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29.最終話
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そんな時、魔王を誠の隣にやってきて、ポンと肩を叩いた。
「誠のお陰で事がうまく運びそうだ」
「どういうこと?」
「まずは、ゆっくり話せる場所へ行こう。アレクサンドル辺境伯、話し合いができる場所を用意してくれ」
「はい、分かりました」
アレクサンドルは魔王とゼノンを引き連れ、アノン村に入った。誠も皆の背中を追いかけ、ついていった。誠はこの状況を見て、村人は怖がらせないのかと思い、辺りを見渡したが、特にそんなことは無かった。
誠たちはアレクサンドル伯爵邸に到着すると、客間に入り、各々ソファに座った。
「魔王、一体これは……どういうことなんだ?」
「これには深い理由があるんだ。話せば長くなるから、掻い摘んで話そう」
魔王はそう言うと、これまでの経緯を話した。
魔王は数年前、勇者に倒されたことになっていたが、本当は倒されたフリをしたらしい。魔王は人間との戦いには興味がなく、近隣のアレクサンドル領と国交を結びたいと思っていたそうだ。最初は戸惑いもあったが、敵意のないことが分かり、数年かけて話し合いが行われた。調印まであと少しと言うところで、反魔王軍が動き出し、それと同時に、誠が突如として現れたため、話が平行線のままだったらしい。
「それで、今回ついに反魔王軍が動き出して、村を襲おうとしたんだ。まぁ、結局、誠がそれを阻止したから、私が出る幕は無かったという訳だ」
「なんだよ。俺だけ知らなかったのかよ」
「誠、本当に申し訳ない。私たちも予想外のことが続いて、混乱していたんだ。許してほしい」
「それで、アレクサンドル辺境伯。調印は進めても良いか?」
「あぁ、勿論だ。しかし、まだ理解が得られない者もいる。それをどうにかすれば……」
皆が難しい顔をし、首を傾げていた。要は間を取り持つクッション的な人がいればいいのだろう。だったら、自分が一番適任ではないかと誠は思った。
誠がすっと立ち上がり、魔界と人間界の架け橋になると名乗りを上げた。
「じゃ、俺が二つの世界の架け橋になるよ。その方が受け入れてくれるでしょ。あと、住んでるとこもほぼ中間だし」
「おぉ! 誠、本当にいいのかね?」
「あぁ。アノン村には色々とお世話になってるし」
「俺様も誠が間に入ってくれるなら大歓迎だぜ」
「では、そういうことにしよう。誠よ、感謝する」
魔王はそう言うと、転移魔法で魔王城へ帰っていった。
その後、村人たちにそのことが伝令され、村人はホッと胸を撫で下ろしていた。
魔界と人間界の架け橋となった誠は、アレクサンドルとゼノンの支えを受けながら、日々奮闘した。
その姿は多くの人々に希望を与え、二つの世界の間に新たな理解と協力の時代をもたらした。
*
「それで、誠は一体どちらを選ぶんですか?」
「いやぁ、それは――」
「優柔不断だな! 俺様は見損なったぞ。選ばれるのは当然若くてピチピチな俺様だろ!」
「いいえ、若いというのは理由になりません。どの位の愛を捧げられるかです。私こそ誠のそばにふさわしい!」
久々に会合でケッシータの誠の屋敷に来た二人は、本題に入る前にいがみ合っていた。友好的な関係が続く中、特にこれと言った問題はないのだが、ここにきて最重要問題が浮上した。それは嫁入り問題だ。魔王に相談したところ、声を大にして笑われ、「好きな方を選べ」と言われた。
アレクサンドルとゼノンからの求愛はプレゼントやら狩ってきた獲物の自慢、愛の囁きと……誠にとって随分ヘビーなものだった。
正直、誠はそんなことをされなくても二人のことが好きだし、アレクサンドルとゼノンのどちらも手放すことが出来ない。
「ごめん! 俺、二人とも好きだから、どっちを嫁にするとか考えられん!」
誠が立ち上がり、二人に向かって大声で叫んだ。二人はきょとんとした顔をした後、声を出して笑った。誠は何故、笑っているのか理解出来なかった。
「やはり、ゼノン殿と話した通りですね」
「だろ? アレクサンドルもわざとらしい演技はやめろよな」
「え? どういうこと?」
誠は頭の上に疑問符を並べ、すんとソファに座った。そして、あらかた笑い終えた二人は誠の手を取った。そして、アレクサンドルが爽やかな笑顔で喋り始めた。
「人間界での嫁、魔界での嫁。世界を超えた愛……なんて素晴らしいのでしょう。あっ、そうそう。この世界はそもそも一夫多妻制ですよ? ご存じなかったですか?」
「な、な、な、なんじゃそりゃ! 知らなかったのは俺だけかよ!」
「だから、これからも末永く私たちを愛してくださいね、ご主人様」
そう言い終わると、アレクサンドルとゼノンは誠の頬にキスをした。誠はぽかんとしていたが、二人の愛を受け、これから三人で新たな家族を築くことを決意する。彼らの愛は、異なる世界の境界を超えた真実の愛の証となった。
誠とアレクサンドル、ゼノンの三人が築いた愛と信頼の基盤の上に、辺境伯領と魔界は繁栄を遂げ、二つの世界はかつてないほどの繋がりを持つようになった。
「誠のお陰で事がうまく運びそうだ」
「どういうこと?」
「まずは、ゆっくり話せる場所へ行こう。アレクサンドル辺境伯、話し合いができる場所を用意してくれ」
「はい、分かりました」
アレクサンドルは魔王とゼノンを引き連れ、アノン村に入った。誠も皆の背中を追いかけ、ついていった。誠はこの状況を見て、村人は怖がらせないのかと思い、辺りを見渡したが、特にそんなことは無かった。
誠たちはアレクサンドル伯爵邸に到着すると、客間に入り、各々ソファに座った。
「魔王、一体これは……どういうことなんだ?」
「これには深い理由があるんだ。話せば長くなるから、掻い摘んで話そう」
魔王はそう言うと、これまでの経緯を話した。
魔王は数年前、勇者に倒されたことになっていたが、本当は倒されたフリをしたらしい。魔王は人間との戦いには興味がなく、近隣のアレクサンドル領と国交を結びたいと思っていたそうだ。最初は戸惑いもあったが、敵意のないことが分かり、数年かけて話し合いが行われた。調印まであと少しと言うところで、反魔王軍が動き出し、それと同時に、誠が突如として現れたため、話が平行線のままだったらしい。
「それで、今回ついに反魔王軍が動き出して、村を襲おうとしたんだ。まぁ、結局、誠がそれを阻止したから、私が出る幕は無かったという訳だ」
「なんだよ。俺だけ知らなかったのかよ」
「誠、本当に申し訳ない。私たちも予想外のことが続いて、混乱していたんだ。許してほしい」
「それで、アレクサンドル辺境伯。調印は進めても良いか?」
「あぁ、勿論だ。しかし、まだ理解が得られない者もいる。それをどうにかすれば……」
皆が難しい顔をし、首を傾げていた。要は間を取り持つクッション的な人がいればいいのだろう。だったら、自分が一番適任ではないかと誠は思った。
誠がすっと立ち上がり、魔界と人間界の架け橋になると名乗りを上げた。
「じゃ、俺が二つの世界の架け橋になるよ。その方が受け入れてくれるでしょ。あと、住んでるとこもほぼ中間だし」
「おぉ! 誠、本当にいいのかね?」
「あぁ。アノン村には色々とお世話になってるし」
「俺様も誠が間に入ってくれるなら大歓迎だぜ」
「では、そういうことにしよう。誠よ、感謝する」
魔王はそう言うと、転移魔法で魔王城へ帰っていった。
その後、村人たちにそのことが伝令され、村人はホッと胸を撫で下ろしていた。
魔界と人間界の架け橋となった誠は、アレクサンドルとゼノンの支えを受けながら、日々奮闘した。
その姿は多くの人々に希望を与え、二つの世界の間に新たな理解と協力の時代をもたらした。
*
「それで、誠は一体どちらを選ぶんですか?」
「いやぁ、それは――」
「優柔不断だな! 俺様は見損なったぞ。選ばれるのは当然若くてピチピチな俺様だろ!」
「いいえ、若いというのは理由になりません。どの位の愛を捧げられるかです。私こそ誠のそばにふさわしい!」
久々に会合でケッシータの誠の屋敷に来た二人は、本題に入る前にいがみ合っていた。友好的な関係が続く中、特にこれと言った問題はないのだが、ここにきて最重要問題が浮上した。それは嫁入り問題だ。魔王に相談したところ、声を大にして笑われ、「好きな方を選べ」と言われた。
アレクサンドルとゼノンからの求愛はプレゼントやら狩ってきた獲物の自慢、愛の囁きと……誠にとって随分ヘビーなものだった。
正直、誠はそんなことをされなくても二人のことが好きだし、アレクサンドルとゼノンのどちらも手放すことが出来ない。
「ごめん! 俺、二人とも好きだから、どっちを嫁にするとか考えられん!」
誠が立ち上がり、二人に向かって大声で叫んだ。二人はきょとんとした顔をした後、声を出して笑った。誠は何故、笑っているのか理解出来なかった。
「やはり、ゼノン殿と話した通りですね」
「だろ? アレクサンドルもわざとらしい演技はやめろよな」
「え? どういうこと?」
誠は頭の上に疑問符を並べ、すんとソファに座った。そして、あらかた笑い終えた二人は誠の手を取った。そして、アレクサンドルが爽やかな笑顔で喋り始めた。
「人間界での嫁、魔界での嫁。世界を超えた愛……なんて素晴らしいのでしょう。あっ、そうそう。この世界はそもそも一夫多妻制ですよ? ご存じなかったですか?」
「な、な、な、なんじゃそりゃ! 知らなかったのは俺だけかよ!」
「だから、これからも末永く私たちを愛してくださいね、ご主人様」
そう言い終わると、アレクサンドルとゼノンは誠の頬にキスをした。誠はぽかんとしていたが、二人の愛を受け、これから三人で新たな家族を築くことを決意する。彼らの愛は、異なる世界の境界を超えた真実の愛の証となった。
誠とアレクサンドル、ゼノンの三人が築いた愛と信頼の基盤の上に、辺境伯領と魔界は繁栄を遂げ、二つの世界はかつてないほどの繋がりを持つようになった。
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