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第八章:立ちはだかる脅威
8-8:落ち着かない夜
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「さて、犯人が分かった所で、……そもそもここ数年、ドレッド大司教が教会の権限を握っていた点は不審だと思いませんか? 教皇や枢機卿が表に出てこないのもおかしいですよね?」
「確かに不審ですね。聖女召喚時は拝見しましたけど、その後は……。アラン様が教会へいらっしゃった時も、雫様がいらした時も……」
「他の司祭達にも協力してもらって、教皇や枢機卿の行方を探しましょう」
エミュは他の司祭達を呼び集め、手分けして教会の隅々を隈なく探した。三十分後、地下聖堂の隠し部屋に二人のミイラ化した遺体が発見された。
「悪魔を一体召喚するのと諸々に利用するには、生贄としては、丁度良いでしょうね。今は棺に入れて、地下聖堂に安置しましょう。表立ったりすると、国中が混乱しますからね」
「アラン様、緊急参事会を開きましょう。フィディスは第二騎士団で会議を開きなさい。有事の際に備えて、改めてきちんと話し合うべきです」
「ああ、分かった。俺達が希空を助けに行っている間も任せられるようにしないとな」
フィディスは宿舎へ戻り、団員達を集め、緊急会議を行なった。そして、アランとエミュは緊急参事会を行なう準備をした。アランは雫とアレックスに子供達の面倒をお願いした。またオロバスも見るように伝えた。
「えっ! オロバスも見るんですか? 子供達にどう説明すれば……」
「まぁ、なんとかなるでしょう。もし、子供達に危害を加えようとしたら、その時はオロバスを煮るなり焼くなり、お好きにしていただいて構いませんよ。個人的には焼くのがオススメですよ」
「俺様はそんなに凶悪な悪魔じゃねぇのは、貴様がよく知っているだろうが!」
「では、後は頼みましたよ」
アランはエミュとともに、会議室へ走っていった。取り残された雫とアレックス、それにオロバス。雫は仕方なくアランに言われた通り、子供達がいるという奥の部屋へ向かう。
向かう途中、アレックスは人の姿になり、オロバスを威嚇した。オロバスはそっぽを向いて、無視した。
「主はアレックスのだからな! 手を出したら、悪魔だからって許さないからな。主、コイツは確かに男前だが、馬だからな!」
「あぁっ? 馬がどうした? 貴様は犬だろうが!」
「アレックスは狼だ!」
「あーっ、なるほど。……雫は獣人好きか。良い趣味してんな」
「獣人好きというか……。そういうのは今どうでもいいから、子供達の部屋に入るよ」
雫は二人の会話に呆れ、子供達がいる部屋のドアをノックした。突然のノック音に驚いたのか、中からは怯えたような声がした。
雫はドア越しに優しく声を掛けた。ドアノブを回すと、結界が解かれたような音がした。恐らくアランが結界を張ったのだろう。
部屋の中に入ると、子供達が隅に固まって、怯えていた。雫達の姿を見ると、子供達は泣きながら、雫とアレックスの体にしがみついた。
「雫お兄ちゃん、怖かったよぉ……」
「もう大丈夫だよ。安心して。アラン様は急用が出来て、俺が代わりに来たよ」
雫が子供達の頭を撫でて、あやそうとするが、隣には知らない赤髪の男がいるのに気付くと、雫の体に隠れるように様子を窺った。
「このお兄さん、誰?」
「えっと、……オロバスお兄さんだよ。アラン様の眷ぞ……じゃなくて、アラン様の知り合いだよ」
「アラン様の知り合い? 初めて見る」
雫はオロバスに愛想良くしろと言うが、子供達に睨みを利かせた。その時、円環が反応し、オロバスの首をギチギチと締めていく音がした。オロバスは床でのた打ち回り、観念したのか、床をバンバンと何度も激しく叩いた。
円環が元通りになったのか、オロバスは肩で大きく息をし、汗を腕で拭った。
「ゴホゴホッ……。あの野郎……。貴様ら、よく聞け。俺様の名はオロバスだ。馬の獣人だ。崇めよ。はははははっ!」
「お馬さんなの?」
「オロバスお兄ちゃんはお馬さんなの?」
「あぁ、そうだぞ。どうだ? 驚いたか」
「凄ぉーい! アレックスも凄いけど、オロバスお兄ちゃんも凄い!」
先程まで怯えていた子供達はオロバスを取り囲み、目をキラキラ輝かせながら、オロバスを見上げた。
数分後、オロバスは四つん這いになり、背中に子供達を乗せて、部屋中を這っていた。髪の毛を引っ張られ、尻を叩かれ、尻尾を触られたりで、子供達のやりたい放題だった。
「いててっ! 毛引っ張るな! 尻を叩くな! ……んっ! 尻尾だけは止めてくれ! そこだけは、お願いだ。……うぐっ」
「なんかアレックスも最初こんなんだったな……」
「アレックスは小さい頃にフィディスを乗せた事あるから、平気だ」
「あーっ、そう言えば、そうだったわ」
雫はオロバスの馬っぷりを見ながら、苦笑いした。子供達は満足したのか、こっくりこっくりしたり、あくびをするようになった。雫は子供達をベッドに連れていき、寝かし始めた。子供達はスヤスヤと眠りについた。
「主も寝る。見張ってる」
「うん、ありがとう。アレックス」
「見張りは俺がやる。貴様も寝てろ」
オロバスはそう言うと、部屋から出た。雫はソファで眠りにつき、アレックスは狼の姿で子供達が眠るベッドの足元側で丸まって、眠りについた。
「確かに不審ですね。聖女召喚時は拝見しましたけど、その後は……。アラン様が教会へいらっしゃった時も、雫様がいらした時も……」
「他の司祭達にも協力してもらって、教皇や枢機卿の行方を探しましょう」
エミュは他の司祭達を呼び集め、手分けして教会の隅々を隈なく探した。三十分後、地下聖堂の隠し部屋に二人のミイラ化した遺体が発見された。
「悪魔を一体召喚するのと諸々に利用するには、生贄としては、丁度良いでしょうね。今は棺に入れて、地下聖堂に安置しましょう。表立ったりすると、国中が混乱しますからね」
「アラン様、緊急参事会を開きましょう。フィディスは第二騎士団で会議を開きなさい。有事の際に備えて、改めてきちんと話し合うべきです」
「ああ、分かった。俺達が希空を助けに行っている間も任せられるようにしないとな」
フィディスは宿舎へ戻り、団員達を集め、緊急会議を行なった。そして、アランとエミュは緊急参事会を行なう準備をした。アランは雫とアレックスに子供達の面倒をお願いした。またオロバスも見るように伝えた。
「えっ! オロバスも見るんですか? 子供達にどう説明すれば……」
「まぁ、なんとかなるでしょう。もし、子供達に危害を加えようとしたら、その時はオロバスを煮るなり焼くなり、お好きにしていただいて構いませんよ。個人的には焼くのがオススメですよ」
「俺様はそんなに凶悪な悪魔じゃねぇのは、貴様がよく知っているだろうが!」
「では、後は頼みましたよ」
アランはエミュとともに、会議室へ走っていった。取り残された雫とアレックス、それにオロバス。雫は仕方なくアランに言われた通り、子供達がいるという奥の部屋へ向かう。
向かう途中、アレックスは人の姿になり、オロバスを威嚇した。オロバスはそっぽを向いて、無視した。
「主はアレックスのだからな! 手を出したら、悪魔だからって許さないからな。主、コイツは確かに男前だが、馬だからな!」
「あぁっ? 馬がどうした? 貴様は犬だろうが!」
「アレックスは狼だ!」
「あーっ、なるほど。……雫は獣人好きか。良い趣味してんな」
「獣人好きというか……。そういうのは今どうでもいいから、子供達の部屋に入るよ」
雫は二人の会話に呆れ、子供達がいる部屋のドアをノックした。突然のノック音に驚いたのか、中からは怯えたような声がした。
雫はドア越しに優しく声を掛けた。ドアノブを回すと、結界が解かれたような音がした。恐らくアランが結界を張ったのだろう。
部屋の中に入ると、子供達が隅に固まって、怯えていた。雫達の姿を見ると、子供達は泣きながら、雫とアレックスの体にしがみついた。
「雫お兄ちゃん、怖かったよぉ……」
「もう大丈夫だよ。安心して。アラン様は急用が出来て、俺が代わりに来たよ」
雫が子供達の頭を撫でて、あやそうとするが、隣には知らない赤髪の男がいるのに気付くと、雫の体に隠れるように様子を窺った。
「このお兄さん、誰?」
「えっと、……オロバスお兄さんだよ。アラン様の眷ぞ……じゃなくて、アラン様の知り合いだよ」
「アラン様の知り合い? 初めて見る」
雫はオロバスに愛想良くしろと言うが、子供達に睨みを利かせた。その時、円環が反応し、オロバスの首をギチギチと締めていく音がした。オロバスは床でのた打ち回り、観念したのか、床をバンバンと何度も激しく叩いた。
円環が元通りになったのか、オロバスは肩で大きく息をし、汗を腕で拭った。
「ゴホゴホッ……。あの野郎……。貴様ら、よく聞け。俺様の名はオロバスだ。馬の獣人だ。崇めよ。はははははっ!」
「お馬さんなの?」
「オロバスお兄ちゃんはお馬さんなの?」
「あぁ、そうだぞ。どうだ? 驚いたか」
「凄ぉーい! アレックスも凄いけど、オロバスお兄ちゃんも凄い!」
先程まで怯えていた子供達はオロバスを取り囲み、目をキラキラ輝かせながら、オロバスを見上げた。
数分後、オロバスは四つん這いになり、背中に子供達を乗せて、部屋中を這っていた。髪の毛を引っ張られ、尻を叩かれ、尻尾を触られたりで、子供達のやりたい放題だった。
「いててっ! 毛引っ張るな! 尻を叩くな! ……んっ! 尻尾だけは止めてくれ! そこだけは、お願いだ。……うぐっ」
「なんかアレックスも最初こんなんだったな……」
「アレックスは小さい頃にフィディスを乗せた事あるから、平気だ」
「あーっ、そう言えば、そうだったわ」
雫はオロバスの馬っぷりを見ながら、苦笑いした。子供達は満足したのか、こっくりこっくりしたり、あくびをするようになった。雫は子供達をベッドに連れていき、寝かし始めた。子供達はスヤスヤと眠りについた。
「主も寝る。見張ってる」
「うん、ありがとう。アレックス」
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