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第八章:立ちはだかる脅威
8-5:「ごめんね」は闇の奥底へ
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希空は頭の上に浮かぶ煩悩を両手で払い除け、机に座って、長旅で簡単に作れて、すぐ食べられる食事や携帯食料の案を紙に書き出した。
「前いた世界はコンビニがあるのが当たり前だったし、栄養補助食品や携帯食料なんてありふれてたからなぁ。ここは保存料も無い時代だし、……冷凍や解凍は魔法でなんとかなるけど、そんな事で魔力使うのはおかしな話。あぁ! 難しい!」
希空は難題に直面し、思い通りにならず、頭を掻きむしった。何か良い知恵が湧いてこないか考えた。
その時、机に置いた木箱にふと目がいく。希空は箱の中から小瓶を取り出し、持ち上げると、中身の液体をゆらゆら揺らしながら、眺めた。
「もう明日考えよう。カレンさん達に聞けば、何かしら分かるかもしれないし、このドリンクみたいなのを飲んで寝よう」
希空はコルクを開け、とりあえず匂いを嗅いだ。特に匂いは感じず、希空はグイッと一気に飲んだ。
「元気が出る系のドリンクかと思ったけど、無臭で微かな甘み……? 不思議な感じ。ま、明日も大変なんだから、寝なきゃ。今日の事をフィディスに謝らないといけないし」
希空は椅子から立ち上がった時、立ちくらみがして、椅子に掴まったが、足に思うように力が入らず、大きな音を立てて、椅子もろとも床へ倒れ、持っていた瓶も床に落ち、割れた。
「な、何これ? ……しかも、息が、息が苦しい。あれ? う、動けない……?」
希空は助けを求めようと、這いつくばって、ドアに向かおうとするも、体が思うように動かなかった。
その時、ドアが勢いよく開いた。希空が見上げると、フィディスの姿があった。
「希空、大丈夫か! って、なんだこの瘴気は! 俺でも見えるぞ。何があったんだ!」
フィディスは瘴気のせいで、希空に近付く事が出来ず、大声で話しかけた。騒ぎを聞いて、団員達が集まってきた。
「お前ら、こっちに来るな! 瘴気に当たるぞ! おい、お前! エミュと雫を早く呼んでこい!」
フィディスが近くの団員に呼んでくるように伝え、団員が宿舎を出ようとした時、丁度、雫が血相を変えて、こちらへ走ってきた。
「何があったんですか!」
「雫、こっちだ! 希空の部屋から物音がしたから来てみると、こんな事に」
雫は希空の体から膨大な瘴気が溢れ出ており、体内の瘴気を包んだ殻が壊れたかと思ったが、明らかにあの村の時以上の瘴気の量だった。
「今、浄化するから、待ってて」
雫が浄化魔法を唱えるも、変化がなく、再詠唱しても発動しなかった。試しに簡単な治療魔法をかけるも、発動しなかった。
「ま、魔法が発動しない……」
「なんでだ! このままだと希空が瘴気に飲み込まれる」
その時、窓ガラスが割れる音がした。窓辺を見ると、黒いローブを身に纏い、黒のベネチアンマスクをした男が立っていた。フィディスは抜刀し、身構えた。
「誰だ、貴様!」
「ふふっ、ナクアでまた会おう」
マスクの男は口角を上げ、ニヤリとした。そして、弱った希空を抱きかかえ、窓から出ていった。
フィディスと雫が玄関から追いかけると、マスクの男は空を浮遊していた。
「貴様! 希空を返せ!」
「ふふっ、今日という素晴らしき日に乾杯を」
マスクの男は紫色の液体が入った瓶を放り投げた。瓶が地面に落ち、割れると、煙幕が生じ、そこから魔物がどんどん現れてきた。
「何これ……、魔物がどんどん出てくる」
「警鐘鳴らせ! お前ら、敵襲だ! 伝令役、第一も緊急招集!」
「最高の夜になりますように。はははっ!」
「マスク野郎、待ちやがれ!」
マスクの男は高笑いして、ナクアの方角へ飛んでいった。フィディスはマスクの男を追いたかったが、雫に止められた。
「今は目の前にいる敵を倒すのが先決です」
「しかし!」
「希空が大好きなこの場所を魔物にグチャグチャにされてもいいんですか! 希空はきっと大丈夫ですから」
「……分かった。お前達、魔物をぶっ倒すぞ!」
団員達は鬨の声を上げ、魔物達に斬りかかった。しかし、魔物の数が多く、持ち堪えるだけで精一杯だった。
「第一はこんな状況でも助けに来ないっていうのか!」
「団長! 王宮にも悪魔が一体召喚されて、それどころじゃないみたいです」
「なんだと? クソ、あのマスク野郎……。裏を読んでたってことか」
「雫様、フィディス、大丈夫ですか!」
「エミュ、来るのが遅いじゃないか!」
「子供達を避難させてました。遅くなって申し訳ありません」
アレックスが背中にエミュを乗せて、屋根から屋根へ飛び移るようにフィディスの元へやってきた。
「一体なんですか、これは!」
「希空が拐われた。詳しい話は後だ」
「なんですって!」
「クソ、敵が多過ぎる。お前達、下がれ!」
フィディスは団員達を後ろへ下がらすと、剣を構えた。
「紅蓮の炎よ。剣に纏い、燃やし尽くせ! ――フレイムフェニックス!」
フィディスの剣は紅蓮の炎に包まれた。そして、フィディスは迫ってくる魔物達に向かって、横一文字斬りをした。炎は翼を広げ、飛び立つ鳳凰のように、魔物達を燃やし尽くした。しかし、それでも新たに出てくる魔物達に一同は驚愕する。
「前いた世界はコンビニがあるのが当たり前だったし、栄養補助食品や携帯食料なんてありふれてたからなぁ。ここは保存料も無い時代だし、……冷凍や解凍は魔法でなんとかなるけど、そんな事で魔力使うのはおかしな話。あぁ! 難しい!」
希空は難題に直面し、思い通りにならず、頭を掻きむしった。何か良い知恵が湧いてこないか考えた。
その時、机に置いた木箱にふと目がいく。希空は箱の中から小瓶を取り出し、持ち上げると、中身の液体をゆらゆら揺らしながら、眺めた。
「もう明日考えよう。カレンさん達に聞けば、何かしら分かるかもしれないし、このドリンクみたいなのを飲んで寝よう」
希空はコルクを開け、とりあえず匂いを嗅いだ。特に匂いは感じず、希空はグイッと一気に飲んだ。
「元気が出る系のドリンクかと思ったけど、無臭で微かな甘み……? 不思議な感じ。ま、明日も大変なんだから、寝なきゃ。今日の事をフィディスに謝らないといけないし」
希空は椅子から立ち上がった時、立ちくらみがして、椅子に掴まったが、足に思うように力が入らず、大きな音を立てて、椅子もろとも床へ倒れ、持っていた瓶も床に落ち、割れた。
「な、何これ? ……しかも、息が、息が苦しい。あれ? う、動けない……?」
希空は助けを求めようと、這いつくばって、ドアに向かおうとするも、体が思うように動かなかった。
その時、ドアが勢いよく開いた。希空が見上げると、フィディスの姿があった。
「希空、大丈夫か! って、なんだこの瘴気は! 俺でも見えるぞ。何があったんだ!」
フィディスは瘴気のせいで、希空に近付く事が出来ず、大声で話しかけた。騒ぎを聞いて、団員達が集まってきた。
「お前ら、こっちに来るな! 瘴気に当たるぞ! おい、お前! エミュと雫を早く呼んでこい!」
フィディスが近くの団員に呼んでくるように伝え、団員が宿舎を出ようとした時、丁度、雫が血相を変えて、こちらへ走ってきた。
「何があったんですか!」
「雫、こっちだ! 希空の部屋から物音がしたから来てみると、こんな事に」
雫は希空の体から膨大な瘴気が溢れ出ており、体内の瘴気を包んだ殻が壊れたかと思ったが、明らかにあの村の時以上の瘴気の量だった。
「今、浄化するから、待ってて」
雫が浄化魔法を唱えるも、変化がなく、再詠唱しても発動しなかった。試しに簡単な治療魔法をかけるも、発動しなかった。
「ま、魔法が発動しない……」
「なんでだ! このままだと希空が瘴気に飲み込まれる」
その時、窓ガラスが割れる音がした。窓辺を見ると、黒いローブを身に纏い、黒のベネチアンマスクをした男が立っていた。フィディスは抜刀し、身構えた。
「誰だ、貴様!」
「ふふっ、ナクアでまた会おう」
マスクの男は口角を上げ、ニヤリとした。そして、弱った希空を抱きかかえ、窓から出ていった。
フィディスと雫が玄関から追いかけると、マスクの男は空を浮遊していた。
「貴様! 希空を返せ!」
「ふふっ、今日という素晴らしき日に乾杯を」
マスクの男は紫色の液体が入った瓶を放り投げた。瓶が地面に落ち、割れると、煙幕が生じ、そこから魔物がどんどん現れてきた。
「何これ……、魔物がどんどん出てくる」
「警鐘鳴らせ! お前ら、敵襲だ! 伝令役、第一も緊急招集!」
「最高の夜になりますように。はははっ!」
「マスク野郎、待ちやがれ!」
マスクの男は高笑いして、ナクアの方角へ飛んでいった。フィディスはマスクの男を追いたかったが、雫に止められた。
「今は目の前にいる敵を倒すのが先決です」
「しかし!」
「希空が大好きなこの場所を魔物にグチャグチャにされてもいいんですか! 希空はきっと大丈夫ですから」
「……分かった。お前達、魔物をぶっ倒すぞ!」
団員達は鬨の声を上げ、魔物達に斬りかかった。しかし、魔物の数が多く、持ち堪えるだけで精一杯だった。
「第一はこんな状況でも助けに来ないっていうのか!」
「団長! 王宮にも悪魔が一体召喚されて、それどころじゃないみたいです」
「なんだと? クソ、あのマスク野郎……。裏を読んでたってことか」
「雫様、フィディス、大丈夫ですか!」
「エミュ、来るのが遅いじゃないか!」
「子供達を避難させてました。遅くなって申し訳ありません」
アレックスが背中にエミュを乗せて、屋根から屋根へ飛び移るようにフィディスの元へやってきた。
「一体なんですか、これは!」
「希空が拐われた。詳しい話は後だ」
「なんですって!」
「クソ、敵が多過ぎる。お前達、下がれ!」
フィディスは団員達を後ろへ下がらすと、剣を構えた。
「紅蓮の炎よ。剣に纏い、燃やし尽くせ! ――フレイムフェニックス!」
フィディスの剣は紅蓮の炎に包まれた。そして、フィディスは迫ってくる魔物達に向かって、横一文字斬りをした。炎は翼を広げ、飛び立つ鳳凰のように、魔物達を燃やし尽くした。しかし、それでも新たに出てくる魔物達に一同は驚愕する。
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