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第十一章:僕達は誰かの一番になれればいい
11-1:新国王陛下との謁見
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「やっと見えてきたぞ」
「はぁ……、やっとまともな飯が食える」
「野営が続くと、カレンさん達のご飯が恋しくなるよね」
「それもそうだが、お前は傷の方は大丈夫なのか?」
「まだ痛みがあるけど、大丈夫」
希空の傷は傷口は塞がっているものの、依然と稲妻のように広がった跡は紫色になったままだった。野営中に雫が何回か治癒魔法や浄化魔法を施したが、変化は見られなかった。
「服で隠せるし、いつか消える手段が見つかるよ」
「その手段が分かればいいんだが。エミュが見たら、卒倒しそうだな」
「ああ、それはあり得るかも」
四人は城門をくぐり抜け、いつもの広場を通り過ぎた。そして、薬草園や宿舎、教会が見え、希空は実家に帰って来たような安心感があった。走る馬の蹄の音を聞きつけたのか、子供達や団員達が集まってきた。
「皆、お帰りなさい! あっ、希空お兄ちゃんもいる! 会いたかったよぉ!」
「フィディス団長並びに皆様、無事のご帰還おめでとうございます」
三人は馬から降り、フィディスは団員に馬を厩舎へ連れて行くように指示した。フィディスは副団長から報告を受けた。
希空と雫、アレックスは子供達に囲まれ、引っ張りだこだった。二人が旅の話をしていると、エミュが涙を溢れさせ、小走りでこちらへ向かっていた。希空は気付くと、一目散に走り、抱きついた。
「希空様、よくご無事で……」
「……ただいま。心配させちゃってごめんね」
「いえ、そんな事はありません」
「他の皆さんもご無事でなによりです」
「アラン様は今どちらですか?」
「アラン教皇様は只今、国王陛下の元へ皆の帰還を報告されに行きました」
「あれ? アラン様って元大司教じゃなかったっけ? いつから教皇に?」
「希空様がいらっしゃらない時に決まりました。それより、王宮の方へご案内します」
四人はエミュの案内で、王宮へ向かった。玉座の間に入ると、アランと国王陛下が待ち構えていた。四人は国王陛下の前で跪き、帰還の報告をした。
「皆さん、跪かなくて結構ですよ。希空様はお初にお目にかかります。前第一騎士団団長並びに第一王子で、現国王であるジェラルド=セルベンです。よろしくお願いいたします」
「よ、よろしくお願いいたします」
「さて、皆さんからも色々とお話を聞きたいところですが……。先に、皆さんがいない間に決定した事を何点かお話します」
希空を助ける時に話していた内容だった。神聖セルベン王国は第一王子が国王を継承し、参事会の決定で、アランが教皇となり、エミュが教皇の補佐役である枢機卿になった。
前国王が領地拡大などを目論み、悪に手を染め、ドレッドは国王の口車にまんまと乗せられ、器として機能しそうな希空に目を付け、今回の事が起きた。
「これは前にお話した事です。希空様は初耳だと思いますが……」
「前国王陛下……じゃなくて、水晶玉にいた魔王の魂とは何度かお会いしてます」
「おい、希空! それは言っていいのか?」
希空の話に国王陛下やアラン、エミュがひどく驚いた。フィディスは慌てて、希空に小さく囁いた。
「確かに領地拡大を目論んでいたのは知っていました。それに引き寄せられるように、彷徨っていた魔王の魂が前国王陛下に宿りました。そして、隣国のアーデルハイト王国に聖女狩りを命じたのは前国王で、その伝令役はドレッド様です」
「なんだと……!」
「本当は聖女狩りの名目で、最適な器を探すつもりが、アーデルハイト王国は都合良く自己解釈し、自国の文明開化をさせるために、治癒魔法が使える聖女を排除し、蘇生薬の開発に力を入れました。しかし、それは実現しませんでした」
「解釈違いで、そんな事になるとは……」
「はぁ……、やっとまともな飯が食える」
「野営が続くと、カレンさん達のご飯が恋しくなるよね」
「それもそうだが、お前は傷の方は大丈夫なのか?」
「まだ痛みがあるけど、大丈夫」
希空の傷は傷口は塞がっているものの、依然と稲妻のように広がった跡は紫色になったままだった。野営中に雫が何回か治癒魔法や浄化魔法を施したが、変化は見られなかった。
「服で隠せるし、いつか消える手段が見つかるよ」
「その手段が分かればいいんだが。エミュが見たら、卒倒しそうだな」
「ああ、それはあり得るかも」
四人は城門をくぐり抜け、いつもの広場を通り過ぎた。そして、薬草園や宿舎、教会が見え、希空は実家に帰って来たような安心感があった。走る馬の蹄の音を聞きつけたのか、子供達や団員達が集まってきた。
「皆、お帰りなさい! あっ、希空お兄ちゃんもいる! 会いたかったよぉ!」
「フィディス団長並びに皆様、無事のご帰還おめでとうございます」
三人は馬から降り、フィディスは団員に馬を厩舎へ連れて行くように指示した。フィディスは副団長から報告を受けた。
希空と雫、アレックスは子供達に囲まれ、引っ張りだこだった。二人が旅の話をしていると、エミュが涙を溢れさせ、小走りでこちらへ向かっていた。希空は気付くと、一目散に走り、抱きついた。
「希空様、よくご無事で……」
「……ただいま。心配させちゃってごめんね」
「いえ、そんな事はありません」
「他の皆さんもご無事でなによりです」
「アラン様は今どちらですか?」
「アラン教皇様は只今、国王陛下の元へ皆の帰還を報告されに行きました」
「あれ? アラン様って元大司教じゃなかったっけ? いつから教皇に?」
「希空様がいらっしゃらない時に決まりました。それより、王宮の方へご案内します」
四人はエミュの案内で、王宮へ向かった。玉座の間に入ると、アランと国王陛下が待ち構えていた。四人は国王陛下の前で跪き、帰還の報告をした。
「皆さん、跪かなくて結構ですよ。希空様はお初にお目にかかります。前第一騎士団団長並びに第一王子で、現国王であるジェラルド=セルベンです。よろしくお願いいたします」
「よ、よろしくお願いいたします」
「さて、皆さんからも色々とお話を聞きたいところですが……。先に、皆さんがいない間に決定した事を何点かお話します」
希空を助ける時に話していた内容だった。神聖セルベン王国は第一王子が国王を継承し、参事会の決定で、アランが教皇となり、エミュが教皇の補佐役である枢機卿になった。
前国王が領地拡大などを目論み、悪に手を染め、ドレッドは国王の口車にまんまと乗せられ、器として機能しそうな希空に目を付け、今回の事が起きた。
「これは前にお話した事です。希空様は初耳だと思いますが……」
「前国王陛下……じゃなくて、水晶玉にいた魔王の魂とは何度かお会いしてます」
「おい、希空! それは言っていいのか?」
希空の話に国王陛下やアラン、エミュがひどく驚いた。フィディスは慌てて、希空に小さく囁いた。
「確かに領地拡大を目論んでいたのは知っていました。それに引き寄せられるように、彷徨っていた魔王の魂が前国王陛下に宿りました。そして、隣国のアーデルハイト王国に聖女狩りを命じたのは前国王で、その伝令役はドレッド様です」
「なんだと……!」
「本当は聖女狩りの名目で、最適な器を探すつもりが、アーデルハイト王国は都合良く自己解釈し、自国の文明開化をさせるために、治癒魔法が使える聖女を排除し、蘇生薬の開発に力を入れました。しかし、それは実現しませんでした」
「解釈違いで、そんな事になるとは……」
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