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第一章:苦痛な日々からの脱却
1-2:信頼関係を築いてからにしましょう
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希空は雫との出会いに嬉しさの余り、チャットで一方的に喋り始めた。
「あの! どうやったら、雫さんみたいになれますか? 雫さんの装備って現環境で最高レアですよね? どの位プレイしてるんですか? そのコスチュームも課金ガチャの中でも低排出率ですよね? それと――」
「分かったから、落ち着いてよ! 急に静かになったと思えば……。一応、そういう個人的な事は全体チャットじゃなくて、個別チャットかパーティーチャットで話すようにね。聞きたくない人もいるし、聞かれたくない事もあるんだから、ちゃんと場を弁えて、チャットをするように」
「あっ……、すみません。つい」
希空はチャットの切り替えに苦戦していたため、雫が丁寧に教えた。希空はお辞儀のモーションを何度もして、雫にお礼をした。雫は初心者あるあるだなと思いながら、苦笑いした。そして、希空に聞かれた事に答えた。
「そうなんですね。やっぱり、地道に努力しないといけないんですね」
「そうだよ。初めは誰だって分からない事だらけだし、攻略サイトや動画を見ながら、試行錯誤だよ。分からない事あったら、いつでも言って。少しは助けになれると思うから」
「ありがとうございます!」
「他に何かある?」
「実は……」
さっきまでの勢いが突然無くなり、チャット入力中の『……』マークが希空の頭上に表示されたまま、希空はずっと無動だった。雫は疑問に思いながら、チャットの返事を待った。
(何だろう? 分からない事が分からない感じかな?)
「――あの! リアルの話ってしちゃ……ダメなんですか?」
「えっ? それは……内容にもよるけど、私達出会ってから数時間しか経ってないよ? そんな軽々しくリアルの話するのは……大丈夫なの? 希空さんが平気なら、別に構わないけど」
「実は、リアルでイジメられてて……。どうしたら良いか分からなくて」
雫が思っていた以上に重い話で、タイピングしていた指が思わず止まった。そして、何故それを自分に打ち明けてきたのか分からなかった。正直、こういう話は一番苦手だ。分かった事は希空が自分よりも年下である事だ。
「えっと、親や学校に相談とかは……したの?」
「親は離婚してて、家にほとんどいないんです。先生に言っても何もしてくれません。むしろ、そんな事をしたら、イジメがエスカレートするだけで……」
「……なんかごめん。聞いちゃいけない事聞いた」
「いいえ、大丈夫です。雫さんなら聞いて貰えるかなと思って。すみませんでした。僕もこんな重い話しちゃって」
「希空君よりも長く生きてるから、何か不安な事があれば、いつでも言って」
雫は希空に回復魔法をかけて、励ました。希空はまたお辞儀のモーションを何度もして、雫にお礼をした。雫は希空が素直な子なんだとなんとなく思った。雫は缶チューハイを飲み干すと、両頬を叩いて、気合いを入れた。
「よし、希空君! さっきのダンジョン行こう! 敵をボッコボコにして、スッキリしよう!」
「はい! よろしくお願いします」
二人は先程のダンジョンへテレポ―トした。そして、出入口近くにあるキャンプ拠点のテントで待機した。雫はフレンドリストを見て、暇そうなフレンド達に声を掛け、拠点へ来るようにチャットを送った。十分後、二人の前に、布の面積がとてつもなく小さいボインなお姉さんと、これまた腰巻き姿の上半身裸のゴリゴリマッチョなおじさんがやってきた。雫はその露出狂二人に手招きした。希空は雫のフレンドに呆気にとられた。
「あぁ! やっと来た! 遅いよぉ」
「雫ちゃんが呼ぶから、またあのクソ鬼畜レイドに誘われるかと思ったら、このしょぼくれたダンジョンに行く気?」
「えっと、こっちのドスケベ爆乳お姉さんはレイスで魔法職。サーバー上位のサポーター」
「がはは! 爆乳なのは俺の雄っぱいだ!」
「こっちの頭まで筋肉なのが筋肉バカで、見た目と違って、射撃職。サーバー上位のスナイパー」
「レイスさん、筋肉バカさん、よろしくお願いします! 僕は希空って言います」
「あ、さっき害悪プレイヤーに言われまくってた子か」
「あぁん! お姉さんが優しくしてあげるぅ!」
レイスは胸をぶるんぶるん震わせ、希空を抱き締めた。レイスは極めつけに希空の頭の上にプリンのように胸を置き、ニヤニヤしていた。初対面でこんなに絡んでくる事自体初めてだったため、希空は硬直した。
「でも、雫は今魔法職? そしたら、私と被っちゃうわ。あ、もしかして! あれをするって事はあのコスだ! 超楽しみ!」
「うん、近接職。希空君も近接職だから、一緒の方が動き分かるかなって。――クラスチェンジ・聖騎士!」
雫がクラスチェンジを言うと、雫の体を白い光で包み、今までの魔法職のコスチュームと装備一式から近接職のものと置き換えられると、白い光は消えた。雫の恰好は中世貴族が着ているようなベロア調の紺色の生地に金の刺繍がされているジャケットに、膝上丈の白色のチュールスカートを穿き、甲冑風のブーツを履いていた。雫が颯爽と登場すると、希空は釘付けになっていた。
「雫さん、カッコいいですね! 僕も女性キャラにすれば良かったんですけど、女性ものの衣装は相場が高いって聞いて諦めちゃいました」
「確かに……相場は高いね。それより、早くダンジョン行きましょう! 皆、よろしくお願いします!」
「あの! どうやったら、雫さんみたいになれますか? 雫さんの装備って現環境で最高レアですよね? どの位プレイしてるんですか? そのコスチュームも課金ガチャの中でも低排出率ですよね? それと――」
「分かったから、落ち着いてよ! 急に静かになったと思えば……。一応、そういう個人的な事は全体チャットじゃなくて、個別チャットかパーティーチャットで話すようにね。聞きたくない人もいるし、聞かれたくない事もあるんだから、ちゃんと場を弁えて、チャットをするように」
「あっ……、すみません。つい」
希空はチャットの切り替えに苦戦していたため、雫が丁寧に教えた。希空はお辞儀のモーションを何度もして、雫にお礼をした。雫は初心者あるあるだなと思いながら、苦笑いした。そして、希空に聞かれた事に答えた。
「そうなんですね。やっぱり、地道に努力しないといけないんですね」
「そうだよ。初めは誰だって分からない事だらけだし、攻略サイトや動画を見ながら、試行錯誤だよ。分からない事あったら、いつでも言って。少しは助けになれると思うから」
「ありがとうございます!」
「他に何かある?」
「実は……」
さっきまでの勢いが突然無くなり、チャット入力中の『……』マークが希空の頭上に表示されたまま、希空はずっと無動だった。雫は疑問に思いながら、チャットの返事を待った。
(何だろう? 分からない事が分からない感じかな?)
「――あの! リアルの話ってしちゃ……ダメなんですか?」
「えっ? それは……内容にもよるけど、私達出会ってから数時間しか経ってないよ? そんな軽々しくリアルの話するのは……大丈夫なの? 希空さんが平気なら、別に構わないけど」
「実は、リアルでイジメられてて……。どうしたら良いか分からなくて」
雫が思っていた以上に重い話で、タイピングしていた指が思わず止まった。そして、何故それを自分に打ち明けてきたのか分からなかった。正直、こういう話は一番苦手だ。分かった事は希空が自分よりも年下である事だ。
「えっと、親や学校に相談とかは……したの?」
「親は離婚してて、家にほとんどいないんです。先生に言っても何もしてくれません。むしろ、そんな事をしたら、イジメがエスカレートするだけで……」
「……なんかごめん。聞いちゃいけない事聞いた」
「いいえ、大丈夫です。雫さんなら聞いて貰えるかなと思って。すみませんでした。僕もこんな重い話しちゃって」
「希空君よりも長く生きてるから、何か不安な事があれば、いつでも言って」
雫は希空に回復魔法をかけて、励ました。希空はまたお辞儀のモーションを何度もして、雫にお礼をした。雫は希空が素直な子なんだとなんとなく思った。雫は缶チューハイを飲み干すと、両頬を叩いて、気合いを入れた。
「よし、希空君! さっきのダンジョン行こう! 敵をボッコボコにして、スッキリしよう!」
「はい! よろしくお願いします」
二人は先程のダンジョンへテレポ―トした。そして、出入口近くにあるキャンプ拠点のテントで待機した。雫はフレンドリストを見て、暇そうなフレンド達に声を掛け、拠点へ来るようにチャットを送った。十分後、二人の前に、布の面積がとてつもなく小さいボインなお姉さんと、これまた腰巻き姿の上半身裸のゴリゴリマッチョなおじさんがやってきた。雫はその露出狂二人に手招きした。希空は雫のフレンドに呆気にとられた。
「あぁ! やっと来た! 遅いよぉ」
「雫ちゃんが呼ぶから、またあのクソ鬼畜レイドに誘われるかと思ったら、このしょぼくれたダンジョンに行く気?」
「えっと、こっちのドスケベ爆乳お姉さんはレイスで魔法職。サーバー上位のサポーター」
「がはは! 爆乳なのは俺の雄っぱいだ!」
「こっちの頭まで筋肉なのが筋肉バカで、見た目と違って、射撃職。サーバー上位のスナイパー」
「レイスさん、筋肉バカさん、よろしくお願いします! 僕は希空って言います」
「あ、さっき害悪プレイヤーに言われまくってた子か」
「あぁん! お姉さんが優しくしてあげるぅ!」
レイスは胸をぶるんぶるん震わせ、希空を抱き締めた。レイスは極めつけに希空の頭の上にプリンのように胸を置き、ニヤニヤしていた。初対面でこんなに絡んでくる事自体初めてだったため、希空は硬直した。
「でも、雫は今魔法職? そしたら、私と被っちゃうわ。あ、もしかして! あれをするって事はあのコスだ! 超楽しみ!」
「うん、近接職。希空君も近接職だから、一緒の方が動き分かるかなって。――クラスチェンジ・聖騎士!」
雫がクラスチェンジを言うと、雫の体を白い光で包み、今までの魔法職のコスチュームと装備一式から近接職のものと置き換えられると、白い光は消えた。雫の恰好は中世貴族が着ているようなベロア調の紺色の生地に金の刺繍がされているジャケットに、膝上丈の白色のチュールスカートを穿き、甲冑風のブーツを履いていた。雫が颯爽と登場すると、希空は釘付けになっていた。
「雫さん、カッコいいですね! 僕も女性キャラにすれば良かったんですけど、女性ものの衣装は相場が高いって聞いて諦めちゃいました」
「確かに……相場は高いね。それより、早くダンジョン行きましょう! 皆、よろしくお願いします!」
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