召喚聖女♂の異世界攻略ノート~クーデレ護衛騎士と人狼わんこの手懐け方~

沼田桃弥

文字の大きさ
上 下
71 / 117
第七章:ピエトラスの村にいる穢れた少年

7-10:可愛い嫉妬

しおりを挟む
「まず、一つ目」
「えっ、何個もあんの!」
「無理ならいいんだぞ。無理しなくて」
「無理してない!」
「まず、一つ目。俺の目の前で着替えろ。その代わり、俺が良いと言うまでシャツは着るな」
「そ、それ位なら全然平気」


 希空はシャツをテーブルに置くと、ワンピースを脱ぎ、下着一枚になった。
 フィディスは顎に手を当て、下から上へ舐めるように見た。希空は恥ずかしくなり、両手で前を隠した。


「前を隠すな。手は後ろで組め」
「えっ……、あ、……はい」
「色白で綺麗な肌をしているな。下着のシルクのように滑らかで、水を弾きそうだ。桃色の小さな果実も可愛らしくて、小鳥がついばみたくなるような美味しそうな形をしているな」


 希空は至近距離で自分の裸をまじまじと見られ、フィディスの比喩表現に、顔から火が出そうだった。フィディスをチラ見しようとしたら、バチッと目が合ってしまった。大浴場や野営地で告白してきた時の目では無かった。完全に獲物を吟味している男の目だった。


「じゃ、次は後ろを向け」
「う、後ろもなの!」
「当たり前じゃないか」


 希空は仕方なく後ろを向いた。手は前にしろと追加注文があった。見られてるのはなんとなく視線で伝わってくる。


「背中の真ん中を指で上から下へとゆっくりと滑らせたいな。腰のラインもとても素敵だ。思わず手を添えたくなるな。お前も想像してみろ。どんな感じがすると思う?」
「……く、く、くすぐったいと思います」


 希空はフィディスの思う壺だとは知らず、フィディスに触られるイメージをし、体をゾクゾクッとさせた。


「尻も適度な大きさと綺麗な形。俺の手に丁度収まりそうだな。ゆっくりと撫でて、優しく揉むと、どんな感じがするんだろうな。弾力があって、手を外した瞬間、ゼリーのように可愛らしく揺れるんだろうな。お前はどう思う?」
「ど、どうって……。実際に触らないと分かりません」
「それは触ってもいいって事か? ま、触らんがな」
(ど、どうしよう! ただ見られてるだけなのに、色んなとこがキュンキュンするよぉ)


 希空は吐息を漏らしながら、頬を赤くし、とろんとした目でフィディスを見た。フィディスは満更でもない表情を浮かべ、希空にシャツを着るように伝えた。
 希空は緩慢な動きでシャツを着て、ソファに座った。顔というより、体が熱い。


「無防備に裸を晒すお前が悪いんだ。お前も今日、団員達と一緒に風呂に入って分かっただろ。これからは団員達が出た後に入浴するか、難しい場合は俺と入れ」
「す、すみません……」


 目を潤わせ、反省の色を見せる希空に、フィディスはため息をつき、希空の元へ行くと、突然、希空を横抱きし、隣のベッドルームへ連れていき、ベッドの上に下ろした。


「最後だ。俺と添い寝しろ」
「え? なんで?」


 目を点にする希空を見て、フィディスは照れくさそうに頭を掻き、頬を赤くした。


「お前、荷馬車で雫と随分と近い距離で仲良く寝ていただろう?」
「うん。ま、狭かったしね」
「雫とは……そういう関係なのか? 前いた世界からの仲なんだろ?」
「違うよ! 雫さんは良き相談相手であって、普通に友達だよ。……あっ、もしかして、雫さんに嫉妬したの?」
「馬鹿か! お、俺があの程度で嫉妬するか!」
「嘘だぁ。顔赤いもん」


 いつもクールで人当たりが強いフィディスがあんな程度で嫉妬するとは思っていなかったし、いつもは見せない照れ顔が可愛くて、希空はなんだか嬉しかった。


「……いいよ。一緒に寝よ」
「いいのか!」
「交換条件なんでしょ? なんでそんな嬉しそうな顔をしてる訳?」
「万が一、お前を襲うかもしれないぞ?」
「それは無いでしょ。聖女の魔力について知ってるフィディスが僕を襲う訳無いでしょ。聖女じゃないってのは誰にも証明できないし、僕は一応、『名ばかりの聖女』だしね」


 希空は素知らぬ顔でベッドへ入った。やはり、団長クラスだけあって、寝心地がいい。完全に気を抜いている希空に困惑しながら、フィディスもベッドへ入った。二人は向かい合わせになり、お互いの顔を見つめ合った。
 フィディスは希空に腕を回し、体を引き寄せた。フィディスは代謝がいいのか、少しだけしっとりしていた。フィディスの汗の匂いとシャツの香りが混ざり合い、希空にとって最高の癒やしとなった。


「ねぇ、キスは良いんだよね? 要は子供作らなければいいでしょ?」
「まぁ、そうなるが……。お前はそれで足りるのか?」
「うーん、フィディスの事は六割くらい好きだから、キスなら足りるかもね」
「ろ、六割って……」
「フィディスはなんか爆発しそうだから、キスだけじゃ済まないんだろうな……」
「ああ、それは自分でも自覚している」
「じゃ、やめとこ」


 フィディスは残念そうな顔をして、ため息をついた。希空はフィディスの行動が可愛過ぎて、誂いたくなった。でも、こんな自分にしょうもない嫉妬をしてくれるのは正直嬉しかった。こんなに自分の事を考えてくれる人なんて、前いた世界には居なかった。


「フィディスが運命の人なのかな?」
「ん? なんか言ったか?」
「ううん、何でもない。フィディス、おやすみなさい」
「ああ。……希空、おやすみ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

処理中です...