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第十一章:僕達は誰かの一番になれればいい
11-7:Side Noa <ただいま、大好きな場所③>
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「結果的に、この世界に来て、皆に出会えて……本当に良かった。課題はまだ山積みかもしれないけど、一つずつ解決出来れば良いな。僕にとって一番大好きな場所だから」
「そうですね。皆が希空様みたいに、この国を好きになってくれる事を願ってます」
「エミュは頑張り過ぎな時があるから、時々肩の力を抜いてね。大好きな人が倒れちゃったら、僕泣いちゃうかも」
「大好きな人……、私がですか?」
エミュは顔を真っ赤にし、固まった。希空は言い方を間違ったと思い、顔の前で両手を振り、慌てて訂正した。
「ごめん、ごめん! 違うの! エミュは確かに大好きだし、大切な人。色んな事を教えてくれて、僕の無茶振りにも応えてくれるし、だれよりも心配してくれて。……まるでお母さんみたいな存在って事」
「お、お母さん……ですか?」
「うん、友達とも恋人とも違うっていうか。あっ、エミュはお母さんだ! って」
エミュは少しポカンとしたが、希空がはっきりと言うため、愛想笑いをした。
(確かに私は世話係でしたが、希空様にとっては母親のような存在……。嬉しいような、悲しいような複雜な気持ちですね。これは世話係を全う出来ているという事でしょうか?)
希空は久々の湯船と優しい香りを堪能したところで、湯船から出ると、エミュはタオルで希空の全身を細心の注意を払い、優しく丁寧に拭き上げた。大判タオルで希空の体を包み、浴室を後にした。
「希空様、本日は食堂で祝宴ですが、お召し物はいかがなさいましょうか? 大変申し訳無いのですが、急に決まったものですから、祝宴用の服が用意出来ず……」
「大丈夫だよ。いつもので平気」
「それでしたら、こちらはいかがですか?」
エミュはテーブルに出しておいた木箱の蓋を開けた。そこには白い生地に青色のストライプ柄をメインとしたもので、アクセントで神聖セルベン王国の国旗が縫い付けられたシャツワンピースと紺色のリボンだった。
「これ、どうしたの? 高そう」
「希空様が召喚される前から、聖女様に着て頂く服を仕立て屋に依頼して、何着か試作を作って貰っていたんです」
「こういう感じ好きだよ! 素敵だと思う。早速着てみたい!」
希空はシャツワンピースを着た。そして、エミュに丈を調整してもらい、最後に紺色のリボンで固定した。希空はやっとデザインのある服が着れて、嬉しくて、思わず笑みが溢れた。
「着心地も良いし、最高! なんだけど、下着は?」
「い、いつものでよろしいかと……」
エミュは慌てて、木箱を自分の後ろに隠した。希空は不審に思い、目を細めて、エミュをじっと見た。エミュは目を泳がせながら、苦笑いした。
「その中に下着も入ってるんでしょ?」
「えーっと、それは……」
「折角だし、その中のが良い。下着もそろそろ違うのがいい」
「この下着は流石の希空様にも早いかと……」
「じゃぁ、ノーパン……下着穿かずに祝宴へ行けって事? そっちの方が大問題だと思うけど」
希空は頬を膨らませ、そっぽを向いた。エミュは仕方なく木箱を希空に渡した。中を見ると、白色のベビードールとショーツのセットが入っていた。
箱から取り出してみると、生地がさらりとし、触り心地が良かった。ふんわりとしたシフォンジョーゼットに、シャンパンゴールド色のレースとリボンが施され、上品なランジェリーだなと希空は思った。
「えっ、可愛いじゃん! 着たい! しかも、香水みたいなのも入ってる!」
「あっ、それは絶対に使ってはいけません!」
「なんでよ」
「いや、それは……」
希空はため息をつき、木箱に香水を戻すと、シャツワンピースを脱ぎ、ランジェリーを着用した。そして、シャツワンピースを着て、自分で丈を調整し、真新しい白色のフラットパンプスを履いた。
「これでいいでしょ。皆、待ってるかもしれないし、行こう」
一人で勝手に頬を赤くし、モジモジしているエミュの姿を見かねて、希空はエミュの腕を引っ張った。
「ほら、エミュも行こう」
「あ、あの……。希空様は本当にフィディスの事を愛してらっしゃるのですか?」
「な、なに急に。……うん、まぁ、好きだけど」
「そうですか。それなら……」
エミュは含みをもたせた言い方をし、希空に香水を渡した。
「これ、さっきダメって」
「今、使ってはダメです。二人っきりになった時だけに使って下さい。良いですか? 二人っきりの時だけに使うんですよ」
エミュから念を押され、希空は香水の小瓶を胸ポケットにしまった。エミュが祝宴用の服装に着替えると言ったので、少し待った。
「お待たせしました」
希空が振り返ると、エミュは黒の聖職者服を着て、良質の絹で丁寧に織られたカーディナルレッドのサッシュを身に着けていた。
「そっか、エミュは枢機卿になったんだもんね。緋色を身につけるんだっけ?」
「よくご存知ですね。本当はカーディナルレッド一色の聖職者服もあるんですが、こちらの方が私には合ってるので」
エミュは少し照れくさそうに話した。そして、二人は会場である宿舎へ向かった。
「あれ? アラン様は参加するの?」
「いえ、アラン教皇様は執務中で、私が代わりに出席するんです」
「えっ、もう夜遅いのに、執務中なの? 過労で倒れなきゃいいけど」
「希空様のお言葉に、とても感銘を受けたそうで。頑張ってらっしゃるそうです」
「それは嬉しいけど。今度、アラン様の分のスコーンも焼いて持っていこうかな?」
宿舎前まで来ると、団長室に明かりがついていた。恐らく祝宴はまだ始まっていないようだ。二人は団長室のドアをノックし、入った。
「そうですね。皆が希空様みたいに、この国を好きになってくれる事を願ってます」
「エミュは頑張り過ぎな時があるから、時々肩の力を抜いてね。大好きな人が倒れちゃったら、僕泣いちゃうかも」
「大好きな人……、私がですか?」
エミュは顔を真っ赤にし、固まった。希空は言い方を間違ったと思い、顔の前で両手を振り、慌てて訂正した。
「ごめん、ごめん! 違うの! エミュは確かに大好きだし、大切な人。色んな事を教えてくれて、僕の無茶振りにも応えてくれるし、だれよりも心配してくれて。……まるでお母さんみたいな存在って事」
「お、お母さん……ですか?」
「うん、友達とも恋人とも違うっていうか。あっ、エミュはお母さんだ! って」
エミュは少しポカンとしたが、希空がはっきりと言うため、愛想笑いをした。
(確かに私は世話係でしたが、希空様にとっては母親のような存在……。嬉しいような、悲しいような複雜な気持ちですね。これは世話係を全う出来ているという事でしょうか?)
希空は久々の湯船と優しい香りを堪能したところで、湯船から出ると、エミュはタオルで希空の全身を細心の注意を払い、優しく丁寧に拭き上げた。大判タオルで希空の体を包み、浴室を後にした。
「希空様、本日は食堂で祝宴ですが、お召し物はいかがなさいましょうか? 大変申し訳無いのですが、急に決まったものですから、祝宴用の服が用意出来ず……」
「大丈夫だよ。いつもので平気」
「それでしたら、こちらはいかがですか?」
エミュはテーブルに出しておいた木箱の蓋を開けた。そこには白い生地に青色のストライプ柄をメインとしたもので、アクセントで神聖セルベン王国の国旗が縫い付けられたシャツワンピースと紺色のリボンだった。
「これ、どうしたの? 高そう」
「希空様が召喚される前から、聖女様に着て頂く服を仕立て屋に依頼して、何着か試作を作って貰っていたんです」
「こういう感じ好きだよ! 素敵だと思う。早速着てみたい!」
希空はシャツワンピースを着た。そして、エミュに丈を調整してもらい、最後に紺色のリボンで固定した。希空はやっとデザインのある服が着れて、嬉しくて、思わず笑みが溢れた。
「着心地も良いし、最高! なんだけど、下着は?」
「い、いつものでよろしいかと……」
エミュは慌てて、木箱を自分の後ろに隠した。希空は不審に思い、目を細めて、エミュをじっと見た。エミュは目を泳がせながら、苦笑いした。
「その中に下着も入ってるんでしょ?」
「えーっと、それは……」
「折角だし、その中のが良い。下着もそろそろ違うのがいい」
「この下着は流石の希空様にも早いかと……」
「じゃぁ、ノーパン……下着穿かずに祝宴へ行けって事? そっちの方が大問題だと思うけど」
希空は頬を膨らませ、そっぽを向いた。エミュは仕方なく木箱を希空に渡した。中を見ると、白色のベビードールとショーツのセットが入っていた。
箱から取り出してみると、生地がさらりとし、触り心地が良かった。ふんわりとしたシフォンジョーゼットに、シャンパンゴールド色のレースとリボンが施され、上品なランジェリーだなと希空は思った。
「えっ、可愛いじゃん! 着たい! しかも、香水みたいなのも入ってる!」
「あっ、それは絶対に使ってはいけません!」
「なんでよ」
「いや、それは……」
希空はため息をつき、木箱に香水を戻すと、シャツワンピースを脱ぎ、ランジェリーを着用した。そして、シャツワンピースを着て、自分で丈を調整し、真新しい白色のフラットパンプスを履いた。
「これでいいでしょ。皆、待ってるかもしれないし、行こう」
一人で勝手に頬を赤くし、モジモジしているエミュの姿を見かねて、希空はエミュの腕を引っ張った。
「ほら、エミュも行こう」
「あ、あの……。希空様は本当にフィディスの事を愛してらっしゃるのですか?」
「な、なに急に。……うん、まぁ、好きだけど」
「そうですか。それなら……」
エミュは含みをもたせた言い方をし、希空に香水を渡した。
「これ、さっきダメって」
「今、使ってはダメです。二人っきりになった時だけに使って下さい。良いですか? 二人っきりの時だけに使うんですよ」
エミュから念を押され、希空は香水の小瓶を胸ポケットにしまった。エミュが祝宴用の服装に着替えると言ったので、少し待った。
「お待たせしました」
希空が振り返ると、エミュは黒の聖職者服を着て、良質の絹で丁寧に織られたカーディナルレッドのサッシュを身に着けていた。
「そっか、エミュは枢機卿になったんだもんね。緋色を身につけるんだっけ?」
「よくご存知ですね。本当はカーディナルレッド一色の聖職者服もあるんですが、こちらの方が私には合ってるので」
エミュは少し照れくさそうに話した。そして、二人は会場である宿舎へ向かった。
「あれ? アラン様は参加するの?」
「いえ、アラン教皇様は執務中で、私が代わりに出席するんです」
「えっ、もう夜遅いのに、執務中なの? 過労で倒れなきゃいいけど」
「希空様のお言葉に、とても感銘を受けたそうで。頑張ってらっしゃるそうです」
「それは嬉しいけど。今度、アラン様の分のスコーンも焼いて持っていこうかな?」
宿舎前まで来ると、団長室に明かりがついていた。恐らく祝宴はまだ始まっていないようだ。二人は団長室のドアをノックし、入った。
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