3 / 117
第一章:苦痛な日々からの脱却
1-2:信頼関係を築いてからにしましょう
しおりを挟む
希空は雫との出会いに嬉しさの余り、チャットで一方的に喋り始めた。
「あの! どうやったら、雫さんみたいになれますか? 雫さんの装備って現環境で最高レアですよね? どの位プレイしてるんですか? そのコスチュームも課金ガチャの中でも低排出率ですよね? それと――」
「分かったから、落ち着いてよ! 急に静かになったと思えば……。一応、そういう個人的な事は全体チャットじゃなくて、個別チャットかパーティーチャットで話すようにね。聞きたくない人もいるし、聞かれたくない事もあるんだから、ちゃんと場を弁えて、チャットをするように」
「あっ……、すみません。つい」
希空はチャットの切り替えに苦戦していたため、雫が丁寧に教えた。希空はお辞儀のモーションを何度もして、雫にお礼をした。雫は初心者あるあるだなと思いながら、苦笑いした。そして、希空に聞かれた事に答えた。
「そうなんですね。やっぱり、地道に努力しないといけないんですね」
「そうだよ。初めは誰だって分からない事だらけだし、攻略サイトや動画を見ながら、試行錯誤だよ。分からない事あったら、いつでも言って。少しは助けになれると思うから」
「ありがとうございます!」
「他に何かある?」
「実は……」
さっきまでの勢いが突然無くなり、チャット入力中の『……』マークが希空の頭上に表示されたまま、希空はずっと無動だった。雫は疑問に思いながら、チャットの返事を待った。
(何だろう? 分からない事が分からない感じかな?)
「――あの! リアルの話ってしちゃ……ダメなんですか?」
「えっ? それは……内容にもよるけど、私達出会ってから数時間しか経ってないよ? そんな軽々しくリアルの話するのは……大丈夫なの? 希空さんが平気なら、別に構わないけど」
「実は、リアルでイジメられてて……。どうしたら良いか分からなくて」
雫が思っていた以上に重い話で、タイピングしていた指が思わず止まった。そして、何故それを自分に打ち明けてきたのか分からなかった。正直、こういう話は一番苦手だ。分かった事は希空が自分よりも年下である事だ。
「えっと、親や学校に相談とかは……したの?」
「親は離婚してて、家にほとんどいないんです。先生に言っても何もしてくれません。むしろ、そんな事をしたら、イジメがエスカレートするだけで……」
「……なんかごめん。聞いちゃいけない事聞いた」
「いいえ、大丈夫です。雫さんなら聞いて貰えるかなと思って。すみませんでした。僕もこんな重い話しちゃって」
「希空君よりも長く生きてるから、何か不安な事があれば、いつでも言って」
雫は希空に回復魔法をかけて、励ました。希空はまたお辞儀のモーションを何度もして、雫にお礼をした。雫は希空が素直な子なんだとなんとなく思った。雫は缶チューハイを飲み干すと、両頬を叩いて、気合いを入れた。
「よし、希空君! さっきのダンジョン行こう! 敵をボッコボコにして、スッキリしよう!」
「はい! よろしくお願いします」
二人は先程のダンジョンへテレポ―トした。そして、出入口近くにあるキャンプ拠点のテントで待機した。雫はフレンドリストを見て、暇そうなフレンド達に声を掛け、拠点へ来るようにチャットを送った。十分後、二人の前に、布の面積がとてつもなく小さいボインなお姉さんと、これまた腰巻き姿の上半身裸のゴリゴリマッチョなおじさんがやってきた。雫はその露出狂二人に手招きした。希空は雫のフレンドに呆気にとられた。
「あぁ! やっと来た! 遅いよぉ」
「雫ちゃんが呼ぶから、またあのクソ鬼畜レイドに誘われるかと思ったら、このしょぼくれたダンジョンに行く気?」
「えっと、こっちのドスケベ爆乳お姉さんはレイスで魔法職。サーバー上位のサポーター」
「がはは! 爆乳なのは俺の雄っぱいだ!」
「こっちの頭まで筋肉なのが筋肉バカで、見た目と違って、射撃職。サーバー上位のスナイパー」
「レイスさん、筋肉バカさん、よろしくお願いします! 僕は希空って言います」
「あ、さっき害悪プレイヤーに言われまくってた子か」
「あぁん! お姉さんが優しくしてあげるぅ!」
レイスは胸をぶるんぶるん震わせ、希空を抱き締めた。レイスは極めつけに希空の頭の上にプリンのように胸を置き、ニヤニヤしていた。初対面でこんなに絡んでくる事自体初めてだったため、希空は硬直した。
「でも、雫は今魔法職? そしたら、私と被っちゃうわ。あ、もしかして! あれをするって事はあのコスだ! 超楽しみ!」
「うん、近接職。希空君も近接職だから、一緒の方が動き分かるかなって。――クラスチェンジ・聖騎士!」
雫がクラスチェンジを言うと、雫の体を白い光で包み、今までの魔法職のコスチュームと装備一式から近接職のものと置き換えられると、白い光は消えた。雫の恰好は中世貴族が着ているようなベロア調の紺色の生地に金の刺繍がされているジャケットに、膝上丈の白色のチュールスカートを穿き、甲冑風のブーツを履いていた。雫が颯爽と登場すると、希空は釘付けになっていた。
「雫さん、カッコいいですね! 僕も女性キャラにすれば良かったんですけど、女性ものの衣装は相場が高いって聞いて諦めちゃいました」
「確かに……相場は高いね。それより、早くダンジョン行きましょう! 皆、よろしくお願いします!」
「あの! どうやったら、雫さんみたいになれますか? 雫さんの装備って現環境で最高レアですよね? どの位プレイしてるんですか? そのコスチュームも課金ガチャの中でも低排出率ですよね? それと――」
「分かったから、落ち着いてよ! 急に静かになったと思えば……。一応、そういう個人的な事は全体チャットじゃなくて、個別チャットかパーティーチャットで話すようにね。聞きたくない人もいるし、聞かれたくない事もあるんだから、ちゃんと場を弁えて、チャットをするように」
「あっ……、すみません。つい」
希空はチャットの切り替えに苦戦していたため、雫が丁寧に教えた。希空はお辞儀のモーションを何度もして、雫にお礼をした。雫は初心者あるあるだなと思いながら、苦笑いした。そして、希空に聞かれた事に答えた。
「そうなんですね。やっぱり、地道に努力しないといけないんですね」
「そうだよ。初めは誰だって分からない事だらけだし、攻略サイトや動画を見ながら、試行錯誤だよ。分からない事あったら、いつでも言って。少しは助けになれると思うから」
「ありがとうございます!」
「他に何かある?」
「実は……」
さっきまでの勢いが突然無くなり、チャット入力中の『……』マークが希空の頭上に表示されたまま、希空はずっと無動だった。雫は疑問に思いながら、チャットの返事を待った。
(何だろう? 分からない事が分からない感じかな?)
「――あの! リアルの話ってしちゃ……ダメなんですか?」
「えっ? それは……内容にもよるけど、私達出会ってから数時間しか経ってないよ? そんな軽々しくリアルの話するのは……大丈夫なの? 希空さんが平気なら、別に構わないけど」
「実は、リアルでイジメられてて……。どうしたら良いか分からなくて」
雫が思っていた以上に重い話で、タイピングしていた指が思わず止まった。そして、何故それを自分に打ち明けてきたのか分からなかった。正直、こういう話は一番苦手だ。分かった事は希空が自分よりも年下である事だ。
「えっと、親や学校に相談とかは……したの?」
「親は離婚してて、家にほとんどいないんです。先生に言っても何もしてくれません。むしろ、そんな事をしたら、イジメがエスカレートするだけで……」
「……なんかごめん。聞いちゃいけない事聞いた」
「いいえ、大丈夫です。雫さんなら聞いて貰えるかなと思って。すみませんでした。僕もこんな重い話しちゃって」
「希空君よりも長く生きてるから、何か不安な事があれば、いつでも言って」
雫は希空に回復魔法をかけて、励ました。希空はまたお辞儀のモーションを何度もして、雫にお礼をした。雫は希空が素直な子なんだとなんとなく思った。雫は缶チューハイを飲み干すと、両頬を叩いて、気合いを入れた。
「よし、希空君! さっきのダンジョン行こう! 敵をボッコボコにして、スッキリしよう!」
「はい! よろしくお願いします」
二人は先程のダンジョンへテレポ―トした。そして、出入口近くにあるキャンプ拠点のテントで待機した。雫はフレンドリストを見て、暇そうなフレンド達に声を掛け、拠点へ来るようにチャットを送った。十分後、二人の前に、布の面積がとてつもなく小さいボインなお姉さんと、これまた腰巻き姿の上半身裸のゴリゴリマッチョなおじさんがやってきた。雫はその露出狂二人に手招きした。希空は雫のフレンドに呆気にとられた。
「あぁ! やっと来た! 遅いよぉ」
「雫ちゃんが呼ぶから、またあのクソ鬼畜レイドに誘われるかと思ったら、このしょぼくれたダンジョンに行く気?」
「えっと、こっちのドスケベ爆乳お姉さんはレイスで魔法職。サーバー上位のサポーター」
「がはは! 爆乳なのは俺の雄っぱいだ!」
「こっちの頭まで筋肉なのが筋肉バカで、見た目と違って、射撃職。サーバー上位のスナイパー」
「レイスさん、筋肉バカさん、よろしくお願いします! 僕は希空って言います」
「あ、さっき害悪プレイヤーに言われまくってた子か」
「あぁん! お姉さんが優しくしてあげるぅ!」
レイスは胸をぶるんぶるん震わせ、希空を抱き締めた。レイスは極めつけに希空の頭の上にプリンのように胸を置き、ニヤニヤしていた。初対面でこんなに絡んでくる事自体初めてだったため、希空は硬直した。
「でも、雫は今魔法職? そしたら、私と被っちゃうわ。あ、もしかして! あれをするって事はあのコスだ! 超楽しみ!」
「うん、近接職。希空君も近接職だから、一緒の方が動き分かるかなって。――クラスチェンジ・聖騎士!」
雫がクラスチェンジを言うと、雫の体を白い光で包み、今までの魔法職のコスチュームと装備一式から近接職のものと置き換えられると、白い光は消えた。雫の恰好は中世貴族が着ているようなベロア調の紺色の生地に金の刺繍がされているジャケットに、膝上丈の白色のチュールスカートを穿き、甲冑風のブーツを履いていた。雫が颯爽と登場すると、希空は釘付けになっていた。
「雫さん、カッコいいですね! 僕も女性キャラにすれば良かったんですけど、女性ものの衣装は相場が高いって聞いて諦めちゃいました」
「確かに……相場は高いね。それより、早くダンジョン行きましょう! 皆、よろしくお願いします!」
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。
そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。
そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。
あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。
自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。
エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。
お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!?
無自覚両片思いのほっこりBL。
前半~当て馬女の出現
後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話
予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。
サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。
アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。
完結保証!
このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。
※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。
七賀ごふん
BL
【何度失っても、日常は彼と創り出せる。】
──────────
身の回りのものの温度をめちゃくちゃにしてしまう力を持って生まれた白希は、集落の屋敷に閉じ込められて育った。二十歳の誕生日に火事で家を失うが、彼の未来の夫を名乗る美青年、宗一が現れる。
力のコントロールを身につけながら、愛が重い宗一による花嫁修業が始まって……。
※シリアス
溺愛御曹司×世間知らず。現代ファンタジー。
表紙:七賀

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~
ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった
無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。
そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。
チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる