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第一章:苦痛な日々からの脱却
1-8:願いが何でも叶う魔法陣とは
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二人はコンビニ弁当で晩御飯を済ませると、雫は希空に着替えのスウェットを渡した。雫が希空にシャワーへ入ってくるように言うと、希空はキョトンとした顔で雫を見た。
「一緒に入らないんですか?」
「なんで一緒に入るんだよ。俺の気持ちにもなってみろ」
「そんな照れなくてもいいじゃないですかぁ」
希空がニヤニヤしながら、雫を揶揄うと、雫は頬を真っ赤にし、引き出しから出したバスタオルを希空に向かって投げた。希空はバスタオルを上手くキャッチすると、ほくそ笑み、一人でシャワーに入った。その後、雫もシャワーを浴び、タオルで髪を乾かしながら、ソファで寛ぐ希空の隣にドカッと座った。
「なんか自分の家に誰かがいるっていいもんだな。弟がいたら、こんな感じなのかなぁ?」
「どうなんですかね? 僕は一人っ子なので、よく分からないですけど。それより、雫さんのパソコン借りてもいいですか?」
「あぁ、別に構わないけど」
雫はデスクトップパソコンを起動させ、ゲーミングチェアに座るように希空を誘導した。希空はブラウザを開くと、スマホを見ながら、URLを打ち込んで、あるサイトへアクセスした。ブラウザは真っ白で何も表示されていなかった。希空はボソボソと独り言を言いながら、その何も表示されていないサイトを覗くように調べていた。数分後、希空が何かを発見し、クリックをした。クリックした先のページには謎解きのようなものが書かれていた。
「なんだ? このサイト。随分怪しいけど……。まさか変なウイルスとか入ってんじゃないだろうな?」
「ウイルスとかないですよ。……あっと、これはこうして、この暗号はこう――」
雫は自分のパソコンがクラッシュしたりしないだろうかと冷や冷やした。そんな心配になっている雫を尻目に、希空は順調に謎を解いていき、最後の謎解きを終えると、画面が切り替わり、血の色に近い色で描かれた魔法陣が出ていた。雫はなんだか見ているだけで胸がゾワゾワするような気分になった。
「おい、なんか気味悪いぞ。……貴方の願いを何でも叶えますだと? 完全にやべぇサイトじゃねぇか」
「――ちょ、ちょっと待ってください!」
雫が希空からマウスを奪うと、そのサイトを閉じようとした。しかし、希空は必死に雫の腕を握り、クリックさせないように制止した。必死に制止する希空に呆れ、雫はマウスから手を離した。希空は手を合わせ、雫に謝った。
「これ、何でも願いを叶えてくれる魔法陣っていう噂です。真っ白な紙に自分の血を含ませた赤色のペンで、この魔法陣を書いて、枕の下に入れて、願いを思い浮かべながら寝ると、願いが叶うらしいんです!」
「本当かよ。ただの迷信じゃないのか? はぁ……、人のパソコンで何を調べるかと思ったら、こんな事かよ」
「そんな言い方しないで下さい! 雫さんなら分かって貰えると思ったのに!」
希空は声を少し荒げ、雫を涙を浮かべながら訴えた。雫はビックリして、慌てて希空を宥めた。こんな迷信じみた事に対して、こんなにも怒るのにはきっと何か理由があるのだろうと雫は思った。雫は希空にとりあえず事情を聞く事にした。
「……希空は、何を願いたいの?」
「僕は異世界へ行って、第二の人生を歩みたいです。色々ともう限界で死にたいなって思って、色々と調べていたら、このサイトを見つけたんです。自分でもこんなの嘘だってのは分かってます。でも、僕にとっては唯一の望みなので……」
「希空……」
「もし、これが本当だったら、僕は皆から崇められるような存在になって、自分の事を守ってくれる強い男の人と結ばれたいって願おうと思ってます。……ま、叶えばの話ですけど」
希空は必死に笑おうとしたが、うまく笑えず、頬に涙が流れていた。雫は希空をそっと抱き締めた。希空が希望と思っている事を馬鹿にしてしまい、雫は酷く反省した。もし、希空の願いが本当に叶って、希空が自分の世界からいなくなってしまう事はすごく辛い事だが、希空にとっては幸せであり、出来れば叶って欲しいと雫は心の中で思った。
「今日は一緒のベッドで寝よう。やましい事はしない。……ただ一緒に寝よう」
「……はい。すみません、初対面なのに、こんな取り乱してしまって」
「ううん、気にしないで。ほら、こっちおいで」
雫はベッドへ入ると、希空を隣に来るように誘った。希空は少し恥ずかしがりながら、ベッドへ入ると、雫の胸に顔を埋めた。雫は希空の体を引き寄せるように、腕を回した。
「雫さんがお兄ちゃんだったら、こんな感じなのかな?」
「さぁ、どうだろね……」
「凄く安心します。……ありがとうございます。雫さんに出会えて、本当に良かったです」
「そんな事言うなよ」
二人はお互いの温もりを感じながら、寄り添うように寝た。希空の天使のような寝顔を見て、雫は希空の髪を優しく撫でた。一度も染めた事が無いような綺麗な黒髪で、サラサラして気持ちが良い。
「でも、なんで俺なんだろう? こんなに素直で可愛いのに、神様は一体何をしてるんだか……」
雫は心がモヤモヤするような気がして、ため息をついた。自分に何か出来ないかを考えているうちに、雫も深い眠りについた。
「一緒に入らないんですか?」
「なんで一緒に入るんだよ。俺の気持ちにもなってみろ」
「そんな照れなくてもいいじゃないですかぁ」
希空がニヤニヤしながら、雫を揶揄うと、雫は頬を真っ赤にし、引き出しから出したバスタオルを希空に向かって投げた。希空はバスタオルを上手くキャッチすると、ほくそ笑み、一人でシャワーに入った。その後、雫もシャワーを浴び、タオルで髪を乾かしながら、ソファで寛ぐ希空の隣にドカッと座った。
「なんか自分の家に誰かがいるっていいもんだな。弟がいたら、こんな感じなのかなぁ?」
「どうなんですかね? 僕は一人っ子なので、よく分からないですけど。それより、雫さんのパソコン借りてもいいですか?」
「あぁ、別に構わないけど」
雫はデスクトップパソコンを起動させ、ゲーミングチェアに座るように希空を誘導した。希空はブラウザを開くと、スマホを見ながら、URLを打ち込んで、あるサイトへアクセスした。ブラウザは真っ白で何も表示されていなかった。希空はボソボソと独り言を言いながら、その何も表示されていないサイトを覗くように調べていた。数分後、希空が何かを発見し、クリックをした。クリックした先のページには謎解きのようなものが書かれていた。
「なんだ? このサイト。随分怪しいけど……。まさか変なウイルスとか入ってんじゃないだろうな?」
「ウイルスとかないですよ。……あっと、これはこうして、この暗号はこう――」
雫は自分のパソコンがクラッシュしたりしないだろうかと冷や冷やした。そんな心配になっている雫を尻目に、希空は順調に謎を解いていき、最後の謎解きを終えると、画面が切り替わり、血の色に近い色で描かれた魔法陣が出ていた。雫はなんだか見ているだけで胸がゾワゾワするような気分になった。
「おい、なんか気味悪いぞ。……貴方の願いを何でも叶えますだと? 完全にやべぇサイトじゃねぇか」
「――ちょ、ちょっと待ってください!」
雫が希空からマウスを奪うと、そのサイトを閉じようとした。しかし、希空は必死に雫の腕を握り、クリックさせないように制止した。必死に制止する希空に呆れ、雫はマウスから手を離した。希空は手を合わせ、雫に謝った。
「これ、何でも願いを叶えてくれる魔法陣っていう噂です。真っ白な紙に自分の血を含ませた赤色のペンで、この魔法陣を書いて、枕の下に入れて、願いを思い浮かべながら寝ると、願いが叶うらしいんです!」
「本当かよ。ただの迷信じゃないのか? はぁ……、人のパソコンで何を調べるかと思ったら、こんな事かよ」
「そんな言い方しないで下さい! 雫さんなら分かって貰えると思ったのに!」
希空は声を少し荒げ、雫を涙を浮かべながら訴えた。雫はビックリして、慌てて希空を宥めた。こんな迷信じみた事に対して、こんなにも怒るのにはきっと何か理由があるのだろうと雫は思った。雫は希空にとりあえず事情を聞く事にした。
「……希空は、何を願いたいの?」
「僕は異世界へ行って、第二の人生を歩みたいです。色々ともう限界で死にたいなって思って、色々と調べていたら、このサイトを見つけたんです。自分でもこんなの嘘だってのは分かってます。でも、僕にとっては唯一の望みなので……」
「希空……」
「もし、これが本当だったら、僕は皆から崇められるような存在になって、自分の事を守ってくれる強い男の人と結ばれたいって願おうと思ってます。……ま、叶えばの話ですけど」
希空は必死に笑おうとしたが、うまく笑えず、頬に涙が流れていた。雫は希空をそっと抱き締めた。希空が希望と思っている事を馬鹿にしてしまい、雫は酷く反省した。もし、希空の願いが本当に叶って、希空が自分の世界からいなくなってしまう事はすごく辛い事だが、希空にとっては幸せであり、出来れば叶って欲しいと雫は心の中で思った。
「今日は一緒のベッドで寝よう。やましい事はしない。……ただ一緒に寝よう」
「……はい。すみません、初対面なのに、こんな取り乱してしまって」
「ううん、気にしないで。ほら、こっちおいで」
雫はベッドへ入ると、希空を隣に来るように誘った。希空は少し恥ずかしがりながら、ベッドへ入ると、雫の胸に顔を埋めた。雫は希空の体を引き寄せるように、腕を回した。
「雫さんがお兄ちゃんだったら、こんな感じなのかな?」
「さぁ、どうだろね……」
「凄く安心します。……ありがとうございます。雫さんに出会えて、本当に良かったです」
「そんな事言うなよ」
二人はお互いの温もりを感じながら、寄り添うように寝た。希空の天使のような寝顔を見て、雫は希空の髪を優しく撫でた。一度も染めた事が無いような綺麗な黒髪で、サラサラして気持ちが良い。
「でも、なんで俺なんだろう? こんなに素直で可愛いのに、神様は一体何をしてるんだか……」
雫は心がモヤモヤするような気がして、ため息をついた。自分に何か出来ないかを考えているうちに、雫も深い眠りについた。
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