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第七章:ピエトラスの村にいる穢れた少年
7-1:あからさまな態度
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数日後、ドレッドからの招集があり、皆が教会にある会議室に呼ばれた。希空は勿論呼ばれていなかったが、フィディスは希空を呼ばないのはおかしいと主張し、希空を連れて、会議室へやってきた。ドレッドは相変わらず希空を見るなり、冷ややかな目で見た。希空はドレッドに対して、一礼したが、無視された。
招集されたメンバーはエミュ、雫、アレックス、フィディスは中央にあるテーブルを囲むように座り、呼ばれていない希空はフィディスの後ろ横に座った。
「先日、神聖セルベン王国の東に位置するピエトラスの村が魔物に襲撃されたと手紙が届いた。伝令役もかなり酷い傷を負っていて、雫様に治療して頂いた。伝令も甚大な被害と言っていた。襲撃されて数日が経っている。早急に浄化をせねばならん。あそこは、ピエトラスの村はエルフ族の領土にも近いから、国交にも悪影響が出てしまう」
「あの、俺に出来ますかね?」
「問題無い。基本的には、瘴気の発生源を突き止め、元凶を浄化すれば、他の瘴気も消えていく。普通の人間は強い瘴気に当たり続けると、瘴気に飲み込まれる。村に入る前に、遠征隊全員に防御魔法をかけて欲しい」
「防御魔法もですか? 魔力足りるかな……」
「雫様、ポーションを念のため持って行くので、安心して下さい」
「それならいいけど。あ、あと、普通の人間は瘴気に当たり続けると良くないって事なんだけど、元凶を探したりするのは希空と一緒にやっていいんでしょ?」
雫の発言に、会議室はシーンと静まり返り、視線が一気に希空へ集まった。希空は皆の視線に耐えれず、体を縮めた。
「まぁ、一応、これでも『聖女』ですからね。しかし、何かあった時、私達は手を出す事が出来ませんので、ご了解ください」
「何かあったら、俺が何とかするので、大丈夫です」
雫は希空を見て、優しく笑い、それに対して、希空は苦笑いで返した。しかし、希空の態度が気に入らなかったドレッドは眉間に皺を寄せた。
「何笑ってる! 雫様に謝意を示しなさい!」
「あ、ありがとうございます……」
「礼儀までもなっていないとは呆れて物が言えん。……ゴホンッ、資材の調達もあるから、明後日の朝に出発する予定だ。以上」
ドレッドは足早に会議室を後にした。希空は流石の言われように、ポロポロと涙を流した。希空を蔑む態度に対して、エミュとフィディスは苛立っており、フィディスは歯をギリギリと食いしばり、テーブルを強く殴った。
「クソッ! 何なんだ、あの態度は! 流石に悪意を感じる。自分で召喚しておいて……」
「まぁまぁ、フィディスは落ち着いて下さい。私も流石にあれは失礼だと思いました。希空様、どうかお気になさらず」
「うっ……、うん。ありがとう」
皆で希空を励まし、フィディスに付き添われ、希空は宿舎へ戻った。
雫もエミュと共に自室へ戻った。部屋に戻ると、エミュが気分転換でハーブティーを淹れてくれた。
「エミュも座って、一緒にお茶飲もう。ちょっと聞きたい事があるから」
「はい、よろしいですよ」
二人は対面で座ると、お茶を一口飲んで、ホッと一息ついた。そして、雫は真剣な表情で質問した。
「ドレッド様が希空に対して、あんなに冷たいのって……、やっぱり、俺がここに来たからだよね?」
「大変申し上げにくいですが、雫様が聖女と認定してから、一段と酷くなりました」
「一段と?」
「はい。召喚後に希空様の魔力測定をした際に、庶民レベル以外もしくは庶民同等の魔力しか無かったため、国王陛下にも顔向けが出来ず、大変焦ってらっしゃいました」
「確かに、自分の召喚した聖女がそれ相応じゃなかったら、誰だって焦るよね」
「はい。それでドレッド様は不眠不休で聖女の魔力を上げる方法を調べ始めました。その時、禁書にまでも手を出してしまいました」
「……で、結局、成果は得られなかった訳か」
雫は顎に手を当て、難しい顔をした。雫も希空と同様に、聖樹の件はドレッドから聞いていた。
「聖樹をただ蘇らせるなら、この国の教会が聖女達にとって特別なんだから、教会のお偉いさんが直々に世界中へ向けて発信して、その聖樹がある場所へ世界中の聖女達を集結させて、一斉に治癒魔法なり浄化魔法なりをかければ、解決しない?」
「確かに言われてみれば……」
「聖杯に関しても、そもそも聖杯って神聖なものなのに、瘴気を纏わせる事自体、おかしいと思わない? しかも、聖杯をあえて希空に持って行かせた」
エミュも顎に手を当て、難しい顔をした。そして、ドレッドの机を整理した時に見たメモを思い出す。エミュは周りを見渡し、雫に顔を近付けて、声を潜めて、喋りだした。
「ドレッド様の体調が優れない時に、机の上の片付けを命じられた際に、不可解なメモが出てきまして……」
「なんて書いてあったんですか?」
「走り書きで断片的にしか分からなかったですが、アーデルハイト王国近郊に高魔力の聖女がいる事や希空様を器にするという事……」
「おかしくないですか? アーデルハイトとセルベンって表面上は国交が開かれてますけど、関係悪いですよね? アーデルハイトは聖女狩りをしている訳だし。俺の情報も何処かから漏れてたって事ですよね?」
「言われてみれば……」
「それに、希空を器にするって事は聖女としての器じゃなくて、魔王としての器だったりして……?」
「なるほど! 聖樹は今枯れていて、機能していないのも当然。希空様には聖女の魔力が常にある訳じゃないから、器に最適。更に、聖樹もろとも奪って、聖樹の根を利用すれば、世界を滅ぼす事が出来る絶好の機会って事ですか」
「あくまで推測だけど、ドレッド様の動向に注意しないといけないね」
雫はエミュに念の為、アランにも伝えるようにお願いした。フィディスに伝えたところで、何を仕出かすか分からなかったため、二人で話し合った結果、伝えない事にした。
招集されたメンバーはエミュ、雫、アレックス、フィディスは中央にあるテーブルを囲むように座り、呼ばれていない希空はフィディスの後ろ横に座った。
「先日、神聖セルベン王国の東に位置するピエトラスの村が魔物に襲撃されたと手紙が届いた。伝令役もかなり酷い傷を負っていて、雫様に治療して頂いた。伝令も甚大な被害と言っていた。襲撃されて数日が経っている。早急に浄化をせねばならん。あそこは、ピエトラスの村はエルフ族の領土にも近いから、国交にも悪影響が出てしまう」
「あの、俺に出来ますかね?」
「問題無い。基本的には、瘴気の発生源を突き止め、元凶を浄化すれば、他の瘴気も消えていく。普通の人間は強い瘴気に当たり続けると、瘴気に飲み込まれる。村に入る前に、遠征隊全員に防御魔法をかけて欲しい」
「防御魔法もですか? 魔力足りるかな……」
「雫様、ポーションを念のため持って行くので、安心して下さい」
「それならいいけど。あ、あと、普通の人間は瘴気に当たり続けると良くないって事なんだけど、元凶を探したりするのは希空と一緒にやっていいんでしょ?」
雫の発言に、会議室はシーンと静まり返り、視線が一気に希空へ集まった。希空は皆の視線に耐えれず、体を縮めた。
「まぁ、一応、これでも『聖女』ですからね。しかし、何かあった時、私達は手を出す事が出来ませんので、ご了解ください」
「何かあったら、俺が何とかするので、大丈夫です」
雫は希空を見て、優しく笑い、それに対して、希空は苦笑いで返した。しかし、希空の態度が気に入らなかったドレッドは眉間に皺を寄せた。
「何笑ってる! 雫様に謝意を示しなさい!」
「あ、ありがとうございます……」
「礼儀までもなっていないとは呆れて物が言えん。……ゴホンッ、資材の調達もあるから、明後日の朝に出発する予定だ。以上」
ドレッドは足早に会議室を後にした。希空は流石の言われように、ポロポロと涙を流した。希空を蔑む態度に対して、エミュとフィディスは苛立っており、フィディスは歯をギリギリと食いしばり、テーブルを強く殴った。
「クソッ! 何なんだ、あの態度は! 流石に悪意を感じる。自分で召喚しておいて……」
「まぁまぁ、フィディスは落ち着いて下さい。私も流石にあれは失礼だと思いました。希空様、どうかお気になさらず」
「うっ……、うん。ありがとう」
皆で希空を励まし、フィディスに付き添われ、希空は宿舎へ戻った。
雫もエミュと共に自室へ戻った。部屋に戻ると、エミュが気分転換でハーブティーを淹れてくれた。
「エミュも座って、一緒にお茶飲もう。ちょっと聞きたい事があるから」
「はい、よろしいですよ」
二人は対面で座ると、お茶を一口飲んで、ホッと一息ついた。そして、雫は真剣な表情で質問した。
「ドレッド様が希空に対して、あんなに冷たいのって……、やっぱり、俺がここに来たからだよね?」
「大変申し上げにくいですが、雫様が聖女と認定してから、一段と酷くなりました」
「一段と?」
「はい。召喚後に希空様の魔力測定をした際に、庶民レベル以外もしくは庶民同等の魔力しか無かったため、国王陛下にも顔向けが出来ず、大変焦ってらっしゃいました」
「確かに、自分の召喚した聖女がそれ相応じゃなかったら、誰だって焦るよね」
「はい。それでドレッド様は不眠不休で聖女の魔力を上げる方法を調べ始めました。その時、禁書にまでも手を出してしまいました」
「……で、結局、成果は得られなかった訳か」
雫は顎に手を当て、難しい顔をした。雫も希空と同様に、聖樹の件はドレッドから聞いていた。
「聖樹をただ蘇らせるなら、この国の教会が聖女達にとって特別なんだから、教会のお偉いさんが直々に世界中へ向けて発信して、その聖樹がある場所へ世界中の聖女達を集結させて、一斉に治癒魔法なり浄化魔法なりをかければ、解決しない?」
「確かに言われてみれば……」
「聖杯に関しても、そもそも聖杯って神聖なものなのに、瘴気を纏わせる事自体、おかしいと思わない? しかも、聖杯をあえて希空に持って行かせた」
エミュも顎に手を当て、難しい顔をした。そして、ドレッドの机を整理した時に見たメモを思い出す。エミュは周りを見渡し、雫に顔を近付けて、声を潜めて、喋りだした。
「ドレッド様の体調が優れない時に、机の上の片付けを命じられた際に、不可解なメモが出てきまして……」
「なんて書いてあったんですか?」
「走り書きで断片的にしか分からなかったですが、アーデルハイト王国近郊に高魔力の聖女がいる事や希空様を器にするという事……」
「おかしくないですか? アーデルハイトとセルベンって表面上は国交が開かれてますけど、関係悪いですよね? アーデルハイトは聖女狩りをしている訳だし。俺の情報も何処かから漏れてたって事ですよね?」
「言われてみれば……」
「それに、希空を器にするって事は聖女としての器じゃなくて、魔王としての器だったりして……?」
「なるほど! 聖樹は今枯れていて、機能していないのも当然。希空様には聖女の魔力が常にある訳じゃないから、器に最適。更に、聖樹もろとも奪って、聖樹の根を利用すれば、世界を滅ぼす事が出来る絶好の機会って事ですか」
「あくまで推測だけど、ドレッド様の動向に注意しないといけないね」
雫はエミュに念の為、アランにも伝えるようにお願いした。フィディスに伝えたところで、何を仕出かすか分からなかったため、二人で話し合った結果、伝えない事にした。
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