めた。隣を見ると、スヤスヤ眠るアレックスがいた。喉が異常に渇いて、雫は起き上がった。


「こ、腰が……いてててっ。それに、体怠い。それより、水……。喉痛っ」


 雫はへっぴり腰でキッチンへ向かい、コップに水を注ぎ、喉を鳴らしながら、一気に飲み干した。そして、部屋に戻り、脱ぎ散らかした服を拾った。時計をふと見ると、朝食の提供時間が終わる頃だった。


「ア、アレックス! 起きて! 早く行かないと、ご飯の時間が終わる」


 アレックスは耳をピクッと立てて、起きた。雫はとりあえず脱いだ服を着て、アレックスにも服を着るように伝えた。そして、二人は急いで宿舎の食堂へ向かった。


「主、歩き方おかしい。声もおかしい」
「あぁ? 誰のせいだと思ってるんだよ。急ぐから、体支えろ」


 雫はアレックスに体を支えてもらいながら、宿舎に到着した。食堂に向かおうとした時、団長室から出てきたフィディスと希空に鉢合わせした。希空もフィディスに体を支えてもらいながら、気怠そうだった。


「フィディスと希空もおはよう」
「あぁ、雫とアレックス、おはよう。今日は随分と遅いじゃないか」
「えっ、あーっ、うん。ちょっと寝坊しちゃって。二人も遅いじゃん。それより、希空は怠そうだけど、大丈夫なのか?」
「……あっ、雫さん、おはよう。ちょ、ちょっと怠くて」


 希空の首元に一箇所だけ赤くなっている部分が見え、雫は形から見て、キスマークだとすぐ分かった。そして、ニヤニヤしながら、二人に小声で伝えた。


「隠せる場所にキスマークしないとバレるぞ」
「嘘! キスマあるの? ってか、された記憶ないんだけど……」
「き、気のせいじゃないか? ほら、早くしないと、朝飯が終わる」


 雫が希空にキスマークの場所を教えると、希空は頬を赤くし、首元を手で隠した。雫はフィディスに疑いの眼差しを向けたが、いつもの冷静な態度だったが、頬を少し赤くし、目が泳いでいた。四人は揃って、食堂へ行った。
 カレンさん達に挨拶をし、朝食を受け取ると、四人は席に座り、朝食を食べ始めた。


「なぁ、お前、昨日の夜、巡回だったよな?」
「あぁ、そうだけど」
「昨日、女の悲鳴と犬の遠吠えが聞こえなかったか?」


 後ろの席で朝食を摂る団員達の話し声が聞こえ、雫と希空はスープを吹き出しそうになり、盛大にむせこんだ。


「お、おい。お前達、大丈夫か?」
「ゴホゴホッ! だ、大丈夫」
「ンンッ! 危ない、吹き出すとこだった」


 昨夜の巡回を担当した団員がフィディスの元へやってきて、昨夜の事を報告した。


「団長、おはようございます。昨夜の件ですが……」
「今、お前達が話しているのが聞こえた。女の悲鳴は幽霊じゃないか? 前も噂になっただろ? 犬の遠吠えなんて、近くに野犬がいたり、人狼の群れがいれば、聞こえるのは普通だろ」
「た、確かに……。お食事中に失礼しました!」


 フィディスは食事をしながら、淡々と答え、団員も納得し、敬礼をすると、席に戻った。雫と希空は胸を撫で下ろし、再び食事を摂り始めた。食事が終わり、四人は部屋へ戻ろうとしたら、団長室の前に殺気立ったエミュが腕を組んで立っていた。そして、エミュは皆の気配を感じると、鋭い眼光でフィディスとアレックスを睨んだ。


「お、おはよう。エミュ、……そんなに怒って、どうしたんだ?」
「どうしたんだ? ですって! 廊下では話せないので、皆さんはさっさと団長室へ入ってください!」
「は、はい……」


 団長室に四人を入れると、エミュは大きな音を立てて、ドアを閉めた。そして、希空と雫をソファに座らせると、フィディスとアレックスには床へ正座するように言った。


「なんでこんなに怒ってるか分かりますか!」
「わ、分かりません……」
「わ、わ、分かりませんですって! とぼけても分かってるんですよ! アレックスも他人事だと思ってますよね? ちゃんと聞きなさい!」
「キャンッ! ごめんなさい」
「長期に渡る任務が終わって、気が緩むのも分かります。が! 貴方達は希空様と雫様に手を出しましたね? あれだけ丁重に扱うように言ったのに……。お二人が男性だったから、良かったものの、本当に身籠ったら、どうするんですか!」
「まぁ、エミュ。お互いの同意があって、やった事であって……」
「そうだぞ。雫もアレックスと交尾するの、喜んでた。可愛かった」
「……アレックス、それはここで言うもんじゃ」
「いいや、俺の希空の方が何十倍何百倍も愛らしくて、よがって啼いてくれたぞ」
「……な、なんで、そこで張り合うの。ってか、恥ずかしいんだけど」


 二人がお互いの行為で良かった事を言い争い始め、雫と希空は顔から火が出そうで、両手で顔を隠した。エミュは恥ずかしさも相まって、泣きながら、二人に怒鳴った。


「もう知りませんからね! こ、今回は大目に見ますが、相手が聖女様だという事を理解した上で、きちんとしてください! あと、希空様も雫様も体を清めなさい! 愛液は魅了作用が最も強いんですから、体に付着したまま、外に出てはいけません! 分かりましたか!」
「は、はい。すみませんでした」
「ごめんなさい。あとで清めます……」
「もう全く……。フィディスとアレックス、次、変な事をしたら、反省するまで貞操具を着けさせますからね!」


 そう言うと、エミュは団長室を後にした。フィディスとアレックスは顔が青ざめ、俯いていた。希空と雫はエミュが本気で怒っているのを見て、開いた口が塞がらなかった。


「流石に、貞操具を着けられたら、俺は生きていけなくなる」
「アレックスも……。着けられた仲間を見た時、とても辛そうだったから、嫌だ」
「と、とりあえず、変な事はしていないんだし、お互いの関係が分かったんだから、次は大丈夫でしょ。俺も希空も愛液の事を知らなかったのも悪いんだしさ……」


 四人は深くため息をつき、一先ず宿舎の大浴場で体を清めた。そして、フィディスは訓練場へ鍛錬をしに行った。残る三人は子供達がいる教会の部屋へ向かった。
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