召喚聖女♂の異世界攻略ノート~クーデレ護衛騎士と人狼わんこの手懐け方~

沼田桃弥

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第六章:二人の再会と希空のプチ追放

前回までのあらすじ

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 ドレッドの希空に対する魔力増幅技法の儀式は連日続き、希空は体力を消耗し、食欲も無くなり、前よりも痩せてしまった。儀式中の事がどうしても思い出せず、エミュに聞いたが、「安易に口外は出来ない」とはぐらかされる。
 次の儀式は中断となり、外出許可が下りた。希空は食事を頑張って食べ、体力を戻した。


 外出の日、一人で行こうとしたが、フィディスが護衛として一緒に来てくれた。フィディスおすすめのモディの串焼き屋に行き、現地の食を楽しむ。串焼きに舌鼓を打っていると、鐘の音がし、近くに古びた小さな教会が見えた。
 フィディスに問うと、孤児院らしく、希空はその孤児院へ向かった。広場では子供達が楽しそうに遊んでおり、孤児院の管理者であるアランと挨拶を交わす。


 その時、セトという少年がフィディスにライアーを渡し、フィディスに演奏するようにせがんだ。フィディスは仕方なくライアーを弾く事にした。広場には、優しく体を包み込むような、とても透き通った音色が響き渡った。
 希空は演奏を聞いていると、居ても立っても居られず、音色に合わせて、踊り始めた。演奏をしているフィディスは希空の美しい姿にすっかり釘付けだった。


 希空が踊り終わると、アランから『聖女の舞』と聞かれるが、「ただ曲に合わせて、適当に踊っただけ」と返答する。
 孤児院を後にした二人。希空はフィディスから「聖女に対する覚悟は出来ているのか?」と聞かれる。しかし、聖女の素質がないと自覚していた希空にとって、それはよく分からない質問だった。フィディスは希空の不明確さに苛立ち、「二度と『聖女の舞』の真似事をするな」と怒鳴る。


 希空は考えた末、過去を払拭し、「優しくて、皆から愛されて、癒しを与えるような聖女になる」と決意する。
 一方、聖女の研究をしていたドレッドはどんどん禁書にのめり込んでいき、優しく穏やかな姿は消え、目の下にはクマが出来、頬もやつれていた。エミュはドレッドから孤児院に渡す聖杯を受け取り、書類の整理を代行し、机の上を整理した。その際に、不審な紙切れがあり、エミュはその内容に背筋が凍った。


 エミュはドレッドから預かった聖杯を希空に渡し、孤児院へ届けさせた。道中、希空はフィディスから幼少期の思い出を聞き、聖女だった母親の形見である三連ブレスレットを受け取った。また、フィディスは怒鳴った事に対する謝罪をし、「お前を死なせはしない」と言い、希空を抱き締める。
 その後、孤児院の子供達にお菓子を届け、騎士団の宿舎では団員達の為に食事を作り、希空は充実した一日を過ごした。


 眠りについた希空は恐ろしい夢を見た。嫌な予感がし、外を見ると、孤児院から火の手が上がっていた。希空は急いで孤児院へ向かい、皆の無事を確認する。しかし、セトの姿が無かった。希空は決死の覚悟で、燃え盛る孤児院の中へ入る。セトを無事に見つけ、外へ出ようとした時、頭上に瓦礫が落ちてきた。もうダメかと思った時、駆け付けたフィディスが身を挺して守ってくれた。


 フィディスのお陰でセトを助ける事が出来たが、中にはフィディスが取り残されたままだった。希空は助けたい一心で懸命に祈った。その時、胸元が光り、ルーメンの杖を引き抜く。そして、『聖女の舞』で水龍を召喚し、孤児院を消火し、フィディスに治癒魔法を施した。
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