召喚聖女♂の異世界攻略ノート~クーデレ護衛騎士と人狼わんこの手懐け方~

沼田桃弥

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第一章:苦痛な日々からの脱却

1-3:クズリハ地下大迷宮上層部攻略

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 四人はパーティーを組み、お互いに挨拶を済ませると、クズリハ地下大迷宮上層部の攻略を始めた。このダンジョンはゲームの序盤で解放され、パーティーを組んで、パワーレベリングをするのが大半の人の目的である。しかし、低難易度でありながら、パーティーの中でレベルが一番低い人のレベルに補正されてしまうため、各々の役割をしっかりしないと、一気に戦況が悪くなり、共倒れしてしまうという厄介な場所だ。


「ダンジョンで一番大切な事は連携だからね。むやみに敵に突っ込んだり、補助回復を急かしたりしない事」
「はい、分かりました! じゃ、あそこにいる吸血コウモリを倒します!」
「了解。吸血攻撃を受けると、持続的に出血ダメージを受けるから、気を付けてね」


 雫達は希空のペースに合わせて、時折解説や裏技などを教えたりして、ゆっくりと攻略していった。希空は楽しそうに戦っており、雫は自分がこのゲームを始めた頃の事を思い出した。
 四人は順調に敵を殲滅していって、上層最深部のボスである死霊を喰らう者ネクロマンサーの部屋の前まで来た。


「初めてここまで来ました! ボス戦、大丈夫かな……」
「大丈夫だよ! 二人がサポートしてくれるから。ボス戦はギミックがあるから、さっき言った通りに動けば、なんとかなるから。戦闘中はチャット出来ないからね」
「分かりました! 皆さん、よろしくお願いします!」


 希空の準備が整うと、ボス部屋へ入った。ネクロマンサーはゲーム序盤で詰みやすいと言われるボスの一人だ。希空の装備が少し心もとないが、自分を含め、この三人なら大丈夫だろうと雫は思った。レイスと筋肉バカのサポートのお陰で、特に問題無く、最終フェーズまで行く事が出来た。


『迷えし死者の霊魂よ、今こそ我に力を与えよ……』


 ネクロマンサーが全体攻撃の必殺技を詠唱し始め、両手を広げて、力を溜め始めた。フィールド上には巨大な魔法陣が展開され、十二時、四時、八時方向に石碑が出現した。
 石碑を時計回りで破壊していき、最後に十二時方向の石碑を破壊すれば、ボスがダウンするという比較的簡単なギミックだ。一般的な攻略は近接職二人で石碑を順番に破壊していき、その間のヘイトは射撃職が担い、魔法職がサポーターに回る方法だ。しかし、いつまで経っても希空が自分の所へ来ないのに雫は不審に思い、辺りを見渡した。希空は初めて見る演出に見惚れているのか、棒立ちだった。雫は慌ててチャットを打ち込んだ。

「希空君! 石碑壊すよ! そこ居たら、ヘイト取っちゃうよ!」
「すみません! ボーっとしてました」


 希空は慌てて雫の元へ走った。雫が連続攻撃を決めている傍ら、希空は焦っているのか、上手く連続攻撃が出来ておらず、ダメージの伸びがイマイチだった。ここであれこれ言うと、希空が動揺してしまうと思った雫は黙って攻撃をし続けた。しかし、二つ目の石碑を破壊し終わり、最後の石碑に攻撃を仕掛けた頃には、ボスの詠唱が終わる瞬間だった。


闇の始まりテネブリス イニティウム!』


 ボスの詠唱が終わると、フィールドは漆黒の闇となった。そして、ボスは杖をフィールド上に強く振りかざした。雫はリトライを覚悟した。しかし、大技の演出が終わると、レイスと筋肉バカは戦闘不能になってしまったが、雫と希空は奇跡的にも瀕死の状態で生き残っていた。


「ほら、二人とも最後はガツンとやっちゃいなさいよ!」
「希空さん、連携攻撃がんばです! 落ち着いて!」


 雫がチャット欄を見ると、レイスが絶妙なタイミングでダメージ軽減シールドを雫と希空がいる範囲内に魔法をかけてくれたオートワードログが残っていた。そして、レイスと筋肉バカは二人に声援を送った。雫は全体回復薬を即座に使い、物凄いスピードでチャットに文字を打ち込んだ。


「連携攻撃いくよ! 指示通りにコマンド入力すればいいから!」
「ひぁい!」


 雫が連携攻撃ボタンを押した。同時に、希空に連携攻撃の指示コマンドが表示された。希空は手を震わせながらも、確実にコマンド入力をした。そして、希空のコマンド入力が終わると、雫に指示コマンドが表示され、雫は目を見開きながら、高速で入力した。


『二人の熱き魂、今ここに! エターナルインフェルノ!』


 二人は紅蓮の炎を身に纏い、ボスへ飛びかかるように高速で斬りかかった。連携攻撃が格好良く決まり、ボスの体力ゲージもゼロになり、ギリギリの状態でなんとか倒す事が出来た。雫は肩の力が抜けるような深い溜め息をした。レイスと筋肉バカがリスポーン地点から戻ってくると、雫にねぎらいの言葉を掛けた。


「ナイス! 私のお陰ね!」
「レイス、本当にありがとう。久々に冷や冷やした」
「皆さん、ご迷惑をお掛けして、すみませんでした! 本当にごめんなさい!」
「大丈夫だよ。……なんか久々にハラハラドキドキした」


 希空が何度もお辞儀のモーションをしながら、三人に謝ってきた。三人は希空を責める事無く、優しく宥めた。そして、四人はダンジョンを出て、近くのキャンプ地でお互いの報酬アイテムの確認をした。


「ま、序盤のダンジョンだから、報酬しょぼいわよね」
「あの……、これって何ですか?」
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