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第13章:崩壊都市・渋谷で待ち受けていたもの
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強風が収まり、健人は腕を顔から離した。そこには今まで無かったクリスタルが静かに禍々しくそびえ立っていた。
「な、なんでクリスタルが? さっきまで無かったのに……」
『――要救助者の反応を感知。女性一名、推定十代前後。バイタル正常、膝に擦り傷あり。軽微の処置必要。二次被害がないことを確認した上、救護にあたってください』
健人がポカンとして、クリスタルを見ていると、ナビの自動音声が突然流れる。どうやら要救助者が一人いるらしい。健人が辺りを見渡すと、クリスタルの横ですすり泣く少女が体育座りしているのが目視出来た。
「蘇芳、あそこに女の子がいる。あの子がきっと要救助者だよ。僕、行ってくるね」
「――お、おい! 離れ過ぎるなって言ったのはお前だろ」
健人は蘇芳の注意を無視して、少女の元へ急いで駆け寄った。そして、健人は少女に優しく声をかけ、背負っていたバックパックからレスキューキットを取り出し、少女の擦りむいた膝の処置をした。
「痛くない? 大丈夫? 傷口は綺麗になったよ。それにしても、手当て中も泣かないなんて偉いね」
「うん……。お兄ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。それより、ここは危ないから、一緒に帰ろっか? 因みに、お名前は何て言うの? あと、パパやママはどこかな?」
「……」
健人は少女の目線に合わせて、喋りかけるが、少女は無言で首を横に振るだけだった。少女はずっと肌見離さずテディベアのぬいぐるみをギュッと抱き締めている。もしかしたら、形見とかなのだろうか? そう考えていると、少女がいきなりテディベアのぬいぐるみを差し出してきた。
「お兄ちゃんにあげる」
「えっ? でも、大事そうに持ってたから、貰う訳にはいかないし、今は君を安全な場所に送ってあげないと」
健人が立ち上がり、少女に手を差し伸べたが、少女は執拗にぬいぐるみを押し当ててきた。健人は困り果て、考えた末、ぬいぐるみを抱え、少女と手を繋ぎ、蘇芳がいる方へ引き返すことにした。
「それにしても、かすり傷程度で良かったよ。改札口の方に仮拠点があるから、そこで休もうか。お腹空いてない?」
健人はこんな時に小児科経験が活かされて良かったと心底思う。駅の方へ向かって、歩いていると、蘇芳の姿が見えた。健人が蘇芳に声をかけると、蘇芳は目を大きく見開いたと思えば、眉間に皺を寄せ、全速力で向かってきた。
「早く投げ捨てろ!」
「え? 何を?」
『警告! 爆発物感知、速やかに退避してください!』
健人がぽかんとしていると、ナビから急にけたたましい警告音と目の前にホログラムモニターが出現し、赤字でコーションと英語で書かれた警告画面が表示された。少女の手を引こうとすると、空振りし、隣を見ると、誰もいなかった。あるのは少女から預かったテディベアのぬいぐるみだけ。
「あれ、さっきの女の子は――」
「だから、そいつを早くどっかに投げ捨てろ!」
健人は思考が追いつかなかった。気づいた時には蘇芳から無理矢理ぬいぐるみを奪い取られ、全力で遠くへ投げられた。宙を舞うテディベアのぬいぐるみが物凄くスローモーションに見えた。健人はただその様子を見るしか出来なかった。
「おい! 伏せろ!」
健人は蘇芳の今までに聞いたこと無い切羽詰まった声を耳にする。そして、蘇芳は健人を庇うように健人の体を抱き締め、地に伏せた。宙を舞うテディベアのぬいぐるみが大きな爆発音とともに炸裂し、健人はハッと我に返る。
「……な、何?」
「何じゃねぇよ。対処が遅れてたら、お前もろとも木っ端微塵だぜ」
「で、でも、さっきまで女の子が隣りにいて、大事なぬいぐるみで――」
「健人っ! しっかりしろ! こんなとこで生きてる人間なんか普通いねぇだろ!」
健人は声を震わせ、取り乱す。それに対して、蘇芳は健人が正常ではないと判断したのか、両肩をがっしりと強く握ると、喝を入れた。そして、背後を指差し、鋭い眼差しで睨みを利かした。健人は恐る恐る振り向くと、先程の少女が宙に浮いて、口角を上げ、ニヤついた顔で見下ろしていた。
「あーぁ、もう少しだったのに。残念。あはっ、助かって良かったね」
「な、なんでクリスタルが? さっきまで無かったのに……」
『――要救助者の反応を感知。女性一名、推定十代前後。バイタル正常、膝に擦り傷あり。軽微の処置必要。二次被害がないことを確認した上、救護にあたってください』
健人がポカンとして、クリスタルを見ていると、ナビの自動音声が突然流れる。どうやら要救助者が一人いるらしい。健人が辺りを見渡すと、クリスタルの横ですすり泣く少女が体育座りしているのが目視出来た。
「蘇芳、あそこに女の子がいる。あの子がきっと要救助者だよ。僕、行ってくるね」
「――お、おい! 離れ過ぎるなって言ったのはお前だろ」
健人は蘇芳の注意を無視して、少女の元へ急いで駆け寄った。そして、健人は少女に優しく声をかけ、背負っていたバックパックからレスキューキットを取り出し、少女の擦りむいた膝の処置をした。
「痛くない? 大丈夫? 傷口は綺麗になったよ。それにしても、手当て中も泣かないなんて偉いね」
「うん……。お兄ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。それより、ここは危ないから、一緒に帰ろっか? 因みに、お名前は何て言うの? あと、パパやママはどこかな?」
「……」
健人は少女の目線に合わせて、喋りかけるが、少女は無言で首を横に振るだけだった。少女はずっと肌見離さずテディベアのぬいぐるみをギュッと抱き締めている。もしかしたら、形見とかなのだろうか? そう考えていると、少女がいきなりテディベアのぬいぐるみを差し出してきた。
「お兄ちゃんにあげる」
「えっ? でも、大事そうに持ってたから、貰う訳にはいかないし、今は君を安全な場所に送ってあげないと」
健人が立ち上がり、少女に手を差し伸べたが、少女は執拗にぬいぐるみを押し当ててきた。健人は困り果て、考えた末、ぬいぐるみを抱え、少女と手を繋ぎ、蘇芳がいる方へ引き返すことにした。
「それにしても、かすり傷程度で良かったよ。改札口の方に仮拠点があるから、そこで休もうか。お腹空いてない?」
健人はこんな時に小児科経験が活かされて良かったと心底思う。駅の方へ向かって、歩いていると、蘇芳の姿が見えた。健人が蘇芳に声をかけると、蘇芳は目を大きく見開いたと思えば、眉間に皺を寄せ、全速力で向かってきた。
「早く投げ捨てろ!」
「え? 何を?」
『警告! 爆発物感知、速やかに退避してください!』
健人がぽかんとしていると、ナビから急にけたたましい警告音と目の前にホログラムモニターが出現し、赤字でコーションと英語で書かれた警告画面が表示された。少女の手を引こうとすると、空振りし、隣を見ると、誰もいなかった。あるのは少女から預かったテディベアのぬいぐるみだけ。
「あれ、さっきの女の子は――」
「だから、そいつを早くどっかに投げ捨てろ!」
健人は思考が追いつかなかった。気づいた時には蘇芳から無理矢理ぬいぐるみを奪い取られ、全力で遠くへ投げられた。宙を舞うテディベアのぬいぐるみが物凄くスローモーションに見えた。健人はただその様子を見るしか出来なかった。
「おい! 伏せろ!」
健人は蘇芳の今までに聞いたこと無い切羽詰まった声を耳にする。そして、蘇芳は健人を庇うように健人の体を抱き締め、地に伏せた。宙を舞うテディベアのぬいぐるみが大きな爆発音とともに炸裂し、健人はハッと我に返る。
「……な、何?」
「何じゃねぇよ。対処が遅れてたら、お前もろとも木っ端微塵だぜ」
「で、でも、さっきまで女の子が隣りにいて、大事なぬいぐるみで――」
「健人っ! しっかりしろ! こんなとこで生きてる人間なんか普通いねぇだろ!」
健人は声を震わせ、取り乱す。それに対して、蘇芳は健人が正常ではないと判断したのか、両肩をがっしりと強く握ると、喝を入れた。そして、背後を指差し、鋭い眼差しで睨みを利かした。健人は恐る恐る振り向くと、先程の少女が宙に浮いて、口角を上げ、ニヤついた顔で見下ろしていた。
「あーぁ、もう少しだったのに。残念。あはっ、助かって良かったね」
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