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第11章:厳しい指摘と決断
33.
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「見た目が野薔薇みたいですけど、なんかガラス細工のような、氷彫刻にも見えなくもない。これは渋谷だけなんですか?」
「あぁ、そうだ。以前の調査では、こんなものは存在しなかった。最近になって、この『クリスタルローズ』の群生が調査隊によって報告された」
「クリスタルローズ……。でも、こんなに群生しているってことは、普通の植物と同じように養分を吸収しているってことですよね? でも、こんな急速に成長しますかね?」
統括指揮官はモニターの映像を切り替える。左にはビフォー、右にはアフターと書かれたクリスタルの比較映像だ。クリスタル内部を蠢く漆黒の液体のようなもの。まるで墨汁を水の中に垂らしたような感じだ。
「アフターだと黒いのが減ってる? ……それにしても、蠢いているというか、混ざり合わないというか」
「生きているんだ、このクリスタルは」
健人は驚きのあまり、目を大きく見開いた。それは隣りにいる夏希も同じだった。統括指揮官はあくまで憶測の域だと付け加えた。それでも、健人たちにとっては情報過多で開いた口が塞がらなかった。
「それで今回、君たちに調査へ行って欲しい。並のパンドラでは対処出来ない。実際に、前回の調査隊は数人が消息を絶った者もいる。不安なのは重々承知だ」
統括指揮官は姿勢を正すと、自分たちに向かって、深々と頭を下げた。健人は頭を上げるように言ったが、夏希は後頭部で手を組み、呆れ顔でため息をついていた。
「父さん、――いや、統括指揮官。どうせ僕たちには拒否権なんて無いんでしょ? まぁ、これだけの情報をあえて僕たちにしか言わないってことは行けっていう最高司令官の命令でしょ?」
「それは……」
「夏希君、統括指揮官を困らせてどうすんのさ。僕たち以外に適任がいないなら、行くしかないよ。最高司令官の命令なんだし、仕方ないよ」
健人は正直、消息不明の隊員がいる場所での任務を引き受けるのには抵抗を感じたし、恐怖で体が震えそうだ。実際に、鳥肌が立って、背筋がゾクゾクする。しかし、最高司令官の命令だ。断れないだろうし、僕たちが拒否すれば、他の誰かが行くことになりかねない。
健人は感情をぐっと堪え、平静を装った。でも、平静を装ったところで「はい、行きます」というたった一言のセリフは安易には口に出せなかった。いや、口から出なかった。健人は夏希がどう考えているかが気になり、横目でチラリと夏希を窺った。
普段はキラキラな笑顔で温厚な夏希が、今にも飛びかかりそうな形相をしており、テーブルを両手で強く叩きつけ、立ち上がると統括指揮官を睨みつける。そして、堰が切れたように、急に声を荒げた。
「あり得ない! それは僕たちに死んでこいって言っているようにしか聞こえないんけど!」
「夏希、落ち着け」
「琥太郎は黙っててよ! 平穏な日々を取り戻すためには確かに必要な任務かもしれないし、状況が緊迫しているのは分かるよ。でも、少人数で挑むのは無謀過ぎるんじゃないの?」
「それは重々承知だ。だから、こうやってこの場を設けたんだ」
「――そ、それは僕や夏希がブラックボックスだからですか?」
健人は自分の服の裾をギュッと握り締め、重い口を開いた。統括指揮官は静かに頷く。憤怒する夏希はその態度に呆れたのか、大きなため息をつくと、ドカッと音を立てて座った。張り詰めた空気が流れ、刺々しさを感じる。
「あぁ、そうだ。以前の調査では、こんなものは存在しなかった。最近になって、この『クリスタルローズ』の群生が調査隊によって報告された」
「クリスタルローズ……。でも、こんなに群生しているってことは、普通の植物と同じように養分を吸収しているってことですよね? でも、こんな急速に成長しますかね?」
統括指揮官はモニターの映像を切り替える。左にはビフォー、右にはアフターと書かれたクリスタルの比較映像だ。クリスタル内部を蠢く漆黒の液体のようなもの。まるで墨汁を水の中に垂らしたような感じだ。
「アフターだと黒いのが減ってる? ……それにしても、蠢いているというか、混ざり合わないというか」
「生きているんだ、このクリスタルは」
健人は驚きのあまり、目を大きく見開いた。それは隣りにいる夏希も同じだった。統括指揮官はあくまで憶測の域だと付け加えた。それでも、健人たちにとっては情報過多で開いた口が塞がらなかった。
「それで今回、君たちに調査へ行って欲しい。並のパンドラでは対処出来ない。実際に、前回の調査隊は数人が消息を絶った者もいる。不安なのは重々承知だ」
統括指揮官は姿勢を正すと、自分たちに向かって、深々と頭を下げた。健人は頭を上げるように言ったが、夏希は後頭部で手を組み、呆れ顔でため息をついていた。
「父さん、――いや、統括指揮官。どうせ僕たちには拒否権なんて無いんでしょ? まぁ、これだけの情報をあえて僕たちにしか言わないってことは行けっていう最高司令官の命令でしょ?」
「それは……」
「夏希君、統括指揮官を困らせてどうすんのさ。僕たち以外に適任がいないなら、行くしかないよ。最高司令官の命令なんだし、仕方ないよ」
健人は正直、消息不明の隊員がいる場所での任務を引き受けるのには抵抗を感じたし、恐怖で体が震えそうだ。実際に、鳥肌が立って、背筋がゾクゾクする。しかし、最高司令官の命令だ。断れないだろうし、僕たちが拒否すれば、他の誰かが行くことになりかねない。
健人は感情をぐっと堪え、平静を装った。でも、平静を装ったところで「はい、行きます」というたった一言のセリフは安易には口に出せなかった。いや、口から出なかった。健人は夏希がどう考えているかが気になり、横目でチラリと夏希を窺った。
普段はキラキラな笑顔で温厚な夏希が、今にも飛びかかりそうな形相をしており、テーブルを両手で強く叩きつけ、立ち上がると統括指揮官を睨みつける。そして、堰が切れたように、急に声を荒げた。
「あり得ない! それは僕たちに死んでこいって言っているようにしか聞こえないんけど!」
「夏希、落ち着け」
「琥太郎は黙っててよ! 平穏な日々を取り戻すためには確かに必要な任務かもしれないし、状況が緊迫しているのは分かるよ。でも、少人数で挑むのは無謀過ぎるんじゃないの?」
「それは重々承知だ。だから、こうやってこの場を設けたんだ」
「――そ、それは僕や夏希がブラックボックスだからですか?」
健人は自分の服の裾をギュッと握り締め、重い口を開いた。統括指揮官は静かに頷く。憤怒する夏希はその態度に呆れたのか、大きなため息をつくと、ドカッと音を立てて座った。張り詰めた空気が流れ、刺々しさを感じる。
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