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第四章:Side Noa <互いの気持ちが徐々に>
4-13:騎士団員達へのおもてなし
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そうこうしているうちに、石窯からはチーズの濃厚な香りに、生地の焼ける香りが漂ってきた。頭の中で、あれもしなきゃこれもしなきゃと考えていると、焼き加減のチェックに呼ばれた。石窯を見てると、チーズはジェノベーゼソースに馴染むように溶けており、表面に焦げ目がついていた。縁もプクプクと膨れ、良いきつね色になっていた。
希空は石窯から出すように指示し、作業台に出すと、食べやすいように切った。サラダの方も最後の盛り付けが出来、ジューッと言う音とともに、サラダにベーコンとその油がかかり、ベーコンの香ばしさと熱い油によって揮発したレモンの香りがとても食欲をそそる。
「はぁ……。なんとか全部出来た。厨房って大変なんですね。カレンさん達の協力が無かったら、僕は今、途方に暮れて、泣いてました」
「あははっ! 希空も頑張ってたよ。一生懸命、私達に料理を教えてくれた。希空のお陰で料理が出来たんだ。ありがとね」
少し落ち込んだ希空をカレンは背中を叩き、大きな声を出して、笑った。あとは、皆で人数分の皿に分け、お腹を空かせた団員達が来るのを待つだけだった。
訓練が終わり、くたくたになった団員達がぞろぞろと重い足取りで食堂へやってきた。いつもと違う香りに気付き、顔を明るくし、カウンターへやってきた。カレン達が皿に取り分け、団員達に手渡す。いつもとは違う食事に、そして、食欲をそそる香りに団員達は目を輝かせた。
「今日はお前達の為に希空が作った食事だよ。残したら、許さないからね」
「……えっ! 聖女様が俺達の為に作った?」
団員達は厨房を覗くと、希空が丹精込めて、追加の料理を作っていた。その姿に団員達は驚いた。希空は額から流れる汗を拭いながら、石窯の前に立って、ピザの焼き具合を見ていた。
なんだかカウンターの方がざわついていると思い、振り返ると、団員達が希空見たさに群がっていた。希空が軽く会釈をすると、団員達は顔を明るくさせ、嬉しそうに手を振ってくれた。
「希空に見惚れるのは良いけど、折角の料理が冷めちまうよ。さっさと食べな!」
カレンは団員達を手で追い払った。団員達は席に座ると、食事を食べ始めた。食堂からは「うまい!」と団員達が食事を美味しそうに食べているのが厨房にいる希空の耳まで届いた。希空は嬉しくなって、つい笑みが零れた。
あらかた料理は終わり、希空はカレン達とともに、食事を団員達に渡す仕事をした。訓練で疲れた団員達に労いの言葉を伝えながら、食事を渡すと、団員達は頬を赤くしたり、鼻血を出す者までいて、希空は少し戸惑った。
そして、順番に食事を提供していると、タンクトップ姿のフィディスがやってきた。筋肉隆々の腕がむき出しになり、タンクトップは逞しい胸筋でパツパツになっていた。
「それにしても、何人の奴らを垂らし込めば、気が済むんだ。そんなに男に飢えてるのか?」
「はぁ? 皆が訓練で疲れてるから、労いの言葉をかけてるだけで、垂らし込んでないです!」
身長差があるせいか、すごく見下されているように感じた。鼻で笑うフィディスに苛立つ希空は手荒にサラダを木製のボールに盛り付けると、ドン! と音が鳴るようにカウンターに置いた。そのボールには明らかに他の食材を抜き、ほうれん草だけの緑一色のサラダだった。
「はい! ほうれん草です! カレンさんから聞きました。肉ばっか食ってないで、野菜も食べなさい! 好き嫌いする男は誰からも相手されませんよぉ!」
「――あ? 筋肉には肉を食うのが一番だろうが。それに、別に相手なんて求めてない。……あー、そうかそうか。大丈夫だ。俺はお前の事をこれっぽっちも思ってないし、眼中にもない」
フィディスは笑いながら、食堂の席につき、食事を摂り始めた。フィディスの態度に対して、希空は最高潮に苛立ち、地団駄を踏んだ。その姿を見て、カレンは声を出して、笑った。「二人はお似合いだね」と言われたが、希空は速攻否定した。
そして、団員達は全員来たみたいで、自分達も食事にしようとカレンが言った。希空達は自分達の分を取り分けた。
丁度その時に、エミュが厨房の裏口から入ってきたため、エミュの分の食事を渡した。希空はカレン達と食事をすると言って、エミュを帰らせた。
希空がふと食堂を見ると、フィディスは他の団員達とは違い、食堂の隅で一人寂しく食事を摂っていた。一瞬、一緒に食べようかなと思ったが、既に食べ終わり、席を立ち、トレーを持ち、こちらへ向かって来ていた。
「お前に言われた通り、野菜食ったぞ。――あっ、旨かったぞ。じゃあな」
フィディスはカウンターにトレイを置くと、完食した旨を希空に報告した。希空がトレイを覗くと、確かに綺麗に平らげていた。そして、去り際に、手を振りながら、捨て台詞のように感想を言うと、食堂を後にした。
(何、あの男! 嬉しいんだけど、なんか腹立つ! あんな性格じゃなければ、顔も良いんだし、良いなって思うのに)
「希空はフィディスみたいなのが良いのかい?」
「えっ! あのどこが良いんですか! お高く留まるとこなんて大嫌いです!」
「あはははっ! フィディスは不器用なだけだよ。昔から人と関わろうとしなかったからね。あれでも愛想よくなった方だと思うけどね。前はあんなに喋らなかったんだよ。希空のお陰よ」
「僕のお陰なんですか? 僕には愛想悪いようにしか見えないですけど」
希空は石窯から出すように指示し、作業台に出すと、食べやすいように切った。サラダの方も最後の盛り付けが出来、ジューッと言う音とともに、サラダにベーコンとその油がかかり、ベーコンの香ばしさと熱い油によって揮発したレモンの香りがとても食欲をそそる。
「はぁ……。なんとか全部出来た。厨房って大変なんですね。カレンさん達の協力が無かったら、僕は今、途方に暮れて、泣いてました」
「あははっ! 希空も頑張ってたよ。一生懸命、私達に料理を教えてくれた。希空のお陰で料理が出来たんだ。ありがとね」
少し落ち込んだ希空をカレンは背中を叩き、大きな声を出して、笑った。あとは、皆で人数分の皿に分け、お腹を空かせた団員達が来るのを待つだけだった。
訓練が終わり、くたくたになった団員達がぞろぞろと重い足取りで食堂へやってきた。いつもと違う香りに気付き、顔を明るくし、カウンターへやってきた。カレン達が皿に取り分け、団員達に手渡す。いつもとは違う食事に、そして、食欲をそそる香りに団員達は目を輝かせた。
「今日はお前達の為に希空が作った食事だよ。残したら、許さないからね」
「……えっ! 聖女様が俺達の為に作った?」
団員達は厨房を覗くと、希空が丹精込めて、追加の料理を作っていた。その姿に団員達は驚いた。希空は額から流れる汗を拭いながら、石窯の前に立って、ピザの焼き具合を見ていた。
なんだかカウンターの方がざわついていると思い、振り返ると、団員達が希空見たさに群がっていた。希空が軽く会釈をすると、団員達は顔を明るくさせ、嬉しそうに手を振ってくれた。
「希空に見惚れるのは良いけど、折角の料理が冷めちまうよ。さっさと食べな!」
カレンは団員達を手で追い払った。団員達は席に座ると、食事を食べ始めた。食堂からは「うまい!」と団員達が食事を美味しそうに食べているのが厨房にいる希空の耳まで届いた。希空は嬉しくなって、つい笑みが零れた。
あらかた料理は終わり、希空はカレン達とともに、食事を団員達に渡す仕事をした。訓練で疲れた団員達に労いの言葉を伝えながら、食事を渡すと、団員達は頬を赤くしたり、鼻血を出す者までいて、希空は少し戸惑った。
そして、順番に食事を提供していると、タンクトップ姿のフィディスがやってきた。筋肉隆々の腕がむき出しになり、タンクトップは逞しい胸筋でパツパツになっていた。
「それにしても、何人の奴らを垂らし込めば、気が済むんだ。そんなに男に飢えてるのか?」
「はぁ? 皆が訓練で疲れてるから、労いの言葉をかけてるだけで、垂らし込んでないです!」
身長差があるせいか、すごく見下されているように感じた。鼻で笑うフィディスに苛立つ希空は手荒にサラダを木製のボールに盛り付けると、ドン! と音が鳴るようにカウンターに置いた。そのボールには明らかに他の食材を抜き、ほうれん草だけの緑一色のサラダだった。
「はい! ほうれん草です! カレンさんから聞きました。肉ばっか食ってないで、野菜も食べなさい! 好き嫌いする男は誰からも相手されませんよぉ!」
「――あ? 筋肉には肉を食うのが一番だろうが。それに、別に相手なんて求めてない。……あー、そうかそうか。大丈夫だ。俺はお前の事をこれっぽっちも思ってないし、眼中にもない」
フィディスは笑いながら、食堂の席につき、食事を摂り始めた。フィディスの態度に対して、希空は最高潮に苛立ち、地団駄を踏んだ。その姿を見て、カレンは声を出して、笑った。「二人はお似合いだね」と言われたが、希空は速攻否定した。
そして、団員達は全員来たみたいで、自分達も食事にしようとカレンが言った。希空達は自分達の分を取り分けた。
丁度その時に、エミュが厨房の裏口から入ってきたため、エミュの分の食事を渡した。希空はカレン達と食事をすると言って、エミュを帰らせた。
希空がふと食堂を見ると、フィディスは他の団員達とは違い、食堂の隅で一人寂しく食事を摂っていた。一瞬、一緒に食べようかなと思ったが、既に食べ終わり、席を立ち、トレーを持ち、こちらへ向かって来ていた。
「お前に言われた通り、野菜食ったぞ。――あっ、旨かったぞ。じゃあな」
フィディスはカウンターにトレイを置くと、完食した旨を希空に報告した。希空がトレイを覗くと、確かに綺麗に平らげていた。そして、去り際に、手を振りながら、捨て台詞のように感想を言うと、食堂を後にした。
(何、あの男! 嬉しいんだけど、なんか腹立つ! あんな性格じゃなければ、顔も良いんだし、良いなって思うのに)
「希空はフィディスみたいなのが良いのかい?」
「えっ! あのどこが良いんですか! お高く留まるとこなんて大嫌いです!」
「あはははっ! フィディスは不器用なだけだよ。昔から人と関わろうとしなかったからね。あれでも愛想よくなった方だと思うけどね。前はあんなに喋らなかったんだよ。希空のお陰よ」
「僕のお陰なんですか? 僕には愛想悪いようにしか見えないですけど」
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