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第八章:立ちはだかる脅威
8-6:冥界の偉大なる王子・オロバス
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「なんだよ、次から次へと出てきやがる!」
「次は、私がやってみましょう」
次はエミュが魔物達の前に立ちはだかり、詠唱を始めた。
「風の守護者よ。時に風は強く吹き、悪しき者の体を斬り刻む。――ウィンドスリット!」
エミュが詠唱すると、魔物一体一体の足元に緑色の魔法陣が現れ、エミュが指を鳴らすと、風が鎌のようになり、魔物達を斬り刻んだ。そして、魔物達は次々と倒れ、砂のようにサラサラと消えていった。
「次こそやったか?」
「団長! 上空を見てください! 王宮から何か飛んできます!」
「――っ! なんだ、あれは!」
「なんでこんな所に、上位の悪魔が!」
雫達の前に降り立ったのは、胴体と両腕が人間、頭と下半身が馬の姿をした悪魔だった。たてがみと尾が赤く、二本足の先には銀の蹄をしており、一瞬、獣人と見間違えそうな、勇ましさが全体から伝わって来た。悪魔は銀色の斧槍であるハルバードを頭上で振り回すと、地面に突き立てた。
「雫、下がってろ!」
「雫様、お逃げください!」
「えっ、でも!」
フィディスとエミュは雫を庇う様に、攻撃をしながら、敵の注意を雫から逸らした。しかし、二人同時に攻撃をしても、見事なハルバード捌きで全て跳ね返された。
「全然攻撃が通らねぇ!」
「上位悪魔ですからね……。物理耐性も魔法耐性もそれなりにありますからね」
再び、二人は攻撃を仕掛けるが、悪魔は二人に手を翳し、衝撃波のようなものを放った。二人は後方へ勢いよく吹き飛ばされ、宿舎の壁に体を強く打ちつけると、力を失ったように地面へ落ちた。
「エミュ! フィディス! ――っ!」
雫が二人の心配をしていると、悪魔は瞬間移動し、雫の前に立った。そして、首を持ち上げ、口角を少し上げ、不適な笑みを浮かべた。
「お前、旨そうなニオイするな。他の奴らよりも上等な魂を持ってるみたいだな。ここで、お前の体を引き裂いて、その魂を喰らい尽くそうか?」
「うぐっ……」
悪魔が舌舐めずりをし、雫の腹部をハルバードで突き刺そうとした時、教会の方からアランの声がした。悪魔はその声に動きを止めた。アランの声が無かったら、あと数センチで雫の腹部にハルバードが刺さりそうだった。
悪魔は後ろを振り返ると、遠くにいるアランを見て、腹を抱えて笑った。そして、雫から手を離した。雫は地面に真っ逆さまに落ちたが、アレックスが受け止めてくれ、無事だった。
「冥界の王子であるオロバスが神聖な場所で何をしておる」
「もしかして、お前はアラン大司教だな? 久しいな。何年振りだろうな」
「誰に召喚された? ドレッドだろ」
「それは言えねぇな」
オロバスは跳躍すると、ハルバードを構え、アランに高速で突っ込んでいった。アランはそれには動じず、術を唱えた。
「全属性防御結界展開! ――オールアトリビュートシールド!」
オロバスが突っ込んでくる経路に、幾重もの魔法陣が一直線に連なった。オロバスは高笑いしながら、進路を変えず、魔法陣に向かって、突き進んだ。
「こんなしょぼい防御魔法で、俺様の攻撃を防げると思っているのか!」
オロバスはハルバードで、展開された魔法陣を次々と突き破っていった。魔法陣は硝子が割れるように砕け散った。あと、三枚しかない残っていない魔法陣も砕け散ると思い、アランが絶体絶命のピンチだと誰もが思った。
「アラン、貴様はここで死ねぇ!」
「ほう、これでおしまいだと思いましたか?」
アランは持っていた杖を床に突き立てた。そして、次の瞬間、砕け散った魔法陣が鎖のようになり、オロバスの手足などに絡み付き、オロバスを拘束した。オロバスが抵抗しようものなら、鎖は更に食い込み、行動を制限する。
「てめぇ! 何しやがった!」
「貴方は悪魔の中でも躾がなっていると思いましたが、やはり、動物は飼い主に似るのですね」
「クソ! 言いたい事言いやがって」
アランは浮遊魔法でオロバスの元に行くと、微笑みながら、オロバスの頭を杖で軽く叩くと、オロバスが急降下し、地面に叩き付けられ、地割れが起きた。
「す、凄い……。アラン様ってあんなに強いんだ」
雫はゲームでしか見た事がないような戦闘を見て、開いた口が塞がらなかった。そして、アランはオロバスの元へ降り立ち、次の詠唱を始めた。
「地獄の門よ、今開き給え。汝、オロバスを紅き血の滝へ導き給え!」
アランが詠唱し終わると、暗雲が立ち込め、雷鳴が聞こえた。そして、オロバスの目の前に五メートル程の高さもある鉄紺色の重厚な扉が出現した。扉が不気味な音をさせながら開くと、中から鎖が何本も出てきて、オロバスに絡まりついた。
「ち、血の滝だと! 嫌だ! ゆ、許してくれ! あそこだけは行きたくない! お願いだ!」
「召喚者は誰ですか? 言えば、助けましょう」
「ぅぐっ……。それは……」
「では、契りの円環はどこですか?」
「…………左足首だ」
アランがオロバスの左足首を見ると、確かに契りの円環が着けられていた。アランは杖で円環を叩くと、円環にヒビが入り、粉々に砕け、消えた。
「円環をいとも容易く破壊するとは……。貴様は一体何者だ」
「そんな事より私の眷属になりますか? このまま血の滝で滝行でもしますか? 早く決めてください」
二人が話している間も、オロバスは鎖に引っ張られ、地獄の門へ少しずつ引きずり込まれていた。
「次は、私がやってみましょう」
次はエミュが魔物達の前に立ちはだかり、詠唱を始めた。
「風の守護者よ。時に風は強く吹き、悪しき者の体を斬り刻む。――ウィンドスリット!」
エミュが詠唱すると、魔物一体一体の足元に緑色の魔法陣が現れ、エミュが指を鳴らすと、風が鎌のようになり、魔物達を斬り刻んだ。そして、魔物達は次々と倒れ、砂のようにサラサラと消えていった。
「次こそやったか?」
「団長! 上空を見てください! 王宮から何か飛んできます!」
「――っ! なんだ、あれは!」
「なんでこんな所に、上位の悪魔が!」
雫達の前に降り立ったのは、胴体と両腕が人間、頭と下半身が馬の姿をした悪魔だった。たてがみと尾が赤く、二本足の先には銀の蹄をしており、一瞬、獣人と見間違えそうな、勇ましさが全体から伝わって来た。悪魔は銀色の斧槍であるハルバードを頭上で振り回すと、地面に突き立てた。
「雫、下がってろ!」
「雫様、お逃げください!」
「えっ、でも!」
フィディスとエミュは雫を庇う様に、攻撃をしながら、敵の注意を雫から逸らした。しかし、二人同時に攻撃をしても、見事なハルバード捌きで全て跳ね返された。
「全然攻撃が通らねぇ!」
「上位悪魔ですからね……。物理耐性も魔法耐性もそれなりにありますからね」
再び、二人は攻撃を仕掛けるが、悪魔は二人に手を翳し、衝撃波のようなものを放った。二人は後方へ勢いよく吹き飛ばされ、宿舎の壁に体を強く打ちつけると、力を失ったように地面へ落ちた。
「エミュ! フィディス! ――っ!」
雫が二人の心配をしていると、悪魔は瞬間移動し、雫の前に立った。そして、首を持ち上げ、口角を少し上げ、不適な笑みを浮かべた。
「お前、旨そうなニオイするな。他の奴らよりも上等な魂を持ってるみたいだな。ここで、お前の体を引き裂いて、その魂を喰らい尽くそうか?」
「うぐっ……」
悪魔が舌舐めずりをし、雫の腹部をハルバードで突き刺そうとした時、教会の方からアランの声がした。悪魔はその声に動きを止めた。アランの声が無かったら、あと数センチで雫の腹部にハルバードが刺さりそうだった。
悪魔は後ろを振り返ると、遠くにいるアランを見て、腹を抱えて笑った。そして、雫から手を離した。雫は地面に真っ逆さまに落ちたが、アレックスが受け止めてくれ、無事だった。
「冥界の王子であるオロバスが神聖な場所で何をしておる」
「もしかして、お前はアラン大司教だな? 久しいな。何年振りだろうな」
「誰に召喚された? ドレッドだろ」
「それは言えねぇな」
オロバスは跳躍すると、ハルバードを構え、アランに高速で突っ込んでいった。アランはそれには動じず、術を唱えた。
「全属性防御結界展開! ――オールアトリビュートシールド!」
オロバスが突っ込んでくる経路に、幾重もの魔法陣が一直線に連なった。オロバスは高笑いしながら、進路を変えず、魔法陣に向かって、突き進んだ。
「こんなしょぼい防御魔法で、俺様の攻撃を防げると思っているのか!」
オロバスはハルバードで、展開された魔法陣を次々と突き破っていった。魔法陣は硝子が割れるように砕け散った。あと、三枚しかない残っていない魔法陣も砕け散ると思い、アランが絶体絶命のピンチだと誰もが思った。
「アラン、貴様はここで死ねぇ!」
「ほう、これでおしまいだと思いましたか?」
アランは持っていた杖を床に突き立てた。そして、次の瞬間、砕け散った魔法陣が鎖のようになり、オロバスの手足などに絡み付き、オロバスを拘束した。オロバスが抵抗しようものなら、鎖は更に食い込み、行動を制限する。
「てめぇ! 何しやがった!」
「貴方は悪魔の中でも躾がなっていると思いましたが、やはり、動物は飼い主に似るのですね」
「クソ! 言いたい事言いやがって」
アランは浮遊魔法でオロバスの元に行くと、微笑みながら、オロバスの頭を杖で軽く叩くと、オロバスが急降下し、地面に叩き付けられ、地割れが起きた。
「す、凄い……。アラン様ってあんなに強いんだ」
雫はゲームでしか見た事がないような戦闘を見て、開いた口が塞がらなかった。そして、アランはオロバスの元へ降り立ち、次の詠唱を始めた。
「地獄の門よ、今開き給え。汝、オロバスを紅き血の滝へ導き給え!」
アランが詠唱し終わると、暗雲が立ち込め、雷鳴が聞こえた。そして、オロバスの目の前に五メートル程の高さもある鉄紺色の重厚な扉が出現した。扉が不気味な音をさせながら開くと、中から鎖が何本も出てきて、オロバスに絡まりついた。
「ち、血の滝だと! 嫌だ! ゆ、許してくれ! あそこだけは行きたくない! お願いだ!」
「召喚者は誰ですか? 言えば、助けましょう」
「ぅぐっ……。それは……」
「では、契りの円環はどこですか?」
「…………左足首だ」
アランがオロバスの左足首を見ると、確かに契りの円環が着けられていた。アランは杖で円環を叩くと、円環にヒビが入り、粉々に砕け、消えた。
「円環をいとも容易く破壊するとは……。貴様は一体何者だ」
「そんな事より私の眷属になりますか? このまま血の滝で滝行でもしますか? 早く決めてください」
二人が話している間も、オロバスは鎖に引っ張られ、地獄の門へ少しずつ引きずり込まれていた。
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