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第一章:苦痛な日々からの脱却
1-4:幻の杖・テネブリスの杖
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希空は魔法職にクラスチェンジすると、報酬アイテムで受け取った杖を装備し、三人に見せた。その杖は、支柱が金色で中環リングには漆黒の羽根で飾られ、杖の先端には三日月の金細工が施され、その空いた空間に拳大位の禍々しい魔石が空中に浮いている代物だ。
三人は初めて見る装備でよく分からなかったため、希空の装備詳細を覗かせて貰い、言葉を失った。急に黙り込む三人を見て、希空はガッカリした。
「こ、これも倉庫行きですかね?」
「だめ! それ……ヤバいわよ」
「うんうん! ヤバいヤバい! それは幻って言われてる程に超絶レアなロッドだよ! テネブリスの杖!」
「筋肉バカも初めて見たけど、本当にあるんだな。良いもん見させて貰ったわ」
「このロッドはユニーク武器で、固有スキルも沢山ある」
今まで黙り込んでいた三人が希空の周りを取り囲み、幻と言われるテネブリスの杖を舐めるように見た。チャット欄では三人が大盛り上がりで、希空に色んなポーズを取るようにせがんだ。希空は三人の驚きように、本当に幻の杖なんだと認識し、物凄く嬉しくなった。
「さて、私と筋肉バカはそろそろ時間だから、この辺で落ちるね。さっきの報酬要らないから、譲るね。冒険者ギルドで換金してもらって。ほんじゃ、おやすみ」
「レイスさん、筋肉バカさん、今日は本当にありがとうございます! また色々と教えてください!」
レイスと筋肉バカは二人に手を大きく振るモーションをして、ゲームからログアウトした。希空は二人から受け取った報酬アイテムを雫と一つずつ確認しながら、使えそうなものを手元に残し、後は冒険者ギルドで換金した。
「希空さんはこれからどうしますか?」
「あっ、僕の事は呼び捨てで大丈夫ですよ。さん付けで呼ばれるの、なんかむず痒くて」
「そっか。じゃ、希空って呼ぶね。私も好きなように呼んで貰っていいよ」
「いやいや! 雫さんは恩人ですから、雫さんのままで!」
取り乱すように色んなモーションをする希空が可愛くて仕方なかった。雫は希空に色々な事を教えた。何かを教える度に、希空が驚き喜ぶ姿に雫は癒された。一緒にデイリークエストを消化したり、ダンジョンに潜ったりしていると、あっという間に日付が変わっていた。
「もうこんな時間だ。希空は時間大丈夫?」
「えっ! 日付変わってる! あわわ、すみません。こんな時間まで付き合っていただいて……」
「いいの、いいの。私も教えるのに夢中になってた。あと、すぐ謝らない事! 疲れたり、休みたかったら、遠慮せずに言っていいからね」
「……はい、ありがとうございます。雫さんって優しいですよね。雫さんがリアルでも友達だったらいいのに……。あっ! 気にしないで下さい! すみません!」
「ほら、また謝った!」
二人はセントラルシティに戻り、複数のNPCからクエストオーダーの報酬を受け取るために、歩き回った。案の定、希空がテネブリスの杖を手に入れた事はシティ中にいるプレイヤー達に広まっていたみたいで、希空を取り囲むように人だかりが出来た。水道管が破裂したかのようにチャットログが一気に流れていった。雫は慌てて、希空と一緒に誰も来ない拠点へテレポートした。
「……なんか凄かったですね。チャットがあらぶってましたね」
「ま、幻の杖を背負ってたら、誰でも気付くからね……。本当に恐ろしい」
「折角、テネブリスの杖を手に入れたので、明日からは魔法職を極めてみたいです。雫さん、また手伝って頂いてもよろしいですか?」
「うん、そりゃもちろん! 皆をぎゃふんと言わせなきゃ! 今日はありがとね」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。それでは、失礼します」
希空は雫にお辞儀のモーションをすると、ログアウトした。雫はなんだか嬉しくて、いつもはそんなに飲まない缶チューハイを冷蔵庫から取り出し、二本目を開けた。
◆◇◆◇◆◇
次の日も雫は希空とパーティーを組み、テネブリスの杖の強化に使う素材集めをしたり、ダンジョンに潜って、レベリングをした。雫は希空の杖の強化が終わるまで、昔使っていた強化済みの杖を渡した。当然、希空は遠慮していたが、人に囲まれたり、変な事を言われないためにもと雫が念を押し、希空は渋々受け取った。
「すみません、気を遣わせてしまって……」
「気にしちゃダメ! それに、私はもうその杖使わないし、売ろうとしても、買い取り手もいないし。希空に使って貰った方が私も嬉しいから」
「ありがとうございます。早く一人前になれるように頑張ります!」
希空は魔法職の素質があるのか、見る見るうちに上手くなっていった。希空は雫みたいなオールラウンダーに憧れていたが、まずは魔法職を極めようと雫に念を押された。リアルでは上手くいかない日があっても、ゲーム内では希空が尻尾を振るようについてきて、雫にとってはとても充実したものになっていた。
三人は初めて見る装備でよく分からなかったため、希空の装備詳細を覗かせて貰い、言葉を失った。急に黙り込む三人を見て、希空はガッカリした。
「こ、これも倉庫行きですかね?」
「だめ! それ……ヤバいわよ」
「うんうん! ヤバいヤバい! それは幻って言われてる程に超絶レアなロッドだよ! テネブリスの杖!」
「筋肉バカも初めて見たけど、本当にあるんだな。良いもん見させて貰ったわ」
「このロッドはユニーク武器で、固有スキルも沢山ある」
今まで黙り込んでいた三人が希空の周りを取り囲み、幻と言われるテネブリスの杖を舐めるように見た。チャット欄では三人が大盛り上がりで、希空に色んなポーズを取るようにせがんだ。希空は三人の驚きように、本当に幻の杖なんだと認識し、物凄く嬉しくなった。
「さて、私と筋肉バカはそろそろ時間だから、この辺で落ちるね。さっきの報酬要らないから、譲るね。冒険者ギルドで換金してもらって。ほんじゃ、おやすみ」
「レイスさん、筋肉バカさん、今日は本当にありがとうございます! また色々と教えてください!」
レイスと筋肉バカは二人に手を大きく振るモーションをして、ゲームからログアウトした。希空は二人から受け取った報酬アイテムを雫と一つずつ確認しながら、使えそうなものを手元に残し、後は冒険者ギルドで換金した。
「希空さんはこれからどうしますか?」
「あっ、僕の事は呼び捨てで大丈夫ですよ。さん付けで呼ばれるの、なんかむず痒くて」
「そっか。じゃ、希空って呼ぶね。私も好きなように呼んで貰っていいよ」
「いやいや! 雫さんは恩人ですから、雫さんのままで!」
取り乱すように色んなモーションをする希空が可愛くて仕方なかった。雫は希空に色々な事を教えた。何かを教える度に、希空が驚き喜ぶ姿に雫は癒された。一緒にデイリークエストを消化したり、ダンジョンに潜ったりしていると、あっという間に日付が変わっていた。
「もうこんな時間だ。希空は時間大丈夫?」
「えっ! 日付変わってる! あわわ、すみません。こんな時間まで付き合っていただいて……」
「いいの、いいの。私も教えるのに夢中になってた。あと、すぐ謝らない事! 疲れたり、休みたかったら、遠慮せずに言っていいからね」
「……はい、ありがとうございます。雫さんって優しいですよね。雫さんがリアルでも友達だったらいいのに……。あっ! 気にしないで下さい! すみません!」
「ほら、また謝った!」
二人はセントラルシティに戻り、複数のNPCからクエストオーダーの報酬を受け取るために、歩き回った。案の定、希空がテネブリスの杖を手に入れた事はシティ中にいるプレイヤー達に広まっていたみたいで、希空を取り囲むように人だかりが出来た。水道管が破裂したかのようにチャットログが一気に流れていった。雫は慌てて、希空と一緒に誰も来ない拠点へテレポートした。
「……なんか凄かったですね。チャットがあらぶってましたね」
「ま、幻の杖を背負ってたら、誰でも気付くからね……。本当に恐ろしい」
「折角、テネブリスの杖を手に入れたので、明日からは魔法職を極めてみたいです。雫さん、また手伝って頂いてもよろしいですか?」
「うん、そりゃもちろん! 皆をぎゃふんと言わせなきゃ! 今日はありがとね」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。それでは、失礼します」
希空は雫にお辞儀のモーションをすると、ログアウトした。雫はなんだか嬉しくて、いつもはそんなに飲まない缶チューハイを冷蔵庫から取り出し、二本目を開けた。
◆◇◆◇◆◇
次の日も雫は希空とパーティーを組み、テネブリスの杖の強化に使う素材集めをしたり、ダンジョンに潜って、レベリングをした。雫は希空の杖の強化が終わるまで、昔使っていた強化済みの杖を渡した。当然、希空は遠慮していたが、人に囲まれたり、変な事を言われないためにもと雫が念を押し、希空は渋々受け取った。
「すみません、気を遣わせてしまって……」
「気にしちゃダメ! それに、私はもうその杖使わないし、売ろうとしても、買い取り手もいないし。希空に使って貰った方が私も嬉しいから」
「ありがとうございます。早く一人前になれるように頑張ります!」
希空は魔法職の素質があるのか、見る見るうちに上手くなっていった。希空は雫みたいなオールラウンダーに憧れていたが、まずは魔法職を極めようと雫に念を押された。リアルでは上手くいかない日があっても、ゲーム内では希空が尻尾を振るようについてきて、雫にとってはとても充実したものになっていた。
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