【センチネルバース】forge a bond ～ぼくらの共命パラダイムシフト～

第１４章：強制執行と別れ

４６．

『非推奨。そのようなことをした場合、貴方がロストします。その確率は八十五パーセントに――』


「そんなことはどうでもいい！　強制執行モードに切り替え！」


『強制執行モードへ移行します。貴方の指示に従い、相殺を実行します』


「あははっ！　自分から死を選ぶの？　レディのお楽しみが減っちゃうじゃん。――まっ、いっか。じゃあね、バイバーイ」


　健人がクリスタルにパンドラの力を流し込んでいると、レディが不満を訴えてきた。健人は完全に無視して、意識を何度か飛ばしながらも集中した。クリスタルとシンクロする感情はとても悲しく、刺々しく、禍々しかった。健人はそれらを慰めるようにパンドラの力を流し込み、温かくかつ優しく受け入れた。
　そうすると、クリスタルが目を瞑りたくなるような輝きを放ち、レディの火球に目掛けて、クリスタルの先端からビームのような光が放たれた。


「何それ！　聞いていないんだけど！　きゃぁっ！」


　ビームは火球を貫き、空中で化学反応を起こし、ビッグバンを引き起こした。健人は体に強い衝撃を受け、地面の上を転がった。その中、レディは慌てふためき、どこかへ去っていくのが見えた。ビックバンが終わると、辺りは一瞬静寂に包まれ、風圧で暗雲が吹き飛ばされ、夜空に浮かぶ星々が輝き、白銀の光が優しく降り注いだ。健人は立ち上がることが出来ず、仰向けのまま、横目でクリスタルの方を見た。クリスタルは氷のようにひび割れが発生し、跡形もなく砕け散った。


　健人は大きなため息をつき、仰向けで大の字になり、蘇芳をピックアップする間に、しばしの休息をとる。今まで暗雲だった街は星々が煌めく夜空になり、クリスタルの中に囚われていたシャドウはきっと今、煌めく星の中に溶け込んでいっただろうと思った。


「これで、終わったの、かな……？」


　発する声は弱々しく、徐々に視界がぼやけ始め、手も足も言うことを聞かない。辛うじて顔は緩慢であるが横に動かせる。健人は蘇芳の姿を探したが、瓦礫などもあり、見つけられなかった。


「蘇芳、ごめんね……うぅっ」


　健人は静かに涙を流し、そっと目を閉じて、その場で気を失った。