召喚聖女♂の異世界攻略ノート~クーデレ護衛騎士と人狼わんこの手懐け方~

沼田桃弥

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第九章:エルフの国リードルフと黒龍神様

9-6:フォルテラ神殿に眠る黒龍神

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 翌朝、三人は神殿に向かうはずだったが、雫が起きた時にはアレックスの姿がすでになかった。


「アレックス、どこに行ったんだろう? 朝一で出発するって言ったのに」
「アレックスは普通の人狼族とは違うからな。どっかフラフラしてるんじゃないのか?」
「まぁ、それはあながち間違ってない。とりあえず二人で行こう」
「ああ、そうだな。神殿までの行き方も伝えてあるしな」


 二人は支度を済ませ、出発した。馬に乗れば、早く到着するが、何があるか分からないため、徒歩で行く事にした。神殿までは林道で整備だけはされていた。瘴気は感じず、穏やかな風が吹き、枝葉が揺れ、その隙間から太陽の光が射し込む。


「誰も近寄らないという割には、瘴気も感じないし、穏やかで良いですね」
「はぁ……、お前は呑気だな。動物にも魔物にも出会わないのは明らかにおかしいだろ」
「確かに言われてみれば」


 しばらく歩くと、開けた場所に出た。そこには大理石で建てられた大きな神殿があり、神殿を取り囲むように、水辺があった。神殿までの石畳道や水辺付近には、古代兵器の遺跡守衛が人を寄せ付けないように複数体闊歩していた。


「予想以上に守衛がいるな。見つかると問題だ。茂みに隠れて、作戦を立てるぞ」
「そうですね。あの巨大な足で踏まれたら、一溜まりもなさそう……」


 二人は茂みに隠れ、遺跡守衛の様子を窺った。


「あの光ってる眼みたいなのに、姿を見られたら、攻撃される感じですか? あの眼からビーム出ちゃうとか?」


 雫はゲームで似たような敵と戦った事があり、あまりにも似ていたため、フィディスに何となく聞いた。


「お前、よく知ってるな。守衛と戦った事があるのか?」
「あっ……、いや、なんか図鑑で見たようなぁ。あはははっ」
「守衛は元々種族判別が出来る。ここはエルフ族の管理下だから、エルフ族には友好的なはずだ。なのに、近寄れない。……雫、守衛の眼を見ろ。普通はオレンジ色だが、紫色だ」
「瘴気が湯気みたいに漏れ出してますね。でも、この距離だとギリギリ一体浄化出来るかどうかですよ。詠唱中に攻撃されたら、俺ボッコボコですよ」
「俺がブレイドシールドで攻撃を受け止めてもいいが、その間に他の守衛に見つかってしまう」


 二人は腕を組み、深く考え込んだ。闇雲に突っ込んでも全滅する可能性が高い。最適解が出ず、途方に暮れていると、道を挟んで反対側の茂みから何かが飛び出してきた。よく見ると、アリーシャを背中に乗せた狼の姿をしたアレックスだった。


「ワオォォォーン!」
「もふもふちゃん、行くわよぉ!」


 アレックス達は正面から突っ込んでいった。雫とフィディスは二人に声を掛けようも、特攻していく姿に開いた口が塞がらなかった。 


「アレックスに、アリーシャちゃん?」
「なんであの二人がいるんだ?」
「分からないです。あと、もふもふちゃんって……いつ仲良くなったんだ?」
「二人にも作戦があるんだろう。ひとまず様子を見て、ダメそうなら俺達も加勢しよう」


 二人はいつでも加勢出来るように武器を構え、二人を見守った。


「もふもふちゃん、正面に一体、左に二体! さっき言った作戦で行くよ!」
「ワウゥゥーッ!」


 アリーシャはアレックスの背中に立ち、弓を弾いた。守衛が眼からビームを出すタイミングで、アレックスは飛び上がり、アリーシャはその反動を利用して、更に高く飛び、一回転しながら、守衛の眼に狙いを定めた。


「ライトニングアローシュートッ!」


 矢先が静電気のようにバチバチと言わせ、射った矢は一筋の雷光のように見え、守衛の眼のど真ん中に刺さり、全身をビリビリと感電させ、守衛を後ろに転倒させた。アリーシャは綺麗に弧を描き、地面に着地した。
 一方、アレックスはいつの間にか人の姿になり、二体の守衛を相手にしていた。アレックスは上手い具合に、守衛のバランスを崩していた。


「電光撃!」


 アレックスは拳に雷属性の力をチャージさせて、守衛の眼に目掛けて、思いっきり拳を下ろした。バキバキと破壊音が聞こえ、守衛の頭部が地面にめり込み、地割れが起きた。
 その間に、もう一体の守衛が起き上がって、長い腕でアレックスを殴ろうとしていたが、その腕を脚のグリーヴで受け止め、蹴り飛ばした。守衛は反動でぐるぐると回転した。


「ウォーターアローシュートッ!」


 そんな回転している守衛に対して、アリーシャは矢先に水を溜め込み、守衛の眼に目掛けて射った。矢の軌跡に水の飛沫が残り、虹が見えた。再び矢は守衛の眼ど真ん中に命中し、守衛は湿潤状態になった。
 そして、アレックスは高く飛び上がり、一回転しながら、氷属性の力を溜めていた。


「氷砕撃!」


 アレックスは守衛の頭に回転蹴りをすると、守衛は一気に凍りついた。そのまま頭部を吹っ飛ばし、更に回転に合わせて、拳を下ろし、守衛を砕いた。二人の連携プレイはこの後も続き、瘴気を纏った守衛は全滅した。
 雫達はバラバラになった守衛の残骸の間を縫って、アレックスの元へ行った。


「主! アリーシャとの連携プレイどうだったか?」
「どうもこうも無いよ!」


 ドヤ顔をし、撫でられ待ちのアレックスの頭を雫は思いっきりチョップした。アレックスは頭を擦りながら、ポカンとしていた。
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