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第十章:最果ての地ナクアで待っていたものとは
10-3:Side Noa <暗闇>
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一方その頃、魔王の魂が作り出した歪んだ空間に飛び込んだフィディスは気を失っていた。
「うっ……、ここは魔王の魂の中か?」
フィディスが目を覚ますと、周りは暗闇に包まれていた。息苦しさが少しあったが、体には傷一つ無かった。フィディスは隣に落ちていた自分の剣を杖代わりにし、立ち上がった。
「希空! 何処にいる?」
フィディスは希空の名を叫んだ。しかし、希空からの返答は無く、自分の声も反響すらせず、闇に消えていく。
「くそ! 一体、どうすれば……」
フィディスが思い悩んでいると、周りの空間が学校の男子トイレに切り替わった。そこには、見知らぬ男子学生達が蹲った希空を取り囲んでいた。
「希空! ここはどこだ?」
フィディスが希空の元へ行こうとしたが、思うように体が動かなかった。フィディスはもがいていると、男子学生が持っていたバケツの水を希空にぶっかけた。
「貴様! 希空になんてことをするんだ!」
「お前なんか早くどっかに行っちまえ」
「優等生気取って、目障りなんだよ」
希空は一言も喋らず、俯いていた。フィディスが怒鳴ったが、どうやら聞こえておらず、男子学生は希空を嘲笑い、暴言を吐いていた。男子学生達は満足したのか、トイレから出ていった。
その瞬間、フィディスは動けるようになり、急いで希空に駆け寄った。
「おい、希空! 大丈夫か? さっきの奴らはなんだ!」
「…………」
「さっきの奴らを追いかけて、謝罪をさせ――」
憤りを感じたフィディスは希空にそう言うと、さっきまでいた人達を追いかけようとした。しかし、希空に腕を掴まれた。そして、ゆっくりと顔を上げる希空を見た。濡れた前髪の隙間からこちらを見ており、その目は死んだ魚のような目だった。
「なんで助けるの?」
「希空にこんな酷い仕打ちをする奴らをだな――」
「そういうの、やめてくんない? そんな正義、余計だから」
「どうしたんだよ、希空。お前、おかしいぞ!」
フィディスが希空の体を揺さぶろうとした瞬間、激しい頭痛と目眩に襲われた。フィディスは目を瞑り、こめかみを押さえた。症状はすぐに無くなり、目を開けると、男子トイレから薄暗い倉庫に場所が変わっていた。
そこでは、無精髭を生やした男性と服をたくし上げられた希空がいた。
「先生、誰か来ちゃいます……」
「へへっ、こんな時間に来る奴なんていねぇよ。希空ちゃんは今日も可愛いね。先生がいっぱい愛してあげるからね」
「んっ! 先生、触り方がやらしい」
「希空ちゃんはこうされるの、好きだもんな」
先生と呼ばれる中年の男は希空の体をまさぐり、鼻息を荒くしていた。希空はその男に抱きつき、淫らな声を出していた。フィディスはその光景に言葉を失い、呆然とした。
「先生、早く……。いっぱい愛してくれるんでしょ?」
「希空ちゃんは本当に欲しがりさんだな。今、先生ので中まで愛しちゃうからね。へへっ」
聞いた事の無い希空の卑猥な啼き声に、自分以外の男が体を重ねている光景に目を塞ぎたくなったが、目が塞がらなかった。
「やめてくれ……。希空、やめてくれ……」
フィディスは涙を堪えながら、弱々しい声で訴えた。その時、行為中の希空とバチッと目があった。中年の男はそれには気付いておらず、舌舐めずりしながら、腰を振っていた。
「愛するとか言って、所詮ヤリたいだけなんだよね。そう思わない?」
「な、何を言ってるんだ……」
「でもね、何もかも忘れられんだよね。お互いに都合がいい。抱いてくれるなら、誰でもいい。愛を感じなくても、快楽を愛だと思えばいい」
「希空、そんな事言うな……。俺は……」
その後も、色々な男に抱かれる希空が目の前で繰り広げられた。男がいなくなり、部屋のベッドに横たわる希空はどれも目が死んでおり、笑いながら、涙を流していた。そして、最後は無理矢理脱がされて、抵抗する希空の姿だった。
「やめて! お母さんに怒られるから!」
「いいじゃねぇか。あんなババアよりお前の方がタイプなんだよ。お前は男だし、中に出しても妊娠しねぇし、……おい、大人しくしろ!」
「嫌だよ! やめて! 無理矢理したら、痛いから! 痛いって!」
「やらしい体しやがって。嫌がるくせに、俺のを咥え込んで離さないじゃねぇか。希空、気持ち良いんだろ? いつもみたいに『あんあん、気持ちいい』って喘げよ」
「――えっ、ちょっと二人とも何してんの!」
「チッ……。ババア帰ってくんの早いんだよ。俺は用事思い出したから、帰るわ」
「ちょ、ちょっと! …………希空、これはどういう事なの! まさか!」
「お母さん、違うの! あの人が無理矢理――っ!」
希空の母親は下唇を噛み、事情を説明しようとする希空の頬を思いきり平手打ちした。
「あんたなんて……、あんたなんて……、産まなきゃ良かった!」
希空の母親はドアを強く閉め、大きな音が響いた。希空は赤く腫れた頬を擦りながら、フィディスの目の前にゆらりゆらりと俯きながら、歩いてきた。
「所詮、僕は今も昔も……要らない子なんだよ」
希空の顔は憔悴しており、静かに泣いた。そのタイミングで、フィディスは再び闇の中に戻された。フィディスは希空の本当の過去を知り、胸が締め付けられる気持ちになり、膝から崩れ落ち、自然と涙が溢れた。
「外で観たのはごく一部。今のが僕の全部。皆、酷いよね。タダでヤらせてあげてるのに。お母さんだって、僕を放っておいて、色んな男と遊んでたのにね。僕は産まれたくて、産まれた訳じゃないのにね」
耳元で希空の声が聞こえた。フィディスが顔を上げると、目の前に希空がいた。希空はフィディスの頬に手を添え、涙を親指で拭い取った。そして、声を出さず薄気味悪く笑った。フィディスは身の危険を感じ、咄嗟に後ろへ下がった。
「うっ……、ここは魔王の魂の中か?」
フィディスが目を覚ますと、周りは暗闇に包まれていた。息苦しさが少しあったが、体には傷一つ無かった。フィディスは隣に落ちていた自分の剣を杖代わりにし、立ち上がった。
「希空! 何処にいる?」
フィディスは希空の名を叫んだ。しかし、希空からの返答は無く、自分の声も反響すらせず、闇に消えていく。
「くそ! 一体、どうすれば……」
フィディスが思い悩んでいると、周りの空間が学校の男子トイレに切り替わった。そこには、見知らぬ男子学生達が蹲った希空を取り囲んでいた。
「希空! ここはどこだ?」
フィディスが希空の元へ行こうとしたが、思うように体が動かなかった。フィディスはもがいていると、男子学生が持っていたバケツの水を希空にぶっかけた。
「貴様! 希空になんてことをするんだ!」
「お前なんか早くどっかに行っちまえ」
「優等生気取って、目障りなんだよ」
希空は一言も喋らず、俯いていた。フィディスが怒鳴ったが、どうやら聞こえておらず、男子学生は希空を嘲笑い、暴言を吐いていた。男子学生達は満足したのか、トイレから出ていった。
その瞬間、フィディスは動けるようになり、急いで希空に駆け寄った。
「おい、希空! 大丈夫か? さっきの奴らはなんだ!」
「…………」
「さっきの奴らを追いかけて、謝罪をさせ――」
憤りを感じたフィディスは希空にそう言うと、さっきまでいた人達を追いかけようとした。しかし、希空に腕を掴まれた。そして、ゆっくりと顔を上げる希空を見た。濡れた前髪の隙間からこちらを見ており、その目は死んだ魚のような目だった。
「なんで助けるの?」
「希空にこんな酷い仕打ちをする奴らをだな――」
「そういうの、やめてくんない? そんな正義、余計だから」
「どうしたんだよ、希空。お前、おかしいぞ!」
フィディスが希空の体を揺さぶろうとした瞬間、激しい頭痛と目眩に襲われた。フィディスは目を瞑り、こめかみを押さえた。症状はすぐに無くなり、目を開けると、男子トイレから薄暗い倉庫に場所が変わっていた。
そこでは、無精髭を生やした男性と服をたくし上げられた希空がいた。
「先生、誰か来ちゃいます……」
「へへっ、こんな時間に来る奴なんていねぇよ。希空ちゃんは今日も可愛いね。先生がいっぱい愛してあげるからね」
「んっ! 先生、触り方がやらしい」
「希空ちゃんはこうされるの、好きだもんな」
先生と呼ばれる中年の男は希空の体をまさぐり、鼻息を荒くしていた。希空はその男に抱きつき、淫らな声を出していた。フィディスはその光景に言葉を失い、呆然とした。
「先生、早く……。いっぱい愛してくれるんでしょ?」
「希空ちゃんは本当に欲しがりさんだな。今、先生ので中まで愛しちゃうからね。へへっ」
聞いた事の無い希空の卑猥な啼き声に、自分以外の男が体を重ねている光景に目を塞ぎたくなったが、目が塞がらなかった。
「やめてくれ……。希空、やめてくれ……」
フィディスは涙を堪えながら、弱々しい声で訴えた。その時、行為中の希空とバチッと目があった。中年の男はそれには気付いておらず、舌舐めずりしながら、腰を振っていた。
「愛するとか言って、所詮ヤリたいだけなんだよね。そう思わない?」
「な、何を言ってるんだ……」
「でもね、何もかも忘れられんだよね。お互いに都合がいい。抱いてくれるなら、誰でもいい。愛を感じなくても、快楽を愛だと思えばいい」
「希空、そんな事言うな……。俺は……」
その後も、色々な男に抱かれる希空が目の前で繰り広げられた。男がいなくなり、部屋のベッドに横たわる希空はどれも目が死んでおり、笑いながら、涙を流していた。そして、最後は無理矢理脱がされて、抵抗する希空の姿だった。
「やめて! お母さんに怒られるから!」
「いいじゃねぇか。あんなババアよりお前の方がタイプなんだよ。お前は男だし、中に出しても妊娠しねぇし、……おい、大人しくしろ!」
「嫌だよ! やめて! 無理矢理したら、痛いから! 痛いって!」
「やらしい体しやがって。嫌がるくせに、俺のを咥え込んで離さないじゃねぇか。希空、気持ち良いんだろ? いつもみたいに『あんあん、気持ちいい』って喘げよ」
「――えっ、ちょっと二人とも何してんの!」
「チッ……。ババア帰ってくんの早いんだよ。俺は用事思い出したから、帰るわ」
「ちょ、ちょっと! …………希空、これはどういう事なの! まさか!」
「お母さん、違うの! あの人が無理矢理――っ!」
希空の母親は下唇を噛み、事情を説明しようとする希空の頬を思いきり平手打ちした。
「あんたなんて……、あんたなんて……、産まなきゃ良かった!」
希空の母親はドアを強く閉め、大きな音が響いた。希空は赤く腫れた頬を擦りながら、フィディスの目の前にゆらりゆらりと俯きながら、歩いてきた。
「所詮、僕は今も昔も……要らない子なんだよ」
希空の顔は憔悴しており、静かに泣いた。そのタイミングで、フィディスは再び闇の中に戻された。フィディスは希空の本当の過去を知り、胸が締め付けられる気持ちになり、膝から崩れ落ち、自然と涙が溢れた。
「外で観たのはごく一部。今のが僕の全部。皆、酷いよね。タダでヤらせてあげてるのに。お母さんだって、僕を放っておいて、色んな男と遊んでたのにね。僕は産まれたくて、産まれた訳じゃないのにね」
耳元で希空の声が聞こえた。フィディスが顔を上げると、目の前に希空がいた。希空はフィディスの頬に手を添え、涙を親指で拭い取った。そして、声を出さず薄気味悪く笑った。フィディスは身の危険を感じ、咄嗟に後ろへ下がった。
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