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第四章:Side Noa <互いの気持ちが徐々に>
4-2:楽しい休日
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いつもより早く目が覚めた。希空はベッドから下りると、ふらつかないか確認した。昨日よりかはマシだ。試しにその場でくるんと一回りしたが、問題無かった。エミュが朝食を持って、やって来た。あまり食は進まないが、念願の外出のために全部食べた。エミュからも合格点を貰い、希空は上機嫌で出掛ける支度をした。
希空はいつも着ている白のノースリーブワンピースで出掛けると思っていたが、エミュがフード付きケープとバレエシューズを用意してくれていた。ケープはコットンレース生地で出来ており、金色の糸で草花の刺繍を施されており、綺麗だった。バレエシューズはいつも同じものを履いていたが、外出のために新しく用意したそうだ。
「エミュ、これ位、自分で出来るから」
「いえ、今日は希空様が初めて外出される日です。きちんとお支度をさせてください」
「わ、分かったよ」
エミュはいつも以上に希空の身だしなみを整えた。そして、ケープのサテンリボンを縛ると、再びおかしくないかを遠目からチェックした。そして、最後に、頭の上から香水を振りまいた。霧状になった香りが全身を包み込む。ラベンダーの華やかで優しい香りの後に、サンダルウッドの落ち着いた香りが漂ってくる。
「そんな洒落た香水つけても、どうせ屋台のニオイで意味ないけどな」
「フィディス!」
フィディスはいつものようにノックもせずに部屋へ入って来た。エミュが希空に香水をつけている様子を見て。噴き出すように笑った。エミュは怒った顔をして、ズカズカとフィディスの前に行くと、「聖女様が外出する時は――」と説教し始めた。フィディスは頭を掻きながら、適当に相槌を打った。
エミュは礼節を重んじるタイプで、適当なフィディスと真逆だ。エミュが怒るのも分からなくはないが、希空はそれよりも早く街へ行きたかった。希空がウズウズしていると、フィディスが希空の腕を取り、エミュから逃げるように部屋を出た。希空は引っ張られるように廊下を走った。そんな中、後ろを振り返ると、地団駄を踏むエミュの姿が見えた。
「……ちょ、ちょっと待って。……はぁはぁ、流石に病み上がりだから、ちょっと休ませて」
「なんだ、もう疲れたのか?」
フィディスは希空の腕を引っ張って、部屋から教会の通行門手前までずっと走り続けたのだ。病み上がりじゃなくても、希空にとってはフィディスの走る速度は速過ぎる。街へ行くのもおろか、通行門手前でまた倒れて、部屋へ逆戻りかと思う位、息が上がった。希空は息を切らしながら、フィディスに止まるように言った。
「フィディス様は何とも無いかもしれないけど、ちょっとは僕に合わせてよ……」
「なんだよ、早く行かねぇとモディのとこの鳥とキノコの串焼き食えねぇぞ。あと、俺に敬称は不要だ。フィディス様とか呼ばれるのはむず痒い」
「はぁ……? それって自分が食べたいだけでしょ?」
「ほら、早くしろよ。歩けねぇのなら、ほら、背負ってやるよ。ほら、早く」
「この年になって、おんぶって……」
フィディスは希空の体力の無さに呆れ、希空の前に来ると、背中を向けて、しゃがんで、おんぶの体勢になって、希空を急かした。希空は周りを見渡すと、じっと見つめる通行門の門番と目がバチッと合った。希空はおんぶしてもらうのを躊躇ったが、フィディスが人目を気にせずに急かしてくるので、希空はやけになって、フィディスの大きな背中に身を預けた。フィディスが希空をおんぶして立ち上がると、希空は視線の高さに驚いた。
「なんだ、お前は軽いな。子供をあやしてるみたいだ」
「はぁ? フィディスが図体デカいだけでしょ!」
「おい、暴れるな! 落ちるぞ! それよりさっさと通行証を門番に見せろ」
一言多いフィディスに希空は怒り、背中の上で子供のように暴れた。そんな姿を見て、門番は笑いを堪えながら、通行証を提示するように声を掛けてきた。希空は急に恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしながら、無言で通行証を見せた。そして、希空は穴があったら入りたい気持ちになり、咄嗟にフィディスの首筋に顔を埋めた。
「あははははっ! お前って面白いよな」
「うるさいなぁ!」
「――いだだだだっ! 髪を引っ張るな!」
「禿げてしまえ! ――ひゃぁ! 急に走らないでよ! 落ちちゃう!」
フィディスは自分の髪の毛を引っ張る希空の手の力が緩んだタイミングで、急に走り出した。希空は驚き、思わずおかしな声が出た。そして、落ちそうになり、必死にフィディスにしがみついた。フィディスは笑いながら、希空をおんぶしたまま、街まで向かった。
希空は深く被ったフードとフィディスの体の合間から、街の様子を窺った。下を見ると、少し凸凹した石畳の道に、多くの人々が行き来していた。左右を見ると、レンガ造りの家や商店が立ち並び、ショーウィンドウには剣や杖などの装備品だったり、ガラス細工の飾りが飾られていた。壁に這うツタに、花壇に色とりどりだ。そして、見上げると、軒下にぶら下がるアンティーク調の看板に、雲一つない青空が広がっていた。
希空はいつも着ている白のノースリーブワンピースで出掛けると思っていたが、エミュがフード付きケープとバレエシューズを用意してくれていた。ケープはコットンレース生地で出来ており、金色の糸で草花の刺繍を施されており、綺麗だった。バレエシューズはいつも同じものを履いていたが、外出のために新しく用意したそうだ。
「エミュ、これ位、自分で出来るから」
「いえ、今日は希空様が初めて外出される日です。きちんとお支度をさせてください」
「わ、分かったよ」
エミュはいつも以上に希空の身だしなみを整えた。そして、ケープのサテンリボンを縛ると、再びおかしくないかを遠目からチェックした。そして、最後に、頭の上から香水を振りまいた。霧状になった香りが全身を包み込む。ラベンダーの華やかで優しい香りの後に、サンダルウッドの落ち着いた香りが漂ってくる。
「そんな洒落た香水つけても、どうせ屋台のニオイで意味ないけどな」
「フィディス!」
フィディスはいつものようにノックもせずに部屋へ入って来た。エミュが希空に香水をつけている様子を見て。噴き出すように笑った。エミュは怒った顔をして、ズカズカとフィディスの前に行くと、「聖女様が外出する時は――」と説教し始めた。フィディスは頭を掻きながら、適当に相槌を打った。
エミュは礼節を重んじるタイプで、適当なフィディスと真逆だ。エミュが怒るのも分からなくはないが、希空はそれよりも早く街へ行きたかった。希空がウズウズしていると、フィディスが希空の腕を取り、エミュから逃げるように部屋を出た。希空は引っ張られるように廊下を走った。そんな中、後ろを振り返ると、地団駄を踏むエミュの姿が見えた。
「……ちょ、ちょっと待って。……はぁはぁ、流石に病み上がりだから、ちょっと休ませて」
「なんだ、もう疲れたのか?」
フィディスは希空の腕を引っ張って、部屋から教会の通行門手前までずっと走り続けたのだ。病み上がりじゃなくても、希空にとってはフィディスの走る速度は速過ぎる。街へ行くのもおろか、通行門手前でまた倒れて、部屋へ逆戻りかと思う位、息が上がった。希空は息を切らしながら、フィディスに止まるように言った。
「フィディス様は何とも無いかもしれないけど、ちょっとは僕に合わせてよ……」
「なんだよ、早く行かねぇとモディのとこの鳥とキノコの串焼き食えねぇぞ。あと、俺に敬称は不要だ。フィディス様とか呼ばれるのはむず痒い」
「はぁ……? それって自分が食べたいだけでしょ?」
「ほら、早くしろよ。歩けねぇのなら、ほら、背負ってやるよ。ほら、早く」
「この年になって、おんぶって……」
フィディスは希空の体力の無さに呆れ、希空の前に来ると、背中を向けて、しゃがんで、おんぶの体勢になって、希空を急かした。希空は周りを見渡すと、じっと見つめる通行門の門番と目がバチッと合った。希空はおんぶしてもらうのを躊躇ったが、フィディスが人目を気にせずに急かしてくるので、希空はやけになって、フィディスの大きな背中に身を預けた。フィディスが希空をおんぶして立ち上がると、希空は視線の高さに驚いた。
「なんだ、お前は軽いな。子供をあやしてるみたいだ」
「はぁ? フィディスが図体デカいだけでしょ!」
「おい、暴れるな! 落ちるぞ! それよりさっさと通行証を門番に見せろ」
一言多いフィディスに希空は怒り、背中の上で子供のように暴れた。そんな姿を見て、門番は笑いを堪えながら、通行証を提示するように声を掛けてきた。希空は急に恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしながら、無言で通行証を見せた。そして、希空は穴があったら入りたい気持ちになり、咄嗟にフィディスの首筋に顔を埋めた。
「あははははっ! お前って面白いよな」
「うるさいなぁ!」
「――いだだだだっ! 髪を引っ張るな!」
「禿げてしまえ! ――ひゃぁ! 急に走らないでよ! 落ちちゃう!」
フィディスは自分の髪の毛を引っ張る希空の手の力が緩んだタイミングで、急に走り出した。希空は驚き、思わずおかしな声が出た。そして、落ちそうになり、必死にフィディスにしがみついた。フィディスは笑いながら、希空をおんぶしたまま、街まで向かった。
希空は深く被ったフードとフィディスの体の合間から、街の様子を窺った。下を見ると、少し凸凹した石畳の道に、多くの人々が行き来していた。左右を見ると、レンガ造りの家や商店が立ち並び、ショーウィンドウには剣や杖などの装備品だったり、ガラス細工の飾りが飾られていた。壁に這うツタに、花壇に色とりどりだ。そして、見上げると、軒下にぶら下がるアンティーク調の看板に、雲一つない青空が広がっていた。
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